俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第百三十三話:化神の墓場

 ウイルスカードの出処。

 アニメでは謎の研究者が作っていた事は描写されていたが、具体的にどういう場所やどういう者達が作っていたのかは不明瞭だった。

 政誠司が裏に手を回したりして生産をしているような描写はあったけど、具体的な作り方等は不明。

 ネットの考察なんかではアニメのラスボスに繋がるんじゃないか、なんて言われていたけど結局はファンの予想でしかない。

 

 その謎に対する答えが今、目の前にいる化神の口から出たのかもしれない。

 

「ツルギ、ウイルスカードって」

「あぁ。速水が被害に遭ったアレだ」

「そうよね……ここで作られていたなんて」

 

 俺も流石にこの展開は予想できなかった。

 しかもウィズの口振りからするに、恐らくウイルスカードの原材料は……化神そのもの。

 

「カーバンクル。ウイルスからエネルギーを吸収する時、化神の気配とか感じたか?」

「全く感じなかった……けど、腑には落ちたっプイ」

 

 何かに納得したように、俺の頭上でカーバンクルがため息をつく。

 

「カード一枚から得られるエネルギーなんて、本来なら些細なものっプイ。なのにどうして、ボク達化神が目覚められるだけのエネルギーが得られたのか疑問だったけど……化神そのものを材料にしていたのなら、納得はできるっプイ」

 

 惨い話だ。まさか元同族を食べて復活していたなんて。

 

「化神としての気配が消失するくらい手を加えられたら、不味いし気づく事もできないっプイ。酷い人間もいるもんだっプイ」

「そうだな……悪い人間なんて、悪意に底がないもんだ」

 

 色々と思い出してしまう。

 前も今も、人間の本質だけは変わらないからな。

 しかしそれはそうと、少し気になる事もある。

 

「なぁウィズ」

「気安く呼ぶななのね」

「……アイ、頼む」

「ねぇウィズ、ちょっとツルギの質問に答えてくれないかしら?」

「お姉様のお望み通りになのね!」

 

 面倒臭い性格の化身だなぁ。

 

「ここでウイルスカードが作られていたのは分かったんだけど。この施設って、人が居なくなって結構経ってるんじゃないのか?」

「経ってるのね。今から大体4年前には人間がいなくなったのね」

「4年か……そりゃ色々とボロくもなるよな」

 

 だけどウイルスカードが完成して4年も経過していたというのは、流石に衝撃だったな。

 でも4年前に完成した割には、出回るのは今からなんだな。

 それにウイルスを作っていたというこの施設も、既に廃棄された後のようだし。

 ウィズの言う、人がいなくなった4年前に何かあったのか?

 

(とは言っても、アニメに無かった内容までは知る方法がないんだよな〜)

 

 主だった出来事への対策はできても、それ以外はどうしようもない。

 時に今回なんかアニメにない場面だろうし。

 

「ねぇウィズ。貴女4年間もここにいたの?」

「そうなのね。ウィズは賢いから、ずっと隠れていたのね! あとは……」

 

 ウィズが何か言い辛そうにしたその時だった。

 俺が足を少し動かすと、カサっと何かが靴にぶつかる音が聞こえてきた。

 咄嗟にスマホのライトを足元に向ける。

 

「仲間達の墓守。それがウィズの役目なのね」

 

 ウィズが出てきたからか、足元を覆っていた木の根は消えている。

 そして代わりに出てきたのは、施設本来の床と……床に散乱した大量のカードだった。

 

「なにこれ、カード?」

「アイも気づいてなかったのか」

「当然なのね。アレは認識阻害のためにウィズが張った根なのね」

 

 なるほど、それで気づけなかったのか。

 俺は床に落ちているカードを1枚拾い上げて、ライトで照らす。

 

「……白紙のカードだ」

 

 何も描かれていない白紙のカード。

 だけどブランクカードとも違う。

 よく似ているが、生物としての本能が違和感を伝えてくる。

 白紙といっても、こちらは少し燻んだような白。

 ブランクカードとは違って、何か決定的なものが抜け落ちているような気がする。

 

「キュ……これ、空っぽっプイ」

 

 頭上のカーバンクルが、ショックを受けたような声でそう呟く。

 

