異郷を渡る人食いの狂女   作:ポジョンボ

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END 下水道の怪人達

 

 

 

 

 

「………ッッ」

 

 

ジクジクと突き刺すような痛みで肉断ちのマリダは目を覚ます、次第に鮮明になっていく思考と共に気付く。

 

奇妙な浮遊感と体に纏わりつく不快な感触。

 

微かに開いた目が少しずつ眼の前の景色を映し出す。

 

 

「………!」

 

 

薄暗い石壁に張り巡らされた白い粘糸の網、妙な浮遊感とはそれらが自分の体に巻き付き、釣り上げるように宙に浮かせているからだった。

 

 

気づけこの場所にいて大蜘蛛の群れから襲撃を受けた、狭い通路、全体の知れぬ未知の場所、数を成して迫りくる敵影の前には大斧もそれを振るう剛力も無力。

 

大蜘蛛の奇襲を受けて死んだはずだった、最後に触れた篝火で呪いの進行と共に復活するはずがこの状況。

 

 

「………」

 

 

ようやくマリダは理解する、神経を犯す毒の類かゆえは知らぬがとにかく自分はあの時死ななかった。

 

大蜘蛛達の保存食として巣に囚われるという最悪の形でだが、今までにない予想外の危機にその思考を回しだす。

 

元いた世界には生かして連れ帰る等という手間をかける敵はいなかった、襲撃にしろ防衛にしろまずは相手の息の根を止めるというのがあの世界の常識だった。

 

 

「………グッ」

 

 

どちらにせよ肉体は未だ傷つき毒で衰弱している、束ねて巻き付いた蜘蛛糸を消えかかった余力で解くのは不可能だ。

 

 

「……」

 

 

やがてマリダはいずれ来る惨憺たる末路を覚悟した、蜘蛛共が群がり我先にと己が体を貪り食う死の食宴。

 

それでもマリダが死ぬことはない、肉体が一度滅びるとも何度でも篝火より蘇る、それが不死人が呪人たる所以。

 

失うソウルと進む呪いの進行は他の何物かの死体から奪い補うことにしよう、これと似た様な経験は初めてじゃない。

 

 

ただいずれ来るその時を待つ、やがてその耳に破滅を運ぶ足音が遂に届く。薄暗いこの場所に続く通路の奥から死がやって来る。

 

 

「…………?」

 

 

しかし耳に届いたその足音は、カサカサと俊敏に床を這う蜘蛛たちのソレではない。ヒタヒタという軽快な足音、人間の足音、恐らく裸足。

 

目を向ければ通路の奥からか細くも此方に向けられる淡い何かの光が見える。大した光量ではなくその光が暗がりを照らし出すことはない。

 

少し待てば光をもたらした者がここまで辿り着く。

 

見える範囲の暗がりに現れた死の姿はあの大蜘蛛では無かった、しかしマリダから見てそれが救いだとも思えなかった。

 

 

「指輪ガ示スノハココカ」

 

 

その人物、自分と同じ不死人だということは一目で解る、不死人に備わった本能とも言うべき能力だ。

 

ただし不死人にも二種類、話の通じる者と通じぬ者。

 

 

現れたのは後者だろう、その女の姿、完全に裸では無いというだけのボロ布で隠された恥部、頭部に被る除き穴のついた革袋、右腕に持つ人間一人容易く解体できるだろう大包丁。

 

かの世界でありふれた、他者を害し奪った力で永らえんとする略奪の徒であろう。

 

もっともマリダもまたそれに属する存在で、間違っても他人を非難できるような人物では無い。

 

 

「……同類ダナ」

 

 

ズタ袋の不死人がマリダに気付く、宙に磔となったマリダの事を見上げていた。

 

 

「……ッ」

 

 

マリダは目を閉じる、己もまた幾度となくその手を血で染めてきたからこそこの後の展開だって予想がつく。

 

何てことはない、己に死を受け渡す担い手が変わっただけのこと、己を餌食とするはずだった大蜘蛛はこの女の餌食となったのだろう。

 

 

