俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第百六十八話:黒崎勇吾の【アルカナ】

 聖徳寺(しょうとくじ)学園の3年生、黒崎(くろさき)勇吾(ゆうご)は六帝評議会に所属すると同時に学園の暗部とも言える部分を担っている。

 端的に言ってしまえば限度を超えた問題児の粛清。そして学園の名を悪用する元生徒の始末である。

 カードゲーム至上主義である故、ファイトを使った粛清は珍しいものでもない。

 だからこそ黒崎にとっては、このファイトも数ある仕事の一つでしかなかった。

 

「俺のターン。スタートフェイズ!」

 

 誤算があったとすれば天川(てんかわ)ツルギを含む1年A組の生徒がいた事。

 黒崎としては巻き込むような理由もなく、暗部に関わらせる気も皆無だった。

 しかし、1年生の一人である財前(ざいぜん)小太郎(こたろう)が動いた事で、想定していた展開に変化が生じてしまったのだ。

 

(まさか自ら手を下そうとする奴が、ここまでいるとはな)

 

 彼らは現時点での成績上位者。次期評議会入りの可能性も十分にある存在である。

 評議会に入ればいずれ暗部の存在は知る事になる。であればコレは彼らにとって、早いか遅いかの問題でしかない。

 そう解釈をしてなお、黒崎は後ろ髪を引かれる思いでファイトをするのだった。

 

「メインフェイズ! 今の俺たちなら、アンタが相手でも負けはしない」

 

 そう自信満々に叫ぶのは元1年S組の生徒、牧野(まきの)庄太郎(しょうたろう)である。

 この場にいる四人の退学者。その中でも彼は在学中に黒崎が要警戒対象として見ていた男であった。

 理由は単純なものであり、学園内における一部試合での不正と、それに伴う反社会的な集団との交際疑惑。

 

(実家は一般的なもの。だがそれ故に所業が露呈して退学の判を押されてしまったか)

 

 退学後の動向を注視していたわけではないが、今までの経験から黒崎にはおおよその流れは想像できていた。

 不正行為の発覚による成績剥奪。その時点で進級時のクラス降格は免れない。

 退学後は家を追い出されたか、自ら家を出たか。ギャングを頼ったのか、坂主という悪意に誘われてしまったか。

 

(何にせよ、こうなっては碌な運命を辿れまい。クラッキングツールで無法なアチラは全員、無法なデッキを使っているだろうが――)

 

 少なくとも天川ツルギは問題ないだろうと、黒崎は考えていた。

 色々と耳に入ってくる話から察するに、彼はちょっとやそっとの無法で倒せるような男ではない。

 

(ならばここは帝王らしく、未来の帝王に捧げる試練とでもしよう)

 

 ちょうど他の二人も候補ではある。

 黒崎は表情一つ変える事なく、戦う意志を持つ一年生達に期待をしながら、自身のファイトに集中するのだった。

 

「俺は〈【試練獣二型】マジックキャンセラー〉を3体召喚!」

 

〈【試練獣二型】マジックキャンセラー〉P10000 ヒット3

 

 牧野の場に、巨大なメカ狼のモンスターが3体出現する。

 それを見て黒崎は小さく「なるほど」と呟いた。

 彼らがツールによって禁止制限から逃れている事は理解していたが、ボスファイト用のカードを使用してくるのは予想外であった。

 

(確かにボスファイト用のカードも、通常ファイトではシステム上禁止カード扱いだな)

 

 意外なカードが出てきた事に、黒崎は内心面白さを感じてしまう。

 今年の一年生の合宿でも使われたボスファイト用のカードだったが、召喚された面々を見て黒崎はどこか冷めた目になってしまった。

 そんな彼の様子など気にもせず、牧野は意気揚々と自身のターンを終える。

 

「エンドフェイズ! 〈マジックキャンセラー〉の効果でカードを1枚ドローする。3体いるから3枚ドローしてターンエンドだ!」

 

 牧野:ライフ10 手札5枚

 場:〈【試練獣二型】マジックキャンセラー〉×3体

 

 手札は初期と同じ5枚。場には相手に魔法カードの使用制限をかける〈マジックキャンセラー〉が3体。

 さらにボスファイト用のモンスターらしく、場を離れても次のターン開始時には戻ってきてしまう。

 普通なら絶望的な状況。牧野もそれを理解しているのか、自身の勝利を確信したかのように余裕を振り撒いていた。

 

