俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第百三十八話:夜に憑き者現る

 いくらか時間も過ぎて、今は夜空が広がっている。

 あの後ララちゃんは、ギョウブを探すついでに(らん)九頭竜(くずりゅう)さんが送り届けた。

 メッセージだとか戻ってきてからの話を聞く限り、ギョウブは見つからなかったらしい。

 戻ってきた藍が何故か「う〜ん、う〜ん」って唸りながら考え込んでいたけど、流石に今は言及できる勇気が無かった。

 

「で、また夜の散歩に出ている俺なわけですが」

「誰に言ってるっプイ」

 

 頭上から相棒が突っ込んでくるけどスルーする。

 一応今日はお祭りの2日目だったらしいけど、流石に昨日は目立ち過ぎたからな。

 今日は大人しく……という建前捨てて、各々自由に動いている。

 じゃあ何故、俺は今一人で外にいるのかというと……

 

「本当に行くっプイ?」

「今のうちに回収しておいた方がいいだろ。あそこに放置したら最悪、藍が好奇心で施設に突っ込む可能性もある」

 

 あの施設にあった例のレポートの回収。

 他にも色々じっくり調べておきたいという理由もあるけど、一応第一目的はそういう事。

 そのために夜更けにこっそり一人で外に出てきたわけだ。

 

「お祭り中だから人がいないのは当然なんだけど……マジでタヌキは多いな」

 

 海辺の砂浜を歩いているけど、人の代わりに目につくのはタヌキばかり。

 そもそもタヌキってこんな海辺にも近づいてくるんだな。

 

(一人で夜風に当たると、色々と頭も回ってくるな)

 

 頭の中に浮かぶ事項は色々ある。

 そもそも的なウイルスカードの事、この島にいるであろう化神の事、そしてあの墓場と施設の事。

 化神という存在は前の世界では一切描かれていなかった未知の要素。

 だからこそ何が起きても不思議ではないし、何かを変えてきても不思議ではない。

 

(とはいえ、流石にウイルスの材料にされていたのは予想外だけど)

 

 こういうデカめの不確定要素が来るから、頭を悩ませるハメになってしまう。

 とはいえ生命である化神を使ってウイルスカードを製造しているのであれば、それを利用している政帝(せいてい)に対する躊躇いも消えるってもんだ。

 ただ一つ、気になる事があるとすれば……

 

(あの施設……結局どこが運営してたんだ?)

 

 ウイルスカードを利用して感染者を増やしているのは政帝である。

 だけどウイルスカードそのものを生み出したのは誰なのか、それが分からない。

 一応前の世界で見たアニメの内容では、どこかの研究者のような大人たちに手を回したりして受け取っていたようだけど。

 

(肝心の製造元が不明なんだよな……)

 

 明確な説明や描写が無かったこともあるが、俺が三年生編の内容を上手く思い出せないせいもあると思う。

 少なくとも二年生編でも詳細な言及はなかったし、触れているなら絶対にその後の話なんだよな。

 

(政帝はウイルスカードに大きく関わっている……だけどウイルスカードなんてものを考えたのは誰なんだ?)

 

 製造方法を考える限り、考案者は化神という存在を認知している。

 恐らく政帝も化神の存在を知っているだろう。

 

(そういえば特別講演会の時、妙な方向を見てたよな)

 

 今思えば、あれは頭の上にいたカーバンクルを見ていたのかもしてない。

 気づいてしまうと急激に肝が冷えてしまう。

 あの男ことだ、絶対に碌なことを考えてない。

 だったら尚更調べられるものは調べておかないと。

 

「にしても夜の海って静かだよな」

「でもタヌキがいっぱいいるっプイ」

 

 カーバンクルの言う通り、視界にはタヌキが何匹も映っている。

 だけど音の一点でいえば、波と風の音にタヌキの足音くらいしか聞こえない。

 あとは俺が砂浜を踏む音くらいか。

 

「ん?」

 

 パキリと何かを踏む音が聞こえる。

 右足を上げてみると、踏んでいたのは朽ちた木でできた何かの一部。

 大きさは手の平くらいあって、人工物らしい形状が垣間見える。

 海辺だから流れついて打ち上げられた何かだろうか。そう考えて何となく拾い上げてみると……

 

「……お面?」

 

 木彫りでできたであろうソレはお面の一部のような形状をしていた。

 ちょうど目の辺りに当たる部分だろうか、焦茶色と隈取りのような模様が見える。

 あと特徴的なのは、上部についている小さな耳のようなもの……これはまるで。

 

「タヌキのお面っプイ?」

「あぁそれだ。お祭りでも着けてる人多かったもんな」

「砂浜にゴミを捨てるなんて、後先考えない人間は昔から減ってないっプイ」

「人外に言われると途端に殺傷力が高まるな」

 

 俺でさえ心に刺さったぞ。恐るべし人外からの環境保全に関する苦言。

 それはそうとして、少し気になることもある。

 

「……なんか、あちこちに破片落ちてるな」

 