閉じていく視界に右腕の大包丁を振り上げた女の姿が映る、次の瞬間には鮮血が舞い、肉体がソウルとなって崩れ落ちるのだろう。

 

 

しかし想像通りにはならなかった。

 

 

風切り音が鳴り一呼吸の間を置いて吊し上げられる妙な浮遊感が消失する。

 

その代わりに体は宙へと投げ出され、急速に地面へと吸い込まれるように引き寄せられる、衰弱した体では受け身も取れず硬い石床に打ち付けられた。

 

 

「ガッ……ウゥ…」

 

 

肺に残った空気とうめき声が口から吐き出され、霞む視界で起きた事態を確認する。

 

 

 

ズタ袋の女は自分を殺さなかった、それどころか拘束する蜘蛛糸を断ち切り救出したのだ。間違えようもなく、己と同じ略奪者に位置すると思われたその女が。

 

 

 

「コノ先ニ用ガアル、オ前ハ好キニシロ」

 

 

それだけ言い残してズタ袋の女は床に倒れるマリダの横を通り過ぎていった、マリダが吊るされていた場所の後方、壁だと思われたそれは蜘蛛糸が幾重にも張り巡らされてできたてものだった。

 

大包丁を振るい文字通り切り開くズタ袋の女、すると隠された通路が現れ、女の指輪から青い一筋の光がその通路へと伸びる。

 

 

マリダは女が通路の暗がりに消えるまでその背を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下水道の最奥に到達しつつあるミルドレット、既に通路を2つに両断する溝は無い。壁にかけられたトーチも所々抜け落ちて暗さはより増している。

 

 

「……マズハ此方カラダ」

 

 

ミルドレットは弱りきったマリダを殺さなかった、だが助けたのに深い理由は無い。 

 

あの世界に比べて遥かに危険の少ないこの世界、死と魂を磨り減らす悲劇が日常だった世界とは違う。

 

常に余裕が無かった頃と比べてミルドレットには人間性たる人のソウルが満ちていた。

 

もとより不死人とは不安定にして矛盾したような在り方を持つ者が多い。

 

息を吸うように人を殺め、時にその手で人を助ける。

 

 

ミルドレットも例に漏れず不死人のそのような気質を持ち合わせていた、マリダを助けたのもその一環だった。

 

 

 

「蜘蛛ニ魅入ラレタ男トヤラヲ見ニ行コウ」

 

 

 

ミルドレットの目の前の通路は蜘蛛糸でできた壁がまた塞いでいる、隙間から見えるその先にもまた蜘蛛糸の壁が、恐らくは更にその先にも。

 

それらを越えた先に件の男がいるとミルドレットは直感する、よく見ればこの通路は他と違い人の手でかつて作られたのではなく、洞窟を掘り進めるように新たに何者かの手で空間に作られた通路だ。

 

石壁が砕かれゴツゴツした岩肌で通路が形作られている、蜘蛛糸の障壁を切り裂きながら進む。

 

 

そして遂に予想していた光景が、白い濃霧が壁のように塞ぐ眼の前の景色が現れた。

 

 

濃霧の先にミルドレットが踏み入る、その先はかなり広い空洞だった。これも最初からあったものでは無い、獣が地面を掘って巣穴とするように、何者かの手が加わった空洞だ。

 

 

床や壁にはやはり蜘蛛糸がびっしりと張り付き白く染める、ミルドレットが地下にしては空間の高さがかなりのものだと気付き天井を見上げたその時、ソレが姿を現す。

 

 

「来タカ」

 

 

天井にかけて壁から壁へ架け橋のように張り巡らされた蜘蛛糸の通路。そこにしがみついていた巨大な影が、侵入者の気配を感知して飛び降りる。

 

 

 

落下、そして着地。轟音と土煙を巻き起こし下水道内を揺らす、次第に土煙がおさまりその姿が明らかとなる。

 

 

灰色と緑が混ざる濁った色彩、腐った野菜のような悪臭を振り撒き、不快な音響の鳴き声を上げる。

 

 