「ハァ……」

 

 だが1人だけ、黒崎だけは相手の盤面を見てため息を吐くのだった。

 

「なるほど、所詮は研鑽を怠り無法に走った馬鹿者か」

「馬鹿だって? 3体の大型モンスターに加えて5枚の手札。それに今のアンタは魔法カードを使うことすらできない。これが勝ちでなくて何だって言うんだ」

「その程度で驕るから馬鹿だと言うんだ」

 

 一見すれば絶望を体現したような牧野の盤面。

 しかし黒崎は一切の動揺をしていなかった。

 それどころか、後は始末するのみといいった様子ですらある。

 

「研鑽とは己を磨き強くすること。そして世界を知ることだ」

 

 冷めた様子でそう口にしつつ、黒崎は自身のターンを開始する。

 その姿はただの3年生の姿にあらず。凡人の絶望を一蹴する力を持つ、強き帝王の姿であった。

 

「キサマはオレという世界を知らなかった。それが今日キサマに降りかかる最大の不運になる。スタートフェイズ。ドローフェイズ」

 

 黒崎:手札5枚→6枚

 

 手札を確認するや、黒崎は一瞬にしてゲームセットまでの道順を組み立てる。

 隣からはツルギ達のファイトの様子が音として聞こえてくるが、彼らに期待をして視線は向けない。

 黒崎はメインフェイズへと入り、早速己のデッキの真価を発揮し始めた。

 

「まずはこのカードだ。11番目の使徒よ来たれ〈純白たる正義(ホワイト・ジャスティス)〉を召喚」

 

〈純白たる正義〉P5000 ヒット2

 

 黒崎の場に召喚されたのは、白い甲冑のようなぬいぐるみ。

 一見すると弱々しく可愛らしいモンスターだったが、異変はすぐさま起きた。

 

「自分の場にモンスターが存在しない状態で召喚した場合、〈純白たる正義〉は【反転】する」

 

 瞬間、黒崎の召喚したモンスターカードは上下逆さまとなった。

 同時に小さなぬいぐるみだった〈純白たる正義〉からは、全長2メートルはあろうかという白騎士のビジョンが出現した。

 どこか女性的な曲線をもち、手にはレイピアを構えている。

 

「【反転】って、なんだよそれ!?」

「オレの使う系統:《アルカナ》のカードが持つ特殊な状態だ。カードが上下逆さまになっている【反転】状態であれば、真の能力が解放される。〈純白たる正義〉が【反転】したターン、オレの場のモンスターは魔法効果では選ばれなくなる」

「なんだよそれ……あとアンタのカードを見ていると妙に引っかかりを覚えるんだが」

 

 牧野の発言はスルーしつつも、黒崎は内心「何故オレのデッキと戦う人間は全員そう言うんだ」と疑問を抱いていた。

 そして1枚のカードを、黒崎は続けるように仮想モニターへと投げ込んだ。

 

「厄災を選べ。キサマの運命を決めるのはオレの相棒だ。来い10番目のアルカナ〈【運命の使徒】我は汝を時明かす者(フォーチュン・シーカー)〉!」

「ワタシの出番ですね。オ初にオ目にかかります」

 

〈【運命の使徒】我は汝を時明かす者〉P9000 ヒット?

 

 ツルギ達と出会った時のように、大きな懐中時計のようなモンスターの姿で現れるシーカー。

 黒崎のエースカードを見た牧野は、まずそのパワーに驚いていた。

 

「コストなしで、パワー9000だって!?」

「それが〈シーカー〉の特徴だ。続けて〈シーカー〉の召喚時効果を発動。自分のモンスターを1体【反転】させる」

 

 対象は当然ながら〈シーカー〉である。

 自身の能力によって【反転】した瞬間、〈シーカー〉の身体から巨大なビジョンが出現する。

 時計の歯車が集合したような身体を持ち、時計の針を彷彿とさせるデザインが入った大きな銃を手にしたモンスター。

 これこそ〈シーカー〉の本来の姿である。

 

「【反転】している〈シーカー〉の効果を発動。相手のデッキをシャッフルさせ、デッキの1番上のカードを墓地に送る」

「なんだ。ショボいデッキ破壊か――」

「墓地へ送られたカードによって〈シーカー〉がキサマに下す能力が変化する」

 