「化神がいたカード。だけどもう空っぽ……生命を喪った、ただ白紙になってしまったカードっプイ」

 

 俺は周辺の床を確認するように、スマホのライトを向ける。

 数十枚以上のカードが散乱しているが、どれも手に持ったカードと同じ。

 燻んだ白紙、空っぽになってしまった化神の死体。

 

「これ全部、死んだ化神なのか」

「そうなのね。ウィズと一緒にこの施設で生まれた仲間たちだったのね」

 

 酷いなんて、陳腐な言葉は使いたくなかった。

 だけど適した言葉も思い浮かばなかった。

 カーバンクルは化神を不完全な存在だと言っていたけど、俺は生命には違いないと思っている。

 今ここに散らばっているカードの数だけ化神はいて、そしてウイルスを作るために殺された。

 

(ウイルスカードを作っている場所は他にもある筈……あんな物のために、どれだけ化神が殺されてきたんだ)

 

 きっと答えを知れば想像を絶するのだと思う。

 腹の奥から怒りが湧くが、それは一度抑え込む。

 今は冷静でいるべきだろうと、俺の直感が告げていた。

 

「ねぇお姉様、お願いがあるのね」

「なにかしら?」

「島の外に出るなら、この子達も連れていって欲しいのね。ウィズだけじゃ島の外には出られないのね」

「……えぇ、良いわよ」

 

 ウィズに優しくそう答えると、アイは俺の方へと振り返ってきた。

 もちろん俺だって、言われなくても連れ出してやるつもりだ。

 

「ありがとうなのね! 本当にありがとうなのね!」

「生き残りは、貴女だけなのかしら?」

「うーん、この施設にいるのはウィズだけなのね」

 

 そう言うとウィズは「逃げられた仲間がいたら、もしかしたら」と続けた。

 施設から逃げたかも知れない化神か。

 そういえばシルドラが化神が二体以上いる可能性を言ってたな。

 

「もしかしたら、島の中にいるかもしれないな」

「それ本当なのね!?」

 

 凄まじい勢いで眼前に迫ってくるウィズ。

 

「可能性はだけど。そう言ってる化神がおりまして」

「やったのね! 外に仲間がいるかもなのね!」

 

 喜びながら翼を羽ばたかせるウィズ。

 確かに生き別れた仲間と再会できたら、最高だろうな。

 とりあえず今はもう遅いし、カードを回収してやらないといえけない。

 だけどその前に。

 

「カーバンクル。ちょっとアイに色々説明してやってくんね?」

 

 主に化神関係の事を。

 カーバンクルは「りょーかいっプイ」と言って、俺の頭上からアイの前へと移動した。

 そして説明中に俺がカードを回収する。

 

(枚数は多いけど、なんとか運べるだろ)

 

 両手に加えてズボンのポケットもある。

 これだけあればデッキ五つ分は持ち運べるぞ。

 とりあえずスマホのライトを頼りにして、床に落ちたカードを丁寧に拾っていく。

 

(やっぱりというか、どれも白紙か)

 

 もしかしたらという希望は軽く消えてしまう。

 全て空っぽのカード。化神の死体を拾って、運びやすいように束ねていく。

 そして一通りのカードを拾い終えようとした、その時であった。

 

(ん? 何かの、紙?)

 

 カードではない、レポート用紙のような紙が何枚か落ちていた。

 ウイルスカードの研究施設だったら、レポートの一枚もあるか。

 俺は試しに近くにあった一枚を拾い上げて、ライトで照らしてみる。

 

(全部英語……しかも泥かなにかで汚れて読めない)

 

 そもそも俺が英語を苦手としている上に、泥か何かで文字が読めない程汚れている。

 他のレポートを拾ってみると、そちらも同様だった。

 ただ気になるのは、汚れ以外に焼けたような跡があるレポートもあった事だ。

 

(4年前に人がいなくなった……事故でも起きたのか?)

