俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百三十二話:その名はソラナキ

 ソラナキ。

 最強にして最悪の化神とは、かなり物々しい呼ばれ方だな。

 

「それが、エオストーレやカーバンクルが戦った相手なのか?」

「はい。ソラナキは強大な存在であると同時に、底なしの悪意を取り込んだ化神……いいえ、アレはもはや虚無や闇そのものと化していると言っても過言ではありません」

 

 俺の質問に答えてくれるエオストーレ……だがその瞳の奥は、想起した邪悪に対する嫌悪が浮かんでいた。

 底なしの悪意、虚無や闇そのものと化した化神か。

 フレーズ的にも、どこかの人造化神(クイーン)を思い出してしまう。

 

「ソラナキはその邪悪極まる存在から、我々化神が『狭間の空間』と呼ぶ場所へと幽閉されていました」

「狭間の空間……ですか?」

「簡単に言ってしまえば、世界と世界の狭間にある高エネルギー空間の事です。ワタクシ達化神も、元を辿れば『狭間の空間』に存在する高エネルギー体の一部ですから」

 

 エオストーレが精一杯簡単な単語を使って説明をしてくれるが、ソラはいまいちピンと来ていないのか首を傾げている。

 なんなら頭上に疑問符を浮かべて、目も点になっている。

 だがそれはそうとして……世界と世界の狭間か。

 

「異世界との狭間って事か?」

「その通りです。本来なら『狭間の空間』を境界線とする事で、異なる世界は決して交わらないのです」

 

 思わず口に出してしまった異世界という言葉。

 少し焦りそうになったけど、エオストーレが本題から逸さなかったおかげで助かった。

 

「その『狭間の空間』に幽閉されていたソラナキを……この世界の人間が解き放ってしまった」

 

 そして、12年前の戦いで敗北を喫した。

 悲壮感と後悔が滲んだ、シリアスな表情を浮かべているエオストーレ。

 だけど湯呑みに魔剤(エナドリ)のおかわりを淹れながらだと、どうにも絵が締まらない。

 

「ソラナキには壮大な野望や目的などありません。あの化神にあるのは『終わり』という概念に対する、異常極まる好奇心と残忍さだけです」

「……そいつは、今もどこかで生きている。そう解釈して問題ないっプイ?」

「その通りです。アレは今もこの世界で生きているでしょう……あのウイルスを作った人間の元で」

 

 なるほどといった様子で納得しているカーバンクル。

 だが流石にこれは俺も口を挟ませてもらいたい。

 

「ウイルスって、ウイルスカードの事だよな?」

「はい。先日ワタクシが目覚めた際に蔓延っていたウイルスです。特に主犯格であった二名からは、僅かですがソラナキと同じ気配を感じました」

 

 恐らくウイルスカードに、ソラナキの一部を使っていたのだろう――と続けてくるエオストーレ。

 化神を材料にしていただけではない。さらに向こう側にいる邪悪も大きく関わっていた可能性。

 終わっているけど、終わっていない。

 まさかこうもいきなり自分達に降り掛かるとは思わなかった。

 

「最悪の化神の一部を組み込む……だとすれば、あの蟲ケラが言っていた事も腑に落ちるっプイ」

 

 蟲ケラ、つまり伊賀崎さんに取り憑いていたクイーンの事だ。

 確かに思い返してみれば、クイーンはカーバンクルに踏みつけられている時に「パパが消したはず」なんて言ってたな。

 恐らくその「パパ」というのがソラナキなんだろう……とは言っても、今はただの推測の域でしかない。

 

「悪用しているのはどちらなのか、はたまた両者共になのか、それは分からない。だけどボク達やパートナーに火の粉が降り掛かるのであれば、此方は全力で応戦するだけっプイ」

「それで解決できれば、一番良いのですけどね」

 

 やや悲観的なエオストーレ。

 だけど俺はカーバンクルと同じ気持ちだった。

 如何なる脅威が来ようとも、自分に降り掛かる厄災は自分で討ち払うしかない。

 ソラナキが今どこにいるのかは分からない……が、一連のウイルス事件を思い返すなら、黒崎先輩が言っていた『財団』の元にいる可能性はあると思う。

 ただそうなると気になる事も出てくる……

 

「なぁエオストーレ。そもそも的な話なんだけど……ソラナキを解き放った人間って誰なんだ?」

「分かりません。えぇ、思い出せないんですよ……どこかの大馬鹿ウサギが強烈な一撃でワタクシを休眠状態にした影響で」

 

 はいカーバンクルさん目を逸さないでね。

 お前少しは加減しろよ。大事な情報まで吹き飛ばしてるじゃねーか。

 まぁ話を聞く限りエネルギー切れによる記憶障害っぽいし、その内回復はするんだろうけどさ。

 

「ただ一つ言える事は、ソラナキを解放した人間には『狭間の空間』へ干渉する手段があるという事。あの空間に手をつけられる以上、生半の対抗策では敵わないと思って良いでしょう」

 