 能力の変化。仮にもSRの発揮する効果ともなれば、牧野も穏やかではいられない。

 そして能力の発動宣言を受けた〈シーカー〉は、手に持った銃を牧野のデッキに向ける。

 

「アナタの運命、試して差し上げましょう」

 

 そして引き金を一回引くと、光弾が牧野のデッキを1枚破壊した。

 デッキから墓地へ送られたカードは〈【試練獣三型】グレイトフルガーディアン〉。

 ヒット3のモンスターカードであった。

 

「モンスターカードが墓地へ送られた場合、そのモンスターのヒット数だけキサマの場のモンスターはヒット数を失う」

 

 ヒット3のモンスターが墓地に置かれた事により、同じくヒット3であった〈マジックキャンセラー〉は全てヒット0になってしまう。

 とはいえまだヒットが一時的にに0になっただけ。牧野はまだまだ戦えると余裕を吹かせていた。

 だが黒崎は淡々と自分のプレイを実行していくのみ。

 

「召喚コストでオレは場の〈シーカー〉を手札に戻す」

「それではしばし、失礼いたします」

「現れろ18番目の使徒〈蠱惑+怖く+(サイケデリック・)困惑=月光(ムーン)〉を召喚」

 

 コストで〈シーカー〉が手札に戻ると、交代で現れたのは不気味な球体関節人形。

 看護婦のような服を着ているが、背中に三日月を背負い、胴体には一本の注射器が貫通している。

 

〈蠱惑+怖く+困惑=月光〉P3000 ヒット3

 

「やっぱり何か引っかかるカードだな」

「キサマもだが、何故か皆オレのモンスターを見るとそう言うんだ」

 

 何気ない言葉を声に出す黒崎。

 だがそれが耳に入ったのか、近くにいたツルギから「何故か俺もソイツら見てたら無関係な気がしないんです!」と言われてしまう。

 黒崎は直接見はしなかったが、ソラと財前も無言で頷いている気配は感じ取れた。

 

「まぁいい続けよう。オレは再び〈我は汝を時明かす者〉を召喚。そして召喚時効果で自身を【反転】させる」

「またオ会いしましたね。再びアナタの運命を試して差し上げましょう」

 

 再度召喚され、【反転】状態の効果を発動する〈シーカー〉。

 効果にターン中1回の制限がかかっているとはいえど、同名制限ではないので場を離れてしまえば再度使用できる。

 手に持った銃を撃ち、再び牧野のデッキを1枚破壊する〈シーカー〉。

 

「墓地にいったのは……魔法カード〈破壊の試練〉」

「魔法カードが墓地へ送られたキサマの運命。このターンのアタックフェイズ中、キサマは魔法カードを発動できない」

「チッ! そっちも魔法封じかよッ」

「因果応報というやつだな」

 

 あくまで淡々と、大した関心すらないように吐き捨てる黒崎。

 あくまで悪事に対する報い。罪に対する罰。

 処刑人とも言える立場である黒崎は、相手に運命を突きつける事も含めて仕事だと考えていた。

 

「コストで場の〈純白たる正義〉を墓地へ送る。今度はお前だ8番目の使徒。重力を操る強き存在〈岩山のように重く強い(ロック・ストロング)〉召喚!」

 

 ビジョンごと場から消滅する〈純白たる正義〉。

 その後に現れたのは、ライオンのような頭部を持つ小さなぬいぐるみであった。

 

〈岩山のように重く強い〉P16000 ヒット2

 

「パ、パワー16000!? なんだよそのステータスは!」

「コイツは自分の場に【反転】している仲間がいないと攻撃もブロックもできない……無論、今のオレには関係ないがな」

 

 既に【反転】している〈シーカー〉が場に存在する。

 とはいえ〈岩山のように重く強い〉も【反転】時能力を持つ以上、全力を出させなければいけない。

 

「オレはライフ2点を払って〈蠱惑+怖く+困惑=月光〉の効果を発動。自分の場のモンスター〈岩山のように重く強い〉を【反転】させる」

 

 注射器を投擲され、【反転】状態へと移行する〈岩山のように重く強い〉。

 一瞬にして、小さなぬいぐるみからは巨大なビジョンが溢れ出てしまう。

 ゴツゴツとした岩で構成された、数メートルはあろうかという巨体。

 マッシブなシルエットと、獅子のような造形をした頭部を持つモンスターとなった。

 