それは一際大きな巨躯を持つ大蜘蛛、八本の脚は歪み曲がり不均等だ、膨れ上がった胴体には針金のような体毛が生え、岩のような頭部には赤く発光する八つの目、開いた口から飛び出す牙はノコギリを思わせる細かで鋭い突起がビッシリと並ぶ。

 

 

 

「成ル程、不死ノ探求トハソウイウコトカ」

 

 

 

殺意の唸りを上げる大蜘蛛の毛に包まれた胴体、その場所から突き出した何か。

 

人間の上半身だ、服を纏わず、痩せ細り生気の一切が抜け落ちた生命の残骸の如き亡者の上半身が大蜘蛛の胴から突き出した様に融合していた。

 

 

「化物ト融合スレバソノ生命力ハ己ノ物ニモナル」

 

「街ノ人間ヲ襲ッテイタノハ化物ノ餌ニスルタメカ」

 

 

天井をよく見れば蜘蛛糸の通路から釣り下がる糸の巻き付いた何かの塊。それは大蜘蛛に捕まり連れ去られた城下町下層の住民達の成れの果てだ。

 

 

己を生き長らえさせる大蜘蛛の餌として下水道に近づく住民を攫っていたのだ。

 

 

「最モ本人ノ心ト魂ハ死ンデイル」

 

 

「ソレニシテモ…」

 

 

似ている、ミルドレットはそう心の中で呟く。

 

あの世界で戦った数多の怪物、その中でも特に強大な力を持つ怪物、己を一度殺してみせた強き同族との共闘の末にそれを打ち倒した記憶。

 

 

イザリスの混沌の魔女が一人、名をクラーグ。

 

 

「マァ、イイ 始メルカ」

 

 

痺れを切らした様に大蜘蛛の殺意が爆発、不揃いな八本の脚をぎこち無く、しかし巨躯に見合わぬ速さで突進する。

 

 

牙を剥き、爪を振り上げで飛び掛かる。

 

床を抉り取り着地するもその場所にミルドレットはもう退避していていない。

 

降り立った大蜘蛛の背後に回ったミルドレットが肉断ち包丁で斬りかかる、吹き上がる体液を合図に戦闘が始まった。

 

 

大蜘蛛が爪を振り下ろす、横へのローリングで躱す。

 

そのまま側面から斬りつければ傷と共にまた血が舞う。

 

一際太く長い前足を横に薙ぎ払う、しゃがんで回避し反撃がまた深く刻まれて緑の血溜まりを作る。

 

 

連続したローリングで背後へと回り、反応の遅れた大蜘蛛の歪な脚をいくつか攻撃する。

 

酷い裂傷が刻まれ、ある脚は折れ曲がり、中には切断されて消失する脚もあった。

 

大蜘蛛が苦悶の叫びを上げる、それに応じて痛覚も共有しているのか胴に繋がった亡者もうめき声を漏らす。

 

 

「……ムッ」

 

 

 

更に追撃しようと駆け寄るミルドレットに苦し紛れに大蜘蛛の振り回した脚が命中する。

 

横薙ぎに払われるその脚と自分の間に素早く肉断ち包丁を盾として滑り込ませガードする。後ろに縦回転して飛び退き衝撃を逃がす。

 

 

「ヤハリ大シタ敵デハナイナ」

 

 

ミルドレットは戦いの中で敵の戦力を分析し結論を下す。

 

 

姿形はかつての強敵と似通っているがその戦闘力には大きな隔たりが存在している。

 

 

その巨躯からは活火山の如き炎熱が吹き出すことは無い。

 

その爪の鋭さも変異した混沌の魔女には遠く及ばず

 

口からすべてを溶かす溶岩弾が吐き出されもしない。

 

俊敏に飛び回ることも、肉体を鎧ごと切り裂き燃やし尽くす混沌の魔剣も持ち合わせない。

 

 

似ているのは見た目だけ、巨躯による破壊力と生命力を持って暴れまわるしかない、あの世界では有り触れた怪物だ。

 

 

大蜘蛛の力任せの突進を横に飛びいて躱す、走り寄って高く振り上げた肉断ち包丁の一撃を与えればその裂傷は筋肉を断ち切り骨まで達する。

 

