俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百三十三話:あの子のペガサスとか制限改訂とか

 突然のエオストーレの来訪から数日が経った。

 (まつり)誠司(せいじ)との戦いを終えて、俺達は晴れて六帝(りくてい)評議会の新たなメンバーとなったわけだが。

 その評議会の新メンバーがまず初めにする仕事というのが……まさかの文化祭なのである。

 

(冷静に考えなくても珍しい時期に文化祭をするんだよな)

 

 秋ではない、12月開催である。

 聖徳寺(しょうとくじ)学園ではクリスマス直前に文化祭をする習慣があるのだ。

 まぁ真面目に答えると学校内でのランキング戦やイベント諸々の関係で、12月下旬に押しやられただけでもある。

 とはいえ忙しい事には変わりなく、今日は帰宅して早々グッタリとしいます。

 

「つ、疲れたぁ」

「あっ、お兄帰ってきてたんだ」

 

 先に帰っていた卯月は、リビングでテレビを観ている。

 疲労困憊の兄に対して、あっさりとした妹だ。

 いいよな中学校は、普通のシーズンに普通の文化祭でさ。

 

「卯月、お前も聖徳寺学園を目指さないか? 文化祭の準備でヘトヘトになろうぜ」

「進学はしてもいいけど、評議会は遠慮しとく。アタシは一般学生として文化祭楽しみたい」

「役職付きになろうぜ〜」

 

 などと誘ってみるも、卯月には「嫌」と軽く断られてしまう。

 こんな兄の姿を見ては当然の反応か。

 

「あっ、智代がよく話題にする子だ」

 

 ふと卯月はテレビを観ながらそんな事を呟く。

 俺もテレビの方へ視線を向けてみると、そこには『今年の出来事ふり返り』というテロップと共に、今年のJMSカップの様子が映し出されていた。

 どうやら決勝戦の切り抜き映像らしい。

 

「智代ちゃんが話題に出すって事は……あぁ、この子か」

 

 カメラがフォーカスしているのは一人の女の子。

 白に近い灰色の髪に、以前チラっと見かけた時は全く気にしていなかったけど、青のインナーカラーやメッシュを入れている。

 全体的に特徴が分かりやすいというか、カラーリングのせいでVtuberみたいになってるな。

 確かソラとアイが言ってた今大人気の配信者……早乙女コスモ。

 

「そうそう早乙女コスモちゃん。チャンネル登録者も同接数もめちゃくちゃ多いんだって。智代がいっつも『目指せコスモ超え!』って言ってるし」

「俺も前にソラとアイから少しだけ話を聞いたな……あの時はそれどころじゃなかったから全く気にしなかったけど」

 

 だってウイルス事件真っ最中ですし。

 そのすぐ後には戸羽達との騒動があって、さらにその後は二学期の諸々だぞ。

 JMSカップの中継アーカイブすら見れてない。

 なのでここぞとばかりに優勝チームの試合をチラ見します。

 

「ん? この子のデッキって……」

 

 盤面の映像が出てきた瞬間、あまりにも見覚えがあるモンスター群がテレビに映った。

 相手選手の方じゃ無い……早乙女コスモの場に並んでいる、2体のペガサス型モンスター。

 

〈コズミックペガサス・マイナ〉P6000 ヒット1

〈コズミックペガサス・メジャー〉P9000 ヒット1

 

 こいぬ座を司る、小さな体格のペガサス。

 その隣にはおおいぬ座を司る、大型のペガサスが並んでいる。

 あの2体が出るという事は――

 

『コスモといっしょに、羽ばたいていこー!』

『『『うぉぉぉぉぉぉ!』』』

『キラキラ輝け天馬の翼! 星の海を駆け抜けて、コスモを勝利へ導いちゃえ! おいで〈【星海天馬(せいかいてんま)】コズミック・ペガサス〉!』

 

〈【星海天馬】コズミック・ペガサス〉P13000 ヒット1

 

 白銀の翼を輝かせて、1体のSRモンスターが場に降臨する。

 あれはソラも使っているカード。という事は……

 

