俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百三十六話:【友情搾取】禁止カード解除選手権③【奇跡(笑)】

「はい『禁止カード解除選手権』お次はこちら〈フレンドシップポーション〉別名『友情搾取』となります。さっきも言った通りコイツの解除レベルは10。早速テキストを確認しましょう」

 

 はい画面にテキストどーん。

 

 

フレンドシップポーション

系統:回復

効果:プレイヤーを1人選んで発動する。そのプレイヤーのライフを3点回復する。この効果で自分以外のプレイヤーを回復させた場合、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 さぁ分かるかな?

 コイツのバカみたいな汎用性の高さは初見殺しだぞ。

 

“あっこのカードは知ってる! 禁止理由が謎過ぎるので有名なやつじゃん”

“ただの回復カードなのに何故か禁止になってるやつ”

“サモン運営謎判断シリーズの筆頭格”

“改めてテキスト見たけど……これマジでなんで禁止なん?”

 

 うん。想定内のリアクション。

 このカードは前の世界でも「サモンだからこそ禁止指定になったカード」という事で、度々カードゲーマーの話題に上がった1枚だ。

 しかもある程度慣れたプレイヤー同士のファイト。つまり競技シーンであればある程、その凶悪性を見せてくるという性質を持っている。

 

「このカードの強さ、CHIYOちゃんには分かるかな?」

「うーん? これ、どうみてもライフ回復するだけのカードですよね。一応相手を回復させれば1枚ドローできますけど……ドロー目的なら別にこのカードじゃなくても」

「確かに。一見するとありふれたライフ回復系の魔法カードに見える……じゃあ『このカード特有の挙動』は何か分かるか?」

「えっ。相手のライフを3点回復させる代わりに1枚ドローする効果、ですよね?」

 

“相手を回復させて1枚ドローって、ショボ過ぎない?”

“ライフ回復なら自分を対象にすれば良いし、ドロー目的ならCHIYOちゃんが言ってた通り他のカード使った方が強いし”

“あれ……相手のライフを回復? 何か記憶が蘇る……”

“……あ”ッッッ!? もしかしてアレか!?“

 

 どうやらリスナーの中には気付いた人もいるらしい。

 それじゃあ答え合わせと行こうか。

 

「はい〈フレンドシップポーション〉の禁止理由についてですが。先に結論を述べておくと『高過ぎる汎用性』が規制理由です。汎用性だけなら〈プライドドロー〉にも劣らない正真正銘のバケモノ」

「それは言い過ぎ……じゃないんですよね。先生がそこまで言うという事は地獄のような挙動をするんですね」

「その通り。じゃあまず簡単な使い方から紹介しよう」

 

 配信画面に、予め作っておいた使い方解説を表示する。

 とは言っても、このカードの上手な使い方はちょっとした応用技がメインとなる。

 

「まずは全員が最初に思い描く使い方。自分のライフを3点回復する。これで減り過ぎたライフを回復しても良いし、次に使うカードのライフコストを確保しても良い」

「基本的な使い方ですね」

「またこのカードは発動タイミングの指定もないので、相手ターンに使えるんだ。するとこんな使い方もできる」

 

 例えば相手の場にヒット3のモンスターがいて、そいつが攻撃してきたとしよう。

 自分の残りライフは3で、場にはブロック可能なモンスターは0体。

 絶対絶命のピンチだが……この時〈フレンドシップポーション〉で自分のライフを3点回復するとどうなるのか。

 

「相手モンスターの攻撃を受けてもプラスマイナス0。実質相手モンスターの攻撃を1回無効化したようなものなんだ」

「ライフ回復ってそんな使い方もできるんですね」

「ちなみにこの防御テクニックは、所謂『攻撃を無効化されない』って効果に引っかからないメリットもあるし、特に制限のかかっていない他のカードでも使えるから、覚えておいて損はないぞ」

「はーい」

 

”はーい“

”これ便利そう。メモメモ“

”確かに、相手ターンに発動できるライフ回復魔法って色々あるもんな“

”定番のカードだけど、そういう防御運用は考えた事がなかった。ためになるなぁ【10000円】”

“ちょっと家の中にある回復魔法探してくる”

 

「あれ? でもそれだけじゃ禁止指定なんて受けませんよね?」

「そうだな。コイツの一番凶悪な動きは『相手のライフを回復できる』事にあるんだけど……CHIYOちゃん、リスナーさん、この意味わかるかな?」

「……あっ! もしかして6点止めですか!?」

 

“そうだよ6点止めだよ。あっこれだめだ”

“6点止めってなに?”