 

 とりあえず手に持ったレポートから読めそうな箇所だけ読んでみる。

 

(Manager……責任者だったか? ここの責任者の名前は)

 

 汚れや焦げでまともに読めない。

 辛うじて確認できるのはMという頭文字だけ。

 あとはよく分からない英文が並んでいる。

 他のレポートも同様だったけど、Success(成功)Failed(失敗)という単語から察するに、多分実験結果の記録か何かだな。

 

(どれも全部よくわからん)

 

 とりあえずレポートらしき紙は、近くのデスクに置く。

 その時ふと、デスクに置かれている小さな棚が目に入った。

 置かれているのは数冊の資料らしき本と、分厚いファイルが一冊。

 

(この本、全部『含質量(がんしつりょう)電子プログラム』のものか)

 

 含質量電子プログラム。

 この世界での必須アイテムである召喚器に欠かせない技術だ。

 その名の通り質量を持った電子プログラムを出す技術。

 主に召喚器から出てくる仮想モニターに使われていて、投げ込んだカードを電子分解して墓地領域に留めたり、ファイト終了時に電子分解したカードをデッキに戻したりしている。

 この世界では中学校の教科書にも載っている常識だ。

 

(確かにウイルスカードにも通じる技術には思えるな……こっちのファイルは?)

 

 カードの束をデスクに置いて、ファイル手にとってみる。

 表紙にはReportと書かれているので、これも何かの報告書なのだろう。

 俺は試しにファイルを開けて中身を見てみる。

 どうやらこちらは基本的に日本語で書かれているらしい。

 

(……なんだこれ?)

 

 書かれているのは『指定研究施設001』という見出しと、数十に及ぶ人の名前。

 名前の横には『Success』または『Failed』と書かれている。

 まるで人体実験でしたような痕跡だな。

 

(けど何の人体実験なんだよ。そもそも施設だって何の施設か分からないし)

 

 そんな事を考えながら適当にページをめくっていく。

 どれも見出しには番号を割り振られた施設の名前と、人の名前が羅列されている。

 ぼんやりとページをめくっていくと、一枚だけ妙なページが出てきた。

 これまでには無かった、赤いペンで塗り潰された人名があったのだ。

 よく見ればページ下部には『特記事項を参照』と手書きで記入されている。

 

(なんの特記事項だよ)

 

 とりあえず気になったので、その特記事項とやらのページを探し出す。

 そのページは赤く縁取られていたので、すぐに見つけられた。

 

(要警戒事案、発生日時……今から8年前か)

 

 どうやら8年前に何か起きたらしい。

 要警戒事案なんて大層な記述だなと思いながら、俺はそのページを読み進めた。

 

 事案詳細。『指定研究施設021』にて研究員が被検体1名を連れて逃走。

 覚醒前のカードも1枚奪取されていると思われる。

 

(職員に逃げられたのか。ブラック企業か?)

 

 さらに読み進める。

 当該職員は逃走後、姓名を変えて被検体と養子縁組をしていると確認。

 上層部の意思により、当該職員と被検体には手出し無用と通達。

 ただし情報共有ために、当該職員と被検体の現在の名を次の頁に記す。

 

(そこまでバレてるのかよ……どんな名前の奴なんだ?)

 

 俺はそんな軽い気持ちで、次のページをめくってしまった。

 だからこそ、そのページに書かれた名前をすぐに理解する事ができなかった。

 そんな筈はない、そんな事がある筈はない。

 どれだけ頭の中で否定しようとも、ページに書かれた名前が変化する事はない。

 ただ事実として、俺の脳に刻まれてしまう。

 

「ツルギ、カード集め終わったっプイ?」

「あ、あぁ。終わったぞ」

 

 カーバンクルに声をかけられて、俺は我に返った。

 

「じゃあ早めにここを出るっプイ」

「お姉様が頭から煙を出しちゃってるのね! 早く助けるのね!」

 

 どうやらアイの情報処理能力が限界に達したようだ。

 流石に色々と詰め込み過ぎたか。

 俺は回収したカードをポケットにしまって、アイの身体を支える。

 

「アイ、帰るぞ」

「えぇ……頭が限界の向こう側にいきそうなのよ」

 

 カーバンクルは俺の頭上に乗り、ウィズも翼を羽ばたかせてついてくる。

 俺達はひとまず、この施設を後にして別荘へと戻る事にした。

 

 

 だが……俺の脳裏には、さっき見てしまったレポートに書かれていた名前が反芻され続ける。

 そんな内容は無かった……だけど、それを否定するための内容も無かった。

 

 

 

 

 当該被験者の名前:ラン

 現在の名前:武井(ぶい)(らん)

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