俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
第二百四十七話:超高速! 戴冠式
えー本日はクソ程お日柄もよく、絶好の戴冠式日和ですね。
カスほど綺麗な青空の下、俺は現在何をしているのかと言うと……
「逃げるなァァァ! 戴冠式から逃げるなァァァ!」
「代読して貰う式辞はちゃんと用意しただろう?」
「式辞が問題なんじゃねー! 序列第1位がいない事が問題なんだよッ!」
またもフラッと行方不明になる寸前だった
荒縄で縛り上げて、現在進行形で、捕縛中。
「申し訳ありませんガ、もう少しオ手柔らかに縛っていただけると」
「お前のパートナーの不始末だろォォォ! 海に沈めるぞッ!」
「オやめください!? 錆びてしまいます」
身体が歯車でできている辺り、やはり化神といえどもシーカーは塩水には弱いらしい。
いやそんな事はどうでもいいんだ。心底今はどうでもいい。
大事なのはたった一つ。この序列第1位を戴冠式の会場へ連行する事だけ。
何故ならもうすぐ戴冠式が始まる時間なんだよクソッタレ!
「ツルギ〜、間に合いそうっプイ?」
「間に合うかどうかじゃない。間に合わせるんだよ」
「キュップ〜……目がガンギマってるっプイ。ここ最近の多忙が哀しきモンスターを生み出してしまっ――」
「全速前進じゃオラァァァァァァ!」
すまんな相棒、今はそんな事を言ってる場合じゃないんだ。
もう手段なんて選んでられない、絵面なんて気にしていられない。
荒縄で縛り上げたこの序列第1位を肩に担いで、俺は全力疾走で戴冠式の会場へと向かうのだった。
「オいてかないでください〜!」
「キュップイ!? 早すぎるっプイ〜!?」
やかましい、振り切るぞ。
「
「黙れ。今日の日付を思い出せ」
本当になんで今日が戴冠式なんだろうな。
色々後始末があってそれどころじゃなかったから?
その通りなんだよド畜生ッ! 今日しかなかったんだよッ!
「あぁ……誰もいないって事は全校生徒会場入りしてるな」
講堂の周辺に誰もいない。
時間なんて確認しなくても、開始時刻になったのだとわかる。
裏からこっそり入る……なんてまどろっこしい事はしない。
今日だけはそんなタイムパフォーマンスの悪い挙動を俺は許さない。
「先輩……正面から入ります」
「……は?」
「正面、突破する」
「おい待て天川、正面ドアは既に閉められている時間――」
「蹴破れば最短距離です。そのまま壇上に上がる」
額に青筋が浮かんでいる事が自分でもわかる。
頭に血が昇っているんだ。
我ながら物理的な暴力への抵抗が消え去っている。
今なら蹴りだけで時空間を歪曲できそう。
というわけで。
「オラァァァ!」
――ドゴォォォォォォンッ!――
力こそパワー。
疲労と怒りとストレスで血管ブチブチの脳味噌をフル稼働させて、俺は講堂の正面口を蹴破るのだった。
鍵か何かが折れたような音が聞こえた気がするけど、そんな些細な事を気にする余裕はない。
既に講堂に集まっている生徒や教師が唖然とした表情でこちらを見てくるが、知った事ではない。
「……道を、あけろ」
何人たりとも俺達の最短距離を邪魔する事は許さない。
好奇と動揺と恐怖が混ざり合った視線を向けられる中、俺は荒縄で縛った黒崎先輩を肩に担いで壇上へと向かう。
仕方ないだろ、日付を確認せず急にいなくなる奴が悪いんだ。
既に壇上で待っていた評議会の面々は、鳩が豆鉄砲食ったような顔でこちらを見ている。
せめて歓迎してくれ、ここまでやって連れてきたんだからさ。
「連れて……きました」
「あ、ありがとう」
壇上に上がり、俺は縛り上げた黒崎先輩を
だから引くんじゃない、この程度でアンタに引かれたくない。
とりあえず音無先輩が縄を解いてる間に、俺は自分の席に座ります。
「ツルギ……なんで正面突破だったのよ」
「最短距離を選んだ」