“↑サモンでよくある発動条件「自分のライフ〇〇以下」ってやつ。あれ基本的に5点以下を指定してるんだって”

“↑夏休みシーズンに出張サモン教室でやってたやつだ”

 

 ちゃんと『6点止め』を覚えていてくれて、先生は嬉しいぞ。

 

「CHIYOちゃんもリスナーさんも正解。〈フレンドシップポーション〉の一番恐ろしい使い方。それは相手のライフを回復する事で、一部のカードを使えなくする事なんだ」

「確かに。相手が自分のライフを5以下にして強力なカードを使おうとしても、これで3点も回復させられたら計画が崩れちゃう」

「相手のペースを乱して、自分のペースに持ち込む。これはカードゲームにおいて絶対に覚えておきたい考え方だ。カードゲームってのは先にペースを崩した方が負けるからな」

「でも先生。相手のライフを回復したら削り切るのに苦労しませんか?」

 

 なるほど、それを心配してしまうのか。

 コメント欄を見る限り、リスナーも似たような疑問を感じているらしい。

 ならばお答えしましょう!

 

「3点の回復と、ライフを削りにいくモンスターのヒット数。どっちの方が高いと思う? 正解はモンスターです。たかが3点ライフ回復をされようが、それを上回るダメージを叩き込めば全て誤差の範疇になります」

「の、脳筋……」

「いいかいCHIYOちゃん。浮き輪をつけていれば溺れる心配は減るけど、所詮はへなちょこビニール製品だから魚雷の直撃までは防げないんだよ」

 

“言いたい事はわかるけど例え方ァ!”

“あぁCHIYOちゃんが筆舌に尽くしがたい顔になってる”

“先生の言いたい事は理解できたけど、理解できてしまった自分が嫌って顔だな”

“先生が出てくる回は女子中学生の自然な顔芸を見れるから好き”

“↑自然な顔芸とは”

 

「つまり〈フレンドシップポーション〉が1枚でできる役割はこうなっております」

 

 ・シンプルに自分のライフを回復。

 ・相手モンスターの攻撃に対して使い、防御札として使う。

 ・相手のライフを回復して5点以下の状況になる事を防ぐ妨害札。なお自分は1枚ドローのおまけ付き。

 

「分かりますか? コイツはたった1枚で『ライフ回復』『防御札』『妨害札』を全て担っているという、一昔前のなろう系主人公くらい万能な使い方ができるんです。しかも妨害札として使えば1枚ドローのおまけ付きで、ターン1制限までありません。こんなバカのハッピーセットを無制限で出したら、我々ファイターは転売ヤーの如く買い占めに走るしかないんですよ! 一つだけ明確な違いがあるとすれば買い占めたカードは転売せず、1枚残らずデッキに突っ込む事くらいです」

「あぁそっか、このカードって系統に関する縛りもないんですね。相手がライフコストを使ってライフ調整をしたタイミングで使えば、射程範囲広めの無効化も同然ですし……なんだか急激にダメなカードに見えてきました」

「CHIYOちゃん。ダメだったから今解説してるんだよ」

 

“ありふれたテキストで世界最強ってそういう事か……”

“そういえば最初に別名『友情搾取』って言ってたね”

“確かにこれでライフ調整を妨害されたらイラっとくるかも”

“汎用性高すぎてワロタ。いや禁止指定されたから笑い事でもないのか”

“これは言われなきゃ分からないタイプだわ”

 

