シンフォギア世界に転生したヤウージャだけど質問ある?   作:00G

3 / 4
血の狂乱

『さっさと降りてこいガキ共が!』

 

 男の怒号が響き、トラックの荷台から次々と手を鎖で繋がれた子供たちが降りてくる。

 その中の一人である銀髪の少女『雪音クリス』は、自身の理解できない言葉を話す大人たちに恐怖心を抱いていた。

 

「(パパ、ママ……助けて……怖いよ……!)」

 

 今この場に居ない両親に助けを求めるクリス。

 直前まではっきり覚えていることは、二人が爆発に巻き込まれ複数の男たちにトラックに連れ込まれたこと。

 子供心ながら二人の安否までは解らないが両親が居ないことと怒鳴り声が聞こえるせいで堪らなく回りの大人たちが恐ろしかった。

 

 ゾロゾロとクリスを含めた子どもたちが鎖に繋がれたまま先頭でその鎖を持つ男の一人に引っ張られ広場のような場所を歩かされる。

 回りでは銃の整備行っている大人や複数で酒を飲んでいる大人と大勢の大人がいた。

 そのほとんどが鎖に繋がれるクリスたちを見つけるとニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべている。

 その中から一人の男がクリスたちのところまで歩いてきた。

 どうやらこの集団のリーダーのようだった。

 

『今回は多いな』

『どっかの馬鹿が人集めしてくれたお陰ですぜ!』

『話にあった音楽家か。こいつらもいつも通り振り分けておけ。 女はなるべく傷つけるな。価値が下がる』

『了解!』

 

 リーダーが指示を出すと、子どもたちの列の先頭から鎖を外され性別でそれぞれ別の方向に連れて行かれる。

 男は銃を持った集団へ。

 女はさらに別の車へ。

 年齢は関係なしに、性別だけで振り分けられていく。

 まるで商品のような扱いであった。

 

 一人、また一人と連れていかれそしてクリスの番になったという時に、鎖を外していた男が止まった。

 クリスは恐る恐る自分の前で動きを止めた男を見上げる。

 ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべおり、その表情にクリスは寒気が走った。

 

『ボス、一人くらいよくねえですか!?』

 

 突如、目の前の男がリーダーの男に向かって叫んだ。

 内容は、女をくれ、という最低なものだった。

 言葉は解らなくとも、自分の前でリーダーの男に叫ぶように確認をするような行動をしたことは小学生でもあるクリスはなんとなく理解した。

 

『ああ……まあ良いだろう。ちゃんと世話しろよ』

『さっすがボス!』

 

 リーダーから許可が出たことで男は嬉々とした声をあげながらクリスの手枷を鎖から外す。

 そして力任せに引き摺り始めた。

 

「やだ、やだやだやだ!!」

『大人しくしやがれ!』

 

 必死に拒絶するも力で負け、クリスは男によって地面に引き倒される。

 両手を手枷で封じられているせいで受け身をとることができずに体を地面に打ち付けた。

 そして暴れるクリスの手を掴み、馬乗りになり子どもであるクリスの動きを封じる。

 

『ガキに欲情するとかヤバイだろ』

『そんだけ溜まってたんだろうさ』

『締まりは良さそうだな!』

 

 捕虜の選別の途中であったが捕虜たちは他の男たちが銃を構えながら見張っており、その男たちは襲われるクリスの様子をゲラゲラ笑いながら見ている。

 話す内容もかなり下劣な内容で次に回ってくることを期待しているのか、下半身の一部が膨らんでいた。

 

 クリスはせめてもの抵抗として足をバタバタと振って暴れようとするも、大人の体重で無理矢理押さえ込まれうまく足を動かせずにいた。

 体にのし掛かる重みで苦しいし、痛い。

 抵抗できないクリスを前に男は舌なめずりし、クリスの服に手をかけた。

 

「(やだ……!誰か、助けて!)」

『へへ、すぐに気持ち良くしてやえぎゅ』

 

 クリスの服を剥ぎ幼い身体を貪ろうとしていた男だったが、突如呻き声をあげた。

 

『玉でも蹴られたかぁ?』

『情けぇぞ!』

 

