俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
トイレ休憩を済ませたので、配信再開です。
「はい『禁止カード解除選手権』続きまして紹介するカードはコチラ。名を〈リブラエンジェル〉と申します」
「あっ、これこの前の制限改訂で禁止指定になったカードですよね」
「その通り。なので知っている人もいるかもしれないけど、改めてテキストを確認してみよう」
さぁリスナーの皆さま、コイツの危険性がわかるかな?
「えっと、パワー1000でヒットは0。回復状態ならお互いに効果対象にできない……ですか?」
「メインはその後の【天罰】なんだけどな。ちなみに【天罰】は相手よりも自分のライフが多ければ適用される能力だ」
「つまり〈リブラエンジェル〉は自分のライフが相手より多ければ、相手のドロー効果を妨害できるという事ですか」
”なるほど、ドロー系のカードが無意味になるのか。これは出されると面倒だな“
”面倒なカードだけど、これそこまで強いかな?“
”↑わかる。パワーもヒットも最低だし、回復状態じゃないと耐性も使えないから微妙に見える“
”↑それもうフラグにしか見えないんよ“
”あれ……? なんかコイツのテキストに違和感があるんだけど……“
どうやら智代ちゃんもリスナーも、このカードが秘めた凄まじい力にピンと来ていないようだ。
では今からそれを解説しよう。
「えー、この〈リブラエンジェル〉は今CHIYOちゃんが言った通り、相手のドロー効果を事実上無力化する能力を持っています」
「でも先生。それって使われると厄介ですけど、禁止指定になる程のカードなんですか?」
「リスナーの皆さまも似たような事を言っていたし、実際俺も初見の時はそういう感想を持っていました」
だがこのカードのテキストを注意深く見ると、実はとんでもない事が見えてくる。
「それでは皆さま、改めて〈リブラエンジェル〉の【天罰】のテキストを見てみましょう」
【天罰】(自分のライフが相手より多い場合に、このカードは以下の効果を得る。)
◆ カード効果で相手の手札が増えた時に発動する。相手は同じ枚数だけ自身の手札を捨てる。
「お分かりいただけるだろうか? この天秤座がもたらす理不尽なまでに平等な効果範囲の広さが」
「……えっ、あれ!? まさかこのカードって」
「はいじゃあ答え合わせしますね〜。〈リブラエンジェル〉の効果範囲は所謂ドロー系の効果を持つカードだけではありません。カード効果によって手札が増える全ての事象が対象という、DL●iteもビックリな
具体的な例の一覧も作ってきたので、配信画面に映しておく。
所謂ド直球なドロー系の効果以外に、〈リブラエンジェル〉が妨害してくる効果は――
・デッキから特定のカードを手札に持ってくるサーチ効果。(例:〈ザ・ビーストゲート〉など)
・場のモンスターが手札に戻ってくるバウンス効果。(例:〈トリックエスケープ〉など)
・墓地のカードを手札に加える回収効果。(例:〈セブンソウルリバース〉など)
「とまぁこんな感じだな〜。コイツの効果発動条件って効果でドローした時じゃなくて、効果で手札を増やした時だから。たとえ手札の総枚数が変わっていなくても、効果でカードを手札に加えたらその瞬間相手に
”広すぎて草超えて森超えて火災消失した“
”ペンペン草一本残らねぇ“
”おいマジでふざけんな。手札の総枚数増えてないなら発動しなくても良いだろ!“
”↑増えた扱いになるんだよね。サモン難しい“
「先生……ちょっとこれは流石に強い気が」
「まぁ実際強いから禁止指定になったんだけどな。ただコイツの一番凶悪な点は、『カードをドローする効果』ではなく『カードが手札に加わった』という事象に反応する事なんだ」
「……? 何が違うんですか?」
まぁ流石にこれはすぐに分からないよな。
もちろんそう言われるのは想定済みなので、ちゃんと資料を用意してある。
「じゃあ分かりやすい例を出してみよう」
画面に簡単な盤面図を表示してもらう。
とは言っても、そこまで複雑な情報は必要ない。
「現在相手のターン。相手の場にはモンスターを1体出せる空きがあります。そして対する自分は次のターンのスタートフェイズに〈フューチャードロー〉によって2枚のドローが確約されています」
「ふむふむ。ライフは相手の方が多い状態なんですね」
「その通り。ではここでCHIYOちゃんとリスナーの皆さまに問題です」
相手のライフが多い状態で、相手は〈リブラエンジェル〉を召喚してそのままターンを終了しました。
次の自分のターンのスタートフェイズに、自分は〈フューチャードロー〉でカードを2枚ドローします。
この時〈リブラエンジェル〉の効果は発動しますか?
