俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百四十話:元素VSアルカナ①

 喫茶店を後にするや、学人(がくと)勇吾(ゆうご)に連れられてファイトができる場所まで移動する。

 適当なカードショップのフリースペースでも構わないのだが、勇吾は敢えて別の場所を選んだ。

 つい先程も学人が近くを通り過ぎた、ビル前の屋外ファイトステージである。

 

「ここでやるのですか?」

「ギャラリー付きは好みではないか?」

「そうではありませんが……」

 

 順番を待ちながら、勇吾と軽い会話を交わす学人。

 自分よりも勇吾の方が人目を嫌いそうなイメージがあったので、彼が目立つ屋外ステージを選ぶのは意外だと思っていた。

 なにより黒崎勇吾という男が、自分から「稽古をつけてやる」などと言ってくる展開は、学人も完全に想定外であった。

 

「お前とはまだ、一度もファイトをした事がなかったな」

「評議会決定戦では結局、先輩とファイトしませんでしたからね」

 

 なんて事のない会話。

 だがこれから始まる試合は、間違いなく己の糧になる経験である。

 そんな確信があったからこそ、学人は呼吸を整えて胸の高鳴りを抑えるよう努めるのだった。

 

「順番だ。行くぞ」

 

 順番が回ってきたので、二人はファイトステージに上がり召喚器を起動させる。

 休日の昼過ぎという事もあってギャラリーの数はそれなり。特別な強者が集まっているのではなく、一般人が多いからこそ良い。

 だからこそ勇吾は此処を稽古場所に選んだのだ。

 

「「ターゲットロック」」

 

 召喚器を無線通信で接続する。

 初期手札を引き、先攻後攻も決まった。

 周囲のギャラリーに意識が向かない程度には緊張しているが、学人は落ち着いてファイトに集中する。

 

「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」

 

 普遍的な屋外ファイトのように始まった、学人と勇吾のファイト。

 先攻は勇吾である。

 

「始めようか。オレはライフを2点支払い15番目の使徒〈七人の咎人(デビルズ・セブン)〉を召喚する」

 

 まずは一枚目。勇吾は落ち着いてカードをプレイする。

 このファイトで最初に召喚されたモンスターは、小さな棺桶であった。

 可愛らしくデフォルされた七つの棺桶は、自我を持っているかのように動いている。

 

 黒崎:ライフ10→8

〈七人の咎人〉P7000 ヒット2

 

「〈七人の咎人〉の召喚時効果を発動。デッキから系統:《アルカナ》を持つカードを1枚選んで手札に加える。オレはデッキから〈恋する天使の爆熱弩弓(マリッジ・キューピット)〉を手札に加える」

 

 まずは手札の総枚数を減らさず、必要なカードを引き込む。

 順調な滑り出しで始める勇吾だが、まだまだ彼のターンは終わらない。

 

「続けて、第3の使徒〈贅を尽くす女帝の栄光(レッド・エンプレス)〉を召喚」

 

〈贅を尽くす女帝の栄光〉P4000 ヒット2

 

 新たに召喚されたモンスターは、赤いドレスを着た女の子を模したぬいぐるみ。

 手にはコインを一枚持っている、新たなアルカナのモンスターだ。

 モンスターを並べてきた、であればもうすぐ本領を発揮する筈である。

 そう考えた学人は、何も言わずに勇吾の出方を注視する。

 

「落ち着いてオレの動きを観察するか。良いだろう、その願いに応えてやる。オレは〈贅を尽くす女帝の栄光〉の効果を発動! 場にいる他の《アルカナ》モンスターを手札に戻す」

 

 手札に戻されるカードは当然〈七人の咎人〉。

 召喚時効果のあるカードを使い回しできる状態にしつつ、勇吾は《アルカナ》の本領を見せてきた。

 

「〈贅を尽くす女帝の栄光〉は自身の効果でモンスターを戻す事で、そのターンの間【反転】する!」

 

 カードが上下逆さになり、モンスターは真の姿を現す。

 手に持った一枚のコインを自身に投入(ベット)すると、小さな女の子のぬいぐるみであった〈贅を尽くす女帝の栄光〉から、一つのビジョンが出現する。

 それは真紅のドレスに身を包んだ美女の姿であった。

 

「これが【反転】状態のアルカナか」

「流石に話には聞いていたか。なら必要分だけ警戒をしていると良い。オレは手札に戻した〈七人の咎人〉を再召喚する」

 

 黒崎:ライフ8→6

 

 再びライフコストを支払い、勇吾の場に小さな七つの棺桶を召喚する。

 

「再び召喚時効果を発動。オレはデッキから〈夢みるままに(ワンダフル)逆さに落とす(・ドリーマー)〉を手札に加える」

 

