俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第百七十七話:同盟と気になる事

 放課後になる。

 クラスメイト達が教室を出て帰宅するか部活に行くかをしている中、俺は速水(はやみ)と一緒に六帝(りくてい)の先輩達の元を訪れていた。

 もちろん目的は、例の同盟に関する話をするためだ。

 俺は指定された空き教室の前に立つと、予め指定された回数だけ扉をノックする。

 

「やぁ、待っていたよ」

 

 中から牙丸(きばまる)先輩が開けてくれたので、俺と速水は誰かに見られる前にさっさと教室へと入った。

 空き教室なので、現在は使わない机や椅子を置くための倉庫代わりにされている。

 故に普通の生徒や教師は、用が無ければ基本的に近づいてこない。

 ましてや六帝評議会の生徒が理由をでっち上げて「使う」と言えば、わざわざ近づく奴もいないだろう。

 

(ワン)先輩、黒崎(くろさき)先輩。わざわざお手数をおかけしました」

「いいのいいの、ボク達の権力はこういう時に使わないとね。それよりもキミは、あの後どうだい?」

「はい、天川(てんかわ)達のおかげで……随分スッキリはしました」

 

 速水の近況を聞いた牙丸先輩は、小さくも満足そうに「そうか」と答えていた。

 あの時は本当に先輩にもお世話になったし、先輩も速水の事を心配してくれていたんだな。

 

「ところで女の子達の方は――」

「女子達なら都合が合わなかったので今日は欠席です……って黒崎先輩に伝えたはずですけど?」

 

 キョロキョロと女子達を探す牙丸先輩に、俺は淡々と事実を突きつける。

 いや実際には黒崎先輩と音無先輩の提案で「一回男だけで集まった方が、真面目に話を進められるだろう」となっただけなんだよな。

 一応表向きは都合が合わなかったという設定だし、実際に今頃は女子達が伊賀崎(いがさき)さんと交流を深めているから、間違ってはいないな。

 

「……勇吾(ゆうご)〜?」

「女子が来ないと言えば、先輩のやる気は間違いなく下がる。だからオレはギリギリまで教えないと判断したまでだ」

 

 恨めしそうに視線を向けてくる牙丸先輩を、黒崎先輩は華麗にスルーしている。

 まぁ牙丸先輩の性格を考えたら、誰だってそう判断するよな。

 ちなみに今日は音無(おとなし)先輩も欠席だぞ。ただし欠席理由は「評議会の書類仕事があるから」という真っ当なものだ。

 

「まぁ、ない者ねだりをしても仕方ない。本題に入ろうか」

 

 そう言って牙丸先輩は、現時点で把握できる政帝(せいてい)周りの様子について説明をしてくれた。

 とはいえ、ある程度ならアニメで見たから俺も把握できている。

 問題は、アニメで把握しきれなかった細かな部分だな。

 

「評議会補佐が増えていたか……あの男なら、使い捨ての壁として用意していてもおかしくはないな」

「ボクも驚いたよ。元々誠司(せいじ)の業務は多かったから、評議会補佐という名目で誠司直属の部下をやっている生徒は珍しくなかった。けどまさか、夏休み中に書類申請と受理が行われていたとはね」

 

 黒崎先輩はどこか納得をしていて、牙丸先輩は眉間に皺を寄せている。

 どうやら牙丸先輩曰く、政帝派の評議会補佐の一人に、嵐帝(らんてい)である風祭(かざまつり)(なぎ)が予め承認印と委任状を渡していたらしい。

 用意周到な事だと言う牙丸先輩に、俺と速水も頷いてしまう。

 俺としては数人の評議会補佐が、政帝の取り巻き兼終盤のザコ敵枠で出てくる程度のイメージだった。

 流石にこう細かな情報を添えられると、認識を改めざるを得ないな。

 

「単純に政帝を慕って集まった集団なのか、政帝が変な事をして利用している集団なのか。どちらなのかで俺は反応が変わりますよ」

「ボクとしては前者……と言いたいけど今のアイツの事だ、後者が混じっていても不思議じゃない」

 

 俺の言葉に、牙丸先輩が苦々しそうに答える。

 まぁそうだろうな。速水の件もあったし、どこかで自分用の駒を増やしていてもおかしくはないか。

 ただそうなると一番の問題は、カーバンクル含む化神達が学園とその周辺では眠りがちだという事だよな。

 以前聞いた黒崎先輩の話を思い出す限り、化神が見えているという政帝が何か仕込んでいる可能性は十分にある。

 

(なるべく起きているタイミングで動ければ良いんだけど……ダメな時は荒っぽいやり方しかないか)

 

 ウイルス戦はどうしても怪我をするからな。

 やっぱり回避はできるに越した事はない。

 

「ボクは評議会補佐の生徒を詳しく調べてみるよ。可能であれば、誠司から何も受け取っていない事を願ってね」

「ならオレは政帝周りの調査を続けよう。この前の心当たりも、確信に近くなってきたからな」

 

