俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第百六十二話:高騰事件や環境事情

 智代(ちよ)ちゃん(まい)ちゃんとのファイトが終わり、卯月(うづき)の部屋に戻る俺達。

 ちなみにあの後「もういっちょやるか!」って誘ったら卯月に尻を蹴られて止められた。

 曰く「二人のメンタルが持たない。加減しろ」とのこと……残念だ。

 で、家に戻った後は智代ちゃんのトークに少し付き合った後、配信終了の挨拶に入る。

 

「それじゃあ次回があれば『ライフ回復の防御運用』『確定ギャンブル活用術』『1対1交換の考え方』について講義します。各自復習はしっかりしておくように」

「はーい」

「は〜い……せんせぇ〜」

 

“はーい【50000円】”

“神授業たすかる【50000円】”

“レポートの提出先はどこですか?”

“この授業を全世界必修科目にしろ”

 

 流石にファイト後だからか少し疲れ気味の智代ちゃん……とヘロヘロになっている舞ちゃん。

 あとリスナーの皆さん、さっきからそうだけどもっとお金は大事に使ってくれ。

 こうして配信は無事に終了して、俺は卯月の部屋からお目当ての漫画を回収し自室に戻る。

 ちなみに智代ちゃんからは泣きながら感謝された。なんか同接数が凄いことになったとかなんとか。

 

「配信の同接数とかよく聞くけど、俺にはよく分からん文化である」

 

 元々そういう配信とか見ないタイプだからな。今日だって配信映え云々とか大雑把なイメージでやってたし。

 ネットで見るのは大抵カードゲーム系のやつか、アニメ関係の動画ばかりだし。

 それでも何とかなったなら、良いこと良いこと。

 

「それじゃあ俺はのんびり漫画を読みながらスーパーで買ってきた桜餅を……」

 

 自室に戻ってまず目に入ってきた光景。

 それは何処から持ってきたのか分からないデッキチェアに寝そべりながらジュースを手に持っている、何故かサングラスをつけたカーバンクルの姿であった。

 いやそのサイズのサングラスも何処から持ってきたんだよ。

 

「何やってんだカーバンクル」

「キュプ? 見ての通り、休暇を満喫中っプイ」

 

 そうか……いや今回は確かに出番なかったけど、そこまでザ・休暇モードに入るのも凄いな。

 まぁ今日はもうファイトの予定はないし、次の出勤は明日にしてもらおう。

 

(にしても……久々に【幻想獣】以外のデッキ使ったな)

 

 前の世界なら大会環境や新パックに合わせていくつかのデッキを使い分けていたし、それは別に普通の事だった。

 この世界では基本的に複数のデッキを使う人は多くない。

 カードの価値が価値だから、当然とも言えるのだろうけど。

 

(俺は元々【幻想獣】関係のデッキを好んで使っていたから簡単に馴染めたけど、もっと色々なデッキに手を出すタイプだったらそうもいかなかっただろうな)

 

 そういう意味では好きなデッキタイプがあったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。

 お陰でカーバンクルを使い始めて長いので、色々な戦い方もできる。

 

(……あれ? そういえば俺、いつ頃からカーバンクルを使ってたんだっけ?)

 

 気づいた時には使っていたような……でもカーバンクルはパック産のSRだから当てて入手した筈なんだけどなぁ。

 当てた記憶がないぞ。

 

「……まぁいいか」

 

 とりあえず今日は色々と漫画を読んで過ごそう。

 お菓子とジュースをお供にして、名作を読破するのだ。

 

 

 

 

 そして翌日。

 俺はリビングでスマホの画面を見ながら、何と言えない顔になっていた。

 ちなみに隣では卯月も似たような顔になっている。

 

「なぁ卯月、今回は俺そんなに悪くないと思うんだ」

「お兄が六割、残りがアタシだと思ってる」

「過半数は俺なんだな」

 

 俺と卯月が見ているスマホに映し出されているのは、ネットニュースの記事。

 具体的には『バニラサポート突然の高騰』『バニラモンスターで無双!? 高騰の切っかけとなった配信とは』『シングルカード市場激動。バニラ騒動を分析する』などなど。

 

「智代ちゃんの配信って、そんなにリスナーいたんだな」

「元々のリスナー以上に、お兄のファイトを聞きつけて来た人の方が多かったんだって。しかもあの後すぐファイトのとことか『6点止め』の話のとこで切り抜き作られたらしいし」

「あぁ、切り抜きで拡散されたと」

 

 確かに【バニラコントロール】とか珍しいデッキだし、インパクトあったと思う。

 拡散理由は分かるけど、値段高騰まで記事になるとか……そんなに値上がりしたのか?