「とまぁこんな汎用性の塊が許されるわけもなく。無事禁止送りになったわけですが、解除の可能性なんてあるわけがない! 〈フレンドシップポーション〉が禁止指定から解放される確率と、全部適当に投票したWIN5が当たる確率なら、まだギリギリWIN5の方が望みあるくらいにありえねーよ!」

「WIN5ってなんですか?」

「CHIYO。今のバカ兄の発言は気にしなくていいから」

 

”真顔ツッコミ蛇姫ちゃんwww“

”なんで高校生が競馬ネタをぶち込んでくるんだよ。でも言いたい事は理解できてしまうのが悔しい“

”WIN5知らんのやけど、誰か簡単に教えて”

“↑要するに『無茶振り』ってこと”

“↑要するに『望み薄』ってこと”

“汎用性が高すぎるのも考えものだな”

 

 無事伝えたい事は伝わったようで良かった。

 汎用性のあるカードは便利だけど、汎用性が高過ぎると構築の幅を狭めて良くないからな。

 カードゲームとは難しいものである。

 

「ちなみに〈リブラエンジェル〉がレベル9で〈フレンドシップポーション〉がレベル10なのは、1枚で完結し過ぎているか否か、あとは汎用性の差だな」

「あぁ〈リブラエンジェル〉と違って魔法カードだから場を埋めませんし、使い切りだからどんなデッキにも入れられますもんね」

「そういう事。特に相手のライフを狙わないデッキなんかとは最高の相性だからな」

「あっ……蛇姫ちゃんのデッキ」

 

 そう、卯月の【蛇竜(じゃりゅう)】は一番分かりやすい例だ。

 相手のライフに関係なく勝利できるなら、相手を回復しても問題ないからな。

 

「ちなみに最初の方に紹介した禁止カード〈変幻なる大道化師〉も似たような運用ができるんだ。ただしこちらはモンスターなので無効化しやすいという違いがある」

「あっ、相手のライフを回復する効果がありますね。さっき先生が言ってた単体での凶悪な運用ってコレだったんですね」

「無効化の難易度の差は、解除レベルの差に影響します。とりあえず〈フレンドシップポーション〉は牢獄の最深部にいてもらおう」

 

 しかしこう解説をしていると、改めてこの世界では情報が中々出回らないのだなと思ってしまう。

 集合知が上手く機能していないとでも言うべきか、基礎が出回り難いと言うべきか。

 2年以上経ってもギャップが埋まりきる気配がない。

 

「さて。紹介予定のカードも残り2枚か」

「あっという間でしたね。次はどんな禁止カードですか?」

「次はちょっと面倒なコンボに使う魔法カードだ」

 

 ただし……コンボが決まった瞬間に相手が即死する。

 そんなコンボのキーカードを紹介しよう。

 

「というわけで次に紹介する禁止カードはこちら〈奇跡の魔法〉。別名『奇跡のやらせ』『脱法仕込み魔法』『ド畜生フィナーレ』などなど素晴らしい被害者の怨念(キャッチコピー)を持つ魔法カードです。早速テキストを見てみよう」

 

 はいテキストどーん。

 

 

奇跡の魔法

系統:詠唱

発動コスト:自分のライフが5以下で、自分のデッキが5枚以上あるなら、自分の墓地から魔法カードを1枚選んで除外して自分のデッキをシャッフルする。その後、自分のデッキを上から5枚除外する。その中に発動コストで除外したカードと同じ重複する系統を1つ以上持つ〈奇跡の魔法〉以外の魔法カードがあれば好きな3枚まで選ぶ。

効果:発動時に選んだ魔法カードを、発動条件と発動コストを無視して、このカードの効果として発動する。その効果発動後、このカードを墓地へ置く代わりに除外する。

 

 

 ちょっと変わった挙動をするカードだけど、要するにギャンブル要素を乗り越えれば魔法カードを踏み倒せるって効果だ。

 

