俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百三十七話:女子会in真波ルーム

「派手にやってるわね……」

「やってますね〜」

 

 スマホの画面を一緒に見ながら、愛梨(あいり)とソラがそう呟く。

 画面に映し出されている動画は、昨日ツルギが智代と共にやっていた配信のアーカイブ。

 その反響もさることながら、ソラと愛梨は内心「絶対本人は軽い気持ちでやってるんだろうな」と思っていた。

 

「ツルギくん、絶対に『これくらいなら大丈夫だろ』って思ってますよね」

「絶対にそうね。むしろ制限カードに触れない理性を働かせた事を褒めたいくらいよ」

「ですよねぇ……ツルギくんが制限カードの解説をしたら、ものすごい大騒ぎになりますよ」

 

 オレンジジュースを飲みながら、もしもの光景を思い浮かべてしまうソラ。

 万が一ツルギが制限カードを解説していれば、今頃世界中のカードショップが大混乱に陥っていただろう。

 シングルカードの相場が大きく変動し、経済が混乱し、カードショップのスタッフは過労で倒れるに違いない。

 

「アハハ、ツルギくんは本当にダメな事は絶対にしないでしょ〜」

「そう……かな? 天川(てんかわ)君ってたまにうっかりしてる印象がある」

 

 ジュースを片手に軽く笑って流す(らん)と、その真横で密着しながら疑問符を浮かべる真波(まなみ)

 本日は真波の部屋に集まって、四人で女子会をしている。

 当然誰もが予想した通り、女子会開始から二十分程度は真波の魂が昇天していた。

 辞世の句は『十六の童話の果てに見つけたる、夢の女子会極楽浄土』。

 

「にしてもソラちゃん。ツルギくんの解説を見たら一瞬で元気になったね〜」

「ボクもびっくりした。来た時はあんなに落ち込んでたのに」

「だよねぇ。エオストーレに立たせてもらいながら来てたもん」

 

 図星を突かれて、ソラは気まずそうに目線を逸らしてしまう。

 藍と真波の言う通り、凄まじく落ち込んでいたソラはいつ膝から崩れ落ちるか分からない状態であった。

 原因は勿論、デッキに入れていた〈リブラエンジェル〉が禁止指定になったせいである。

 仕方ないので、ソラはエオストーレに両脇から身体を支えてもらい、ここまで移動してきたのだ。

 だが微妙に足裏が地面から浮いた状態でスライド移動していたので、後で愛梨に「低予算なCGアニメみたいな動きになってるわよ」と言われてしまうのだった。

 

「だって、改めて説明をされると……やっぱりダメなんだなぁ〜って思いまして」

「それはそうでしょ。先攻1ターン目に手札全部消されたら、私でも巻き返しが難しいわよ」

「ウっ……そう、ですよね……」

 

 何故か気まずそうに目を逸らすソラに、愛梨は疑惑の視線を向ける。

 ある程度中身がアップデートされているとはいえ、今のソラが使っているデッキの大元はツルギは譲渡したものだ。

 あの男は「緊急時の必殺武器」などと称して、こっそりトンデモ兵器を仕込んでいてもおかしくない。

 

「ソラ、心当たりがあるなら正直に言いなさい」

「その……評議会決定戦の時に、やってしまいました」

 

 ソラの自白を聞いた愛梨は呆れたように「貴女ねぇ」と言って、ため息を吐くのだった。

 なによりこの場にいる者達は皆、ソラに無惨な負け方をしたであろう人物に心当たりがあったのだ。

 

「そういえば、途中で泣きながら負けていった子がいたよね〜。アタシも試合したから覚えてるよ」

「私も同じ子を思い浮かべてたわ。確か中等部から参加してきた子でしょ。来年高等部の一年に進級予定の」

「うん。ボクと同じで一年生から評議会入りを狙ってた後輩……ちょっと性格に難があるって聞いてたけど」

「そういえば試合前は随分と騒がしかったわね。『この大天才様が! ザコザコな先輩方を理解(わか)らせてあげる〜!』とかなんとか……ものの見事に天狗の鼻を折られてたわね……」

