俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

245 / 257
第二百四十二話:素朴な疑問とか二年生編とか①

 季節も12月に入り、文化祭も近づいてきた。

 今日も今日とて評議会としてのひと仕事を終えて、疲労を感じたまま家に帰る。

 俺はリビングのテレビを適当に点けると、テーブルにカードを広げていた。

 

「お兄おかえり……って、カード広げてなにしてんの?」

「デッキをデチューンしてる」

 

 二階から降りてきた卯月(うづき)を背にして、俺はデッキのカード達と睨めっこを続けている。

 もちろん傍には調整用のカードの入ったストレージボックスも用意済みだ。

 

「デチューンって弱体化? なんで?」

「ほら、制限改訂に合わせた調整はもう済ませてあったんだけど……結局カーバンクル特化のデッキのままだったからな」

 

 要するに過剰戦力のままだという事。

 大きな問題はひとまず乗り越えた以上、わざわざ過剰戦力のままである必要はない。

 

「お兄の場合、今さら感がスゴいんだけど」

「過剰戦力ってのは適度な加減が難しいんだ。(まつり)誠司(せいじ)を倒した以上、また必要な場面がくるまで本気である必要はない」

「そういうものかなぁ?」

 

 そういうものです。

 少なくとも来年度の入るまでは、少しデチューンしたデッキで大丈夫だ。

 

「とりあえず進化モンスターの数は減らして……もうすぐ二年生だし、解放編のカードでも入れてみるか」

「……ねぇお兄、ちょっと素朴な疑問があるんだけど」

 

 なんだ急に。

 

「お兄の【カーバンクル】デッキってさ、めっちゃSRのカード入ってるけど……いくらかかったの? 前の世界でさ」

「卯月……唐突にカードゲーマーのアキレス腱に硫酸を浴びせるのやめてくれないか?」

 

 デッキの価格なんて辛い現実を急に突きつけないでくれ。

 シングル買いしたカードも多いんだぞ。あとはお察しくださいで良いじゃないか。

 ……仮にも【カーバンクル】は環境入りの実績があるデッキなんだぞ。察してくれよぉ。

 

「お金の話なんて……やめませんか?」

「使わないカード売って荒稼ぎするような人間が言うな。素直に白状しろ」

 

 妹が兄に厳しい。

 分かりました話します、話せば良いんでしょ。

 と言っても転移してしばらく経つし、若干うろ覚えなところもあるけど。

 

「前の世界での相場基準でいいか?」

「うん。こっちの世界の相場がバグってるから、今さら驚かないと思うし」

「まぁ流石にカード1枚で万越えの値段とかの方が珍しかったもんな」

 

 しかも万超えなんて通常版ではありえない。

 シークレット枠的なイラスト違いのカードだけだ。

 ちなみに俺は高額なイラスト違いカードは1枚も持っていない……アレ封入率がマジで低くてね。

 

「ん〜……確かに思い返してみれば、【カーバンクル】デッキって前の世界じゃあ高額な方ではあったな」

 

 というわけで、俺のデッキに入っているSRのシングル価格(前の世界での相場)はこのようになっています。

 

 〈【紅玉獣(こうぎょくじゅう)】カーバンクル〉800円

 ただし俺の相棒はいつの間にか手元にあったカードなので、コレはシングル買いした場合の値段である。

 カードショップで買った記憶もないし、多分パックで当てたんだと思うんだけどなぁ。

 

 〈【幻蒼竜(げんそうりゅう)】カーバンクル・ドラゴン〉1200円

 〈【幻紅獣(げんこうじゅう)】カーバンクル・ビースト〉700円

 

「……この世界に慣れると、恐ろしく安く思えてしまうんだけど」

「前の世界ではこんなもんだよ。フィニッシュ性能の高い〈カーバンクル・ドラゴン〉はそこそこな値段をキープしてたし、逆に使い所がやや難しい〈カーバンクル・ビースト〉は一番安く売られてた」

「通常のカーバンクルも結構安い気がするんだけど、なんで?」

「初収録の後に再録あったからだな」

 

 続けて〈【幻橙狐(げんとうこ)】カーバンクル・テンコ〉。

 シングル価格2800円となっておりました。

 

「高っ!? 安いけど高っ!」

「魔法カードを無効化できるカーバンクルが弱い訳ないだろ。強さとレアリティは価格に反映されます」

「ねぇお兄。アタシの見間違いじゃなければ、その狐が3枚あるように見えるんだけど」

 

 ノーコメントでお願いします。

 2800円を3枚手に入れるためにカードショップをハシゴなんてした覚えはありませんヨ?