 新たにモンスターを手札に加えて、先に備える。

 だが今回は、まだ効果が終わらない。

 

「〈七人の咎人〉はデッキからカードを手札に加えた後、自分の手札を1枚捨てる事で【反転】する」

 

 自身の能力で【反転】するや、七つの棺桶は砕けてしまう。

 すると砕けた場所から新たに七つの大きな棺桶が現れた。

 可愛らしい見た目から一転して、無骨かつ邪悪な様相すら感じさせる見た目になっている。

 

「オレはこれでターンエンドだ」

 

 黒崎:ライフ6 手札4枚

 場:〈七人の咎人〉〈贅を尽くす女帝の栄光〉

 

 ターンが終了すると〈贅を尽くす女帝の栄光〉は【反転】状態を解除されてしまう。

 とはいえ場にはモンスターが2体、その内1体は【反転】状態のままである。

 ライフがコストで削られているとはいえ、手札は4枚と十分なリソースが残っている。

 たかが先攻1ターン目、たったそれだけで学人は重々しい圧を感じてしまう。

 

「俺のターン! スタートフェイズ!」

 

 プレッシャーはあれど、それを怯む理由にしてはならない。

 学人は己に発破かけて、ターンを開始する。

 

「ドローフェイズ! メインフェイズ!」

 

 ドローしたカードと自分の手札。そして相手の盤面と手札枚数。

 これらを加味して、学人は自分の動きを考える。

 仮にも相手は現六帝(りくてい)評議会序列第1位。

 生半の策が通じるような相手ではない。

 

(必要な事は()()最善ではない……先を見越した上での最善)

 

 目先だけではない。先の展開まで見据えてカードを切る。

 黒崎勇吾の【アルカナ】デッキはモンスターカードだけで構成された、所謂フルモンスター構築が特徴。

 汎用的な妨害札を使われる心配はないが、それだけで安心できるような相手でもない。

 ならばまず使うべきは、比較的無力化され辛いカードからである。

 

「俺はコストで手札を1枚捨て、アームドカード〈エヴォリューション・リアクター〉を顕現!」

 

 仮想モニターにカードが投げ込まれると、学人の場に人間大の反応炉が現れた。

 ある程度普及が進んだとはいえ、まだ珍しさが勝るアームドカードの登場に、ギャラリーは盛り上がっている。

 だが当の学人はと言うと、そんな黄色い声にも気づけない程に思考を巡らせていた。

 

「先にアームドを出すのか。変わったプレイングをする」

「そう思われても仕方ありません……このカードは、()()()()()()()()()()()()()()()()()ではありませんから」

「なんだと」

「俺は〈エヴォリューション・リアクター〉の非武装時効果を発動!」

 

 モンスターへの武装を目的としないアームドカード。

 常識の外に位置する運用を要求する効果に、ギャラリーだけでなく勇吾も静かに驚いていた。

 

「〈エヴォリューション・リアクター〉がモンスターに武装されていない場合、1ターンに1度、自分のデッキから魔法カードを2枚墓地へ送ることで、そのカードを使って【合成】を行う事ができる」

「ほう、効率の良い効果だ」

「俺はデッキから〈シーエレメント〉と〈ヴォルカニックエレメント弐式(にしき)〉を墓地へ送り、この2枚を合成!」

 

 さらに召喚コストによって、学人はライフを2点支払う。

 デッキから呼び出されたのは、海の元素と炎の元素。

 二つの元素が反応炉に取り込まれて、新たなモンスターを呼び出す。

 

「水と炎を掛け合わせ、原点の力を呼び覚ます! 現れろ〈スチーム・レックス零式(ゼロしき)〉!」

 

 大いなる海の水と、燃えさかる烈火が反応炉の中で合成されていく。

 そして反応炉の蓋が開くと、合成された元素は放出され、一体の巨大なティラノサウルスへと変化した。

 全身から蒸気を噴き出す恐竜。

 それは速水学人の最初の切り札が得た、新たな姿であった。

 

〈スチーム・レックス零式〉P9000 ヒット1

 速水:ライフ10→8

 

「〈スチーム・レックス零式〉は【合成】によって召喚されている場合。自身の元々のパワーとヒットが上昇する」

 

〈スチーム・レックス零式〉P9000→12000 ヒット1→3

 

 瞬時に切り札級のステータスへと強化された事で、周囲にいるギャラリーは驚きの声を上げる。

 学園ではありふれた光景であっても、外では非日常的な光景。

 学人もそれは理解しているが、今は周囲の声など気にしていられない。

 

「続けて〈スチーム・レックス零式〉の召喚時効果を発動! デッキを上から4枚オープンし、その中から系統:《元素》を持つカードを2枚まで手札に加える!」

 