 

 次期評議会メンバーを決める戦いを思い出す三人。

 まずは候補者同士での試合が行われたのだが、その中に一人だけ中等部の女子生徒が参加していたので、皆印象に残っていたのだ。

 だが残念な事に初戦では藍(ツルギの介入により原作よりプレイングが強化されている)にボロ負け、次の試合では先攻を取ったソラに手札を全破壊されてしまった。

 

「なんかその、すっごい泣いてたからどうしたんだろうって思ってたんだけど……いきなり手札を全部消されたらねぇ」

「やっぱりあの子ね。『ティアナもうお家かえるー!』って大泣きしてたもの」

「南無……」

 

 犠牲になった後輩を思い返す藍と愛梨。

 真波に至っては手を合わせて祈りを捧げていた。

 

「不可抗力! 不可抗力ですから!」

「本当に……貴女色んな意味でツルギに似てきてるわよ」

「どういう意味ですか!」

 

 可愛らしく頬を膨らませて、愛梨に抗議をするソラ。

 だがソラがツルギの影響を受け過ぎている事に関しては、誰一人として否定しないのであった。

 むしろ藍と真波でさえ心当たりが複数あるといった様子である。

 

「なんだったら、天川君に似ているというよりも……どこか男子みたいな行動をする事もあるよね?」

「真波ちゃんまで!? 私そんなに変な行動してましたか!?」

「体育終わり。まだ男子が着替えてる最中の教室」

 

 端的な言葉だけを口にする真波だが、ソラの心にダメージを与えるには十分であった。

 

「ソラ、うっかり男子が着替えてる教室を開けたあと、どうした?」

「…………キオクニゴザイマセン」

「藍から聞いた。鼻血出しながら弁慶の立ち往生みたいな状態で『おかまいなく』って言ってたって」

「仕方ないじゃないですかッ! ツルギくんの大胸筋が丸見えだったんですよッ! しかもシャワー室使ったあとだったから、ちょっと濡れてたんですよッ!」

「女子が男子の大胸筋を見てしまうラッキースケベって、この世に存在するのね」

 

 半ば逆ギレのように叫ぶソラに、愛梨は呆れた表情で突っ込んでしまう。

 ちなみに鼻血を出していたソラはその後、藍によって回収された。

 

「それにしても、なんで男子って裸を見られたら真っ先に乳首から隠すんだろう?」

「知らないわよ……ノリと勢いだけで動いてるんでしょ」

 

 藍の疑問に対して、疲れたように返す愛梨。

 聖徳寺(しょうとくじ)学園1年A組の男子は、息を合わせたように馬鹿な行動をする事があるのだ。

 

「あの男達、文化祭で変なことしないでしょうね」

「大丈夫じゃないかな〜。もしそうなったらツルギくんも止めそうだし」

「それもそうね。いざという時にはもう二人ストッパーがいるわ」

 

 愛梨が思い浮かべているストッパーとは、速水と財前である。

 この二人なら緊急時は常識的に動いてくれるという信頼があった。

 

「むしろ本当に心配するべきは、私達の出し物ね」

「だよね〜。アタシすっごく楽しみで、もうテンション爆アガってるもん!」

「うん。ボクも藍と同じ」

「うぅ〜、私はまだ不安しかありません……」

 

 文化祭ではこの四人で『とある出し物』をする予定なのだが、他の三人と違いソラはまだどこか恥ずかしそうにしている。

 

「なに言ってるのよ、貴女なら何も問題無いわよ」

「不安ですよー。私そういうの経験ないんですよ」

「だから私がレッスンつけてるんでしょ。文化祭限定ユニットライブに向けて」

 

 そう、四人の出し物とは愛梨の発案による『宮田愛梨プロデュースによる1日限定アイドルユニットのライブ』である。

 衣装、楽曲、振り付け、全て愛梨が(個人の趣味極振りで)準備している。

 