 そういえば夏休み終わりに、黒崎先輩が何か心当たりがあるって言ってたな。

 牙丸先輩が現時点での調査結果を聞こうとすると、黒崎先輩は突然召喚器を取り出した。

 

「全員、念の為召喚器の電源を切るんだ」

「……結果は良くなかったみたいだね」

 

 そう言って牙丸先輩は自分の召喚器の電源を切る。

 俺と速水も続いて、自分の召喚器の電源を切った。

 

「天川とは以前少し話したが、やはり政帝の背後にUFコーポレーションが関わっている可能性が高い」

「なっ、UFコーポレーションだと!? なんでそんな大企業が誠司の後ろに」

「それについては調査中だ。それに会社としてのUFコーポレーションが政帝に手を貸しているのか、それとも一部の人間が会社の名前を使っていただけなのか……何にせよ、かなり厄介なのが背後にいる」

「あんなカードを作る時点で、敵はデカいか」

 

 黒崎先輩の報告を聞いて、牙丸先輩は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて腕を組む。

 流石に当然の反応だよな。夏休み終わりに俺達がカードショップでアイから話を聞いた時も似たような感じだったし。

 

「勇吾、あまりに危険そうだったら今すぐ手を引いて――」

「大丈夫だ。流石に今回の調査には父さんの協力も得ている」

 

 黒崎先輩がそう言うと、牙丸先輩は「そうか、だったら万が一は回避できる可能性もあるか」と返していた。

 ……黒崎先輩の父親って? それアニメ未登場の要素なんですが。

 

「あぁすまないね、ボク達だけで納得してしまって。勇吾の親父さんは刑事なんだよ」

「少し特殊な部署だけどな」

 

 マジかよそんな設定あったのかよ。初耳過ぎてドキドキするんですけど。

 けどまぁ、俺も黒崎先輩に危険過ぎる橋は渡ってもらいたくないし、ストッパーになってくれそうな親父さんがいるなら安心だな。

 

「万が一の事が起きそうなら報告する。政帝の背後が分かれば……」

 

 ふと黒崎先輩は何か遠くを見るような様子で、眉間に皺を寄せていた。

 UFコーポレーションに何か因縁でもあるのだろうか?

 それとも別の何かか……そう考えた瞬間、俺の脳裏に浮かんだのは隠神島(いぬがみじま)の施設で見かけたレポート内容だった。

 

(……いや、アレは関係ないだろ)

 

 願望でしかないが、ついそう考えてしまう。

 黒崎先輩はウイルスの出所をさらに調べてくれるらしいが……これがアニメで何故か早期退場した理由に繋がらない事を祈るだけだな。

 

「そうだ天川。少し聞きたい事があるんだが」

 

 ふと、黒崎先輩が俺に質問をしてきた。

 

武井(ぶい)(らん)という女子生徒に、なにかおかしな点はないか?」

 

 ある意味では最悪のタイミングで飛んできた質問だった。

 藍についてか……流石にアレを話すわけにもいかないし、現状の藍は何か問題があるわけでもないし。

 

「いえ、特におかしな点は無いです」

「そうか……なら良かった」

 

 良かったか。

 その返事が安心できるものであると、俺は一方的に信じますよ?

 本当に……変な事に繋がらないで欲しいものだよ。

 

「現状ボク達の同盟のメンバーは帝王が4人に、天川と速水くん、愛梨くんにソラくん、そして藍くんだね」

「実力は申し分ない。だが評議会補佐が敵に回ると想定すれば、もう少し数が欲しくなるな」

「それは同感だね」

 

 そう言う牙丸先輩と黒崎先輩だが、決して新しいメンバーを探しに行くという話題にはならなかった。

 流石に今回の同盟が目指す戦いは、単純明快に危険が伴うからな。

 安易な気持ちで巻き込むのは躊躇われる。実際、俺や速水も二人の先輩と同じ気持ちだった。

 

「そうだ。誠司達が学園に戻ってくるのは、やはりランキング戦が開始する頃だってさ」

「姉妹校への交流にしては、随分と時間がかかっているな」

「そうだね。今だからこそ誠司達の動きが怪しいとボクも言えるよ」

 

 一応聞くところによると、現在政帝達がいるアメリカの姉妹校の様子に関しては、音無先輩が情報を集めてくれているらしい。

 なんでもアメリカの姉妹校には音無先輩の友人がいるんだとか。その伝手で政帝達の動向を教えてもらっているらしい。

 とはいえ、今のところ表立って怪しい動きはしていないのだとか。

 

「やっぱり、警戒を怠らないに尽きますね」

「そうだな。天川の言う通りいつ誰が感染していて暴走するか分からない以上、警戒を怠らずにいる他ない」

 

 化神持ちの黒崎先輩に言われると、重みが違い過ぎる。

 この場では主に俺だけに重みがかかっているけど。

 とはいえ、今日はこれ以上なにか話すべき内容も無さそうだ。

 そう考えて全員解散しようという雰囲気になった瞬間だった。

 

「あっ! そうだ」

 