「……えっ? そんな事ありませんよね?」
”ハハハご冗談を……冗談だよね?“
”おいまさか発動するとか言わないよな“
「CHIYOちゃん、リスナーさん、残念ながら〈リブラエンジェル〉の効果が発動するので手札を2枚捨てる事になります」
「後出ししてもOKなんですか!?」
「天秤座は平等に罰を下す。たとえ2ターン後に効果を予約する脱法ドローであっても、天秤座が後出しジャンケンでお気持ち表明をすれば、我々はそれに従って手札を捨てるしかないんだ」
”理不尽にも程があるだろ!“
”自称キラキラ系のフェミニストみたいな効果だな“
”アナログファイトでこれやられたらテーブルぶん殴る自信がある“
よしよし、やっとコイツの凶悪さが伝わってきたみたいだな。
じゃあギアを上げていくぞ。
「とまぁここまでが〈リブラエンジェル〉の普通の使い方です」
「普通……? 先生、普通じゃない使い方でもあるんですか?」
「むしろそっちの方が禁止指定された最大の理由だと思うぞ」
”まだやらかすんですか(震え声)“
”これ以上なにヤる気なんだよ“
”下手なホラー映画よりもホラーかもしれんたすけて“
「はいそれじゃあリスナーさんも期待しているようなので、〈リブラエンジェル〉を使ったコンボを紹介したいと思います」
先攻1ターン目3枚クッキングの始まり始まり。
用意するカードはコチラ!
〈リブラエンジェル〉
〈リセットドロー〉
あとは自分のライフを回復するか、相手のライフにダメージを与えるカード1枚。
以上です。
「〈リセットドロー〉って確かお互いの手札を全て捨てて、捨てた枚数分+1枚のカードをドローする魔法ですよね? 前に蛇姫ちゃんも使っていました」
「そうだな。そしてコンボの手順もすごく簡単」
簡単なので予め作っておいた手順を配信画面に表示する。
まずは回復かダメージのカードを使って、自分のライフが相手より多い状態を作ります。これで【天罰】の条件を達成。
次に〈リブラエンジェル〉を召喚して、最後に〈リセットドロー〉を使うだけ。
「さっきも言ったけど〈リブラエンジェル〉は『カードを手札に加えるという事象』に反応して効果が発動します。つまり先攻1ターン目にこれをやると果たして相手はどうなるのか?」
「先生。相手の手札が0枚になってます」
「そうですね。抵抗できなければ後攻1ターン目初期手札0枚からスタートとなります。そうなったら大抵のデッキは、最初のドローで引いた1枚に全てを賭ける他ないんだよ。そんな神頼みする以外にやる事のないファイトを、皆さまはやりたいですか?」
“やりたーい……わけねーだろォォォ!”
“先攻1ターン目にやっていい事じゃない”
“こんな一方的なリセットが許されてええんか!?”