「アタシこういうの初めてだから、もうすっごい楽しい」

「ボクも」

「私は色々と本格的過ぎて不安が加速してます」

「なに言ってるのよ。やるならトコトンやらなきゃ損でしょ」

「アイちゃん? だからと言って衣装と楽曲を本職の人に依頼するのはやり過ぎだと思います」

 

 初めて愛梨から歌う楽曲について教えられた時、ソラは本職による書き下ろしだと聞いて卒倒しそうになっていた。

 一方、藍は「わーすごーい」と楽観的であり、真波もそれに流されて深く考えてはいなかった。

 

「本当にどういうコネなんですか」

「実家色々、本職ノリノリ。そういう事よ」

「私にはプレッシャーにしか聞こえません」

 

 涙目になってしまうソラ。だが残念な事に、他の皆はどこまでも乗り気である。

 

「普通の人間にも見えるなら、ウィズも出してあげたかったのだけど」

「仕方ないよ〜、ブイドラ達は他の人には見えないんだから」

「ボクも、シルドラと一緒にステージに立ってみたかった」

 

 自分のパートナーと共にステージに立つという理想を、キラキラと語る三人。

 その一方でソラは静かに「あの魔剤中毒を安易に人前へ出しても大丈夫なのだろうか」と考えるのだった。

 

「あれ? そういえばブイドラ達はどこに行ったの?」

「シルドラもいない」

「やけに静かだと思えば、ウィズもじゃない」

「……すみません。ウチのエオストーレがさっき連れて行きました。多分今ごろ愚痴と共に魔剤ハラスメントを敢行しています」

 

 申し訳なさそうにそう言うソラ。

 ちょうど愛梨のスマホで配信アーカイブを見始める少し前に、エオストーレは他の化神3体を「親睦を深めましょう」という名目で連れ出していた。

 だがソラにはすぐに分かってしまった。

 あれは親睦を深めるためではない、あれは自分の愚痴を聞かせるために飲み(魔剤オンリー)に誘っただけだと。

 

「回収、しに行ったほうが良いですか?」

「……本当にダメそうなら、今頃ウィズが大騒ぎしてるわ」

「同じく。まだシルドラは耐えてるから大丈夫」

 

 まだ悲鳴は上がってないので大丈夫だろうと判断する愛梨と真波。

 ソラはひとまず安堵するが、本当にダメそうなら魔剤を取り上げてでも回収しようと決意するのだった。

 そんな中、藍はふと思った事を口にした。

 

「そういえば、鳳凰院(ほうおういん)さん達も誘ったんだよね。都合つかなかったの?」

「あぁ……その件ね」

「ボク達よりも先に音無(おとなし)先輩が『労働力確保ォォォ!』って言いながら攫って行ったよ」

 

 どこか言い難そうにしている愛梨だったが、真波が端的に事実を説明をした。

 諸々の事後処理も大きなものは片付いたとはいえ、まだまだ残っている細かな問題はある。

 特に新三年生のツララと勇吾(ゆうご)はその大部分を処理しているのだが……

 

「それがね、ここにきて黒崎先輩のサボり癖が再発したのよ……」

「大きな後始末は終わったけど、大きなものが終わった途端にこれ。限界管理職になった音無先輩が悲鳴を上げてる」

「だから労働力って叫んでたんだ……」

 

 愛梨と真波に説明をされて、ようやく事情を理解する藍。

 恐らく偶然ツララの目についてしまったのだろう。

 今ごろ鳳凰院姉妹はツララの元で細かな後始末の手伝いをさせられている筈だ。

 

「そういえば鳳凰院さん達って、評議会補佐に入ってくれたんですよね」

「うん。だからこういう時に評議会の仕事を手伝う事になる。色々忙しい代わりに、内申とかの評価が良くなる」

 

 ソラの言葉に反応して、真波が評議会補佐について軽く言及する。

 (まつり)誠司(せいじ)の一件があった後、六帝(りくてい)評議会も新たなメンバーに代替わりをした。

 その際に勇吾が主導となって、評議会補佐にもメスを入れたのだ。

 具体的には政誠司の所業へ積極的に加担していた者の排除。何らかの事情で加担せざるを得なかった補佐へのフォロー等々。

 

