俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
「〈スチーム・レックス
パワー12000ヒット3という、一般的には十分大型と呼べるモンスターの攻撃。
二人のファイトを観ているギャラリーの人々も盛り上がりの声を上げていた。
「ライフで受ける」
黒崎:ライフ6→3
巨大な恐竜の尾で薙ぎ払われ、
たった一撃であっても、風圧と音響は大きな迫力を生み出していた。
迫力はギャラリーへと伝わり、少しずつ人が増えてくる。
勇吾の場にモンスターはなく、ライフは残り少ない。
(一見すると俺の方が有利……だが話はそう単純ではないだろう)
でなければ、ここまで落ち着けない。
必ず何かを仕込んでいる……だがそれも、こちらが動かなければ姿を現さないだろう。
ならば学人の選ぶ道はただ一つ。
「〈ツインヒート・アンキロ弐式〉で攻撃!」
背中の炎を激しく燃やし、恐竜型モンスターが咆哮を上げる。
ヒット2の攻撃なので、勇吾のライフを削り切れないように見えたが……
「〈ツインヒート・アンキロ弐式〉の攻撃時効果! 相手モンスターが1体以下なら、攻撃中のこのカードはヒットを2倍にする!」
〈ツインヒート・アンキロ弐式〉ヒット2→4
効果に一気に勇吾の残りライフを上回るヒット数へと強化される。
これで勝負あったと見えたのか、ギャラリーの声は大きくなっていく。
だが学人には見えていた。勇吾の余裕が。
この状況であっても、勇吾は己が負けると微塵も思っていない。
「オレは墓地から第2使徒〈
「やはりそう簡単には通らないかッ」
「自分の場にモンスターが存在しない場合、コイツは墓地から召喚できる」
勇吾の場にゲートが開くと、墓地から可愛らしい聖女のぬいぐるみが召喚された。
〈慈愛の女教皇〉P5000 ヒット1
「自身の効果で墓地から召喚された〈慈愛の女教皇〉は【反転】する」
カードが上下逆さになると、可愛らしい聖女のぬいぐるみからビジョンが出現する。
それはいかにも聖女らしい服装に身を包んだ……黒光りする筋肉が眩しい大男のビジョンであった。
あまりにも予想外の姿に変化した事で、ギャラリーも言葉を失ってしまう。
「先輩……その変化は、どうなんですか……」
「知らん、男の娘の一種だろ。〈慈愛の女教皇〉の反転時効果を発動。墓地から系統:《アルカナ》を持つモンスターを1体復活させる。オレは墓地から〈
マッチョな女教皇が自慢の筋肉で空間に穴を開けると、そこからコインを手に持った女の子のぬいぐるみが飛び出てきた。
絵面は衝撃極まるが、一瞬にして2体のモンスターが壁として立ちはだかり、ギャラリーは大いに盛り上がる。
しかし、ただブロッカーを並べるだけで勇吾の動きは止まらない。
「続けて〈贅を尽くす女帝の栄光〉の効果を発動。〈慈愛の女教皇〉を手札に戻し【反転】する」
筋肉達磨聖女が場から姿を消すと、女の子のぬいぐるみは自分の身体にコインを
すると女の子のぬいぐるみからビジョンが現れて、再びドレス姿の美女へと変化した。
「〈贅を尽くす女帝の栄光〉が自身の効果で【反転】した時、手札に戻したモンスターのヒット数によって追加効果を得る」
手札に戻された〈慈愛の女教皇〉はヒット1。
よって〈贅を尽くす女帝の栄光〉に与えられる恩恵は、このターンの間パワーを+10000する効果である。
〈贅を尽くす女帝の栄光〉P4000→P14000
「一気にパワーを上げてきたかッ」
「これで返り討ちだ。〈贅を尽くす女帝の栄光〉でブロック」
攻撃中の〈ツインヒート・アンキロ弐式〉に、ドレスの美女が立ち向かう。
美女はその姿に似つかわしくない握り拳を作ると、一切躊躇う事なく眼前の恐竜を殴りつけた。
圧倒的ステゴロ。真紅のドレスは返り血の赤。
そう言わんばかりの連打攻撃を叩き込んで、美女は恐竜をタンパク質の塊に変えてしまった。
「これで攻撃は終わりか?」
「……そう簡単に攻撃が通るとは思っていません。ましてや相手は黒崎先輩」