 呻き声をあげた男に野次が飛んでくるが、様子がおかしい。

 男の急所を蹴りあげられたなら股間を押さえるか踞って苦しむはずなのだが、男は一向に倒れる様子はない。

 いや、苦しんではいるが首を押さえている。

 よく見ると男の首には金属製の首輪のようなものがはまっており、そこからさらにワイヤーのようなものが伸びている。

 あまりに奇妙な光景にテロリストのリーダーを含めた全員が警戒し始める。

 

 突如ギジジジジ!と金属の擦れる音が響いたと同時に、クリスの上に乗っていた男が地面に引き倒され水上スキーのような速度で地面の上を滑る。

 数メートル引きずられた男は近くの建物まで引っ張られ、ワイヤーによって建物の壁に伝って首吊り状態にされる。

 首を締め上げられもがく男だったがピクリとも動かなくなり命を落とした。

 いきなりのことに他の男たちは武器を手にして辺りを警戒し始めた。

 

『何処だ!出てきやがぎっ!?』

 

 その中でまだ若い男が叫び声をあげる。

 叫んだと同時に風を切りながら何かが飛来する音が聞こえ、叫んだ男の胸に上から飛んできた小さな棘のようなものが突き刺さった。

 若い男は痛みに呻き声をあげ、棘が刺さった自分の胸元を見る。

 刺さった箇所からは血が流れ、異物が体内にある違和感と痛みで逆上したのか手に持った銃を構え棘が飛んできた方向に向かって若い男がは銃を乱射しようとするも次の瞬間には身体の中から細い槍のようなものが飛び出した。

 飛び出した槍が地面に刺さり若い男の体が宙に浮き、断末魔の叫びをあげる。

 その叫びを切っ掛けに他の男たちは吠えながらあちこちに銃を乱射し始めた。

 

 適当に撃たれた銃弾は建物や車の窓などを割る。

 クリスを含めた捕虜たちは踞って乱射される銃弾に当たらないよう身を守る。

 

 しばらく銃声が響く中で、男たちの近くで何か重いものが着地する。

 銃声に紛れて着地する音は聞こえなくとも、気配を感じて何人かがその気配がする方向へ顔を向ける。

 顔を向けたのも束の間、一人が二本の鉤爪によって下顎から脳天を貫通させられた。

 脳天を貫かれた男の体は宙を浮き、鉤爪は男を貫通したまま横にいた別の男の上に落とされた。

 一瞬の間に二人が殺され、近くにいた男たちは悲鳴をあげ逃げ出そうとするも二人を殺した者はネット状の物を射出する。

 ネットが男の一人を捕らえ、壁に張り付ける。

 金属製なのか軋む音を立てながら壁に突き刺さった杭にネットが取り込まれ、あっという間に捕らえられた男の体が悲鳴をあげながら細かい肉片へと変えられた。

 

『うあああああ!!』

 

 堪らず残った男が背中を地面につけ後ろに這いずりながら襲撃者がいるであろう場所に向けて発砲する。

 銃弾は硬い何かに命中し、甲高い金属音が鳴り響く。

 命中したであろう空間に火花が散り、紫電が走る。

 そしてそこから何もない空間から滲み出るように銀色の鎧が現れ、黄褐色の肌、腕、足、最後に頭部であろう部分を隠すヘルメットと順に姿を見せた。

 

「オオオオオオオ!!!」

 

 腕を広げ2メートル近い体を晒した怪物は空気を震わすような咆哮をあげる。

 その咆哮に男たちは戦き動きを一瞬だけ止めた。

 怪物はその瞬間を逃さず、再び姿を消して襲撃を始めた。

 

 先ほどまで這いつくばっていた男は透明になった怪物に踏みつけられ肋骨を粉砕され絶命。

 絶命した男の体が宙に浮き、足を支点に振り回され『ゴキン』という鈍い音を立て存命だった男二人の頭部を殴り付ける。

 ある男は銃を撃つも、いつの間にか移動していた怪物に後ろから首の骨をへし折られた。

 近くにいた男たちは怪物が死んだ男から奪った銃によって射殺された。

 

 手榴弾のピンを抜き、怪物の足下に投げようと別の男が腕を振りかぶるも怪物は持っていた銃をその男の頭に投げる。

 銃が頭に当たり呻き声をあげ男は転倒。

 手から手榴弾がこぼれ落ち、『あっ』という間抜けな声とともに爆発に巻き込まれた。

 

