俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
禍々しい見てくれの獅子が、
狩るべき獲物を捕捉したかのように、〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は呻き声と唾液を漏らしていた。
元々ウイルス感染したモンスターは絶大な強化を得る。
とはいえ特別な効果によるものではなく、元々のパワーが30000という破格の数値は、大抵のファイターには脅威として映ってしまう。
「ぐっ、あぁぁぁッ!」
だが脅威が牙を向けるのは対戦相手だけではない。
強大な感染モンスターを従えている筈の凪にも、その代償が襲いかかる。
黒い痣は身体のあちこちに現れて、凪に激痛を与えていた。
もはや見ただけで分かってしまう異常事態に、藍は思わず声を上げてしまう。
「
「この程度の……この程度の痛みでェ、止まるわけには」
「止まらないと不味いって、どう見てもおかしいよ! なんでまだ続けようとしてるの!」
「全ては
目が赤く染まりながら、凪は言葉を続ける。
遠目でも分かる程、その目に宿るのは純然たる狂気。
目的以外を排除する事でしか絶頂に至れないと確信し過ぎた、無邪気な狂気であった。
同時に藍の脳裏に浮かび上がるのは、移動中にツルギや
「マイナス、養護施設、アナタ達はかつて被害者だった。それが今に繋がる動機なの」
「……誰から聞いたのですか」
「学園まで送ってくれた刑事さん。それとツルギくんも……曖昧な感じだったから、アタシはハッキリとした答えなんて知らないけど」
答えは明確化せずとも、ヒントはそこにある事くらい理解できる。
何より藍が思い返しているのは、移動中に勇巳が言った「かつて被害者であったとしても、今行った加害で塗り潰してしまえば取り返しがつかない」という言葉。
相応の理由はあるのだろう。だが今の彼らが行った事に対する免罪符にはならないと、藍も理解している。
「そういえば、貴女も私達と同じでしたね」
「それは、施設出身ってところだけ」
「十分ではないのですか? 施設の大人がどういう存在なのか、貴女はよく理解していると思いますが」
「アタシは世界を創り変えようなんて思わない。そうなる理由もない。だから政帝に手を貸すアナタを理解したくない」
ハッキリと拒絶を言葉にする藍。
それを聞いた凪は心底退屈そうな顔を浮かべて、どこか失望のような雰囲気を漂わせていた。
同時に藍が気になる事はただ一つ。黒い痣に自身を蝕ませる事も厭わない、凪の誠司に対する忠誠心だ。
「ねぇ、なんで
「……愛です。愛してくれたのです」
「愛?」
「穢れた私を知っても、不完全な身体だと知っても、あの人だけは私を愛してくれました。お互いに身も心も搾取されましたが、それでもあの人は私を側に置いてくれました」
頬を赤らめ、虚な目で語る凪。
陶酔や狂信、あるいは一線を超えた依存。
普通なら到達し得ない領域に足を踏み入れた女が、そこにはいた。
「好きだから、従うの?」
「そうです……それに貴女も、コレを見れば少しは理解できるのではないでしょうか?」
そう言うと凪は、上着とスカートの間に指を入れて、軽くずらしてみせた。
開いた場所から彼女の素肌が部分的に見える。
そう、見えてしまったのだ。
見えてしまったからこそ、瞬間的に
「分かりますか? 分かりますよね。同じ女性ならコレが何か」
「それ……誰かに?」
「大人ですよ。施設の大人と、私達を買った大人がこうしたのです」
淡々と言いながら、凪は上着とスカートを元の位置に戻す。
その様子を見て、藍は既に彼女は壊れてしまったのだと、嫌な確信を得てしまっていた。
「幸せとは難しい事です。私はもう子を産めませんが、未来に負の遺産を残すような愚行は望んでいません」
「だからウイルスを撒いたの?」
「ウイルスは未来への方舟です。悪に死を与え、真に秩序ある世界を創り出す。その変革の過程で血が流れるのであれば、それは必要な犠牲です」