 あとは〈【幻婪魔獣(げんらんまじゅう)】カーバンクル・ジョーカー〉が1600円。〈【王の幻槍(げんそう)】グングニル〉が1000円。〈【王の幻砲(げんほう)】ケラウノス〉が200円。

 

 そして……

 〈【幻黄雷(げんこうらい)】カーバンクル・ミョルニール〉

 〈【幻翠鳥(げんすいちょう)】カーバンクル・サムルク〉

 〈【幻紫公(げんしこう)】カーバンクル・ヴァンプ〉

 〈【合身王器(がっしんおうき)】トラペゾへドロン〉

 こいつらは全部まとめて定価3500円(税別)。

 

「いまなんか雑にまとめなかった!?」

「雑じゃない。この4枚はこれで一つのセットなんだ」

「もしかして……構築済みデッキ?」

「正解。SR盛り盛りのちょっとお高い構築済みデッキが初出のカードなんだよ」

 

 商品名は(スーパー)(レボリューション)デッキ『カーバンクル・エヴォリューション』。

 キャッチコピーは『ここからいきなり最強デビュー!』だった、実用性増し増しの神商品だぞ。

 

「そりゃあそんだけSR入ってたら、最強にもなれるでしょ……でも【カーバンクル】デッキってアニメに出てなかったのに、なんで構築済みデッキ発売されてたの?」

「大丈夫だ。このSRデッキは全3種が同時発売されたけど、アニメ関連のデッキは一つしかなかったぞ」

 

 ちなみに商品名は『セブンシンズ・レクイエム』。

 要するに政誠司の【罪臣(ざいじん)】デッキである。

 新規SR7種入ってたし、普通に強いしで、前の世界ではすぐに品切れしてた一品だ。

 

「ふーん。ちなみにもう一つのデッキってどんなの?」

「名は『ウェイクアップ!THE鎧勇騎(がいゆうき)』ってデッキで――」

「うげぇ。よりにもよってアイツの……」

 

 露骨に嫌がっている辺り、アイツとは財前弟の事なんだろう。

 

「……えっ? 財前弟って【鎧勇騎】使ってんの?」

「お兄は知らないかもだけど、アイツ本来のデッキはそっちだから」

 

 そうだったのか。

 兄は合体ロボで、弟は変身ヒーローのデッキか……なんなんだあの兄弟は。

 

「で話を戻すけど。これらのカードに加えて、他のカード諸々を合わせると……だいたい3万円くらいかな」

「前の世界なら十分過ぎるほど狂気の値段なのに、この世界がそれ以上の狂気に満ちてるから、相対的に可愛らしい値段に見えるのやっぱりバグじゃない?」

「受け入れよう。世界を」

 

 俺は久しぶりに前の世界基準の価格を語れて、千秋の思いを感じたぞ。

 そんな他愛のない話をしながら、俺はテレビに流れるニュース番組をBGMにデッキ調整を続ける。

 

「受け入れる……受け入れるかぁ……」

「ん?」

「なんかさ。受け入れるっていうよりも……馴染む感じがあるの。異世界だから常識も色々と違う筈なのに、訳わかんないくらい馴染む自分が、ちょっと怖い」

 

 馴染む……馴染むかぁ。

 確かに言われてみると俺も心当たりはある。

 カードアニメ特有のノリを知っている身であったとはいえ、今思えば転移直後とは思えない馴染み方をしていた場面もあった。

 具体的には召喚口上とかだ。

 前の世界でも召喚口上を自作する遊びなんてのはした事があるけど、それを公の場で披露するなんて絶対にしなかった。

 