「諦めか」
「保険をかけておいたのです。こうなっても追撃ができるように! 俺は魔法カード〈ゼロエレメント〉を発動!」
諦める事なく、追撃を仕掛ける学人。
魔法カードのコストでライフ1点を支払い、手札1枚を捨てる。
「このカードは3つの効果から一つを選んで発動する魔法カード。だが俺の場に【合成】によって召喚されたモンスターが存在するなら、全てを選ぶ事ができる!」
「なら見せてもらおうか、お前の選択を」
「まずは第一の効果によって、俺は墓地から【合成】を持つ魔法カード〈ファイアエレメント弐式〉を手札に加える」
まずは手札消費の激しい【元素】デッキでは有難い、魔法カードの回収効果を処理する学人。
だがこれだけでは相手に追撃ができない。
「続けて第二の効果! 俺は自分の場に存在する系統:《元素》を持つモンスター〈スチーム・レックス零式〉を回復させる!」
再び行動可能となった蒸気の恐竜に、歓声が湧き上がる。
だが第二の効果はこれで終わらない。
「モンスターを回復させた後、俺は手札の魔法カードを使って【合成】を行う! 手札の〈ヒートエレメント〉と〈ウォーターエレメント〉を【合成】。そして〈スチーム・レックス零式〉を進化!」
火と水の元素が、〈スチーム・レックス零式〉と共に魔法陣の中へと入っていく。
火と水を掛け合わせて生まれた蒸気へ、さらに火と水の元素を掛け合わせて竜と成す。
「火炎の闘志と流水の知識。今こそ交じりあいて、革命の狼煙を上げろ!」
魔法陣が消え、巨大な蒸気機関の心臓が姿を現す。
心臓を中心にして鉄の外皮と竜の身体が構成されていく。
速水学人の切り札、元素の竜王が降臨した。
「来い! 〈【
〈【蒸気竜王】スチームパンク・ドラゴン〉P13000 ヒット3
SRのカードが登場すれば、一般ギャラリーは大いに盛り上がる。
一方の勇吾は追撃こそ想定していたが、ここでSRの切り札を呼び出してくるとは思っていなかった。
「……そうか。コイツがそうだったのか」
雄々しき両翼を広げる蒸気竜王を見上げながら、勇吾は小さくそう呟く。
ツルギから話は聞いていたという事もあったが、勇吾は目の前にいる『かつて化神であったモンスター』という事実を肌で感じていた。
同時に、速水学人という後輩が打ってきた強力な一手にも気づく。
「第三の効果によって、このターン次に俺が受ける効果ダメージを0にする。そして〈ゼロエレメント〉は墓地へはいかず除外される」
「ヒット3で2回攻撃持ちを出したか。いい手だ」
「コレで決める! 〈スチームパンク・ドラゴン〉で攻撃!」
咆哮を上げて攻撃を仕掛ける〈スチームパンク・ドラゴン〉。
同時に攻撃時効果も発動する。
「〈スチームパンク・ドラゴン〉の効果で、墓地から系統:《元素》を持つ魔法カード〈ウォーターエレメント〉を発動」
勇吾にブロッカーはいないが、油断のできる相手でもない。
学人は効果でカードを1枚ドローし、リソースを確保する。
「〈贅を尽くす女帝の栄光〉でブロック」
「疲労状態でブロックできるのかッ」
「【反転】している場合に、一度だけな」
自身の効果で、〈贅を尽くす女帝の栄光〉はまだパワー14000である。
真紅のドレスに身を包んだ美女は、その拳を以て蒸気竜王の攻撃を打ち消した。
ただし〈スチームパンク・ドラゴン〉も簡単には破壊されない。
「……戦闘破壊耐性か、厄介だな」
「一度効果を使えば、もう疲労ブロックはできない! 〈スチームパンク・ドラゴン〉で2回攻撃!」
追撃を仕掛ける〈スチームパンク・ドラゴン〉。
再び攻撃時効果が発動し、またもや学人は〈ウォーターエレメント〉を選択して1枚ドローをする。
今度こそ勇吾の場にはブロッカーがいない。デッキの性質上、防御魔法による攻撃の無効化も考えられない。
ヒット3のこの一撃が通れば、学人の勝ちである。
「手札から第9の使徒〈
勿論、そう簡単に勝ちを譲るほど勇吾も甘くはない。
手札から効果を発動した事で、勇吾の場に巨大な木馬が姿を現す。