「……じゃあ、アナタも同じだ」
自分達の大義を語り微笑む凪に、藍は真っ直ぐ言い放つ。
「大きな力にメチャクチャにされたから、より大きな力で世界を変える。誰の話も聞かないで、色んな人や化神を犠牲にしてゴリ押しするんだったら、それはアナタを壊した大人達と同じ」
「違う」
「違わない。誰かのためって言ってるけど、アナタ達は自分のために八つ当たりしてるだけ。自分にとって都合のいい世界を創ろうとしているだけ。自分の強さを悪用して、大人達と同じ事をしているだけ――」
「違うッッッ! 私もあの人も、幸せな世界を創りたいだけ!」
ヒステリックに叫びながら、凪はドローフェイズを行う。
失った幸せを、平凡を取り戻す。
その願望は察したが、その為に手段を選ばなかった彼女達に、藍は下手な擁護をしようとは思わなかった。
「アタックフェイズ! 〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉で攻撃ッ!」
メインフェイズは何もせず、凪はそのまま攻撃へと移った。
禍々しくも黒い獅子は、咆哮を上げて牙を剥き、全身から生えている鎌を向けてくる。
「〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉の攻撃時効果、【禍風:∞】を発動。お互いの墓地に眠るカードを全てデッキに!」
黒い暴風が巻き起こり、双方の墓地からカードがデッキに戻される。
暴風は真空の刃を発生させて、藍の場にいる2体の竜に近づいてきた。
「な、なんかヤバそうブイ」
「気をつけろ! あのバケモノは墓地にカードが存在しない者の数だけ、モンスターを墓地送りにしてくるぞ!」
「墓地にカードがないって、今2人だからオイラ達全滅じゃねーか!?」
「そういう事だ。
シルドラは振り向くや、すぐさま藍の名を叫ぶ。
何か策を打たなければブイドラ共々除去されてしまう。
そうなっては大打撃、最悪敗北は免れない。
「分かってる! 魔法カード〈トリックエスケープ〉を発動!」
藍が発動したのは、ツルギから教えてもらったモンスター回収魔法。
「効果で〈ブイドラ〉と〈シルドラ〉を手札に戻す。そして戻したモンスター1体につき、ライフを1点回復!」
『ふい〜、危なかったブイ』
『我らに召喚コストがなくて良かったな』
藍:ライフ5→7
「化神には逃げられましたか。ですが肝心のファイターはがら空きです」
「っ! ライフで受ける」
この攻撃を防ぐ手段を、今の藍は手札に持ったていない。
そして受けても敗北しないダメージなら、ここは大人しく受けた方が良いだろうと、藍は判断した。
自身を遮る存在がない〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は一切の容赦なく、鋭利な鎌が生えた前脚を藍に叩きつけた。
「ッッッ!」
『藍!』
藍:ライフ7→3
手札からブイドラが藍の名を叫んでくる。
4点のダメージ。それもウイルスによるダメージの実体化も合わさって、藍の身体には生々しい切り傷ができている。
傷口からは血が流れ、床に数滴落ちていた。
それでも藍は痛みを堪えて立ち続ける。
『大丈夫か!?』
「大丈夫だよ、これくらい……ダメージのおかげで、コレも発動できるし!」
シルドラの心配を他所に、藍は1枚のカードを手札から発動した。
「魔法カード〈リベンジバースト!〉を発動!」
『それは、
手札からシルドラの驚く声が聞こえる。
藍が使ったカードは以前、合宿でツルギが小太郎とファイトをした時にも使用していたカードであった。
「便利そうだったから、アタシもデッキに入れてみたんだ……〈リベンジバースト!〉は相手から一度に4点以上のダメージを受けた時に発動できる魔法カード」
その効果でカードを2枚ドローし、藍はこのターン中に受ける全てのダメージを3点軽減する事に成功した。
「そのカードのために、わざと攻撃を受けたという事ですか」