“これが罷り通るなら俺は今すぐ仏門に入る”
はい、前の世界と似たような悲鳴をありがとう。
つまりそういう事なんだ。
単体でもヤベーのに、他のカードと組み合わせるともっとヤベーんだよ。
しかも今紹介したコンボって必要なパーツが少ない上に汎用カードだから、前の世界では【聖天使】とは無関係なデッキに出張採用される事も多々あった。
「あっ、もしかして先生が言ってた〈竜巻のピエロ〉との組み合わせって」
「これは禁止制限が無かったらというIFの話になるんだけど……〈リブラエンジェル〉が場にいる状態で〈竜巻のピエロ〉を使うと似たようなコンボができる」
しかも〈竜巻のピエロ〉を併用した場合、相手は追加で2枚ドローさせられてしまう。
そうなれば最終的に手札0枚、墓地いっぱいという地獄絵図が出来上がってしまう。
「特殊ルールでな、禁止制限を全解除してやるファイトがあるんだけど……【クロックトルネード】に〈リブラエンジェル〉を雑に突っ込むだけで『デッキ破壊戦術』と『手札破壊で相手をコントロールする戦術』を柔軟に使い分けられる天下無双のアルティメット無法デッキを爆誕させる事ができるんだ」
「うわぁ……」
「禁止制限が無い世界ってそういうのと戦う事になるんだけど、やりたい?」
「絶対に嫌です」
めっちゃいい笑顔で言うじゃないか智代ちゃん。
だけど大正解だ。
“禁止制限全解除ルールとか地獄すぎて草”
“見るぶんには面白いだろうけど、間違っても自分ではやりたくない”
“禁止制限って大事ですね。本当に大事ですね”
「では最後に解除レベルなんですが、〈リブラエンジェル〉は9とさせていただきます」
「えっ、10じゃないんですか!?」
「ここまで解説した通り〈リブラエンジェル〉は非常に凶悪な効果を持っていて、単体でも系統の垣根を超えてデッキに採用できる汎用性の高いカードです。ただその反面、コイツは効果対象にならないという耐性こそ持っているけど、パワーとヒットは最低値なので『対象を取らない効果』には滅法弱いんだ」
しかも〈リセットドロー〉とのコンボは凶悪だが、サモンには〈リセットドロー〉を1ターン目に確定で手札へと持ってくる手段が存在しない。
そうなると今後の除去カードの増加次第では、〈リブラエンジェル〉を突破する方法が生まれる可能性はある。
ただし可能性がある
「まぁ何が言いたいのかというと、解除レベル10を超えてる奴らはもっとヤベー連中という事です。だからといって〈リブラエンジェル〉が許されるという事はないですし、コイツが禁止指定から出所できる時代になる頃にはもっと凄まじい
「無理矢理にでも玉手箱を開けさせないと厳しそうですね……」
「煙の中を全裸で泳がせても良いかもしれない」
”煙の中じゃなくて、宇宙空間を泳がせた方が良さそう“
”↑〈リブラエンジェル〉は、二度と地球へは戻れなかった“
”↑塾長なのか究極生命体なのかハッキリしろ“
コメント欄から加齢臭を感じるなぁ。
でも〈リブラエンジェル〉の禁止理由に関しては理解してもらえたようで良かった。
そんな感じで満足していると、隣から
「ねぇお兄? そのトンデモ拷問器具を知り合いの女の子に譲渡した大バカがいるんだけど」
「……ナンノコトデスカ」
「目が泳いでるし、心当たりしかないでしょうが」
正直後でソラに何か言われる覚悟はできています。
なんなら既に智代ちゃんが少し引いてるし、コメント欄にも「えぇ……(困惑)」みたいな投稿がめっちゃ目に入るぞ。
「じゃ、じゃあ次のカード解説にいくか」
「先生、強引に話を戻しましたね」
すまない智代ちゃん。
妹からの視線が痛いんだ。
「次は一見すると平凡極まりない魔法カード〈フレンドシップポーション〉。先に白状しておくがコイツの解除レベルは10です」
「そんなになんですか……?」
そんなにです。
そしてコイツは他のカードゲームなら問題視されない効果なので、本当の意味でサモン特有の禁止カードだ。
「ありふれたテキストで世界最強の友情破壊兵器と化した理由。その全貌をお話ししよう」