俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百二十二話:VとS−全てはこの瞬間のために−

 カードをドローし、(らん)は自分の手札を確認する。

 あるのは前のターンに〈カサ乱舞地蔵!〉の効果でドローした2枚目の〈ビクトリードロー〉と、〈ブイ・ラブスネーク〉〈キングダムセイバー〉。

 そして、今ドローしたカードは……

 

「ブランクカード……」

 

 藍の持つ2枚目のブランクカード。

 だが以前とは異なり、既に淡い光を帯び始めている。

 持ち主の心に反応して、変化が始まっているのだ。

 同時に藍は本能的に理解した。今自分が望んでいる力と、まだ必要なパーツが揃っていない事を。

 

「メインフェイズ……魔法カード〈ビクトリードロー〉を発動!」

 

 揃っていないパーツは引き寄せなければならない。

 藍はお得意のドロー魔法に、最後の賭けを仕掛けた。

 効果で藍はデッキの一番上のカードをオープンする。

 

 オープンしたカード:〈セイバーオーラ〉

 

「これ、ツルギくんの」

 

 昨日の予選開始前にツルギから託されたカード。

 持っている系統は《勝利》と《王竜》なので手札に加わる。

 だがこれだけでは足りない。

 

「さらに【Vギア】の効果で2枚……ドロォォォォォォ!」

 

 これが最後のドロー。

 これで外せば負ける。

 藍は恐る恐るドローしたカードを確認し――〈ビクトリーセイバー〉が来た事を確認した瞬間、笑みが浮かんだ。

 

「きたっ! あっ――」

 

 必要なパーツが揃ったからだろう。

 淡い光を帯びていたブランクカードが激しい光を放ち、絵柄とテキストが浮かび上がる。

 それは藍が心の何処かで強く望んでいた1枚。

 友の魂と共に戦いたい、共に勝利を掴みたいと望んだ藍の心が生み出した、偉大な竜の姿が描かれていた。

 

「……そっか、これって全部このためのテキストだったんだ」

 

 藍は変化したブランクカードが持つ系統を確認すると同時に、長らく自分が抱いていた疑問が晴れていくのを感じていた。

 それは〈ビクトリーセイバー〉と〈キングダムセイバー〉に書かれていた用途不明なテキスト。

 そしてツルギから託された〈セイバーオーラ〉が持つ奇妙なテキスト。

 

(今なら分かる……全部この瞬間のためにあった効果なんだ)

 

 まるで誰かがこの展開を予見していたかのような、奇妙な気持ちはあった。

 だがそれ以上に、藍は皆の力を合わせて突破口を見出せた事が嬉しくて仕方なかった。

 自然と藍の顔には笑みが浮かんで、心はワクワクと高鳴ってくる。

 

「うん……テンション爆アガッてきた!」

 

 藍の様子、そしてブランクカードの光を背にしたおかげで、二体の竜の心からも「敗北」の文字は消え去っていた。

 そしてブイドラとシルドラの足元には黄金に輝く魔法陣が出現する。

 

「ブイ? これって」

「温かい光だ。鼓動を感じる」

「ブイ、これってシルドラの……」

「ブイドラの、生命の鼓動……」

 

 二つの生命は鼓動が重なる。

 ブイドラとシルドラは、自然と自分達がやるべき事を理解した。

 自分達の思いを、目的を、そして明日を重ねる事を誓った。

 藍は変化したブランクカードを一度胸に当てて、友の事を想う。

 

真波(まなみ)ちゃん、一緒にいこう」

 

 そして目を開き、藍は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。

 

「進化条件は……系統:《勝利》と《王竜》を持つ、進化ではないモンスターをそれぞれ1体ずつ! いくよ!」

「がってんブイ!」

「承知した」

 

 小さな竜の足元に現れた魔法陣は、さらに黄金の輝きを放ち始める。

 二つの力、二つの想いを一つに束ねるために。

 

「〈【勝利竜】ブイドラ〉!」

「〈【王子竜】シルドラ〉!」

「「融合進化ァァァ!」」

 