 深刻な雰囲気でそう告げてくるエオストーレ。

 『狭間の空間』へ干渉する手段があるという事は、異世界の存在を観測している可能性を考慮する必要もある。

 何せ世界と世界の狭間だからな。

 

(だけどそうなった場合……)

 

 俺達家族の事は知られると考えて良いだろう。

 異世界転移という異物混入。

 原作知識やカードプールという、ある種最強のチートを宿してやってきた……バケモノ。

 その事実はどうやっても変えられない。

 

「ツルギくん、大丈夫ですか?」

 

 心配そうに俺の顔を覗いてくるソラ。

 色々と思うところがある。だけど何となく、この子にそれを悟られてしまうのは避けたいと思ってしまう。

 

「大丈夫、心配ない」

「だったら良いんですけど、顔が青くなっていたので」

「……よくない想像をしてた。それだけだから」

 

 全部は隠しきれない。

 ただ漠然とした表現だけを口にしておく。

 

「ウイルスの件もあったし、来年には世界大会も始まるし……また悪どい奴らが動くのかなって思ってさ」

「もうツルギくんったら。そんなアニメや漫画じゃないんですから、大事件が頻発するわけないじゃないですか」

「ソラ……それ化神という非日常を前にしても言えるか?」

「……平穏が一番ですね」

 

 ソラさん、目を逸らして逃げないでください。

 今俺達の眼前には平凡の真逆に位置する存在がいるんですよ。

 まぁ俺達のパートナーは平凡ではなくとも、平穏ではあるんですが。

 

「さぁカー蛮クルよ。まさかこの程度でワタクシの激情が収まると思ってはいませんね?」

「き、記憶にございません。ございませんから許して欲しいっプイ」

「許す許さないの決定権はワタクシにあります。頭を垂れて平伏しなさい。貴方に反論の権利は与えません。貴方はワタクシの言葉に『はい』か『イエス』で答えればいいのです」

 

 ……やっぱ平穏ではないかもしれない。

 どうすんだよこの大天使。完全にパワハラ会議発動し始めてるじゃん。

 マジで10年以上積もらせた鬱憤を晴らす気だなこれ。

 

「隙を見てカードの中に逃げよう……そう考えましたね?」

「キュップイ!? いや、違っ」

「なにが違うのですか? 言ってみなさい」

 

 すげーな、天使なのに背後に阿修羅とか鬼神の類が浮かんでるぞ。

 これはしばらく終わりそうにないな。

 

「なぁソラ。俺らは下の部屋に行こうぜ」

「えっと、大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だろ、殺し合ったりはしなさそうだし。あとはお若い二人でという事で」

 

 いや俺らの方が年下(推定)なんだけどね。

 

「それもそうですね。せっかくですし文化祭のお話でもしましょう」

「評議会メンバー最初の仕事が文化祭って。ちょっとハードじゃね?」

「ですね〜……あっ〈聖なる魔剤〉のカードは置いておきますから。飲み過ぎはメッですよ」

 

 そう言って〈聖なる魔剤〉のカードをエオストーレの元に置いておくソラ。

 これで魔剤を呼び出せる辺り、エオストーレさん意外と安上がりだな。

 

「感謝します、ソラ」

「ツルギー! ボクを、ボクを置いていかないでぇぇぇぇぇぇ!?」

「逃しませんよ。限界中間管理職の嘆きをその身に理解(わか)らせて差し上げます」

 

 そして部屋を出る俺とソラ。

 扉を閉めた瞬間、後ろから「ア“ァ”ァ“ァ”ァ“ァ”ァ“!?」という悲鳴と、何かがボキボキと砕ける音が聞こえてきた。

 ……きっと気のせいだ。カーバンクルには過去と向き合ってもらおう。

 

「そういえばツルギくん。この前鳳凰院(ほうおういん)さん達が怒ってましたよ」

「あぁ〜財前とのファイトの件だろ? 呼び忘れてたの謝ったんだけどなぁ」

「ファイトが終わった後、二人とも会場の外でスタンバってましたもんね。体育座りで」

 

 あの時は本当に申し訳ない事をした。

 完全にド忘れしてたんだよ。

 その結果出来上がったのが、会場の外で体育座りで待っていた鳳凰院姉妹という絵面。

 当然ながら俺達が発見した次の瞬間には「なぜワタシ達に声をかけないのですか!?」「スズ達ずっとここでスタンバってたデスよ!?」と、めちゃくちゃ怒られたよ。

 

「また学校で会ったら謝っとくか」

「その方が良いかもですね……文化祭でも色々手伝ってもらいますし」

 

 その通りなんだよな。

 まぁ少なくとも、文化祭が終わるまでは大きな事件なんて起きない筈だし。

 入学してからずっと気を張っていたからな、久々に普通の学生イベントを楽しみたいもんだ。

 

(あっ……でも楽しいイベントの前に)

 

 新しい評議会補佐候補の皆様の動向を、注視しておかないとな。

 評議会メンバーではなく、評議会補佐の……ね。

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