「まだ、まだ大丈夫だ。俺には3体もブロッカーがいるんだ。パワーだって、負けてるのはこのライオン頭だけ」

「震えた声で自分に言い聞かせる。それを大丈夫と呼べるのはただの馬鹿だけだ」

「じゃあアンタは攻略できるのかよ!? たとえ戦闘破壊しても〈マジックキャンセラー〉は次の俺のターンになれば戻ってくる! そうすれば六帝相手だろうが絶対に勝て――」

「オレは手札から〈悪戯好きの水銀精霊(トリック・アンド・マーキュリー)〉の効果を発動」

 

 息荒く、声を震わせながら強がる牧野を意に返すことなく。

 黒崎は手札から新たなモンスターカードの効果を発動した。

 

「このカードを手札から捨てる事で3つの効果から1つを選んで発動する。オレが選ぶ効果は……キサマの場に存在するヒット0のモンスターを全て破壊する効果だ」

「ヒット0って、さっきアンタのモンスターのせいで」

「そう。キサマが自信満々に並べた3体の〈マジックキャンセラー〉には退場してもらおう。やれ、1番目の使徒よ!」

 

 意思を持った水銀の塊が、自在に形状を変えて牧野の場に襲いかかる。

 3体もいた〈マジックキャンセラー〉は形状を変化させた水銀によって、次々と串刺しにされてしまった。

 呆気なく全滅してしまう〈マジックキャンセラー〉を前にして口を大きく開けて驚く牧野。

 しかし……

 

「だったらコレだ! 俺は魔法カード〈暴虐の試練〉を発動!」

「自分のモンスターが破壊された時に発動でき、破壊されたモンスターのヒット数の合計だけ相手にデッキを上から破棄する魔法カードだったか」

「それだけじゃない。破棄したカードの中に魔法カードがあれば、1枚につき2点のダメージを与える」

 

 破壊されたのはヒット3の〈マジックキャンセラー〉3体。

 破壊後のステータスを参照するので、元々のヒット数で計算をする。

 合計9枚もデッキを破壊するとなれば、魔法カードも複数枚落ちる。そうなれば大ダメージは必至。

 

「メインフェイズ中ならまだ俺も魔法を使える。タダでやられやしねぇ、9枚も破棄すれば形勢逆転できる。食らえェェェ!」

 

 魔法効果が適用され、黒崎のデッキが9枚破壊されてしまう。

 凄まじい突風によって墓地に送られる黒崎のカード。

 牧野はダメージ元になる魔法カードを確認しようと、召喚器で破棄されたカードを確認するが……

 

「魔法カード……ゼロ枚!?」

「そうだな。オレにダメージは発生しない」

「なんでだよ、なんで今になって運の良さなんか発揮するんだよォ!」

「運ではない。決まっていた運命だ」

 

 バッサリとそう言い切る黒崎。

 何故決まっていた運命だと言うのか、黒崎勇吾というファイターを今まで知ろうともしなかった牧野には検討すらついていなかった。

 

「確かに普通のデッキなら何枚か魔法カードが落ちて、ダメージを受けてしまうだろう」

 

 だがな……と黒崎は牧野の睨みつけながら続ける。

 

「残念ながらオレのデッキは、40枚全てモンスターカードで構成されている」

「ま、まさか……そんな馬鹿な話があるか! フルモンスターデッキなんて、そんな馬鹿なデッキが」

「その常識がキサマを敗北という運命に導いた」

 

 現実受け入れられず動揺する牧野に、黒崎は言葉で追撃をしていく。

 

「世界を知る。相手を知る。サモンを知る。その果てなき道のりがオレ達帝王という強者を生み出した。改造ツールを使い、不正に手を染めて簒奪しようとするキサマには手の届かない領域だ」

「勝者が正義なんだろ!? だから勝とうとしたんじゃないか。ツールだってバレなければ問題にならなかった。負けた奴らが文句を言わなければ何も起きなかったんじゃないか!」

「……哀れだな」

 

 身勝手な主張ばかり吐き出す牧野に対して、黒崎は冷ややかな目と言葉で突き返す。

 もはや情けをかける余地は残っていない。であれば、この愚か者には自らが用意した道具で散ってもらおう。

 そう判断した黒崎は最後の詰めへと入った。

 