「オレの場に存在する【反転】しているモンスターを全て手札に戻す事で、このカードを召喚する事ができる」
巨大な木馬の胴体が開くと、真紅のドレスを着た美女はその中に吸い込まれていった。
そして代わりに木馬が勇吾の場に現れる。
〈隠匿されし賢者の宝物庫〉P5000 ヒット0
ただのブロッカーではない、学人は自身の経験から確信のようなものを得ていた。
「〈隠匿されし賢者の宝物庫〉が自身の効果で召喚された時、手札を1枚捨てる事で、相手のアタックフェイズを強制終了させる」
勇吾は抜け目なく、手札から〈慈愛の女教皇〉を捨てる。
すると巨大木馬の胴体が展開し、中から空間を歪めるエネルギーが解放された。
歪んだ空間は蒸気竜王の攻撃を阻害し、学人のアタックフェイズを強制終了させてきた。
「……ターンエンドです」
速水:ライフ7 手札3枚
場:〈【蒸気竜王】スチームパンク・ドラゴン〉〈エヴォリューション・リアクター〉
ターンを終えるも、学人は悔しさを隠し切れないでいる。
これだけの猛攻を仕掛けても、トドメに持っていけずに終わった。
己の強さが足りない証拠だと、学人は右手を握りしめてしまう。
「足りないと思うか?」
落ち着いて、勇吾は学人に問いかけてくる。
己の力が目的を成すために足りているか否か。
学人の中にあるもう一つの迷いに、足を踏み入れていく。
「……足りません。トドメまで持っていけなかった」
「それは結果論だ。己の強さなど、厳密な数値化をする事はできない。主観的な強さと客観的な強さが、正しく一致する事などないんだ」
「一致しない……どういう事ですか」
学人が聞き返すと、勇吾はファイトステージの外に顔を向ける。
そちらを見てみろと言わんばかりの勇吾に倣って、学人は周囲に目を向けた。
途端、学人の視界が広がり、見えていなかった景色が映り込んでくる。
聞こえてくる歓声は、二人のファイターを賞賛する言葉の数々。
その強さを讃美し、その激闘を讃える。
たとえトドメを刺し損ねていても、困難な壁に挑んだ学人を、ギャラリーは讃えていた。
「分かるか? オレ達は世間一般から見れば必要以上に強い」
「それは、そうですが」
「強さが『足りる』という事は、オレ達にとって存在しない概念だ」
バッサリと切り捨てる勇吾の言葉に、学人は言葉のなく驚く。
「強さの証明とは最終的な結果で決まる。そしてオレ達ファイターは挑まねば結果に触れる事すらできない。ならば挑む事なく、己の強さを確認する術など存在すると思うか?」
「……いいえ」
「そうだ。ならば『強さが足りる』瞬間とはなんだ? それはファイターとしての成長を手放した瞬間に他ならない」
ファイター常に戦い、常に成長を続ける。
強さが足りるという事は、無意味な思い込みで自分を停滞させる事でしかない。
なによりサモンファイターにとって、強過ぎるという事は本来存在しないのだ。
「お前が兄に勝つという目的を成し遂げたいなら、そのために研鑽を続ければ良い。だがそれでファイターとしての道が終わるわけではない。強さが足りるかどうかを考えるくらいなら、まずは挑んでみせろ」
「俺は……」
「天川なら、そんな短絡的な目標設定はしないだろうな」
「……そうですね。アイツはずっと果ての無い先を見続けている」
一つや二つの勝利で満足し、停滞する事はない。
彼は次に挑み続け、未来に進もうと足掻き続ける。
ならば自分はどうするべきか。
己の強さに自信が持てずに足踏みをするくらいなら、この暗闇を前進する。
友の横に並び立つのであれば、己の目的を成し遂げるためなら、ただひたすらに前に進む。
それこそ勇吾が学人に伝えようとしていた事であった。
「壁は壊せそうか?」
「はい。先輩のおかげで」
「そうか……ならオレも、全力で勝ちに行かせてもらおう」
表情から迷いが消えた学人と見届けると、勇吾は口元に小さな笑みを浮かべて自身のターンを開始した。
「オレのターン」
