俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
俺が超スピードで戴冠式を終わらせた事で、学園では皆文化祭の準備に集中できていた。
とはいえども、やはりここは闘争本能を持つサモンファイターが集まる学校。
あれだけ言ったにも関わらず、大なり小なり喧嘩は勃発するのでありまして。
「ふぅ……疲れた……」
現在夜の20時。
全裸に腰タオルという姿で、俺は今日一日の疲労を端的に言葉にしてしまう。
評議会の仕事の一部とはいえ、喧嘩の仲裁は精神を消耗するものでしかない。
まぁ……俺は言葉じゃなくて1キルで
「お疲れ
「あっ、
ふと、やってきた牙丸先輩が俺の隣に腰掛ける。
やはり先輩も全裸にタオル1枚なんだよな。
本当に……なんで校内にこんな施設があるんだろうか。
「牙丸先輩……なんでウチは校内にサウナがあるんですかね?」
そう、俺は現在サウナにいる。
校内にあるファイト用の大型ドーム……この前の最終決戦や評議会決定戦でも使ったあの施設。
ここはその地下に存在する、無駄に豪華な謎のサウナ施設なのだ。
「ドームの地下にこんな施設があるなんて、俺初めて知りましたよ」
「ハハハ、そうだろうね。ここは普段教職員が来賓を持て成す時にしか使わないから」
「……いや、現在進行形で使っている俺が言うのもアレですけど、そもそも何で学校にサウナがあるんですか?」
「聞くところによると、ボク達よりもずっと前に評議会の席にいた先輩が、それらしい理屈と権力と実力を以って設置させたらしいね。趣味で」
とんでもねぇ先輩がいたもんだ。
でも今日ばかりは感謝します。俺だけじゃない……今日は他の男子生徒達もありがたくサウナの恩恵に預かっているので。
おかげ様で現在サウナの中は男子高校生の汗と肉体と談笑で満たされている。
「しかし今ここに居るという事は……キミも帰りの電車が止まっているという事か」
「そういう事です」
牙丸先輩の言葉を肯定しながら、俺はサウナの中にあるテレビの画面を指差した。
そこに映し出されているのは夜のニュース番組。
ちょうど俺達がサウナで汗を流している遠因ともなった事件の報道が流れている。
「天川も災難だね〜、帝王として最初の大仕事前日にこうもトラブルに見舞われるとは」
「回避したかったんですけどね〜、流石に爆発事故で運転見合わせなんて予測できないですよ」
そう、文化祭の準備そのものは今日無事に終わった。
だがタイミング悪く、皆が帰り支度をし始めた頃に件の爆発事件が起きたのだ。
現場は俺達がいる赤土町と同じ県内だが、そこそこ離れた町。
線路近くに建っていた古いビルで謎の爆発が起きたものだから、連鎖して電車が止まってしまったのだ。
よりにもよって、俺やソラが帰宅に使う路線がだ。
「帰れる奴らはもう帰りましたけど……見ての通り俺やソラに
「だね。散々汗をかいたのに風呂にも入れない状態だったからね」
牙丸先輩の言う通りであった。
学園の近くには銭湯のような施設が無い。
そこで校内にあるシャワールームを使おうという話になったのだが……現在校内にあるシャワールームは全て女子に独占されている。
敗北者たる我々男子は涙を流しそうになっていたが、なんと俺のクラスの担任でもある
サウナなので当然シャワーなどもある。
「怪我の巧妙とはよく言ったもんですよね〜。ついでのサウナまで楽しめるなんて。疲れていた身体によく染みますよ」
思わず親父くさい事を口走ってしまう。
だけど事実なんだ。
「そういえば、天川は文化祭を一緒に楽しむ相手は見つけてるのかい?」
「楽しむと言っても、俺はほとんど評議会としての見回りに終始してますよ〜」
「それも大事だけど、息抜きをする時間くらいはあるだろう? 美しいレディ達と過ごす甘く楽しいひと時は待ってくれないんだぜ」
なるほど。
これは牙丸先輩なりに『人生の楽しみ方』というものを教えてくれているんだな。
となれば流石にそろそろソレについて突っ込まないといけない。
「先輩? その話と先輩の顔やボディについている真っ赤な手形の数々には因果関係があるんですか?」
「…………ハメを外すのは、程々にする事だね」
露骨に顔を背ける牙丸先輩を見て、おおよそ何があったのか察しがついた。
文化祭を口実に女子を口説きまくって、修羅場ったんだろう。
けどまぁ……文化祭を一緒に回る相手かぁ。
(そういうの、考えた事なかったな)
前の世界では浮いた話とは無縁だったし。
こっちの中学時代じゃ規模の小さい名ばかりの文化祭だったから、そういう概念も浮かばなかった。
女子と一緒に文化祭。漫画やラノベでしか見ない絵空事……とも、今は言い切れない立場なんだろうな。