「友達ってね、スゴいんだよ……みんな違うから、色んな事を学べて……色んな世界を知れる」
「多様過ぎる世界は諍いを生みます。ウイルスは人間を夢と幻に閉じ込める事も容易。それぞれに正しい役割を与えて、正しい範疇の多様性に生きれば、世界は健全になります」
「……息苦しい」
「それを利己主義と呼ぶのです」
目に見えぬ火花が二人の間で飛び散る。
思想信念の違い。水と油のように相容れないのであれば、戦いにて決着をつける他ない。
自身の効果で回復した〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は起き上がり、再び藍の方へと狙いを定める。
「回復した〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉でもう一度攻撃!」
「ライフッ!」
ダメージは軽減されているとはいえ、元々のヒットは4。
1点のダメージは免れない。
藍の正面に透明な防御結界が現れるが、それを突き破って、黒い獅子の鎌は襲いかかってくる。
藍:ライフ3→2
一枚の鎌が結界を突破して藍の頬を斬りつける。
連鎖して身体中の傷口に痛みが走るが、藍は気合いで歯を食いしばる。
まだライフは残っている、負けられないという強い思いがあるからこそ、藍は決して折れようとはしなかった。
「ターンエンドです。あとは時間の問題ですね」
凪:ライフ5 手札4枚
場:〈【
「……アタシのターン」
ライフ差は大きい。盤面に至っては何もない。
そんな不利的な状況だが、まだ藍には手札がある。
ならば諦める理由はない。
「メインフェイズ! もう一度きて〈ブイドラ〉〈シルドラ〉!」
「任せるブイ!」
「ヤツを討つまで、倒れる訳にはいかぬ!」
再び召喚される2体の小さな竜。
だがこれだけでは勝てない。
ならば勝利の可能性を引き当てるまで。
「魔法カード〈ビクトリードロー〉を発動! デッキの一番上をオープンして、それが系統:《勝利》を持つカードなら手札に加える!」
オープンしたカード:〈【
「手札に! そして【Vギア】を達成しているから、さらに2枚ドロー!」
強力な切り札は手札に来た。だがそれだけでも勝てない。
相手は絶大なパワーと能力を持つ怪物。
だが藍には一つだけ策があった。
ある人物をヒントにしてデッキに入れておいた、感染モンスターへの秘策が。
(ドローしたカードは……よし!)
策は、手札に来た。
なら次は勝ちに行くのみ。
「いくよ、ブイドラ!」
「よっしゃあ! 派手にいくブイ!」
「進化条件は系統:《勝利》を持つモンスター1体! アタシは〈【勝利竜】ブイドラ〉を進化!」
藍が1枚のカードを仮想モニターに投げ込むと、真っ赤に燃える魔法陣がブイドラを飲み込んでいく。
灼熱の炎はブイドラの身体へと流れ込み、その存在を進化させていった。
「絶対勝利の誓いをここに! 真っ赤に爆ぜてドラゴン魂! 〈【勝利竜王】ビクトリー・ドラゴン〉召喚!」
「負けねェ、オイラ達は負けられねェェェ!」
巨大な炎塊を突き破り、雄々しき姿をした紅蓮の竜が降臨した。
〈【勝利竜王】ビクトリー・ドラゴン〉P13000 ヒット2
「報告のあった対ウイルス用のカードですか……しかしそのカードの召喚時効果は」
「今使っても意味がない。【
「パワー勝ちもできないなら、わざわざ召喚する理由も薄いですね」
凪の言う通りであった。
仮にこの後、アームドカードの〈ビクトリーセイバー〉を武装しても、〈ビクトリー・ドラゴン〉のパワーは23000にしかならない。
他のカードを使ってさらにパワーを上げても、凪の墓地にカードが存在しないので、〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は回復状態で場に残る。
〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉自身の回復効果も合わせれば、あまりにも守りが強固過ぎるのだ。