 

大蜘蛛が今度は怒りの混じった甲高い叫びを上げる、生命の危機を感じた者の焦燥と恐怖を搔き消さんとする雄叫びだ。

 

 

「来ルカ……!?」

 

 

俯くように頭を下げ、反動を付けて噛みつきに来ると思われた大蜘蛛だが、その攻撃は予想外のものだった。

 

 

目一杯に開かれたその邪悪な口内が白い塊が吐き出される、それは空中で編みが広がるように飛散。

 

ミルドレット目掛けて吐きかけられたのは大蜘蛛の奥の手たる蜘蛛糸のブレスだった。

 

 

「ナニッ…!」

 

 

突如視界を広範囲に覆って広がる蜘蛛糸の網、咄嗟に避けようとするも避けられない、速度も質量もあるそれに吹き飛ばされ蜘蛛糸が瞬時に肉体に絡みつき、その粘性で地面とミルドレットを繋いで拘束する。

 

 

「……チッ」

 

 

藻掻けば更に巻き付くように蜘蛛糸は出来ている、起き上がることは不可能だ。

 

 

辺りから大蜘蛛の怒気と殺気が消える、もはや戦いは決着したと言わんばかりに身構えを解いた。

 

そして口腔から多量の唾液を垂らしながらゆっくりとミルドレットににじり寄る。もうミルドレットを敵だとは思っていない、その八つの目には己を永らえさせる為の贄としか映らない。

 

 

 

「…………」

 

 

対して一言も発することなくただズタ袋の覗き穴の奥からその双眼で迫る大蜘蛛を見やるミルドレット。

 

それは諦観などではなく、一筋の勝機とも言える光を見据えていた、咄嗟に右腕を掲げた事で蜘蛛糸が絡みついたのは右半身、左腕はまだ動かせる。

 

 

動かせないと見せかけるためにその左腕は不動のままその時を待つ、大蜘蛛が贄を食らわんとその牙を突き立てる時、或いは更に糸を吐き出して完全に拘束せんとする時。

 

ソウルに仕舞った竜尾の槍を取り出し近づけられた顔目掛けて左腕で突きだす、狙いは露出した粘膜でありそのまま絶命させしめる箇所に繋がる眼球、もしくは口内。

 

 

あともう3歩程の位置まで大蜘蛛が接近した、その時ミルドレットには見えて、大蜘蛛には見えない事態が起きていた。

 

 

「ム……」

 

 

そのことを認識したミルドレットは左腕に込めていた意識を解いた、つまり反撃の構えを中断したのだ。

 

そしてそれはやはり諦めでは無い、もう反撃の必要は無いと理解したからだった。

 

 

 

大蜘蛛のアギトが開き、腐臭のする粘液に濡れた双牙が突き立てられんとしたその時、

 

 

大蜘蛛の地を震わせる突然の大絶叫と共に噴水のように体液が吹き出して飛び散った。

 

 

大蜘蛛の胴体に恐ろしいほど深い裂傷が刻まれた、それはもはや両断されたと言ってもいい。

 

強い力が加わり、その胴体はまるで腐りかけの果実が地面に落ちて割れた様に似ていた。

 

 

 

「馴レ合イモ役ニ立ツモノナノダナ」

 

 

ミルドレットには見えていた、大蜘蛛の背後から駆け寄る人影が、グレートアクスを振り上げで奇襲を仕掛けたマリダの姿が。

 

 

一度に大量の血液を失った大蜘蛛は昏倒に近い状態にある、死に体で振り向こうとするもただでさえ不揃いな脚は震えてよろめきまるで機能を果たさない。

 

 

更に二度、三度とグレートアクスが振り下ろされる、肉断ち包丁よりも重く一撃の破壊力に優れる刃付きの鉄塊が大蜘蛛の肉を潰し骨を割り臓器を絡めて引きずり出す。

 

もはや勝敗は決していた、そこからは処刑とも呼べぬ凄惨な解体作業だった。

 

 

 