「それにしても、男だらけのサウナってのは嫌になるね。むさ苦しい筋肉しか目に入らない」
「先輩。その筋肉には先輩も含まれてますよ」
思わず突っ込んでしまったが事実だ。
だって牙丸先輩、身長187㎝もある上に腹筋バキバキに割れてるんだぞ。
そのアクション俳優顔負けのイケ
(というか、先輩に限らずなんだよなぁ……)
この世界……というよりは聖徳寺学園の男子って、結構筋肉ある奴が多い。
このサウナにいる面子だけでも、贅肉らしい贅肉をぶら下げている男子はほとんど見当たらない。明らかにデブキャラを謳歌していそうな奴を除けば、最低でも細マッチョだ。
斯くいう俺も、この世界に転移してきてから身体を動かす機会が多かったからか、明らかに筋肉がついてきている。
「なんでウチの学校って、こんなに筋肉野郎ばかりなんですかね?」
「少なくともボクの筋肉は、愛するレディを守るためにある」
「その台詞は手形がついてない時に言ってください」
説得力がゼロです。
でも改めて思い返せば、この世界でカードゲームやってると身体を動かす機会が意外と多い。
この前のランキング戦だって、テーマパークの中で散々運動させられたからな。カードゲームなのに。
カードゲームに肉体的なタフネスを要求される……まさにカードゲームアニメらしい世界観だと思う。
「さて、そろそろ出るか」
「ですね」
牙丸先輩と一緒にサウナから出て、水風呂が苦手な俺は水よりは温かい程度のシャワーで汗を流す。
そして先輩と一緒に脱衣所へと戻ると、上半身裸の男子達の中によく知っている顔がいた。
「おっ、速水と財前も出たところか?」
例に漏れず脱衣所で上半身裸の速水と財前を見つけたので、声をかける。
というかコイツらもしっかり筋肉あるんだよなぁ……もうコレはサモン筋と呼んでも良いと思う。
「てかなんだお前ら。珍しい組み合わせだな」
「俺もそう思う。なんだかんだで財前とはしっかりと話す機会が無かったからな。交流の良い口実になっていたよ」
と言う速水だが……コイツらってそんなに言うほど交流なかったっけ?
でも険悪になってそうな様子もないし、仲良くなれたのなら良い事だろう。
「僕としても有意義な時間だった。良い刺激を得られたよ」
「同じ評議会補佐なんだ。今後とも手を取り合える仲でありたい」
そう財前に答える速水。
なるほど、確かに評議会補佐同士でいざこざは起こしたくないもんな。というか起こさないでくれ俺らの胃が死ぬから。
…………ん?
「あれ? 速水、今『同じ評議会補佐』って言った?」
「そうだが、どうした天川」
「……財前、お前いつの間に評議会補佐に入ったんだ?」
俺そんなの聞いてないよ。
というか黒崎先輩と一緒に大再編したから、評議会補佐のメンバーリストは全部把握していたんだけどなぁ。
「色々あってね。少し前から【
ジト目で俺の方を見てくる財前。
うん、理解しました。
要するに本来なら今日の戴冠式で、黒崎先輩から俺達にも告知される予定だったんだね。
それをタイパ重視で俺が先攻1キルくらいの速度で終わらせたから、告知されずに終わっちゃったんだね。
「すまん」
「まったく、キミという男は」
返す言葉もございません。
でも財前なら信用できるから、補佐として参加してくれる事は素直にありがたい。
「にしても意外だな。評議会補佐だと俺の下につく事になるから、嫌がって加入しないと思ってたぞ」
「キミに仕える気は微塵も存在しない。僕はあくまで【裏帝】の元で研鑽するために補佐という立場を選んだだけだ。念を押すが僕の上司は【裏帝】だ、間違えない事だね」
「怖い怖い。牙のデカい番犬じゃねーか」
「否定はしない。その番犬に首を噛み切られないように、せいぜい気をつける事だね――【
口元に不敵な笑みを浮かべてくる財前。
相変わらず向上心を隠さず、剥き出しにしてくる男だ。
だけどその方が良い。最近は色々あったからな、そうしてくれた方が俺も安心できる。
「じゃあ財前、ちゃんと玉座のクリーニング代は支払ってくれるんだな? 来年、耳を揃えてさ」
それは、いつかしたやり取りの再演。
幸いすぐに伝わったのか、財前は「払わせる気もないのに、よく言う」と小さく確かに答えてくれた。
それで良い。
なら俺は、それまで他の奴に玉座を汚されないように死守するまで。
だがそれはそうとして。
「ところで、さっきから気になってたんだけど……なんで皆、上半身裸のまま脱衣所を出てるんだ?」
さっきから視界に入るのは、上半身裸のまま上着を片手に持った状態で脱衣所を後にする男子達。
隠すべきところは隠しているが、何故揃いも揃ってそんな奇行を?