「たしかに。そのカードはすごくパワーが高くて、倒してもすぐに復活しちゃう」
だけど――藍は口元に笑みを浮かべて続ける。
「倒せない敵は、倒さなければいい!」
「なにを」
「これがアタシの答え! 魔法カード〈
「ッ!? そのカードは
藍の使う【勝利】デッキなら、普通は絶対に入れないであろうカード。
だが藍は覚えていたのだ。ツルギとツララのファイトに出てきた、このカードの存在を。
そして気づいたのだ、このカードが持つ凄まじい突破力に。
「〈氷河の牢獄〉はモンスターを1体選んで【凍結】状態にするカード。凍結したモンスターはどうなるのか、アナタは分かりますよね?」
「ッ……凍結状態のモンスターは攻撃もブロックもできず、効果は無効化される」
「どれだけウイルス感染して強力なモンスターになっても、氷漬けになったら何もできない!」
凄まじい冷気が戦場を包み込む。
禍々しく黒い獅子は、一瞬にして巨大な氷の中に封じ込められてしまった。
「何故、こんな事を」
「出会えたから思いつけたの。ツララ先輩やツルギくん、
「その自己満足でッ、世界を醜悪なまま放置する気ですか!?」
「手を伸ばし続けなきゃ、誰かに全部勝手に決められたら、そっちの方がアタシには後味が悪いの!」
腹の底、心の底から、藍は己の叫びを上げる。
「みんな生きてる。みんな戦おうとしてくれている。誰かが勝手に決めた世界じゃない、アタシ達が自分で選んだ世界で生きたいから」
「それが間違いだと何故気付けないんですかッ!」
「勝手な犠牲を作った方が間違いだよ! 自分達だけで決めて、新しい世界を無理強いして、誰かの生きたいって願いまで踏み躙ったのに、なんで目を逸らしてるの!?」
「大義ッ、正義ッ! それ以外に不要!」
「分からずやァァァァァァ!」
パートナーの絶叫を背に、〈ビクトリー・ドラゴン〉は咆哮を上げて攻撃を仕掛ける。
可能性があるなら、たとえ相手が外道に堕ちても手を伸ばしたかった。
罪を償うというなら、それを受け入れようとも思った。
そんな藍の僅かな思いも、今この瞬間に足蹴にされたのだ。
紅蓮の竜は怒りの咆哮と共に、風祭凪を見下ろす。
「覚悟しろよ。消し炭すら残してやらねェからな!」
「……馬鹿ですね」
「アァン!?」
「いくら凍結状態にしても、カード名や系統は参照できるのですよ」
怒りに燃える〈ビクトリー・ドラゴン〉に対して、凪は淡々とカードを1枚使用する。
「魔法カード〈断絶の
凄まじい風が〈ビクトリー・ドラゴン〉の動きを阻んでくる。
凪に到達するより先に弾き返されてしまい、そのまま藍のアタックフェイズは終了してしまった。
「ターンが終われば凍結状態は解除されます。アナタの策もこれで――」
「なら、ターンが終わらなければいい!」
藍の言葉を聞いて、真っ先に笑みを浮かべたのは〈ビクトリー・ドラゴン〉であった。
相手によってアタックフェイズを終了させられる。
これを発動条件とするカードを、彼はギョウブとの戦いで経験していた。
「魔法カード〈ドラゴニック・リベンジ〉を発動!」
「アタックフェイズを終了させたのが間違いだったな! コイツの効果で、オイラ達はもう一度アタックフェイズを行えるブイ!」
「さらに〈ドラゴニック・リベンジ〉の効果で〈ビクトリー・ドラゴン〉を回復!」
凪は、自分が追い詰められた事を悟ってしまった。
新たに始まったアタックフェイズにより、藍のターンは継続する。
そして残る攻撃回数はヒット2の〈ビクトリー・ドラゴン〉が2回。
同じくヒット2の〈【王子竜】シルドラ〉が1回。
全ての攻撃を受ければ、合計ダメージは6点で凪のライフでは耐えられない。
その上、凪の場にあるのは凍結状態の〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉のみ。
「どうやら、勝負あったようだな」
シルドラは冷静に、だが怒りも込めて凪に言い捨てる。
今の凪には、防御札を手札に抱えている者特有の余裕は見受けられない。