完全に無防備となった背後からの渾身の一撃が全てを決した、最後に物言わぬ残骸となった大蜘蛛の上でジタバタと藻掻く亡者の頭蓋が割り砕かれる。

 

 

空洞広場の入り口を覆っていた白い濃霧が静かに空気に溶け込んで消えていった。

 

 

 

 

 

やがて負傷から回復したのであろう、駆け付けたマリダがミルドレットの元へやって来る。

 

 

「………」

 

 

先程はミルドレットが拘束されたマリダを見上げていたが、今はマリダが拘束されたミルドレットを見下ろしている。

 

出で立ちからその気質まで二人は何処か似かよっていた。

 

 

マリダがソウルから取り出した物を右手に持つ、それは半ばから切っ先の折れた直剣、しかしその刃の部分にはまだ充分に役目を果たせる鋭さが残っていた。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

両者、暫しの沈黙の後、

 

 

マリダがその折れた直剣を持ってミルドレットを地面に縛る蜘蛛糸の拘束を切り裂いて解除した。

 

 

「………好キニ…シ、タ…」

 

 

「…ソウカ、助カッタ」

 

 

起き上がるミルドレットに手こそ貸さなかったが、この異郷の地にて出会った初めての同族として、両者の歩む道が交わった。不死人特有の流血を呼ぶ敵意や懐疑の念は両者の間にはもう無かった。

 

ただその場所に二人共佇んでいた。

 

そして不意に周囲が照らされる、橙色の光は暖かな熱を連想させる、それは炎による光源にほかならなかった。

 

 

 

「……!」

 

「アレハ…ナゼココニ」

 

 

その光源を辿ればそこにあったのは骨灰の山の上で燃え盛る炎の篝火だった、先程まで無かった篝火が突然この空洞に現れた。

 

勿論、二人共見覚えがあった。示し合わせるまでもなく二人共その篝火に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後、王都城下町─

 

 

ここはこの地を統治する領王が住まう王城とその配下たる貴族たちの管理する城壁で囲まれた王都の城下町。

 

その場所には多くの街人が暮らし、活気に溢れた喧騒で満ちている、中でも民衆達は興味を掻き立てる噂話の類をよく好んだ。

 

 

曰く、罪人の終着地と呼ばれる監獄城の冷徹で残忍な看守達を語った噂話。

 

 

曰く、呪いの叫びで暴れる魔女を前にして見事生還したという隻腕の兵士を語った噂話。

 

 

曰く、霞峠なる場所で旅人を襲い食らう恐ろしい怪物を語った噂話。

 

 

曰く、滅びたと思われていた山奥の村が王都との交流を再開した事、そしてその村で祀られている不思議な女神を語った噂話。

 

 

曰く、街道をそれて森を抜けた先に死者たちが支配する廃村があり、踏み入ればそこにいる死者の仲間にされるという死者の村を語った噂話。

 

 

曰く、前々から問題視されていた下層民の謎の失踪事件が人知れず解決した事、事件の下手人が巨大な蜘蛛だったという噂話。

 

 

 

 

そして最も今街人の間で囁かれる人気の噂話、すぐ身近に存在し、手の届きうる場所にあるという要素が街人達の興味をわかせた。

 

 

 

曰く、

 

 

 

 

王都のもう誰も立ち入らない古い下水道には、嘘か真か巨大な戦斧と断頭刃を手に持った人ならざる不死身の怪人が住まうという。

 

 

 

本当かどうかは街人の誰も知らないその噂話。

 

 

ただ一つ、領王の信頼を受ける宮廷魔術師が言うには噂話は所詮は噂。ただの誰かが流した妄想に過ぎないと。

 

 

それどころか下水道は汚れていてそこから病毒が広まる危険があるので興味本意で近づいてはならぬと言ったのだ。

 

 

街人の前で宮廷魔術師が熱心にそう伝えていた。

 

 

だから絶対にあの下水道に近づいてはならないのだと、間違っても怪人の存在など確かめに行ってはならぬと。

 

 

 

どれもこれも、嘘か真か、誰も知らない噂話だ。

 

 

 

 

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