「その結果『序列第1位を縛って運んできた1年生』ってカオス極まりない絵面が完成したわよ」
隣に座っていたアイからコソコソと耳打ちされるが仕方ないだろ。こうでもしないと間に合いそうになかったんだから。
あと俺は一応序列2位だ、セーフだよセーフ。
「ハァ〜、これだから男は野蛮なのね。ウィズやお姉様のように、もっと美的センスを磨くべきなのね」
「やかましい除草剤撒くぞ」
「カルシウムも不足してるのね」
パタパタと翼を動かしながら、アイや俺達の頭上を飛んでいるウィズ。
普通の人間には認識できないから、好き放題に言いやがる。
一応アイが嗜めているが、ウィズは幼子のように拗ねるばかりだ。
「ブイ〜、ツルギのやつメチャクチャ殺気立ってるブイ」
「うむ。
おいブイドラとシルドラ、聞こえてるぞ。
仕方ないだろ、戴冠式の日付が最悪過ぎるんだから。
式典とはいえ速攻で終わって欲しいんだよ。
「えっと……もう始めても大丈夫ですか?」
「えぇ勿論。この不良帝王は後で私が引導を渡すわ」
本日の司会進行役ことソラが、音無先輩に開始の有無を尋ねている。
荒縄も解かれているし、もう始めていいだろう。
だから早く終わらせてくれ。
「ほらっ、さっさと式辞を読みなさい」
「わかっている」
音無先輩に背中を押されて、黒崎先輩はようやくマイクの前に立つ。
あらかじめ黒崎先輩が用意していた式辞は、俺達がちゃんとマイク前に置いておいたぞ。
本当に……
「コホン。それでは新評議会メンバーを代表いたしまして、序列第1位黒崎
本当に本当に……
「あぁ、紹介に預かった序列第1位の黒崎だ。知っている者も多いと思うが二つ名は【
「式辞が長ェェェェェェェェェェェェッッッ!」
我慢できず、思わず黒崎先輩を蹴り飛ばしてしまった。
長いんだよ式辞が。
「て、天川、なにを」
「長いんですよ式辞が! 序列、二つ名、名前! これだけで済ませてください!」
「まだ式辞の序文すら読み終えていないのに、それ以上の巻き進行を要求するのか?」
「普通の戴冠式ならこんな事言ってませんよ! だけどさっきも言いましたよね!? 今日の日付を思い出せって!」
見ろよ講堂に集まっている生徒達から放出されている殺気を。
俺が登場した時は流石に消えていたけど、今は復活して殺気マシマシになってるんだぞ。
それもその筈、何故なら今日は――
「今日はなぁ……文化祭
一番クソ忙しい日である。
そんな日に悠長な戴冠式なんぞやってられるかっての。
「しかし所信表明は伝統的に」
「なぁにが伝統だ! どうせ後で校内の掲示板に公示で張り出すんだから、サッサと済ませろ! 全員まだ文化祭の準備終わってねーんだよ!」
評議会は文化祭の元締め的なポジションでもある。
当然俺達が止まっていれば、全校生徒止まる事になるんだよ。
戴冠式なんぞインスタントに済ませろ。
「オイそこの教職員一同。何か言いたいならデッキ抜けや、今なら俺が喜んで殺戮してやるぞ。それから在校生一同。好きなだけ俺らに憎悪を向けろ、お前らにはその権利がある」
勢いで先輩から強奪したマイクを片手に、俺は講堂に集まった面々に向けてお気持ちをぶつける。
俺も色々仕事残ってんだよ、文化祭明日なんだよ、だから必要最低限で終わらせるぞ。
「新
「……はい」
よろしい。アンタはいつもそのくらい大人しくいてくれ。
それじゃあ俺はこのイカれたテンションで、イカれたメンバーに自己紹介をさせるぞ!
「まずは序列第6位から! マイク渡すから順番に巻きで自己紹介しろォ!」
はいまずはアイから!
「ちょ、いきなりマイク投げないでよ……コホン。ご紹介に預かった六帝評議会序列第6位【
「はい次ィィィ!」
先攻1ターンキル特化型デッキくらい、今日はスピード重視なんだよ。
マイクは強奪して次のメンバー紹介だ。
「えっわっ!? えっと、序列第5位になりました〜、【
「次だ次ィィィ!」
必要最低限でいいんだよ!