「この子、【聖天使】デッキを使うのか」

 

 意外とこの世界ではソラ以外に使っている人を見かけなかったからな。

 どこか珍しさと懐かしさを感じてしまう。

 

「あれ、ソラさんもペガサス使うの?」

「最近パックで当てたかたら、使うようになってたな。とは言ってもこの子とはデッキの型が違うんだけど」

 

 一口に【聖天使】デッキといっても、いくつかの型は存在する。

 ソラが使っているのは、系統サポートをメインにした一番オーソドックスな型。

 一方、今テレビに映っている早乙女コスモが使っているのは、『ペガサス』という名称サポートをメインに据えた型。

 通称【ペガサス型聖天使】である可能性が高い。

 

「へぇ〜。デッキにバリエーションの出せる系統ってちょっと羨ましいかも」

「あぁ……【蛇竜】ってそんなにバリエーション出ないもんな」

 

 強化パーツ自体は真っ当にあるんだけど、基本的には『デッキ破壊』か『特殊勝利』の二択になってしまう。

 一応ライフを狙いに行けるカードもあるけど……【蛇竜】なら素直にデッキ破壊した方が早いし強いからなぁ。

 目に見えて分かるバリエーションは、ちょっと出しにくい系統ではある。

 

『続きまして、昨日UFコーポレーションから発表された、新たな制限改訂に関して――』

 

 特殊が終わり、番組は次の話題へと移行する。

 そういえば昨日新しい禁止制限リストが発表されてたな。

 

「ねぇお兄……制限改訂が発表されるたびに学校が半日で終わる社会っておかしくない?」

「俺はもう慣れた。制限改訂の内容に関しても慣れたぞ」

「お兄の慣れは、前の世界とリスト内容が微妙に違うとかそんなんでしょ」

 

 その通りです我が妹よ。

 この世界の禁止制限リストって、基本的には前の世界と変わらないんだ。

 だけど一部のカードがリストに入っていないという事態がたまに発生している。

 具体的にはウイルス感染後のカードや、この世界では正規ルートで入手できないカードがそれだ。

 

「でも基本的には前の世界と同じなら、別に良いじゃん」

「それはそうなんだけどさぁ……こう当事者的な立場になると、急に前の世界の都合を押し付けられてる感があってさぁ」

 

 良くも悪くもカードゲームアニメあるあると言うべきか。

 前の世界で更新された禁止制限リストが、そのままアニメ世界にも反映されてしまうやつだ。

 反映された結果、妙なタイミングで露骨に出番が減るカードが出てくるあれだよ。

 この世界も例外ではないんだって、数年経って身に沁みました。

 

「ちなみに今回の制限改訂って、お兄のデッキはどうだったの?」

「予想通りの大打撃を食らったぞ。予想通りだから特別ショックも何もないけど」

 

 卯月とそんな話をしていると、ちょうどテレビに新たな禁止制限リストが出ていた。

 とはいっても全てを表示すると量も多いので、今回新たに規制されたカードに焦点が当てられている。

 

【新たに規制されたカード】

●禁止カード

〈【終末の獣】アジダハーグ〉

〈リブラエンジェル〉

●制限カード

〈バレルナイト〉

〈ジャスティスエンジェル〉

〈【王の幻槍(げんそう)】グングニル〉

〈セブンソウルリバース〉

〈REビクトリー!〉

 

「これ7枚中3枚お兄が使ってるカードじゃん」

「でも前の世界でも似たような規制あったから、あんまり痛手らしい痛手は感じないんだよな。むしろ〈夢幻夢想(むげんむそう)大図書館〉が規制回避しただけで大儲けだぞ」

「カードゲーマーのそういう基準はよく分からない……」

 

 ため息を吐く卯月。

 だけど実際、俺としては痛手どころか想定内に収まってくれたおかげで大儲けとしか言えない。

 前の世界では同時期の改訂で〈夢幻夢想大図書館〉も制限になって、本当に大打撃を受けていたからな。

 ちなみにこの世界の禁止制限リストは年1回の改訂なので、前の世界の改訂内容4回分がまとめてやってくるぞ。

 