 黄金の魔法陣が二体の竜を取り込み、一つの強大な存在へと纏め上げていく。

 同じ敵を討つために。己の信念のために。共存したい友のために。

 ブイドラとシルドラは一つになっていく。

 

「勝利の誓い、王の矜持。今ここに交わりて未来を切り拓く双刃となる!」

 

 魔法陣を突き破り、新たな竜の王が姿を現す。

 それは何者をも寄せ付けぬ、黄金の鱗と鎧に身を包んだ強者。

 それは未来のために己の力を行使できる、王の到達点。

 

『これがオイラ達のォォォ!』

『我らの到達点!』

『『融合進化形態だァァァ!』』

 

 そしてそれは、勝利()()が一つになった、勝利を約束する最強の進化竜。

 

「〈【必勝(ひっしょう)大王竜(だいおうりゅう)】バーサス・アーク・ドラゴン〉召喚!」

 

〈【必勝大王竜】バーサス・アーク・ドラゴン〉P10000 ヒット3

 

「なにかと思えば、パワー10000程度のモンスターですか」

『それで終わるわけがなかろう!』

「〈バーサス・アーク・ドラゴン〉の召喚時効果を発動! 手札からアームドカードを2枚まで、顕現コストを無視して顕現できる!」

 

 シルドラの声に応じるように、藍は手札に来ていた2枚の聖剣(アームドカード)を場に出した。

 

「来て〈ビクトリーセイバー〉〈キングダムセイバー〉!」

「足りませんね、なにもかも」

『それはオイラ達の能力を見てから言えブイ! 藍!』

「うん。アタシは〈ビクトリーセイバー〉を〈バーサス・アーク・ドラゴン〉に武装(アームド)!」

 

 黄金の竜は場に刺さった二振りの剣から、紅い刀身の大剣を左手で抜き取る。

 だがこれで終わりではない。

 二つの聖剣に秘められていたもう一つの能力、藍は今こそそれを使用した。

 

「さらにアタシは〈キングダムセイバー〉を……〈バーサス・アーク・ドラゴン〉に二重武装(ダブルアームド)!」

 

 続けて黄金の竜は、もう一つの聖剣を右手で抜き取った。

 本来ならありえないアームドカードの二刀流。

 流石の凪もこれには驚愕していた。

 

「馬鹿な、アームドカードは1体につき1枚しか」

「〈ビクトリーセイバー〉と〈キングダムセイバー〉には特殊能力があるの。系統:《勝利》と《王竜》を両方持つモンスターなら、この2枚は武装上限を無視して武装できる」

「条件付きの、二刀流……!?」

『まだだ、オイラ達はまだ終わらねェェェェェェ!』

 

 絶叫と同時に、〈バーサス・アーク・ドラゴン〉の身体から炎が噴き出る。

 

「〈バーサス・アーク・ドラゴン〉の【SVギア】! 〈ブイドラ〉を素材にして進化しているならパワー+13000。さらに武装しているカード1枚につきヒットを+1!」

 

〈 【必勝大王竜】バーサス・アーク・ドラゴン〉P10000→P23000 ヒット3→5

 

「それでもまだ足りませんね。何も変わらない」

「諦めたら何も変えられない。だからアタシ達は諦めないの! アタックフェイズ!」

「その瞬間〈ヴォイドヴァンジェンス・ネルガル〉の効果を発動。【禍風(まがつかぜ):∞】を行い、貴女のモンスターを全て破壊します」

 

 黒い風が墓地のカードを全てデッキに戻す。

 そして闇の球体が呼び出した死霊兵士が、黄金の竜に襲いかかってくる。

 しかし竜がその黄金の鱗や鎧を輝かせると、死霊は瞬く間もなく消滅してしまった。

 

『残念だったな。我を進化素材にしている限り、貴様の効果では破壊されん!』

 

 シルドラの声と共に、〈バーサス・アーク・ドラゴン〉は右手で握った剣の先を突きつけて、そう言う。

 これが〈バーサス・アーク・ドラゴン〉の効果の一つ。〈シルドラ〉と名のつくモンスターを素材にすれば、効果破壊されなくなる能力だ。

 