 手に持ったタヌキのお面と同じような破片が、砂浜に点々と落ちている。

 今俺が手にしているものを含めても、明らかにお面一枚分を超えていそうな数だ。

 だけど昼間に来た時はこんな危なっかしいもの落ちていなかった筈なのに。

 

「誰かが捨てた……にしては変な散りかた」

 

 いくつか破片を拾ってみると、一枚分がある程度近い位置に落ちている事がわかる。

 まるで中心点で砕け散ったかのような感じだ。

 ふと周囲を振り向いてみると、いるのはジッとこちらを見つめるタヌキばかり。

 

「夜の海でタヌキに見つめられる、なんかホラーなものを感じるよな」

「ボクも島に来てから変な気配ばっかりで、十分ホラー体験してるっプイ」

 

 そうなんだよな、カーバンクルだけじゃなくて化神からすれば島全体が怪奇現象の塊なんだよな。

 あの施設も関わっていそうな気がするけど、これに関しては件の化神ことギョウブを探し出してやらないと。

 でもその前にあの施設をもう一度調べて、色々済ませてやらないとな。

 砂浜に落ちているお面の破片を拾い歩きながら、俺がそう考えた時であった。

 

「キュプッ!?」

「うわっ、死体!?」

 

 砂浜に人が倒れていた。服装や風貌からして島の男性住民だと思う。

 昨日ソラがファイトした人と同じような法被姿だ。

 恐る恐る近づいてみたところ息はある、死んではいないらしい。

 

「キュプ〜、お面の破片が落ちてるっプイ」

「……なんか嫌な落ち方してるな」

 

 法被の男の周りに落ちているお面の破片。

 まるで着けていたタヌキのお面が砕け散ったと同時に倒れ込んだようにも見える。

 ……なにかオカルト現象が絡むゲームにでも敗北したのだろうか。

 

「……いや、まさかな」

 

 凄まじく嫌な予感がしつつも、とりあえず俺はスマホを取り出して救急車を呼ぼうとする。

 だが次に視界に映ったものは、またしても砂浜に倒れ込んでいる法被姿の男性であった。

 俺は慌ててそちらに駆け寄る。やはり先程の男性と同じく息はあるが、ここでも落ちていた破片が嫌な可能性を思い浮かべてしまう。

 

「なぁカーバンクル、この人達って――」

 

 ウイルスカードに感染している可能性が頭を過り、俺は頭上の相棒に調べてもらおうとする。

 だけどそれよりも先に、近くから誰かの悲鳴と召喚器の効果音が聞こえてきた。

 

「ツルギ!」

 

 きっとカーバンクルも俺と同じ事を考えたのだろう。

 俺も今の悲鳴を聞いて、嫌な予感が確信に変わった。

 すぐさま俺は砂浜を駆けていく。

 悲鳴が聞こえた方向へと進めば進む程、足元に黒い霧が薄っすらと広がっている事がわかった。

 

「カーバンクル!」

「あっちっプイ!」

 

 ここまで来ればカーバンクルも正確に気配を読み取れる。

 俺は頭上の相棒に導いてもらい、その現場にたどり着いた。

 

「ウ……あァ……」

 

 黒い霧の広がった空間、そこに居たのは二人の男性。

 どちらも島の住民なのか法被を着ているが、一人は既に倒れて意識を失っている。

 そしてもう一人はタヌキのお面をつけたまま、召喚器を片手に小さな呻き声を上げていた。

 よく見れば倒れている男性の近くには、彼のものらしき召喚器が落ちている。

 

「カーバンクル、これってもしかしなくても」

「キュップイ、間違いなく感染してるっプイ」

 

 だろうな、だからこそ最悪だ。

 こんな本土から離れた島にまでウイルスカードが出回っているなんて。

 いや、よく考えればここで製造とか研究をしていたなら持っている人がいてもおかしくはないのか。

 

「ウぁぁぁ……ターゲット、ロック」

 

 俺の姿を見た瞬間、お面をつけた男はすぐさま俺の召喚器に対戦を挑んできた。

 これは手間が省けたと前向きに捉えていいのだろうか。

 

「流石にこれを放置するわけにはいかないか」

「プイプイ。ファイト後の処理はボクに任せるっプイ」

「頼むぜ相棒」

 

 そう言うと俺の頭上にいたカーバンクルは、デッキ内のカードに戻っていってしまう。

 こういう形で試運転する事になるとは思わなかったけど、今回は相手が相手なので全力で行ける。

 俺は腰につけた召喚器から初期手札5枚を引いて、ファイト準備を完了した。

 

(……あれ?)

 

 その時であった。

 黒い霧の範囲、俺達から少し離れた場所に何故かタヌキが数匹入っている事に気づいてしまった。

 逃げるでもなく、近づくでもなく、タヌキ達は静かに俺達を見ている。

 

(なんか……不気味だな)

 

 とはいえ今はファイトに集中しなくてはならない。

 タヌキのことは後回しだ。

 

「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」

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