カードをドローし、メインフェイズへと入る。
学人の場にはブロッカーこそ存在しないが、手札は3枚に、破壊耐性を持つ〈スチームパンク・ドラゴン〉がいる。
勇吾の場にはモンスターがいるが、戦闘には向いていない。
残りライフも加味すれば、勇吾の方が不利にも見える。
「さぁ、決めにいくぞ。オレはコストで手札を1枚捨てる」
不利かどうかは自分が決める。
そう言わんばかりに、勇吾は精神的余裕を以てカードをプレイした。
「第6の使徒よ来たれ。〈
勇吾がカードを仮想モニターに投げ込むと、小さな天使のぬいぐるみが召喚された。
手にはハートの鏃がついた弓矢を持っている。
〈恋する天使の爆熱弩弓〉P1000 ヒット2
「手札を捨てて召喚した〈恋する天使の爆熱弩弓〉は【反転】する」
カードが上下逆さになると、天使のぬいぐるみからビジョンが現れる。
愛らしいぬいぐるみから一転して、ハートの弓矢を手にした美少女天使が姿を現した。
だがお世辞にも、コストに対してステータスは高いとは言えない。
実際ギャラリーからも疑問の声が出ている。
(あのモンスター……なにかあるな)
ステータスでは判断せず、警戒して疑う学人。
そしてその疑惑は当たった。
「【反転】している〈恋する天使の爆熱弩弓〉の効果発動。このカードを手札に戻す事で、相手モンスター1体のコントロールを1ターンだけ得る」
「やはり効果が厄介なタイプだったか」
「オレは当然〈スチームパンク・ドラゴン〉のコントロールを得る」
天使がハートの弓矢を射ると、〈スチームパンク・ドラゴン〉は勇吾の場へと移動する。
これで学人の場にはモンスターが0体、アームドカード1枚だけになってしまった。
「〈恋する天使の爆熱弩弓〉を再召喚」
再び天使のぬいぐるみが勇吾の場に召喚される。
今回は手札コストを払っていないので【反転】はしない。
このまま攻撃をするという選択もあるが、速水学人を相手にして黒崎勇吾は決して油断をしない。
「コントロールを奪ったモンスターは、こうやって使う」
勇吾はそう言うと1枚のカードを仮想モニターへと投げ込む。
すると召喚コストとして、勇吾の場から全てのモンスターが墓地へと送られた。
コントロールを奪ったSRモンスターをコストに変えるというプレイングに、周囲も一気に盛り上がっている。
「破壊耐性があろうとも、コストにされてしまえば他愛ない」
「クっ、こうもあっさりと」
「刮目せよ。第20の使徒〈
3体のモンスターをコストにして、トランペット奏者のぬいぐるみが召喚される。
一見すると可愛らしいぬいぐるみだが、その姿も一瞬にして変化する。
「〈創造と破滅の演奏使徒〉はコストとして墓地へ送ったモンスター1体につきパワー+5000、ヒット+1。そして3体のモンスターをコストにして召喚した場合【反転】する」
ぬいぐるみから、今までで一番巨大なビジョンが出現する。
六本の腕が生えた阿修羅の如き見た目であった。
全ての手にトランペットを持ち、その顔は演奏に命を賭した修羅のようである。
〈創造と破滅の演奏使徒〉P15000 ヒット3
モンスターの頭数、与えられるダメージの総量は減っている。
それでも大型のモンスターが出たとなれば、プレッシャーとしては機能する。
だが学人が見ようとしているのは、その先にあるものだ。
『そろそろワタシの出番ですね』
「あぁ、いくぞシーカー」
ようやく出番が来たので声を出す化神シーカー。
とはいえその声が聞こえるのは、この場には勇吾しかいない。
「厄災を選べ。キサマの運命を決めるのはオレの相棒だ。来い10番目のアルカナ〈【運命の使徒】
『オ初……ではありませんね。オ久しぶりでゴざいます』
大きな懐中時計に歯車の手が浮かんでいる、黒崎勇吾のエースモンスター。
化神であるので喋るが、その声は学人には聞こえていない。
聞こえてはいないが……学人はなんとなくそこに化神が宿っているという感覚はあった。
〈【運命の使徒】我は汝を時明かす者〉P9000 ヒット?