 鉤爪で斬られ、剛腕で骨を折られ、奪われた銃で撃たれ、一人また一人とテロリストたる男たちの数が減っていく。

 抵抗としてテロリスト側も銃を撃って応戦するも怪物の身につける鎧に弾が弾かれ、鎧以外の箇所に命中しそうになった弾は怪物の腕に円盤状に展開した盾や人間による肉の壁によって器用に防がれた。

 そしてお返しと言わんばかりに拾った石や死んだ男たちから回収したナイフを投げつけ頭、首、腹などの急所に命中させていく

 一方的な蹂躙劇であった。

 

 鮮血が飛び、人の体が簡単に折れ、爆発で粉々に吹き飛ぶ光景を目の当たりにしたクリスはあまりの恐怖に強く目を瞑り、両手で耳を塞ぐ。

 

 喚き散る悲鳴。

 

 真っ赤な血液。

 

 飛び散る肉片。

 

 虚ろな眼の顔。

 

 何もかもが、幼いクリスの心を容赦なく折りに来る。

 

 今すぐこの場から逃げ出して、大好きな両親のもとへ帰りたい。

 もうこんな所に居たくない。

 助けて。

 

 恐怖で体が動かず、耳を塞いでも男たちの悲鳴が鼓膜に侵入してくる。

 少しでも目を開けば悲惨な光景が飛び込んでくるため、クリスは瞼が痛くなるほど強く瞑って必死に外の光景を見ないようにする。

 

『くそっ!此方に来い!』

「きゃっ!」

 

 蹲っていると急に引っ張られ、クリスは小さく悲鳴をあげる。

 思わず目を開くと、大男が自分を抱えていた。

 その大男ーテロリストのリーダーーの手には大きめのサバイバルナイフが握られていた。

 

『おい化物!このガキがどうなっても良いのか!?』

 

 やけくそ気味にリーダーの男が叫ぶ。

 その声を聞いて、怪物は別の男の頭を鷲掴みしたまま振り返り手早く近くにあった車の車体の角に男の首を叩き付けて首の骨を折りテロリストのリーダーへと向き直った。

 あっさりと人間を殺害していることにテロリストのリーダーはたじろぐも、すぐにナイフをクリスの首元に突き付ける。

 

 あんな怪物に人質が通用するのか解らないというのにそのような手段に出たことでかなりテロリストのリーダーが動揺していることがわかる。

 むしろパニックを起こしているが、それはクリスも同じだった。

 人の死を直視し、今度は自分が死んでしまうかもしれない状況に置かれもう気を失う寸前だった。

 

 怪物は手に掴んだままの男の死体を放り、透明化を解除してテロリストのリーダーを真っ直ぐ見つめる。

 

『1歩でも動いてみろ、こいつの首を切るからな!』

 

 叫びながらクリスをさらに持ち上げ、見せつけるようにクリスの首にナイフを押し付け、ゆっくりと逃走を始める。

 怪物は立っている場所から動かずにいるが、テロリストのリーダーの逃走に気づいているのかリーダーの男から一切外さず頭だけを動かしリーダーの男の姿を追う。

 すると、怪物のヘルメットから3本の赤いレーザーか照射された。

 

『うごーー』

 

 何かしてくると察知したテロリストのリーダーが怪物に向けて叫ぼうとするも、叫びきるよりも先に怪物から青白い光弾が放たれる。

 光弾は赤いレーザーに沿い真っ直ぐ飛び、テロリストのリーダーの頭部を意図も簡単に吹き飛ばした。

 かなりの高温だったのか、吹き飛んだ頭部の残りが焦げており微かに肉の焼ける音がする。

 

 絶命した男の体がクリスを持ち上げることなどできず、クリスを抱えたまま前方に倒れる。

 その衝撃で焼け焦げていた血管にヒビが入り、未だに動く心臓の鼓動に合わせて『プシュッ、プシュッ』と血が吹き出し地面に赤い池を作る。

 

 光弾によって飛び散った肉片が顔につき、血の臭いと体と服に染み込む気持ち悪い生暖かさにクリスの精神は遂に限界を迎え、ブツリと意識を失った。




ヤウージャ式救出術。
但しクリスの精神状況は考慮しないものとする。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。