愛しき狐に純白の彼岸花を   作:千年帝國ノ禍鴉

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【手向け(たむけ)】
 ・別れを惜しんで人に贈るしるし。餞別。はなむけ。




序章:歪な運命に手向けの花を


【日本国〈IS学園〉】

 

 ___警報の音が鳴り響いている。

 

 ここは日本国に設置されたIS操縦者育成用の特殊国立高等学校__通称【IS学園】。いや、今は学園だったもの(・・・・・)だったな。

 世界中からやってきた少女たちがその門をたたき、ISの技術を学び、伸ばすために在学する麗かな女子たちが百合百合としていた学び舎や学生寮、ISを身に纏い切磋琢磨して己を鍛えるアリーナや総合運動場、校舎の屋上から見える蒼海の地平線の美しさ、そんな我が母校は、()の眼下でその影もないほど徹底的に破壊され、島の至る所で劫火によって轟々と燃え盛っている。

 

 本来、整備のための機械や訓練するための施設があった場所には鋭利なもので切り裂かれた鉄壁、天井から垂れ下がる赤黒い繭のような塊、断面にムラが見られない程綺麗に切断された防壁等々、破壊痕しか存在しない。

 

 ___悲鳴の()が鳴り響いている。

 

「クハハッ」

 

 まさに地獄のような光景を目にしているのも関わらず、()は嗤ってるし、蜘蛛を模した単眼笘錀8個の仮面(マスカレード)の内側の二つの目は三日月に歪んでいるし、頭の中には狂喜乱舞している自分がいる。

 普通の人生が歩めない歪で狂った常識が生まれる世界に女の身体に生まれ変わって(・・・・・・・・・・・・)、それでも平穏で楽に、楽しく生きていこうと思っていた()の人生の(ことごと)くを踏み弄った存在(IS)が死んでいく様は絶頂ものだ。まぁ、数分前に濡れに濡れて着替えたばかりだが。

 

 能力(・・)により作り出した細い足場の上でヤンキー座りをして、球体(・・)を弄りながら燃え盛る母校を眺める。

 国が建てた特殊学院を壊せば自衛隊や雌豚共お抱えのIS部隊がこの惨劇の元凶である()を捕縛、あるいは殺害するために動くだろう。しかしここで、政府と雌豚共(女権団体)が結んだとある条約が邪魔をする。それはお互いに不干渉(・・・)となる条約だ。

 

 政府としては「女による女のための女だけの花園創ってやるから関わるな。」と。

 女権(雌豚共)としては「そっちにはもう口出ししないからこっちにも関わるな。」と。

 

 文面だけなら子供の喧嘩だ。この不干渉条約のおかげで在学中には本土からの情報は古いのしか入ってこなくてそこそこ不憫な思いをしたな。

 とまぁ、そのおかげで学園側で何かあっても政府は無視を決め込むし、自衛隊の派遣なんてものは行われない。だが、国民を守るための組織ゆえ、隊員は上層部に出撃させろだとか言ってると思うが、その上層部がシカト一択なんだから()としてはありがたい話だ。流石に世界トップクラスの戦闘力を誇る組織と戦いたくはないし、ISと無関係の人間を殺すのは御免だね。

 

 自衛隊が来ないのなら女権お抱えのIS部隊が飛んでくるかと思うだろぉがぁ、ところがぎっちょん来ないんだよなぁこれが。だって、日本のIS部隊壊滅させましたし。

 IS学園は強固な防御力を誇り、完全に破壊するには必ず長期戦になる。時間がかかればかかるほど外部からの増援が多くなり、行動がしづらくなる。

 ならば、高級レストランの前菜とメインディッシュのよう分けて破壊しようと考え付いた。前菜(IS部隊)喰らい(壊し)増援が叶わない(腹がほんの少し満たされた)状態でメインディッシュ(IS学園)喰らい尽くす(破壊し尽くす)。IS部隊が所属する施設は、政府の嫌がらせで連携が上手くいかない様にそれぞれの間隔が長い。それが幸いし楽に壊せた。

 

 最終目標である【IS学園の徹底破壊】は無事に終わった。ゆえに()がこの忌々しい場所に居座る必要はない。しかし、最後の仕上げが残っている。まだ残り十機のISが今尚稼働し、この綺麗な夜空を舞っている(穢している)。その十つを破壊した先にあるのが、()の人生の平穏だ。

 

 十のIS____「白式」を筆頭とする原作主人公組の機体だ。

 主人公____織斑一夏(オリムラ・イチカ)が搭乗する「白式(びゃくしき)王理(ホワイト・テイル)」。

 ヒロインⅡ__セシリア・オルコットが搭乗する「ロイヤル・ティアーズ(高貴なる雫)」。

 ヒロインⅢ__凰鈴音(ファン・リンイン)が搭乗する「龍虎(ローンフー)」。

 ヒロインⅣ__シャルロット・デュノアが搭乗する「ラファール・リィンカーネーション(疾風の輪廻)」。

 ヒロインⅤ__ラウラ・ボーデヴィッヒが搭乗する「シュヴァルツェア・カタストローフェ(黒い災害)」。

 ヒロインⅥ__更識簪(サラシキ・カンザシ)が搭乗する「打鉄弐式(うちがねにしき)真打(しんうち)」。

 ヒロインⅦ__更識楯無(サラシキ・タテナシ)こと更識刀奈(サラシキ・カタナ)が搭乗する「ミステリアス・レイディ(霧纏の淑女)」。

 IS学園教師__山田真耶(ヤマダ・マヤ)が搭乗する「ラファール・リヴァイヴ・スペシャル(格別なる疾風の再誕)