「いくよ! 〈バーサス・アーク・ドラゴン〉で〈ヴォイドヴァンジェンス・ネルガル〉を指定アタック!」

 

 〈キングダムセイバー〉の武装時効果によって得た【指定アタック】。

 〈バーサス・アーク・ドラゴン〉は凄まじい咆哮を一度上げると、両手に剣を握ったまま闇の球体へと勝負を挑んだ。

 だがパワーの差は歴然。〈ヴォイドヴァンジェンス・ネルガル〉目を歪めながら新しい玩具を楽しむかのように、悍ましい鳴き声を上げる。

 

「無駄な事を、パワーはこちらが上です」

「それを今から変える!」

 

 藍は手札に来ていた1枚のカードを仮想モニターへと投げ込んだ。

 彼がきっと、この状況を予測して託してくれたのだと思って。

 

「ツルギくん、力を借りるよ! 魔法カード〈セイバーオーラ〉を発動! 効果で系統:《勝利》を持つモンスター〈バーサス・アーク・ドラゴン〉のパワーを+7000!」

 

〈 【必勝大王竜】バーサス・アーク・ドラゴン〉P23000→P30000

 

「それでもまだ――」

「さらに〈セイバーオーラ〉の【Vギア】を発動! 効果対象になったモンスターが武装している『セイバー』と名のつくアームドカード1枚につき、パワーを+20000!」

「1枚につき20000ですって!?」

 

〈 【必勝大王竜】バーサス・アーク・ドラゴン〉P30000→P70000

 

「そして〈ビクトリーセイバー〉の効果で! 攻撃中のパワーを+10000!」

『ウォォォォォォォォォォォ!』

 

〈 【必勝大王竜】バーサス・アーク・ドラゴン〉P70000→P80000

 

「パワー……80000、ですって」

 

 凪はたじろいでいた。

 絶対に超えられないと信じていた切り札のパワーを、こうも容易く超えられた事に。

 だが魔法効果さえ無効にすれば、まだ返り討ちにできる。

 そう凪が考えた瞬間、黄金の竜からシルドラの声が響いてきた。

 

『言っておくが、無効化できると思わない事だな』

「〈セイバーオーラ〉の【ロードストライク】で、アタシの場に系統:《王竜》を持つモンスターが存在する限り、このカードは無効化されない」

「そん……な……」

 

 言葉を失う凪。

 その隙に〈バーサス・アークドラゴン〉は二つの聖剣を手にして、闇の球体へと斬りかかる。

 

「ピギャァァァァァァァァァァァァ!?」

『貴様が喰らってきた無辜の生命!』

『全部、吐き出しやがれェェェェェェ!』

 

 球体に浮かぶ目ごと斬り裂くと、闇の中へと続く穴が開く。

 外は球体であったが、中は広大な暗黒空間になっていた。

 迷う事なく、〈バーサス・アーク・ドラゴン〉は球体の中へと飛び込む。

 

『アレが核のようだな』

 

 暗黒空間の中心部。

 そこに浮かんでいたのは、黒く小さな胎児のようなものであった。

 だが人間のソレとは全く違う、異形の存在。

 同時に〈バーサス・アーク・ドラゴン〉の中から、ブイドラが声を上げてきた。

 

『アイツ……ギョウブを縛ってた奴と同じ気配がするブイ!』

『なるほど。では尚のこと討ち取らねばならないな』

 

 ブイドラは本能的に察したのだ。

 中心部で核となっている存在は、ギョウブを苦しめていた黒い存在と同じだと。

 ならば斬り捨てるべき対象はただ一つ。

 黄金の竜は二つの聖剣を手にして、核に飛びかかった。

 

 だが凪にはまだ余裕が残っている。

 

「無駄です。たとえパワーが高くとも、墓地にカードが存在しないプレイヤーがいる限り〈ヴォイドヴァンジェンス・ネルガル〉は場を離れる場合、代わりに留まります」

「……〈ビクトリーセイバー〉第二の武装時効果発動!」

 

