純粋にぐだとマシュを好きな人、ぐだマシュを好む人は閲覧しないことを勧めます
あと批判、中傷はしないでください。無自覚の善意も悪意もいらないので
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赤い苺がアクセントのショートケーキに、クリームたっぷりのチョコレートケーキ。ふんわりスポンジのシフォンケーキとフルーツたっぷりのタルトケーキ。パイ生地サクサクのミルフィーユは今にも崩れてしまいそうだ。
ケーキだけではない。サクサクのチョコチップクッキーに生クリームと果物が載ったワッフル。パリパリのウエハースにつやつやと光るゼリー。
きゃあきゃあと年頃の女子が見れば写真を撮ってSNSに投稿しそうな、見ているだけでも甘すぎて胃もたれしそうなスイーツたち。それらをフォークやスプーンで貪りながらうんうんと書類片手に唸っている少女が一人いた。
「うっわ、相も変わらず見てるだけで甘すぎて吐きそう」
扉のスライド音がして入ってくる人物、アンリマユの姿に書類からそちらに顔を向けた少女、アンリマユのマスターであり『脇役』という烙印を押された存在、文無影緋は不服そうな顔で彼を見やった。
「何の用だ、アンリマユ」
「進捗どうですかーって聞きに来たんだよ。それにしても、またすげー量なこって」
「うるさい」
ずかずかとマイルームに入り込んだアンリマユは、そのままの態度で影緋の座っている椅子の向かい側にある椅子へと腰を下ろす。そして卓上にあるスイーツの数々を見て、うへえ、と顔をしかめた。
「ケーキにクッキーにゼリーに……甘いものパラダイスってこのことを言うんでしょうね。オレはごめんだけど」
「お前にとっては不必要でも、私には必要なんだよ」
「太るぞ」
「あいにく、太れるもんなら太ってみたい体なもんで」
直球の言葉にも皮肉の言葉で返し、再度書類を見る影緋の表情は優れない。このスイーツの量と顔色を見るに、今回のレイシフトもなかなか大変だったそうで、と心の中で呟き、アンリマユはクッキーを一つつまんだ。
影緋の甘いものによる暴食は今に始まったものではない。というのも、これは仕方のないことなのだ。
レイシフト先で進むため、そして生き残るためにフルに頭を使い、体を使う影緋の消費カロリーはそれはそれは恐ろしい。あの頭脳戦が得意な悪役を師(と言うのを影緋本人が嫌がっているが)に持っているのが拍車をかけているのだろう。足りないものを必死に補い、戦う彼女の体は、常に限界を迎えている。
そんな彼女の頭と体を支えているのが、このスイーツたちを食すと言う習慣なわけだ。甘いものを大量に摂取することでカロリーをため込む。もちろん太るんじゃないか、という心配もあるが、この摂取した以上のカロリーを消費するので太ることはない。むしろもっと脂肪を付けろと怒られるくらいだ。
閑話休題
(まーた眉間寄せちゃって。皺になっても知らねーよっと)
スイーツの方を見向きもせず、ただフォークやスプーンを突き立て、書類片手に食す姿は誉められたものではないだろう。もちろん、影緋だって場所や目の前にいる人物を考えればこんなことはしない。でもここは彼女のマイルームで、目の前にいるのは自分の最初のサーヴァントであるアンリマユだ。遠慮する必要がどこにあるのか。それを分かっているからこそ、アンリマユは何も言わない。ただ邪魔をせずに見ているだけだ。
(あの頃のマスターと比べたら、成長したとは思いますけどねぇ。それでもまだまだ足りないときたか)
思い返すのは、あの炎で囲まれた街での出来事。
アンリマユ自身、自分が強いサーヴァントだなんて思ったことは一度もない。むしろ一般人と変わらない、それか少し強いレベルの英霊だ。そんな自分を召喚した彼女にはそれはそれは同情した。これは長く生きられないな、と。
そんな考えも、彼女の言葉と行動で変わるわけだが。
あれはそう、たくさんのエネミーに囲まれ、這う這うの体で瓦礫の陰に隠れた時だ。お互いにもうぼろぼろで、主人公とヒロインとははぐれていて、もうどうしようもないという状況の時にようやくできた自分の能力の説明。それを言った時の彼女の表情が今でも忘れられない。
『いやー、オレってば「最弱の英霊」ですんで?まともな戦力としては期待しないでほしいなーと』