(でも俺……チュートリアル戦の時点で、カーバンクルの召喚口上を言えたんだよな)

 

 それも以前作ったものではなく、即興で作った代物だ。

 自分でもノリと勢いに任せて行動する事が多い人間だとは思っているけれど、あの口上はものすごく()()()()()だと感じた。

 まるで世界が自分のために用意したかのような……そんな突飛極まる感想さえ抱いてしまう。

 

「卯月は、前の世界に戻りたいと思うか?」

「……今は別に、いいかな」

「そっか」

 

 感じたソレは安心とも違う。

 そういう答えがくる事が当たり前だと確信していたような、退屈な気持ち。

 何かがおかしいのかもしれないけれど、ソレをわざわざ掘り下げてみようという気持ちにもならない。

 

 ちょっとばかり、気持ちの悪い静けさが流れる。

 そうなると必然的にテレビから流れるニュース番組の音声が耳につく。

 

『さぁ、来年は13年ぶりに虹色彗星(にじいろすいせい)が地球に大接近する年です。楽しみですねぇ』

 

 番組の女性キャスターが口にした『虹色彗星』という単語が耳につく。

 最近よくテレビなんかでも聞くようになったけれど、その名前を耳にする度に「二年生編が近づいてきたんだな」って気持ちになってしまう。

 

「ねぇお兄。一応聞いておきたいんだけどさぁ……あの彗星ってアニメのストーリーに関係ある?」

「あるぞ。二年生編の重要なイベントにも関わる」

「やっぱり……そもそも虹色の彗星ってなに? ファンタジーの極みじゃん」

 

 それに関しては仰る通りでございます。

 あの彗星が虹色に輝いている原理はアニメでも特に説明とか無かったし、俺も個人的に気になって調べたけどよく分からなかったし。

 なんで虹色に輝いてるんだろう? 大自然の奇跡って感じで綺麗だけどさ。

 

「そういえばお兄。二年生編ってどんな話なの?」

「あれ? 前話した事なかったか?」

「再確認。またウイルス事件みたいなのが発生するなら自衛したいじゃん」

 

 それもそうか。

 確かに分かる範囲での脅威は知っておくに越した事はない。

 ただなぁ……

 

「自衛……自衛かぁ……」

「ちょっと、頭抱えないでよ。急に不安になるじゃん」

「いや、その、確かに二年生編でも事件は起きるんだけど……」

 

 一年生編のウイルス事件と違って、一つ大きな問題を抱えているんだよな。

 

「俺も二年生編を見越してここ最近は動いていたんだけど……改めて考えると二年生の事件って、一番単純だけど一番面倒臭いヤツなんだよな」

「本当に何が起きるの……世界大会があるから、それ絡みだとは思うけど」

「正解。世界大会も巻き込んで、悪い奴がよからぬ事を企てる。そんなよくあるパターンではあるんだけど……」

 

 一年生編は色々と要因が重なってくれたお陰で、原作よりも少し早く終わらせる事ができた。

 二年生編もできれば早く終わらせたい……と言いたいところなんだけど。

 

「先に結論を言うとだな。二年生編の事件は……先回りして対策できる事がほとんど存在しないんだよ」

「…………はぁ?」

 

 我が妹よ気持ちはよく分かる。「何を言ってるんだこのバカ兄貴は」と言わんばかりのその表情と声、理解できるよ。

 でも事実なんだ。紛れもない事実なんだよ。

 

「対策なしって、なに言ってんの!?」

「オーケーオーケー。とりあえず落ち着いてくれ」

「要注意人物とか危険物とか、どうせ色々あるんでしょッ! 全部吐き出せェェェ!」

 

 分かったから落ち着いてくれ。

 このままじゃ馬乗りで殴ってきそうな雰囲気になってるぞ。

 

「分かった、分かったから! それも含めて二年生編について説明するから!」

「ほら、早く解説する」

 

 と言っても今回は本当に……卯月が特別警戒する事ってあんま無いんだよな。

 

「じゃあまずは、二年生編から登場する主な敵キャラ4人から」

 

 お話しましょう。

 スケールだけなら政誠司にも劣らない、彼らの計画の全容を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。