「黒崎先輩が組織の膿を排除したのは良いけど、やっぱり人手不足にはなったから」

「新しいメンバーを選んで加入してもらったんですよね」

 

 ソラの言葉に頷く真波。

 勇吾や他の評議会メンバーと共に新たな補佐候補を選び、声をかけていったのだ。

 そうして新たに評議会補佐へと加入したメンバーは何人かいる。

 赤翼(あかばね)ソラ、速水学人(がくと)、鳳凰院姉妹もそうして加入したメンバーだ。

 

「本当に、ソラ達が補佐になってくれて安心したわ。やっぱりこういうのは信頼できる人が一番よ」

「えへへ。私もツルギくん達のお手伝いをしたかったですから」

「それに、先輩方が精査した上で問題のない人も、引き続き補佐をしてくれているから頼もしいわ」

 

 勇吾や牙丸が改めて精査した上で問題のないメンバーは、引き続き補佐として起用されている。

 二人の精査はかなり厳しいものだったらしく、愛梨曰く「音無先輩もちょっと引いてたわよ」と言ってしまう程である。

 その時であった。真波がふと「そういえば」と何かを思い出したように声を出した。

 

「ソラが再起不能にした中等部の子だけど」

「再起不能にはしてません!」

「あの子も評議会補佐に加入した。高等部に進級と同時に入るんだって」

「あの号泣を知っている身としては、再起の兆しがあって何よりだわ」

 

 どこか安心したように呟く愛梨。

 同時にあの状態から補佐として上に食いつこうとする、そのメンタルは素直に称賛したいと思っていた。

 

「あの事件が終わっても、まだまだ退屈はしなさそうね」

「それもそうですよ。これから文化祭もありますし、新年度には私達も先輩になるんですよ」

 

 コップに入ったジュース片手に、愛梨はこれからも騒がしいであろう学園生活に思いを馳せる。

 その中にはソラの言う通り文化祭もあれば、これから来るであろう新入生も含まれている。

 特に聖徳寺学園の新入生ともなれば、大きな大会で結果を残した者もやって来る。

 そして文化祭には中等部の他に進学希望者も多く訪れるので、未来の後輩を一目見る事を楽しみにしている在校生も珍しくはない。

 

「そうね。でも一番楽しみにしているのはソラでしょ」

「ふぇッ!? なんでですか!?」

「だってそうでしょ。今年のJMS優勝したあの子、絶対入学してくるでしょ」

 

 愛梨にそう言われてしまうと、ソラは何も言い返せなくなる。

 ソラと同じ【聖天使】デッキを使う女の子。年齢的にも来年には後輩として入学してきても不思議ではない。

 実際に試合中継のアーカイブを見ていたソラも、内心あの子が後輩になってくれればと思っていた。

 

「うぅ……はい、ちょっとだけ期待してます」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ソラは愛梨の前で自分の願望を認める。

 そんなソラに、愛梨は「文化祭で会えると良いわね」と返すのであった。

 

「そっか〜、アタシ達もとうと先輩か〜」

「藍も評議会に入ったから、これから後輩のために色々と仕事が出てくるよ」

「楽しそうな仕事ばかりでお願いします!」

 

 年度明けの新しい出会いを思い描きつつ、藍と真波も他愛ない会話に花を咲かせる。

 そうして和やかな雰囲気で女子会をしていると、一つの叫び声が聞こえてきた。

 

「もう勘弁して欲しいのねェェェェェェェェェェェェ!」

 

 ウィズの悲鳴である。

 

「どうやら……あっちが限界みたいね」

「私エオストーレを回収してきます」

「アタシもちょっとブイドラが心配になってきた」

「ボクも」

 

 一旦話を中断して、四人は各々のパートナー化神を回収しに行くのであった。

 そしてエオストーレはソラに叱られるのであった。

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