 蒸気の恐竜が咆哮を上げると、学人のデッキからカードが4枚公開される。

 学人は落ち着いて選択肢を確認し、手札に加えるカードを考える。

 

 オープンされたカード:〈ウォーター・プレシオン〉〈ゼロエレメント〉〈ファイアエレメント弐式〉〈緊急合成!〉

 

「……〈ゼロエレメント〉と〈ファイアエレメント弐式〉を手札に」

 

 自分なりの解答を出してみるものの、それが正解だという自身はない。

 格上が相手だという大前提。慣れないカード群を相手にしたファイト。

 自分が次に起こす行動に、勇吾はどのようなアクションを返してくるのか。

 学人は先の見えない暗闇を、手探りで進んでいるような気分であった。

 

「選択とは、常に正しいものを選べる訳ではない」

 

 ふと、勇吾が学人に語りかけてくる。

 

「オレ達ファイターは常に選択を迫られ続けている。常に最善を求めようと足掻いているが、その選択を間違える事など珍しくもない」

 

 学人の中にある迷いに呼びかけるように、勇吾は自分の言葉を続ける。

 

「考える事は悪くない。だが間違える事を恐れるな。選択をするなら、己の選択くらい信じ抜いてみせろ」

「恐れますよ。俺は一度間違えた」

「だからこそ恐れるな。一度犯した過ちを覚えているなら、お前はそれを繰り返す事はない。だったら次の選択は、速水学人という人間が最善だと確信した選択の筈だ」

 

 だから恐れるな。

 勇吾の言葉は確かに、学人の心へと響いていく。

 酷い後悔を抱えていた。繰り返してはいけないと、学人は呪いのように自分へと言い聞かせていた。

 友への負い目が呪いを深い傷にして、学人自身に焦りの種を植え付けてくる。

 

「さっきも言った筈だ、悩むくらいなら壊す覚悟で踏み出してみせろ! 速水学人という人間の周りに誰がいるのか、思い出してみろ!」

「俺の……周りには……」

 

 友がいる。

 同じチームとして共に戦った友がいる。

 学園で共に切磋琢磨をしてくれる友がいる。

 己の危険を顧みず、道を間違えそうになった自分に手を伸ばしてくれた友がいる。

 

 一歩下がるのではない。信じられる友だからこそ、頼って良いのだ。

 たとえそれが自分勝手な目的のためであっても、まずは信じて打ち明けて良いのだ。

 ならば学人にとって、信じ抜きたい答えは一つ。

 

「俺は手札の〈ヒートエレメント〉と〈ファイアエレメント弐式〉を【合成】!」

「迷いの先に、踏み出す気になったか?」

「俺は……俺の目的に必要な強さが、自分に足りているとは思えません。だけどそれを理由にして後退すれば、俺は自分の仲間を信じ切れない!」

「……上出来だ」

 

 それで良い。そう言わんばかりに、勇吾は口元に笑みを浮かべる。

 まずは壁を一つ超えた学人は、手札の魔法カードを2枚合成させる。

 混ざり合う元素は二つの炎。

 炎が二乗され、以前よりも強化されたアンキロサウルスがその姿を表す。

 

「現れろ! 〈ツインヒート・アンキロ弐式〉!」

 

〈ツインヒート・アンキロ弐式〉P5000 ヒット2

 

 燃え盛る炎を背中から放出している恐竜型モンスター。

 その火力は「道を切り拓く」という学人の思いを表しているようにも見えた。

 

「〈ツインヒート・アンキロ弐式〉の召喚時効果発動! 【合成】によって召喚されている場合、ヒット2以下の相手モンスターを2体まで破壊できる!」

「俺のモンスターは、両方ヒット2だな」

「つまり2体とも射程範囲! 〈七人の咎人〉と〈贅を尽くす女帝の栄光〉を破壊!」

 

 アンキロサウルスの吐き出した二つの火炎球が、勇吾のモンスターに襲いかかる。

 七つの棺桶も、コインを持った女の子のぬいぐるみも、呆気なく焼き払われてしまった。

 ひとまずの突破口は出来上がる。

 たとえこの選択の先に暗闇があろうとも、速水学人は己の選択を信じて突き進むのみ。

 

「アタック……フェイズ!」

 

 友やライバルは、相手が格上であろうとも諦めなかった。

 財前も鳳凰院姉妹も、ツルギも決して諦めなかった。

 彼らに追いつく。その願いを果たすためにも、速水学人はここで足踏みをする訳にはいかない。

 

 だが対戦相手である黒崎勇吾も、帝王の肩書を持つ男。

 そう簡単に勝ちを譲り気はない。

 

「本気で来い。できなければオレが勝つ」

 

 自分の盤面が壊滅しようとも、勇吾の余裕は一切崩れていなかった。

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