 俺はとりあえず適当にシングルカードの通販サイトを開いてみる。

 

「……うわぁ」

「ねぇお兄、もうどんな値段が出てきてもアタシは驚かない自信があるんだけど」

「〈第十三代スーパー無色無敵セイバー〉が1枚60万円で販売されてる」

 

 確かにレアリティはレアのカードだけど、これ前の世界では全盛期でも1枚800円だったぞ。

 それ以外のバニラサポートも軒並み分かりやすく高騰している。

 例えば〈バニラドロー!〉はレアリティがコモンなのに、1枚5000円になっているし。

 展開札の〈ザ・無色スクランブル〉はアンコモンなのに1枚2万円。

 強力な除去札だけど同じくアンコモンな〈無色無敵奥義・覇仁邏王斬(バニラおうざん)〉に至っては、1枚10万円とか意味不明な値段にまで膨らんでいた。

 

「【バニラコントロール】なんて前の世界じゃあ安価なデッキだったのに。今こっちの世界で組もうとしたら何百万円になるんだ?」

「なんかお兄のファイトを見て組みたくなった人が多発したんだって。SNSで『SRゼロ枚』でトレンド入りしてるし」

 

 あぁそういえば、家に戻ってから智代ちゃんとしたトークでも言ったなぁ。

 デッキの性質上【バニラコントロール】にはSRのカードが入ってないって。

 一応採用しようと思えばできるSRもあるけど、今回は俺の好みでSRゼロ枚型にしていた。

 

「まさか……SRゼロ枚でも戦えるデッキって理由で、みんな買いに走った?」

「そうじゃない? だってこの世界のSRって平気で100万円越えとかするじゃん」

「おかげで儲けさせていただいてます」

 

 そう言うと、卯月は容赦のない肘打ちを俺に叩き込んできた。

 だって実際そうですし、貯蓄たくさん出来ましたし。

 それはそうとして、俺としては懸念事項も出て来てしまう。

 

「【バニラコントロール】に限った話じゃないけど。コントロールデッキなんて扱いが難しいのに、安易に手ぇ出して大丈夫なのか?」

「自己責任でいーんじゃない?」

「何より【バニラコントロール】の賞味期限は来年です」

 

 これがあるから俺も今のうちに使って楽しんでいたんだぞ。

 頼むから今頑張って組んだ奴らは、来年になって文句言うなよ。

 

「そういえばお兄。昨日の夜も【バニラコントロール】は短命だったとか言ってたけど、アレどういう意味?」

「文字通りの意味。【バニラコントロール】がtier2の環境デッキでいられたのは4ヶ月だけなんだ」

 

 俺は前の世界で起きた一連の出来事を思い出しながら、卯月にその経過を説明する。

 

「まず前提として【バニラコントロール】というデッキが成立したのは王国編の最終パックでなんだ」

「王国編って前の世界で発売されてたサモンのパックシリーズだっけ?」

「そう。ちょうど今俺達がいるこの世界が王国編のカードが活躍する1年生編の時間軸だな」

 

 これは以前にも卯月に説明をした、前の世界での商品展開に関する話。

 アームドカードが実装され、1年生編の放送中に展開されたシリーズ【王国編】。

 そして2年生編に展開された【解放編】と、3年生編に展開された【誓約編】。

 この3つが主に気にしておきたいパックシリーズなのだが……

 

「なぁ卯月……【バニラコントロール】は登場時点で同期に天敵がいたって話、したよな?」

「うん。たしかソラさんの【聖天使(せいてんし)】と真波さんの【王竜(おうりゅう)輝士(きし)】が特に天敵だったって」

「それが王国編最終パックが発売されてすぐの立ち位置だったんだ……息の根を止められたのは2年生編が始まってすぐだったんだよ」

 

 そう、王国編が終わって4ヶ月後。

 解放編のブースターパック第1弾にソレらは入っていた。

 

「解放編に入った途端、従来のモンスター除去に加えてアームドまで除去できる……カード指定除去が大量に実装されたんだよ!」

「あぁ……〈無色無敵セイバー〉を破壊されちゃうんだ」

 

 なんなら解放編第1弾に入っていた盤面除去効果の八割はカード指定除去だったからな。

 アームドが暴れた1年生編環境を終わらせるためか、急激にメタ効果を刷りまくったんだよ。

 