 暗黒空間の中で、〈バーサス・アーク・ドラゴン〉が手にした紅い大剣から黄金の光が放たれる。

 

「〈キングダムセイバー〉と同時に武装した状態で攻撃した時、このターンの間、相手はモンスターを墓地から召喚できず、場に残す事もできない!」

「残、せない……!?」

 

『これでオマエを倒せるブイ!』

『覚悟しろ!』

 

 暗黒空間では、今まさに核を潰されそうになっている。

 凪は焦りを覚えつつも、最後の策を手札から発動した。

 

「魔法カード〈断絶の神風〉を発動! アタックフェイズを終了してしまえば、何も問題は――」

 

 問題はない……そう言い切るより先に、凪の発動した魔法カードは灰のような物と化して粉々になってしまった。

 効果を無効化され、無意味に墓地へと落とされてしまったのだ。

 

「な、なにが、おきて」

「〈キングダムセイバー〉第二の武装時効果。〈ビクトリーセイバー〉と同時に武装していれば、相手は効果でアタックフェイズを終了できない」

 

 万策が尽きたと理解した凪は、手を震わせながら呆然としている。

 だがそれで終わりにする訳にはいかない。

 暗黒空間では全ての妨害が消えた事で、黄金の竜が最後の一撃を叩き込もうとしていた。

 

『いくぞブイドラ! 呼吸を合わせろ!』

『そっちこそ、ついてきやがれェェェェェェ!』

 

 二つの聖剣は黄金に輝き、あらゆる闇を浄化する光となる。

 

『『双竜奥義! デュアル・パニッシャァァァァァァ!』』

 

 一閃。

 核となっていた胎児らしき物体を両断するや、外では闇の球体が苦痛に目を歪めていた。

 崩壊していく暗黒空間から〈バーサス・アーク・ドラゴン〉が脱出すると、闇の球体にできた裂け目から無数の光が吐き出されていった。

 弱々しい光もあれば、まだ力のある光もある。

 今まで喰らわれてきた化神達の魂が、天に還っていく光景であった。

 

「これで、アナタを守るカードはなくなった」

「まさか、私が、こんな相手に」

 

 最後の切り札である二重感染モンスターを撃破された凪は、うわ言のような呟きを続ける。

 確信していた勝利が揺らぎ、一気に敗北が眼前まで迫ってきたのだ。

 だがそれで、彼女を許す道理はない。

 自身の2回攻撃効果によって、〈バーサス・アーク・ドラゴン〉は回復し、風祭(かざまつり)凪を睨みつける。

 

『これでもう、貴様を守る者はいなくなったな』

「私が……こんな不完全な生命体にッ!」

『不完全でも生きている。藍も真波も、他のみんなだってオイラ達を生命だって認めてくれたブイ。ヒトハもそうだった』

 

 一歩、また一歩と確実に、黄金の竜は怒りを込めて歩み寄る。

 

「ようやく、ようやく私達は、幸せになれるはずだったのにッ!」

「たった一度……一度でも振り返っていたら、アタシ達は今ここにいなかった」

「間違ってない。私達はなにも間違ってない!」

『……哀れだな』

 

 右手で聖剣の先を向けながら、冷たく吐き捨てる〈バーサス・アーク・ドラゴン〉。

 同情の余地はない。あるのは審判を下すという意思のみ。

 

『永遠に懺悔し続けろ、嵐帝(らんてい)

「化神のみんなだけじゃない。ヒトハちゃんだけでもない」

『テメェらが踏み躙ってきた全ての……全ての生命に対してだァァァァァァ!』

 

 躊躇いはない。

 黄金の竜は激怒の咆哮を上げながら、二つの聖剣を振り下ろした。

 

「こんな、こんなやつらにィィィ!」

 

 凪:ライフ5→0

 藍:WIN

 

 強烈な一撃はウイルスと共に、凪の身体へと叩き込まれる。

 浮かび上がっていた血管は裂けて、血が流れ出てしまう。

 激痛とウイルスの代償が重なり、凪は顔を醜く歪めたまま、その場で気を失ってしまった。

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