1秒を無駄にするな。
「ん。序列第4位、【
「後は既出情報なので次ィィィ!」
苗字までしか言えなかったからか、九頭竜さんが分かりやすくガーンとショックを受けたような顔になっている。
というかデフォルメギャグ顔になっている。
すまないけど、今日は本当に早く終わらせたいんだよ。
だからシルドラ、気持ちは理解するが俺の後頭部を蹴るな。邪魔だ。
「えっと……序列第3位、【
「もうみんな知ってるだろッ! 終了!」
「ちょっと! 私の扱いが雑過ぎないかしら!?」
マイクを強奪したら音無先輩に文句を言われた。
だって音無先輩の事はもうみんな知ってるだろ。
「どうせ後で掲示板に公示で張り出されるんですよ。前期から続投の人に割く時間はありません」
「じゃ、じゃあせめて新メンバーの藍た――」
「あ“ぁ”?」
「……なんでもないです」
よろしい。
「えっと、序列第1位の黒崎先輩はもう名乗ったから……残るは俺だけか」
なら、名乗らせてもらおう。
戴冠した二つ名と合わせて。
「新六帝評議会、序列第2位【
牙丸先輩曰く俺の戦い方……というよりはカーバンクルの進化形態にちなんで『虹』の
皇帝と同じ読み方なのが気になったけど、まぁそのうち慣れるだろ。
「というわけで以上6名が新評議会メンバーです。以上、終わり!」
よーし爆速で終わらせたから、みんな目が点になっているな。
だがそれで良いんだよ。そして目覚めろ文化祭は明日だ。
「戴冠式が終われば当然あとは残る文化祭の準備だ……野郎共ォォォォォォ! お前たちの任務はなんだァァァ!?」
「「「カルチャー!」」」
「「「フェスティバル!」」」
「「「キルゼムオール!」」」
「その通りだッッッ! ならばお前たちが次のやるべき行動はなんだァァァ!?」
「「「パーフェクトプランニング!」」」
「「「パーフェクトビルディング!」」」
「「「パーフェクトハーモニー!」」」
「文化祭前日に揉め事を起こすなッ! 必要書類の提出を忘れるなッ! 経費の領収書は必ず保管しろッ! そして二重帳簿はするな、三桁万円の赤字を出すなッ! 一つでも違反した奴はどうなるッ!?」
「「「殺せッ! 殺せッ! 殺せッ!」」」
「そうだァァァ! 見つけ次第俺が直々に殺してやる! だからテメェらァァァ、死にたくなけりゃ怪我なく喧嘩せず文化祭を終えろォォォ!」
「「「イエッサー!」」」
「「「ジークカイザー! ジークカイザー!」」」
「よし、解散ッッッ!」
俺が(疲労と怒りに任せて)発破をかけて解散宣言をした瞬間、威勢のいい返事をしてくれていた男子生徒一同は全員講堂から出ていった。
うんうん、俺は素直な野郎達が大好きだ。
そして講堂に残されたのは、評議会関係者を除くと女子しかいない。
「あー……女子も解散してれて大丈夫だから。所信表明とかは後日張り出す公示を見といてください」
「雑に……雑に終わってしまいました……」
ソラがポカンとした表情を浮かべながら、司会席でそうごちっている。
「良いじゃないか。これで俺らも思う存分残りの仕事ができるぞ」
「頑張って壇上に立ったのに、私の出番限りなくゼロでしたよ」
それは……ごめん。
俺が頬を膨らませたソラから抗議を受けて、講堂に残された女子達も解散し始めた頃。
壇上の席に座っていたアイがポツリと呟いていた。
「ねぇ、ウチの男子って馬鹿しかいないのかしら?」
「なんでアレで素直に従って出ていくのね? ウィズには理解できないのね」
すまんな、あの雰囲気にさえ持ち込めば男子は全員ノってしまうんだ。
単純で良いだろ? 俺はそう思うし思いたい。
「んじゃあ俺らも戴冠式終わったし、撤収しよーぜー」
「本当に余韻も何もないわね……」
ジト目のアイを背に、俺たちも文化祭に向けた詰めの仕事に向かう。
こうして俺達の代は、歴代最速の戴冠式を終わらせるのであった。