 俺は先輩達に聞きたい事があったのを思い出した。

 

「どうした、なにか気になる事でもあるのか?」

「ちょっと気になる女子生徒が一人」

「天川、詳しく話を聞こうか」

 

 黒崎先輩がシリアスに進めてくれようとしたのに、牙丸先輩はホイホイ釣られやがってよう。

 まぁでも今回は牙丸先輩の力が必要な場面でもあるかもしれない。

 

「今日ウチのクラスに来た転校生について」

 

 転校生という言葉を聞いた瞬間、黒崎先輩だけでなく牙丸先輩も真剣な表情になった。

 やはり二人の様子を見るに、この時期に聖徳寺学園に転校してくるのは相当異質なんだろう。

 俺は知っている情報を先輩達に話し始めた。

 

「伊賀崎ヒトハちゃん。今日転校してきた女子生徒で、以前は女子校に通っていたと」

「この時期に編入しようと思えば、筆記と実技共に相当な実力を見せないと難しいはずだ。天川と速水には、その生徒はどう見えた?」

 

 黒崎先輩の質問に、速水は口元に手を持ってきて言葉を選ぶように悩む。

 一方で俺は率直な所感を先輩達に伝えた。

 

「Aクラスに配属されないどころか、編入試験を合格できるような実力はないと思います」

「ハッキリと言うんだな。だが天川がそこまで言うという事は、オレ達が実力を見ても同じ所感になるだろう」

「うーん、筆記試験の方で点を稼いでいると仮定をしてみたいけど……転校生ちゃんの実力について、天川からもう少し話を聞いてみたいな」

 

 牙丸先輩にそう聞かれてしまう。

 そういえば速水も俺と同じく伊賀崎さんの実力を疑問視していたけど、俺が疑問視した理由については詳しく説明していなかったな。

 

「伊賀崎さんが使っていたデッキは系統:《四葉(よつば)》というカードで構成されたデッキです」

「系統で統一しているなら、そこまで変なデッキにはならないだろ? プレイングに難があったパターンかな」

「王先輩、それなのですが……伊賀崎さんの使っていたモンスターは全て、ヒット0だったんです」

 

 速水の言葉を聞いて、流石に牙丸先輩も訝しげな表情を浮かべる。

 流石にヒット0のモンスターしか出さないファイターなんて、そういないからな。

 黒崎先輩も奇妙なものを見るような視線を向けてきている。

 

「効果ダメージを狙うバーンデッキか?」

「いいえ。彼女はただの一度も効果ダメージを使いませんでした」

「なんだそのデッキは。わけがわからない」

 

 ヒット0で効果ダメージも使わないとなれば、黒崎先輩の反応も当然ではあるな。

 俺は伊賀崎さんの使っていた系統がどういうものなのかを説明し始めた。

 

「系統:《四葉》はヒット0だし効果ダメージで勝つようなカード群じゃないんです。あのデッキの勝ち筋はただ一つ……効果による特殊勝利のみ」

「特殊勝利使いだと? だがそういう初見殺しのようなデッキを使うなら、編入試験にも受かりそうだが」

「黒崎先輩。俺が伊賀崎さんを疑問視した理由は、その特殊勝利の難易度にあるんですよ」

 

 系統:《四葉》のカード自体は前の世界でも存在はした。

 特殊勝利だけを目指すという風変わりなカード群なので多少の注目は浴びた……が、実際の使用者はお世辞にも多いとは言えなかった。

 その原因は特殊勝利の条件にある。

 

「【四葉】というデッキは、条件を満たして切り札となるモンスターの特殊勝利能力を発動する必要があります……だけどその難易度が」

「天川、どんな条件なんだ?」

 

 速水が聞いてきたので、俺は正直にその条件を答えた。

 

「系統:《四葉》を持つモンスターを4種類、それぞれデッキに入っていた3枚全てが除外されている事だ」

「合計12枚除外だと!? それを達成するまであのモンスター達で耐久し切るなんて無茶も良いところだぞ!」

 

 速水の言う通りであった。

 系統:《四葉》の特殊勝利の条件は困難な上、《四葉》には自分でカードを除外できるカードも極端に少ない。

 現実的に特殊勝利の条件を達成しようとすれば、そもそも他の要素が疎かになる。

 他を補おうとすれば、根本的に特殊勝利の難易度が上がってしまう。

 あまりにも極端なロマン砲、そのせいで前の世界では使用者がほとんど存在しなかったんだ。

 

「牙丸先輩、ここまで言えば分かりますよね?」

「そうだね。ボクの方でも調べてみよう」

「オレもその転校生が気になる。調べてみよう」

 

 不自然な実力とタイミングで転校してきた女子生徒。

 流石にここまで話せば先輩達も、伊賀崎さんの奇妙な点に気づいてくれた。

 それに関しては安心できるのだけれど――

 

「全部、杞憂で済めば良いんだけどな」

 

 どうしてもそう呟かざるを得なかった。

 先輩達や速水も、言葉にはしないが俺を否定する事は絶対になかった。

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