俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第一話:普通の日常でした

「〈【紅玉獣(こうぎょくじゅう)】カーバンクル〉で直接攻撃」

「……負けました」

「ありがとうございました」

 

 近所のカードショップで繰り広げられた、フリー対戦。

 それに勝利したのは俺、天川(てんかわ)ツルギ。

 

「いやぁ~、カードを使うタイミングが上手いですね」

「長年の実戦経験の賜物ですよ」

 

 対戦後の感想戦で褒められるのは、悪い気分がしない。

 それらも含めて、俺の日常の光景。

 

 大学の成績もパッとせず、何かすごい特技がある訳でもない。

 そんな俺の数少ない趣味がカードゲーム。

 特に十年近くやっている『モンスター・サモナー』(通称:サモン)の大ファンだ。

 今日やったのもサモンのフリー対戦。

 残念な事に、大学や家には強い対戦相手がいないので、こうしてショップで狩りをしているのだ。

 とは言っても、負ける時は負けるのだが。

 

「(でも逆転劇もカードゲームの醍醐味だからなぁ)」

 

 長い事サモンで遊んでいるが、特別ガチプレイヤーという訳ではない。

 割とファンデッカー寄りだと自負している。

 やっぱり好きなカードで勝つのは気持ちがいいのだ。

 

 それはさておき。

 

 俺は対戦相手にお礼と挨拶をして、カードショップを後にした。

 

 十一月の午後六時。

 外はすっかり暗くなっている。

 そんな暗闇を見ていると、何故か自然とネガティブな思考をしてしまう自分がいた。

 

「才能主義ってのは、面倒なもんだよなー」

 

 世界と自分に対して愚痴を零す。

 十九年生きて来て分かった事。それはこの世が才能主義だという事だ。

 それも評価される才能に限るという注釈がつく。

 

 ハッキリ言って俺には評価されるような才能は無い。

 特別学力が秀でた訳でもなければ、運動神経もイマイチ。

 あるのはせいぜい、長年培ってきたサモンの技術くらいだ。

 

「遊びで飯が食えたらいいのにな~」

 

 そんな無意味な願望を漏らしながら、俺は家へと歩く。

 

「あっ、お兄おかえり。晩ご飯できてるよ」

 

 家に帰ると、妹の卯月(うづき)が迎えてくれた。

 嬉しい事に夕飯も出来ているらしいが、俺は今日疲れていた。

 

「後で食う。今日は眠いんだ」

「あっそ。冷めたからって文句言わないでよね」

 

 唇を突き出して軽く叱ってくる我が妹。

 だが今日は本当に疲れているのだ。

 

 俺は自室に荷物を置くと、ベッドに転がりスマホをつけた。

 

「あっ、今日最新話の更新日か」

 

 いつも巡回している動画サイトを見ると、アニメの最新話が出てくる。

 小学生の頃から俺が追い続けているアニメ『モンスター・サモナー』だ。

 タイトルの通り、今日遊んでいたカードゲームのメディアミックス作品である。

 内容はいたって王道。

 カードゲームで世界存亡の危機が描かれる、超展開が売りだ。

 

「今回も語録になりそうなセリフが出てるなぁ」

 

 スマホの画面には、異形と化したライバルキャラをサモンファイトで元に戻そうと奮闘する主人公が描かれている。

 カードゲームで人間が異形と化すってなんだよ。

 まぁこのアニメシリーズは、十年近くそういうのばかりやっているのだが。

 

「……」

 

 俺は無言でアニメを見続ける。

 それと同時に、このアニメにおける世界を思い返していた。

 

 アニメの世界。それはサモンが全てを決めるカードゲーム至上主義世界。

 あたり前のようにプロシーンが存在し、政界財界にまでカードゲームの影響がでている。

 劇中では一枚のカードを作り出すのに数十億をかけるキャラクターが出たシーンもあった。

 

 きっとまともな人間からすればトチ狂った世界。

 だけど今の俺には、それが羨ましく思えていた。

 

「……いいなぁ」

 

 無意識に呟く。

 自分の大好きなカードゲームで成り上がれる世界。

 アニメのキャラクター達のように、カードで繋がれる友人が沢山できる世界。

 カードでヒーローになれる世界。

 それが羨ましくて堪らなかった。

 

「とは言っても。この世界のカードを持ち込めないんじゃ、たいして活躍もできないんだろうけどな」

 

 スマホを置いて、ベッドに沈む俺。

 アニメ世界ではレアカードの価値が高過ぎるのだ。

 きっとカードを持たずにあの世界に行ったら、碌なデッキを作れない。

 デッキの強さとカードプールは命に直結するからな。

 

「(だけど……もしもだ、あのアニメの世界に行けるのなら)」

 

 俺は大喜びで行くだろう。

 だから神様……

 

「(目を覚ましたら、アニメの世界に送り込んでください……なんてな)」

 

 そんな事を願いながら、俺は意識を闇に落とした。

 

 そう……願ってしまったのだ。

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