「あれ? でも魔法カードなら〈無色無敵セイバー〉で無効化できるし、モンスター効果なら適当な魔法で無効化できないの?」

「アームドの顕現時効果」

「……え?」

「顕現時効果でカード指定除去をしてくる極悪アームドカードがSRで収録されてた」

 

 これこそ【バニラコントロール】が環境から駆逐された最大の要因。

 モンスター効果ならまだしも、アームドの顕現時効果を防げるカードは当時存在しなかった。

 後々実装はされたが時すでに遅く、【バニラコントロール】に入れたところで周辺はムキムキの化物デッキが飛び交う環境と化していた。

 

「登場時点で後攻1ターン目にシルドラが進化してこっちの盤面を耐性無視して全滅させて来てさァ! エオストーレがデッキバウンスしてくるわ、カード指定除去を手に入れた【勝利】がビクトリー・ドラゴンでワンショットkillしてくるわァ! 【バニラコントロール】がなにしたって言うんだよ!」

「見事に知り合いのデッキばかりが天敵になっている……ちなみにアイさんのデッキには勝てるの?」

「あの頃の【樹精(じゅせい)】は〈不平等契約〉が禁止になって弱体化した上に、ウチの嵐帝(らんてい)のデッキに不利すぎて誰も大会に持ち込んでなかったぞ」

「嵐帝のデッキって、確かお兄が悪質な自作自演デッキとか呼んでたやつだっけ?」

 

 そうです。

 墓地のカードを持ち主のデッキに戻して効果を発動する系統の癖に、何故か自前で専用墓地肥やしを持ってるんだぞ。

 あの自作自演マッチポンプ戦術に幾つのデッキが泣かされたか。

 ちなみに【バニラコントロール】的にも相手したくないデッキである。

 

「とにかく、普通のコントロールデッキと比較しても穴が多いんだよ。組んでみるのは勝手だけど、過度な期待はしないで欲しい」

「それこそ無理な話じゃないの? だってこの世界の人達がどんな感じなのか、お兄もよく理解できてるでしょ?」

 

 それを言われてしまうと、何も言い返せない。

 とはいえここまでカードの相場に影響が出てしまうのは、俺自身流石に想定外だった。

 正直、配信文化というものを舐めていたかもしれない。

 

「それとお兄、次回の出演に関してなんだけど」

「えっ、俺また出るの確定?」

「だってお兄が言ったんじゃん。次回の講義って」

 

 ごめんなさい、正直配信でやるとは考えてなかった。

 いつも通り智代ちゃんと舞ちゃんだけを相手にする予定でした。

 

「とりあえずアタシが快諾しておいたから予定空けといてね」

「お前は俺のマネージャーか」

「どうせ夏休み暇してそーだし、別にいいでしょ?」

 

 まぁいいけど。

 流石にしばらくは【バニラコントロール】みたいな変わり種デッキは避けておこう。

 ……いや本当に、当分は普通のデッキしか触りたくない。

 

「ちなみにお兄。【バニラコントロール】がいた頃の環境トップって何だったの?」

「あの頃は割と群雄割拠していたけど……後で禁止制限送りを一番排出したという意味では【カーバンクル】が凄かったな」

「……お兄、まさかそれが理由で今のデッキを」

「それ()出来るってだけだ。【幻想獣】自体は元から好きで使ってるんだぞ」

 

 それでも【カーバンクル】は後に禁止カード1枚、制限カード3枚を出したからな。

 前の世界では歴代最強デッキ紹介動画でよく名前が上がっていた代物だ。

 流石に4枚規制された後は、環境トップまではいかなかったけど。それでも普通に強いデッキだったぞ。

 

「にしても、あの配信だけでカードが高騰するのか……これじゃあ迂闊にカード解説配信とか出来ないな」

「多分お兄がやったら大騒ぎになるから、絶対にやらない方がいいと思う」

「だろうな」

 

 でも正直『禁止制限解除選手権』とか『ハズレSR紹介シリーズ』とかはやってみたかった。

 多分やったらやったで大変な事になるんだろうけど。

 

「これだけ時間経過してなお挙動が読めない辺り、カードゲーム至上主義世界は奥が深いのでした、とさ」

「お兄が変な暴れ方を控えれば良いだけの問題もあるんじゃないの?」

 

 卯月よ、それを言ったらお終いだよ。

 そんなカードゲーム社会の動きにギャップを感じつつ、今日も夏休みが進むのであった。

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