「……そう考えたら今回の改訂って被害受けた人少ないんじゃね? 汎用カードあんまり無いし」

「急にどうしたのお兄」

「カードゲーマーの独り言だ。気にしないでくれ」

「ふーん。ところでちょっと聞きたいんだけど」

 

 新しい制限リストを指差して、卯月が質問をしてくる。

 

「〈ジャスティスエンジェル〉はソラさんが使ってたから知ってる。〈バレルナイト〉と〈REビクトリー!〉も名前からして九頭竜さんと藍さんのカードって分かる……〈リブラエンジェル〉は本当に知らないんだけど」

「あぁ、そいつは前の世界でもサモンをしっかりやってる人じゃないと凶悪さが分からないカードだったからなぁ」

「エンジェルって名前だから、【聖天使】のカードだとは思うんだけど」

 

 その通り。

 もっと言うとそいつは所謂『友情破壊カード』でもある。

 アイツの凶悪さは使われると分かるが、分かった時にはもう敗北しているんだ。

 

「じゃあ一度テキストを見てみようか」

 

 俺はスマホを操作して〈リブラエンジェル〉のテキストを表示させる。

 こういう時カードショップの画像って便利なんだよね。

 

「……なにこれ?」

 

 パッと見ではこのカードに秘められた凶悪さが分からなかったのか、訝しげな表情を浮かべる卯月。

 ちなみ〈リブラエンジェル〉のテキストはこれである。

 

 

リブラエンジェル

系統:聖天使

P1000 ヒット0

効果①:お互いに、回復状態のこのカードは効果で選べない。

効果②:【天罰】(自分のライフが相手より多い場合に、このカードは以下の効果を得る。)

◆ カード効果で相手の手札が増えた時に発動する。相手は同じ枚数だけ自身の手札を捨てる。

 

 

 一見すると相手のドロー効果を妨害するだけのモンスター。

 しかしカードゲームに慣れている人間ほど、このカードの秘めたおかしさに気づいてしまうのだ。

 

「要するにドロー系のカードを無力化するってカードよね? なんで一発で禁止になってるの?」

「テキストの書き方が悪かったんだ……コイツは前の世界で【聖天使】が環境入りした理由の八割を担っていると言っても過言ではない」

 

 ちなみにこの〈リブラエンジェル〉は、俺がソラにデッキを渡した時に1枚入れておいたカードでもある。

 単純にパワーカードだからという理由で入れていたんだけど、今思えば俺とんでもない1枚を入れてるな。

 ただ不幸中の幸いとでも言うべきか、なぜかソラの〈リブラエンジェル〉は毎回デッキの底に沈んでいたので……召喚された瞬間を1度も見た事がない。

 

「というか、テレビの内容もそうだけどさ……この世界の人達って禁止制限を受けたカードが、何故規制されたのかって理由を分かってる人少なくないか?」

「言われてみれば確かに。露骨過ぎるくらい強いカードならまだしも、コンボを要求するカードの規制理由とかアタシもすぐには分からないし」

「……なぁ卯月。前に智代ちゃんの配信に出る約束をしてたじゃん」

「バタバタしててまだ出てないけど……お兄、まさか」

 

 はい。いい事を思いつきました。

 

「やろうぜ。出張サモン教室番外編……『禁止カード解除選手権』を」

「禁止カードだけなんだ」

「いやだって、制限カードに言及したらまた経済が混乱しそうだから。禁止カードなら良いかなって」

「……まぁいっか」

 

 無事に妹から許可を得ました。

 既に禁止指定されたカードの解説なら、大きな混乱は起きないだろ。

 というわけで早速卯月に頼んだ智代ちゃんにメッセージを送ってもらう。

 

「流石に全部は無理だから、何枚かピックアップして紹介するぞ」

「分かってる……あっ返信きた。やろうってさ」

 

 よし、やりましょう。

 そして配信リスナーの皆様には……規制理由でもある地獄みたいな挙動の全貌を教えてやろう。

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