『そんな軽々しい口調叩いてる暇あるなら、この状況を突破する方法を考えろ!』
『えー、だってこういうのオレ様慣れてますし?サクッとヤラれて、サクッと攻撃二倍にして反射して道連れにするのが役割ですし?』
『す、救いがない……ん?』
『どうしたんですか?マスター』
『いや、その反射する力って、』
その言葉は途中で途切れた。何故かって?もちろん、うようよいるエネミーに見つかったからだ!そこからはもう必死だった。必死に逃げて逃げて逃げて、瓦礫で足を切っても、飛んできた矢が頬をかすめても逃げて。そして走りながら何か算段を立てたらしい影緋はアンリマユに向かって叫んだ。
『アンリマユ!あと何回攻撃を受けられる!?』
『あとですか!?精々五回くらいが限界でしょうね!』
『なら、』
そう言うが早いか、アンリマユの手を取り、人が仕事に勤めていたであろうビルの近くへとやって来る。もちろんエネミーも追いかけてきており、周りを囲まれ完全に四面楚歌な状態だ。そんな中、彼女は言った。宝具を展開しろ、と。
なぜ今なのか、ここで展開する意味はあるのかを聞きたかったが、周りのエネミーが聞く暇を与えてくれる、なんて甘っちょろいことを許してくれるはずもなく。言われるがままに宝具を展開して、敵の攻撃を受ける。その隣で瞬間回避で避け続けているマスターも限界を迎えていて。そして攻撃を反射しようとした時だ。
『アンリマユ!今だ!反射の力を「ビルの二つ目の柱」に当てろ‼』
その言葉にはっとして彼女の指さす方を見れば、そこには今にも崩れそうで崩れていないビルが。その二つ目の柱は少しの力を加えれば壊れてしまいそうで。そう、反射の力でも壊せてしまいそうだ。
それに気づいた瞬間、にやける頬を抑えることができなかった。そして感情のままに叫ぶ。高揚感と、やってくれたなと言う感情をのせて。
『へぇ、面白いこと考えるね!いいぜ、それに賭けてやるよ‼「ヴェルグ・アヴェスター‼」』
バシュ、と音を立てて放った衝撃波は確かにビルの二つ目の柱に当たった。それを視認した直後、アンリマユは影緋に手を引かれ、走っていく。そしてずずん、と言う鈍い音が背後で聞こえてきたと同時に彼女は叫んだ。
『伏せろ‼』
言われるがままに伏せれば、突風と衝撃が体を襲う。頭上を瓦礫が飛んでいき、頭部をかする。重い音がして、そして少しの沈黙の後おそるおそると言うように起き上がり、振り向けばそこには倒壊したビルと、そのビルに潰されたエネミーの残骸があった。
『……なんとかなった、みたいだな……』
同じく伏せていた影緋も振り向き、自分の作戦が成功したことにほっと息を吐く。ぐい、と頬を手でこすれば、切った傷口から出た血が、手を汚した。
『正直言うと賭けだったけど、上手くいってよかった』
『いやー、それはこっちの台詞なんですけどね?けど、良く思いついたな、オレの反射の力を敵ではなく他の物体にぶつける、なんて』
『敵一体ならどうにかなったかもしれないが、複数体が相手だったからな。ならこの手しかないと思って。上手くいって本当に良かった……』
ぐったり、と疲れたように、いや、実際かなり疲れているのだろう。その場に仰向けに寝転んだ影緋だったが、ふと何かを思ったのかすぐさま立ち上がり、森林の方を指さした。
『さっきの轟音でまたエネミーが集まってくるかもしれない。いったん、あの森林に隠れて過ごそう』
『ん、リョーカイ』
善は急げとばかりに移動しようとする二人だったが、不意にアンリマユが口にした言葉に、影緋は足を止めることとなる。
『それにしても、マスターも不運ですよね。他の人とはぐれたばかりか、エネミーに囲まれて死にかけて。呼ばれたのがオレじゃなければもう少し楽だったでしょうに』
いつも通りのおどけた口調でアンリマユはそう言う。だって、そういう役回りだから。『必要悪』は他人に嫌われて、憎まれてなんぼなんだから。だから気にしない。彼女から恨み言が出ても、何も気にしない。いつも通りおどけるだけ、
『私はアンリマユでよかったと思うけどな』
ぴたり、と動きが止まる。何かの冗談かと思って目の前にいるマスターの表情を見るが、その顔はいたってまじめで。その黒い瞳には嘘なんてなくて。