「墓地から〈隠匿されし(トロイ・トゥ)賢者の宝物庫(・ハーミット)〉のモンスター効果発動。9番目の使徒は墓地から除外する事で、場のモンスターを1体【反転】させる事ができる」

 

 そして黒崎は自身の場にいる〈蠱惑+怖く+困惑=月光〉を選択する。

 能力によって【反転】した瞬間、球体関節人間から大きなビジョンが姿を現す。

 それは背中に三日月を背負い、十本の指すべてに注射器が融合している、不気味で巨大な球体関節人形のビジョンであった。

 

「下準備は終わった。アタックフェイズ!」

 

 牧野の場にはブロッカーは存在しない。

 そして〈シーカー〉の能力によってアタックフェイズ中の魔法カードは封じられている。

 だがまだ大丈夫だと、牧野は自分に言い聞かせていた。

 黒崎の場にはヒット2と3のモンスター。そして〈シーカー〉に至ってはヒットが決まっていない。

 これならライフを削り切られる事はないだろうと、牧野は信じようとしていた。

 

「〈【運命の使徒】我は汝を時明かす者〉のヒット数は、オレの場に存在する【反転】状態のモンスターの数と同じになる」

 

〈【運命の使徒】我は汝を時明かす者〉ヒット?→3

 

「なっ!?」

「懺悔の時だ。〈蠱惑+怖く+困惑=月光〉で攻撃」

 

 攻撃宣言を受け、球体関節人形は指と同化している注射器を牧野に向ける。

 そのまま10本の注射針を容赦なく牧野の身体に突き刺した。

 

 牧野:ライフ10→7

 

 リミッター解除装置の影響で、牧野の身体には凄まじい衝撃が叩き込まれる。

 電流混じりのダメージはそのまま、牧野の皮膚を破っていった。

 

「ウギャぁぁぁ!?」

「続け〈岩山のように重く強い〉」

 

 続けてゴツゴツとした岩が集まったような巨人が、その巨腕と拳を躊躇いなく振り下ろす。

 ヒット2のダメージとはいえ、リミッターを解除していれば無事ではないダメージとなる。

 

 牧野:ライフ7→5

 

「ゴハッ! ゲホッゲホッ」

「〈岩山のように重く強い〉の【反転】時効果。コイツは2回攻撃ができる。やれ」

 

 続けてもう一度拳を叩きつけられ、今度は痛みで吐いてしまう牧野。

 残りライフは〈シーカー〉のヒット数と同じ3となってしまった。

 

 牧野:ライフ5→3

 

「オエッ……ゲホッ。ゆるして……ゆるしてください。もうやめて」

「キサマらの餌食になった人間がその言葉を口にした時、キサマらはどうした?」

「おねがい、します。もうこれ以上は」

 

 自分の罪を認めるでもなく。形だけでも被害者への謝罪を口にするでもなく。

 牧野という人間は保身の言葉だけを口にするばかり。

 となればもう全てが手遅れであり、弁明の機会は消失したも同然。

 

「チェックメイトだ〈シーカー〉」

 

 黒崎の指示を受けて〈シーカー〉は銃口を牧野へと向ける。

 顔を青ざめさせて、吐瀉物で汚れた口元を晒しながら、牧野は絶望の涙を流す。

 

「やめて、やめてください、もういたいのは」

「地獄で言ってろ」

「それではこれにて、チャオ」

 

 軽い言葉を口にして、〈シーカー〉は手にした銃の引き金を引いた。

 その瞬間を目にして牧野は錯乱したように絶叫するが、自分の運命から逃れようとするには全てが遅かった。

 

 牧野:ライフ3→0

 黒崎:WIN

 

 光弾によるトドメのダメージが、容赦なく身体に叩き込まれた牧野。

 その場で白目をむき、吐瀉物と失禁を撒き散らして意識を失ってしまった。

 

「どうだシーカー?」

「お安心ください。死んではいません」

 

 あくまで気絶しただけだと確認ができた黒崎は、小さく「そうか」とだけ相棒に返す。

 そして立体映像が消え、シーカーも元の姿に戻る。

 とりあえず仕事に一つ区切りがついたが、黒崎はある事に気がついた。

 

(例のウイルスカードという代物。シーカーが気配を感じていたが、コイツではなかったか)

 

 となれば隣で戦っている1年生達の相手、その誰かである。

 黒崎は今も戦っている後輩たちの様子に目を向けるのであった。

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