                              ショウ・マスト・ゴー・オン(幕は上げられた)

 主人公の姉__織斑千冬(オリムラ・チフユ)が搭乗する「暮桜(くれざくら)」。

 異 端 者(イレギュラー)___布仏 本音(のほほんさん)が搭乗する「天狐の魂(てんこのたましい)」。

 

 約一名を除いた【IS〈インフィニット・ストラトス〉】のメインキャラクター+巨乳童顔教師(実はすごい人)世界最強(チート)のんびり屋(結構すごかった子)が残っている。IS学園が【メインディッシュ】なら彼らは【デザート】だ。

 

「おぉおぉ、速い速い…♪」

 

 アイテムポーチから【地図】を取り出し、彼らの居場所を確認する。

 白・青・紫・橙・黒・灰・空・緑・桜・黄の十色のマークが地図上を動き、IS学園のある【0番】エリアに徐々に近づいている。

 

「…やっぱり来るよなぁ、お前らも」

 

 しかしよく目を凝らすと、二色のマークが桜色のマークに重なっている。色は【赤】と【銀】。

 子兎(欠陥品)親兎(病人)にピッタリとくっ付いている。自分を拾ってくれた女が、己を認めてくれた女が、自分を見てくれるご主人様がそんなに好きか。あれはもはや忠誠ではなく心酔、妄信、狂信の域だ。

 不法投棄されたのなら、ちゃんと回収せねばならんな。最終的には解体と焼却だ。解体したらもしかしたら……いや、確実に歓喜の涙(悲痛の涙)を流しながら食ってくれる(抱きしめてくれる)ぞ? よかったなぁ、だぁ~い好きな母親の一部に成れるぞぁ。

 まだまだ幼いあの子兎のことだ、これを提案したら真っ先に食いつくかもしれないなぁ。 歓喜(嫌悪)で顔が歪むのが楽しみだ。

 所詮は人類の為に、人間が使う為に生まれ(造られ)、人間様を喜ばす(悦ばす)為に生まれた人形(使い捨て)なのだ。いつかは捨てられる。それが現在(イマ)になっただけだ。

 もう十分に生きただろう。十分に尽くしただろう。十分に楽しめただろう。十分に苦しめただろう。十分に愛されただろう。十分に汚れただろう。故に廃棄処分だ。

 

 __それに訂正だ。残存ISは十機ではなく、十一機だ。

 

「あの二人はどう料理してやろうか…」

 

 一人はISというガラクタ(鉄屑)を作った兎。もう一人は、災厄に加担し世界の惨状を見て見ぬ振りをし逃げた戦乙女。

 (IS)破った(壊した)ら、無難にハンバーグ(リンチ)にするか?それとも(釜茹)か?ステーキ(焼き土下座)もいいな…。

 

 いや、やはり肉なのだからこんがり肉(焼却)に限る。そうだ一思いに丸焼きにしよう、そうしよう。あの大きさだ、特注肉焼き機を用意しておかなければな。

 

 さて、そろそろこちらも警戒態勢に入っておこう。アイテムBOXから己の身長を優に超えるとある大剣を取り出す。闇色が輝く そして(地面)を見て瓦礫の中のソレを確認し、()を強く絡ませておく。超重無骨な鉄塊は、時に命を支え、時に命を潰す 同時にその他の瓦礫にも軽く通しておく。

 今は瓦礫だが、もともとはIS学園に使われていた材料。素材としては一級品だ。壊れたISの装甲もふんだんに使おう。惜しみなく使おう。主人公組相手に手加減をするのは【負けフラグ】だ。

 それに世界最強(人工チート)天然チート(リアルチート)がいるんだ。舐めて掛かったら下手すればこっちが死ぬ。

 

 再び地図を見る。黄色のマークが一番近い。これならあと数分もしないうちに接敵するだろう。

 黄色は()から見た彼女のイメージカラーだ。いつもはのんびりしていて、たまに予想の斜め上の行動をとり、誰よりも仲間想いで、だけどISの整備を任せたら誰よりも優秀で、IS操作も難なくこなし、場をどこよりも明るくして皆から愛されるあの子。

 

 

 入学初日に初めて声をかけてくれたあの子。学園を去る時も最後に話したのもあの子。(菫コ)が行方を眩ませたとき真っ先に連絡をくれたあの子。再会したときに(菫コ)を叱ったあの子。

 

 