「これは……所謂ガチャとかギャンブルって呼ばれるタイプの効果ですね」

「そうだな。発動コストで除外した魔法カードと重複する系統が一つでもある魔法カードが出れば、最大で3枚まで踏み倒せる」

「でもこのカード、最初にシャッフルの処理が入りますし、5枚の中から3枚までだと……2枚踏み倒せれば御の字じゃないですか?」

 

“たしかに。デッキにはモンスターとかも入ってるから期待値はそこまでかな”

“言うてガチャ効果だし。お目当ての魔法カードが出るとも限らないし”

“発動条件と発動コストも無視できるのは激強だけど、その二つを踏み倒したい魔法カードが都合よく出るかは別の話やん”

 

 うん。そうなるよね。

 正直このカードが最初に登場した時、多くの者は同じような感想を抱いていた。

 というか俺もそう思っていた。

 

「確かに。CHIYOちゃんやリスナーさんの言う通り、この手のガチャ効果は当たりを引き当てないと意味がない。発動条件と発動コストを踏み倒すってテキストは極めて強力だけど、それを踏み倒すうま味のあるカードをデッキに入れると、根本的にデッキとしての動きが悪くなる」

「ですよねぇ。このカードを前提にして無茶なカードを入れるくらいならってなりますし、うま味の薄いカードじゃ踏み倒すメリットまで薄くなっちゃいます」

「その通り。しかも最初にデッキシャッフルの処理が入るせいで、デッキの上に狙いのカードを置いておくという事もできまい。だから一見すると大丈夫なカードなんだよ……ある抜け道に気づかない限りはな」

 

“あっ……もう嫌な予感がする”

“絶対に地獄の始まりじゃん”

“誰だよこんな抜け道見つけたやつ(先回り)”

 

「まず前提として。〈奇跡の魔法〉はその性質上、自分のデッキ枚数が()()()()()()()()()()発動できないんだ。逆に言えばデッキの残り枚数が()()()()なら発動できてしまうんだよ」

 

 そしてある時、その抜け道に気付いてしまった者が現れてしまった(前の世界にて)。

 その人物は抜け道を見つけた瞬間、このように言ったという。

 

――デッキの残り枚数が5枚丁度なら、狙ったカード踏み倒せる確定ガチャじゃん――

 

“えっ、ド畜生?”

“デッキアウトで敗北……はスタートフェイズ開始時に判定だね! どうせその前に勝つとか言うんだろ!”

“マジで誰だよこんな抜け道見つけたやつッッッ!”

 

「細かいコンボルートに関しては滅茶苦茶長いんで今回は割愛します。ただ簡単に要点をまとめると、このようになります」

 

 ・デッキに採用する魔法カードは〈奇跡の魔法〉と、墓地の魔法カードをデッキに戻せる〈スペルリカバー〉などのカード。そして踏み倒しに使いたい魔法カードと、その魔法カードと同じ系統を持つ魔法カード(コスト用)。

 ・ファイトが始まったら、ひたすら自分のデッキを墓地へ送り、手札に〈奇跡の魔法〉と〈スペルリカバー〉が揃うようにする。

 ・そして自分のデッキが0枚になるまで破棄し続けます。

 ・自分のデッキが0枚になったら〈スペルリカバー〉などを使って自分のデッキを5枚丁度にします。この際に踏み倒したい魔法カードはデッキに残るようにし、それと同じ系統を持つ魔法カードが1枚以上墓地に置かれている状態を作る。

 

「この状態で〈奇跡の魔法〉を使えば狙った魔法カードを確定で踏み倒せる」

「ギャンブルの概念が粉々に崩れるんですが……それで先生。なにを踏み倒せば良いんですか?」

「色々あるけど。やっぱり筆頭格はコレだな」

 

 俺も聖徳寺(しょうとくじ)学園の入学試験で使った魔法カード。

 とてつもなく重いコストを要求する代わりに、相手に無効化も軽減もできない5点のダメージを叩き込み最強のトリック魔法。

 〈ファイナルトリック・エクスプロージョンフィナーレ〉だ。

 