ポーカーフェイスを装っているが、微かな焦りはシルドラに見抜かれていた。
「いくよ〈ビクトリー・ドラゴン〉!」
「任せろッ!」
紅蓮の竜は口の中に膨大な炎を溜め込む。
その一方で凪は自分の手札を見つめながら、ブツブツと何かを呟いていた。
「こんな……あぁ……約束……あの人との……私は……」
困惑、絶望、嫌悪。
様々な黒い感情が渦巻く中、凪は手札にある1枚のカードを見つめる。
そんな彼女の感情に反応するように、黒い痣はさらに凪を蝕み始めていた。
「申し訳ありません……誠司様……」
「これで終わりだァァァ! ドラゴニック・ブレーザァァァァァァ!」
最大限に溜め込んだ炎が、〈ビクトリー・ドラゴン〉の口から放たれる。
最初の一撃であり、決着に向けた一撃。
この一撃を食らうとは、即ち凪の敗北をも意味する。
だからこそ……それを一番理解している凪だからこそ、その禁を破ってしまった。
「約束、破ります」
そう言って凪が1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ瞬間であった。
感染モンスターを封じていた巨大な氷塊が砕け散り、〈ビクトリー・ドラゴン〉の攻撃を打ち消してしまったのだ。
「なっ!? まだ防御カードを持って――」
「待て、なにか様子がおかしいぞ!」
シルドラの言葉で〈ビクトリー・ドラゴン〉も異質さに気がつく。
凍結していたはずの〈カオスヘイトレッド・ネルガル〉は確かにそこにいる。
だが様子がおかしい。背中は破け、頭部からもドロドロの闇が漏れ出ている。
先程攻撃を防いだのも、このドロドロの闇だったようだ。
「【凍結】が、解除されてる……!?」
「たとえ凍結状態でもッ、カード名はッ、参照できます……」
「アナタ、何を使って――ッ!?」
突然解除された凍結を不思議に思っていたが、藍はすぐに凪が何をしたのか理解してしまった。
仮想モニターに表示されている、凪が発動したカード。
藍も想定していなかった、2枚目がそこにあった。
「魔法カード……〈【暗黒感染】カオスプラグイン〉を発動ッ!」
「2枚目のウイルス――って、まさか感染対象は」
「そのまさかです。感染済みのモンスターにも、ウイルスは追加で感染させられる。私は〈【嵐神の感染】カオスヘイトレッド・ネルガル〉!」
ウイルスを過剰に注入された黒い獅子は、苦悶の雄叫びを上げながら闇に飲み込まれていく。
今まで想像もできなかった程の闇とウイルス。
それらは使用者である凪にもいくらか逆流していった。
「あ“ァァァァァァァァァァァァ!」
凪の苦悶の叫びが響き渡る。
身体中に出ていた黒い痣は、血のように赤みがかり。
血管のようなものが脈打ちながら浮かびあがって、右眼に至っては見えているのか分からない程真っ赤染まっていた。
「闇を胎動させ今こそ降誕せよ。汝は世界を終焉させる落とし子なり!」
獅子を飲み込んだ闇は、胎のような球体形状となって浮かび上がる。
ドクンドクンと鼓動すると、闇の球体に無数の切れ目が現れ、血が流れ始めた。
悍ましい、そんな安易な言葉で足り得る存在でない。
藍やシルドラ、〈ビクトリー・ドラゴン〉は言葉を失いながら、その光景を見ることしか出来なかった。
「
瞬間。切れ目が開いて、目が現れた。
虚無を象徴するような闇の球体から、血の涙を流して怨嗟と復讐を誓うような印象を出してくる。
その怪物は球体のまま、口らしきものも無いが、耳をつん裂くような凄まじい産声を上げてきた。
「ピギャァァァァァァァァァァァァ!」
「さぁ、存分に壊しなさい……〈【シン化獣:
悍ましさ……否、それよりも恐ろしいものがあった。
藍と〈ビクトリー・ドラゴン〉は呆気に取られて言葉を失う。
召喚された闇の球体が持つステータス……それはあまりにも、想像力の外にある数字をしていたのだ。
辛うじて口を開く事ができたのは、シルドラのみ。
「なんだ、それは」
〈【シン化獣:末期型】ヴォイドヴァンジェンス・ネルガル〉P66666 ヒット6
「パワー……66666だと!?」