 あんなに怒った顔を見たのは初めてだな。基本のんびりしてるから新鮮だったし、「そんな顔できるんだ」と口に出る程驚いた。追加で叱られてポカポカされた。

 

 写真でも撮ればよかったと今更後悔しながらスマホを取り出す。

 電源を付け、真っ先に目に入るのは待ち受けにしたあの子とのツーショット写真だ。穢れを知らないような純白で太陽(お日様)のような笑顔。でも、今の彼女はこんな笑顔を出来ない。織斑一夏(王子様)にも。セシリア・オルコット(いじり相手)にも。凰鈴音(おかん)にも。シャルロット・デュノア(騎士様)にも。ラウラ・ボーデヴィッヒ(妹のようにかわいがってる娘)にも。更識簪(大親友のご主人様)にも。更識刀奈(お嬢様)にも。布仏虚(大大大好きな家族)でさえも。それこそ(菫コ)にすらも。

 

 

 

 

 

 

真っ白なカンヴァス(純粋無垢な少女の体)赤黒い絵具(悪意)でたっぷりと濡らした手や指(刃物)でなぞってなぞられて

舐めて舐められて薄く描いて(裂いて)深く描かれて(裂かれて)優しく擦って(撫でて)激しく擦られて(撫でられて)強く置いて(叩いて)弱く置かれて(叩かれて) 深く押し付けて(絞めて)浅く押し付けられて(絞められて)

 

 

 

 

 

 

お互いの絵具を直接流し合い込んで、お互いの絵具を交換して、お互いの白紙を取り換えて

 

 

 

 

 

 

私が出来ないようにした(菫コが彼女を壊した)

 

 

 

 

 

嗚呼…

 

 早く来ないものか。

 

 風を切る音が遠くに聞こえる。

 

 

 来い

 

 

嗚呼

 

 一番に再会するのは貴女がいい。

 

 風を切る音が聞こえる。

 

 

 来い

 

 

嗚呼…!

 

 壊してもなお、変わらない声で菫コ()の名前を呼んでほしい。

 

 風を切る音が近くに聞こえる。

 

 

 来イッッッ!!!

 

 

嗚呼

 

 その細い(傷だらけの)腕を絡ませて、小さな(穢れた)体で抱き留めて。

 

 風を切る音は聞こえない(が止った)

 

 

「___しののん(・・・・)

 

 

来タあツツツ!!!

 

 背後から声がかかった。幼さを残す声色だ。彼女だ。やっぱり呼んでくれる……どんなことをしても、彼女を穢しても、彼女を堕としても、純白の笑顔を奪っても……菫レの名を呼んでくれる。いつものように、以前の様に……。

 

あ…

 

 ゆっくりと振り返ると仮面越しに彼女と眼が合う。いつみてもきれいな瞳だ。しかし、本来は左右対称で黄土色のはずの瞳は左眼(・・)が紫がかった黒い瞳というオッドアイになっていた。取り出して捨てることだってできたはずなのに、ずっと残していてくれていた。

 歪な組み合わせの異なる眼。しかしその違和感すらも打ち消す程、彼女は美しく可憐で魅力的な存在だ。そんな存在を誰も救えない。誰も引き上げることはできない。

 

 菫レは彼女に目を合わせたまま立ち上がり、蜘蛛の仮面を優しく外す。

 左右非対称色(・・・・・・)の両目が彼女の両目を射抜く。黄土色の左眼(・・)が彼女の黄土色の右眼を、彼女の黒色の左眼が菫レの黒色の右眼をそれぞれの視線が交わう。

 白くて、模様があって、真っ赤なインクが詰まった綺麗な水晶玉を、二人しかいない閉鎖空間で見つめ合って、取り出して、眺めて、交換して、嵌めて、また見つめ合って、影を重ねて

 

 ___今は思い出に浸る時ではないな。

 菫レと彼女の今の関係は敵同士だ。壊し、殺し、犯し、喰らい、貪る菫レと、直し、治し、護り、創り、叶える彼女

 だから戦わなければならない。正義と悪は表裏一体。しかし対立している。

 

 戦うには必ず理由がある。お互いに戦う理由は既に分かっている。

 菫レは彼女を堕とすため。彼女は菫レを引き上げるため。理由のない戦争などは無い。理由があって争いがある。どんな理由であろうと。

 

 

そんじゃ、さっさと堕とすとしよう

 

 

 

 

 


 

人体的に問題あるくない?という野暮なことは聞くな。ご都合主義ってことで大目に見て、お目目瞑ってやで。




元 ネ タ__【砂中の骸に手向けの花を】
作 品 __モンスターハンター4G
受付場所__村クエ
取 扱 __G級
危 険 度__☆10
内 容 __ネルスキュラ亜種一匹の狩猟
依 頼 主__筆頭ランサー
【依頼内容】
旧砂漠にて、捕らえた獲物の
骸を被ったネルスキュラ亜種が
発見された。
骸蜘蛛は砂中に潜み、得物に襲い
掛かる恐ろしいモンスターだ。
被害が甚大なものとなる前に
どうか狩猟を頼んだよ。

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