「発動には自分の墓地から系統:《トリック》を持つ、カード名が異なるカードを6枚除外して、手札を2枚捨てる必要があるという中々な激重コスト。だけどそれも〈奇跡の魔法〉で2枚踏み倒せるのであれば銀河最強のアルティメットスペルに大変身します」

「無効化も軽減もできない5点ダメージを2回も叩き込まれたら人は死ぬんですよ!? ……ってあれ、先生? このカード同名ターン1制限がついてますけど。〈奇跡の魔法〉で2枚出てきても全部は踏み倒せないんじゃ?」

「だと思うだろう? ここで〈奇跡の魔法〉のテキストをもう一度よく見てほしい」

 

 身近なところだと、(らん)の使っている〈REビクトリー!〉と同じタイプのカードなんだ。

 つまりルールや裁定も同じ。

 

「コイツは選んだ魔法カードの効果をコピーして発動するんだ。つまり効果はコピー先のものであっても、効果そのものは〈奇跡の魔法〉が発動しているものとして扱う。〈エクスプロージョンフィナーレ〉とは別のカードとしてだ」

「脱法にも程がありませんか!?」

「しかも〈奇跡の魔法〉は発動コストを払い終えた時点で効果が決定するので、無効化されない魔法カードを1枚でも選んでいれば、即座に無効化されない耐性を得ます。安心の保険ですね」

「たすけてお巡りさん」

 

 とうとう智代ちゃん涙目になっちゃったよ。

 仕方ない、これはそういうカードだ。

 

“通るか! こんなもん!”

“ノーカン! ノーカン!”

“念力で解決しろ念力で!”

“↑念力(ロジカル)がガチャの結果を左右したんだよ”

“↑誰がピンゾロ賽を顔面に全力投球してこいと言った”

“ド畜生フィナーレってそういう事かwww”

“奇跡も魔法もあるじゃん(白目)”

 

「ですが残念。これは通ります。奇跡を大義名分にすればどんな無法も許され…………なかったので禁止指定になりました。発動条件やコストの概念を叩き壊した上に、回避できない10点ダメージを叩き込むコンボのキーカードが許されるわけねーだろ!」

 

 一応やろうと思えば他にもコンボはあるけど、流石にそれを深掘りしたら時間が無限に溶けるので割愛。

 

「当然ながらコイツの解除レベルは10です。まぁ流石に誰もがアヘ顔ダブルフィナーレする環境は不健全すぎるし、奇跡という名の脱法やらせギャンブルを野放しにすれば確実に世界は終わりますし、なんなら今後のカードデザインにも支障をきたします」

「流石にこれはダメですね。大人しく地下監獄に入っていてもらいましょう」

「みんなも借金(コスト)はちゃんと支払おうな」

 

”踏み倒しって怖い。ちゃんとお金払います【50000円】“

”黒服が来るの怖いんで払います【50000円】“

”苫小牧までコロッケ蕎麦食べに行くんで、1日外出券ください【50000円】“

”今変なのいなかったか?“

 

 皆さんお金は大事にしてね。気軽に万超えの投げ銭をするんじゃない。

 あと立ち食い蕎麦屋には勝手に行っててください。

 

「さて、残るカードは1枚か」

「先生。正直もうかなりお腹いっぱいなんですけど、最後をお願いします」

「よしきた。それじゃあ『禁止カード解除選手権』最後の1枚を紹介しよう」

 

 前の世界では最速禁止記録を保持していた怪物。

 なんやかんや俺も使っていた正真正銘の殺戮兵器。

 

「はいこちら〈【終末の獣】アジダハーグ〉となります。この前の制限改訂で無事禁止指定をくらった進化モンスターなのですが、まずはテキストを見てみましょう」

 

 

【終末の獣】アジダハーグ

系統:幻想獣、魔獣

P14000 ヒット4

進化条件:自分のライフが5以下の場合に、自分の場の系統:《幻想獣》か《魔獣》を持つモンスター1体の上に重ねる。

効果①:このカード召喚した時、自分の手札が1枚以下なら、ヒット1以下のモンスターを全て破壊し、このターンの終了後、もう一度自分ターンを行う。その追加ターンの終了時に自分はゲームに敗北する。