『こうして会話してて思うよ。普通の英霊を召喚してたらきっと私は気後れして指示なんて出せてない。確かにこうやって傷だらけになることもなかったろうけどさ、もしかしたら、どっかで仲違いでもしてたかもしれないし』
『……』
『だから、私はお前でよかったと思うよ。結果論だけど、生き残ることができたし。あ、そういやまだ言ってなかったな』
『ありがとう、アンリマユ。私を助けてくれて』
その言葉と同時に向けられるのは、親愛を宿した瞳で。それを理解した瞬間、アンリマユは笑いをこらえきれなくなった。
『あは、あははははははは‼』
その急な笑い声にマスターは肩をびくつかせ、目をまんまると見開いたが、それを指摘するだけの余裕がアンリマユにはなかった。
この『必要悪』が、礼を言われた!ありがとう、と感謝の言葉を!これを笑わずにして一体どうしろと言うのか‼嫌われるのが当たり前、憎まれるのが当たり前だったこの自分が!親愛なんて向けられたことのない、その柔らかな感情なんて、似合うはずがないのに!けれど、この胸に宿る感情は、いったい何なのか。考えなくたってわかる。これは、そう、
『アンタ、相当お人好しですよね』
『……なんかわからないが、褒められてないってことだけは分かったぞ。喧嘩なら買うが?』
『いやいや、純粋に褒めてますって。本当、お人好しだ』
この『必要悪』を必要とするなんて、と言う言葉を寸でのところで呑みこむ。この言葉を口にすれば、更に何か恥ずかしいことを言われそうだからだ。先ほどのやり取りでわかる。
まあ、とりあえず、これだけは言っておこう。
『ここまでくれば一蓮托生だ。これからもよろしくな、マスター?』
そう言って手を差し出せば、彼女はきょとんとした顔の後、くすりと笑った。
『こちらこそよろしく頼む。アンリマユ』
重ねた手は血だらけで、けれど力強かった。
(あの頃は本当に素直だったのになぁ)
回想から戻ってきたアンリマユは、相も変わらず書類片手にうーうーと唸っている影緋を見て、心の中でそう呟く。
出会った当初はそう、彼女はそんなにスレていなかった。むしろ誰とでも仲良くなろうとする純粋な人間だった。けれどいつしか『主人公』と『ヒロイン』に振り回され続け、スレるしか道がなくなってしまった。まあ、その過程を見てきたアンリマユは時には愉悦し、時には爆笑し、シメられていたわけだが。けれど、それを嬉々として受け止めていたことから、アンリマユの心情が伺える。……シメていた影緋の苦労を考えると涙が出そうになるが。
でも、そんな彼女だが性根は変わっていない。どこまでもお人好しで、自分を必要としてくれるところは。
(まあ、だからこそこうやって見守ってやろうと思ってるわけで)
誰に言うわけでもなく、心の中でそう呟き、クッキーを頬張れば、甘ったるい味が口の中を支配し、喉を伝っていく。クッキーをつまんだアンリマユに気づく暇などないのか、書類から目を背けることのない影緋に、これはまだまだ長くなりそうだと察する。こうなったら、と立ち上がり、扉の方へと向かう。もちろん、声をかけることも忘れずに。
「マスター、オレは食堂行ってコーヒーでも貰ってきますけど、どうします?」
「砂糖たっぷりの紅茶を頼む」
「まだ甘いの摂取するのかよ」
「この量じゃ全然足りないんだよ」
「……血糖値、ヤバいことになりそう」
「……うっさい、ほっとけ」
少しの硬直の後、答えられた言葉に内心気にしてたんだな、と察する。仕方ない、何か工夫でもしてやるか、と溜め息を吐き、マイルームから出ていくアンリマユ。
相も変わらず甘ったるい味が口の中を支配していた
暴食な脇役とその相棒の話
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あとこれで話のストックがなくなったので、これからは不定期更新となります。ご了承ください。
あと私事ですが、エゴサしてたら影緋さんのことを「頭オーロラのメン/ヘラオリ主」って言ってる人がいて爆笑しました。解釈違いならそっ閉じをお願いしたんですけどね…
このシリーズに文句がある人は、是非ぐだage、マシュageの小説書いてくださいほら!!解釈の殴り合いしましょう!!まずは同じ土俵に立ってくださいね!!戯言はそこから聞きますから!!