『フムフム……なんとなく認識はできているようですね』
「名残か何かだろう。シーカー、召喚時効果だ」
『かしこまりました』
自身の召喚時効果によって、シーカーは本来の姿へと変化する。
大きな懐中時計から大きなビジョンが出現し、歯車が集合した身体と、大きな銃を構えたモンスターとなった。
『さぁさぁ、運試しの――』
「〈創造と破滅の演奏使徒〉の効果を発動」
『あら? ソチラが先ですか』
「〈創造と破滅の演奏使徒〉はオレの場にいる【反転】状態のモンスター1体につき、相手に1点のダメージを与える」
現在勇吾の場には【反転】しているモンスターが2体。
修羅は2本のトランペットを吹くと、学人のライフを削りにかかった。
「クっ! 効果ダメージか」
速水:ライフ7→5
「さらにこの効果でダメージを与えた事で追加効果を発動。オレはライフを1点回復して、1枚ドローする」
黒崎:ライフ3→4 手札1枚→2枚
「さぁ、出番だシーカー」
『ようやくですか。では……アナタの運命、試して差し上げましょう』
シーカーは手にした銃を学人のデッキに向けて、引き金を引く。
その効果によって学人のデッキを上から1枚破棄させた。
「答えろ。墓地へ送られたカードは?」
「ッ! 魔法カード〈バブルエレメント弐式〉」
「〈シーカー〉の効果によって、このターンお前はアタックフェイズ中に魔法カードを使えない」
防御の大半を魔法カードに依存している学人にとって、この制限は非常に痛手である。
となればアタックフェイズを終了させるようなカードで防ぎ切る事は困難。
学人は即座にそれを判断した上で、今できる最善の一手を打った。
「俺は魔法カード〈ファイアエレメント弐式〉を発動!」
「なるほど。アタックフェイズ開始前なら魔法カードを使えるからな」
「ここでモンスターの数を減らす! 俺は効果で〈創造と破滅の演奏使徒〉を破壊!」
学人の発動した〈ファイアエレメント弐式〉は、自分の墓地に系統:《元素》を持つ魔法カードが3種類以上あるなら、相手の場のカードを1枚選んで破壊できる魔法カード。
そして〈創造と破滅の演奏使徒〉を破壊できれば、【反転】状態のモンスターが減るので、必然的に〈シーカー〉のヒット数も下がる。
これが学人の見出した、現状の最適解であった。
「いい選択だ……だが詰めが甘い」
そう呟くと、勇吾は1枚のカードを手札から使用した。
「オレは手札から第12の使徒〈
コストでライフが2点支払われると、勇吾の場に一冊の絵本が姿を現した。
黒崎:ライフ4→2
「相手がモンスターを召喚、または魔法カードを発動した時、〈夢みるままに逆さに落とす〉を【反転】状態で召喚する事ができる」
反転しても絵本は特別な姿には変化しない。
しかし絵本が開くと、中から飛び出てきた腕が火球を鷲掴みにされてしまう。
そしてモンスターを破壊しようとしていた火球は着弾する事なく、絵本の中へと引き摺り込まれてしまった。
「そして召喚時に発動していた魔法カードは、無効化される」
火球を飲み込んだ絵本は自我があるように、パタパタと動いている。
さらに【反転】時の効果によって、絵本はヒット数も上昇していた。
〈夢みるままに逆さに落とす〉P2000 ヒット0→2
「もう防御はなさそうだな……アタックフェイズ」
勇吾がアタックフェイズに入る。
それは即ち、学人の手札には対抗できるカードが無い事を意味していた。
「〈夢みるままに逆さに落とす〉で攻撃」
「……ライフです!」
絵本から飛び出た腕が、学人を殴りライフを削る。
速水:ライフ5→3
防御ができない以上、あと一撃を食らえば終わる。
ギャラリーは白熱したファイトを目にして大いに盛り上がっているが、そんな歓声の中で勇吾は学人に声をかけた。
「速水学人!」
「ッ!?」
「強さの果てを想像しろ……お前はまだまだ進化できる」
「……はい!」
もう迷いはない。
たとえこの勝負に負けても、次に繋がる光を感じ取れる。
だからこそ学人は、清々しい気持ちでいられた。
「そうやって返事ができれば十分だ……〈シーカー〉で攻撃!」
『貴方の成長、ワタシ達も楽しみしていますよ』
そう言って銃口を向けるシーカー。
いつか成長した彼と再び戦える日を願って、今日は引き金を引く。
『それではこれにて、チャオ』
反転しているモンスターは3体。
よってヒット数が3となっている〈シーカー〉の一撃は、学人のライフを消しとばすのに十分であった。
速水:ライフ3→0
黒崎:WIN
「チェックメイト……次を楽しみにしているぞ」
「はい……次は必ず、俺が勝ちます」
立体映像が消えゆく中、いつか再戦する事を誓う二人。
勇吾は悩みを振り切った学人を見て、どこか満足そうにするのだった。