効果②:このカードは【貫通】を得られない。

効果③:【ライフガード】

 

 

「……先生。場に出ただけで追加ターンって書いてます」

「その通りだCHIYOちゃん。というかコイツは俺もデッキに入れていた、俺も認める殺戮兵器です」

 

”殺戮兵器公認の殺戮兵器かぁ(白目)“

”国際条約に抵触しそう“

”テキスト読んだ。これアカン“

 

「えっと使っていた俺が言うのもアレだけど、これが禁止指定された理由って説明いる? 言っておくけど追加ターン終了時に自分が敗北する効果なんて、適用する前に終わらせにかかるだけだからな」

「ですよね。先生なら絶対にそうすると思いますし、私でもそうすると思います」

「そもそもコイツ、召喚時に自分の手札が1枚以下なら『相手のブロッカーを破壊』して『自分は追加ターンを得る』とか書かれているんだけど、果たしてそんな事をしてもいいのか……良いわけねーだろッ! テメェは頭【///自主規制///】の【///コンプライアンス///】かってーの! これが許されるなら【///ガイドライン///】や【///アウトラインを棒高跳び///】だって許されるわッッッ!」

「お兄! 色々と怒られそうだからストップ!」

 

”蛇姫ちゃんが止めにかかってるの草“

”使用者からボロクソに言われてて草“

”↑でも残当なんだよなぁ“

”↑擁護できる要素が1ミリも無いんだよなぁ“

”ストレス溜まってるんだろうな……ボクでよければ相談に乗りますよ“

 

 すまねぇ。自分で使っておいてアレなんだけど、本当にヤベー思い出しかないカードなんだ。

 

「なぁCHIYOちゃん。これの解説いる?」

「〈プライドドロー〉くらい要らないですね……解除レベルだけお願いします」

「敢えてジャッジするなら、解除レベル5億。コイツが解禁されて良い未来なんて見えないし、デメリットが発生する前に決着をつけられるなら解除する理由もない。というか出た瞬間にどちらかの敗北が決定するのは流石にカードゲームとして不健全すぎる。終末の獣なんて二つ名を持っていますが、先に終末を迎えて完成したのはコイツの方でしたというオチだ」

 

”はい“

”仰る通りでございます“

”反論ないからニキの勝ちやで“

 

「というわけで、これにて『禁止カード解除選手権』は一旦終わりなんだけど……どうだったかな?」

 

 正直受けの良さとか俺には良くわからない。

 とりあえず智代ちゃんの方を見るけど……めっちゃ良い笑顔で親指立ててくるじゃん。

 これ『良かった』と判断してもいいんだよな?

 

“楽しく学べました【10000円】”

”第二回もやって【3000円】“

”毎秒やって【20000円】”

 

 ……リスナーさんの金銭感覚には突っ込んだ方がいいのかな。

 

「まぁまた機会があればやります。本当に……時間があれば」

「そういえば先生、当分忙しくなりそうですもんね」

「学校でのお仕事がね……色々あってさ。戴冠式とかも控えてるから余計にね……現実から目を背けたくてね」

「お兄も二つ名で呼ばれる重さを知れ。今呼んであげようか? こう――」

 

 はい卯月さんお口ストップ。

 まだ決定事項じゃないので言っちゃダメ。

 でもまぁ、リスナーさんから好評そうなら良かった。

 

「それじゃあ今回の配信はここまで。各自復習はしっかりしておくように」

「はーい」

 

 そして智代ちゃんが終了の挨拶をして、配信が終わる。

 同接数が上がったとか、SNSのトレンド上位に『禁止カード解除選手権』が出たとか。

 なんだか色々あったらしいけど、智代ちゃんが満足しているなら何よりだ。

 

「それで先生。次の出演予定について――」

「文化祭に招待するからそれで勘弁してください」

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