俺がそうやって疑問符を浮かべていると、速水が真相を教えてくれた。
「今12月だろ。廊下がいい感じに冷えているから、追い水風呂代わりに丁度良いと話題になったらしい」
「なるほど。確かにこの脱衣所もちと暑いもんな」
いい感じに全身をクールダウンできそうな、良いアイデアじゃないか。
牙丸先輩も乗り気な感じで頷いてるし、財前も似たような様子だ。
そうと決まればパンツとズボンだけ履いて、首からタオルだけでも掛けて廊下に出ますか。
「おぉ……12月の冷たい廊下も、サウナ後だと程よく気持ちいいな」
「こればかりは僕も天川と同意見だ。学校でこういう体験ができるというのも、また青春の一コマというヤツなのだろう」
「財前も分かってるじゃん。男の青春なんてこんなんで良いんだよ」
そんな他愛ない会話を財前として、俺達はドーム内の廊下を歩いている。
周りにいる他の男子も似たような感じだ。
皆この風変わりな状況を、自販機で買ったジュース片手に楽しんでいる。
サウナ上がりのジュースか……良いね、俺らも飲むか。
そんな普遍的な事を話しながら、俺達四人はドーム内にある最寄りの自販機へと向かう。
そして自販機の目の前までやってきた、その時であった。
何か妙な空気が廊下を支配していたのだ。
「……なんだアレ? 女子?」
思わず俺はそう呟いてしまう。
妙な空気感。自販機のすぐ近く……女子が使っていたシャワールームのある方向なのだが、そちら側に女子が集まっていたのだ。
それ自体は別に何も不思議ではない。では何が妙なのかと言うと、何故か女子達が揃いも揃って神妙な面持ちでいるのだ。
というか数名ほど蹲るように廊下に倒れてるけど、マジでどうした。
「ちょ、キミ大丈夫かい?」
流石に見かねた牙丸先輩が、蹲っている女子に声をかける。
だが返ってきた答えはというと――
「だ、だいじょーぶで…………」
「鼻血が出ているようだけど、良かったら一緒に保健室へ――」
「煩悩退散ッッッ! 煩悩退散ッッッ!」
顔を上げて牙丸先輩を見た瞬間、その女子は奇怪な叫びを上げながら己の顔面を廊下に叩きつけ始めた。
マジで何事?
というか他の女子達も、まるで必死に無になろうとしているような面構えをしている。
鼻息荒くしながら般若心経まで言ってる奴もいるぞ。
「フーッ、フーッッッ……不覚だったわ。まさか
「なんで……なんでここに来て評議会男子が集結しているのよ……ただでさえウチの男子はイケ筋が多いのに。サウナ上がりのぬくぬくボディで現れるなんて。これで【///ぬくにゃん///】禁止なんて許される事じゃないでしょ!」
「ねぇ、これ誘ってる判定しても許されるわよね? エッッッロい筋肉を無防備に晒すような結合宇宙軍スケベ小隊には、我が身を以てえちえちカルチャーを理解らせても合法よね?」
「落ち着きなさい! 気持ちは痛ッッッッッッたいほど理解するけど、お触りはダメよ。日本の大和撫子、淑女としての心を思い出してガン見だけにするのよ! 夜の超時空シンデレラになるのは、それからでも遅くない」
この女子達は何を言ってるんだろう?
まるで昔の漫画なんかに出てくる、女湯を覗こうとする男子高校生みたいに血走った目してるけど。
そんなに男子の筋肉が気になるのだろうか? 別に今なら上半身くらい見放題なんだけどなぁ。
「これは……夢? 上半身裸のイケ筋男子が和気藹々とイチャつきながら廊下を練り歩いている……? 年末の冬コミこれでコピ本作ります」
「いつ執筆を始める? 私も参加するわ」
「フーッ……なにが……フーッッッ……なにが名門
本当に何を言ってるんだろうか。
大丈夫かな……主に頭の方とか。
そんな意味不明な状況を前にして戸惑っていると、廊下の向こうからよく知る女子二人が現れた。
「おっ、ソラとアイもシャワーの帰りか……ソラ?」
俺が声をかけた途端、ソラは石化したかのように固まってしまった。
だけど目線はしっかりこちらに向いている。
「な、なにか騒がしいと思えば……なんて格好してるのよ」
「サウナ後だと良い感じなんだよ。向こうで他の男子も同じスタイルで過ごしてるぞ」
「要らないわよ、そんな情報」
湯上がりなせいか、アイが顔を赤くしながらも呆れた様子で言ってくる。
というかマジで顔赤いな。
「アイ大丈夫か? 滅茶苦茶顔赤いけど」
「〜〜〜ッッッ!?」
試しにアイの額に手を当ててみる
すると次の瞬間、ボンッといった擬音が出そうな勢いでアイの顔が熱を帯び始めた。
「おい本当に大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ、だいじょうぶ……だから、すこしはなれてもらえると」
とは言うものの鼻息も少し荒いし、心配になる。
最近評議会に仕事で忙しかったもんな。体調を崩していても不思議とは思わない。
「ソラ〜、ちょっとアイの事を頼――」
「ツルギくん……108回ファイトをすれば、煩悩は祓えますか?」
「何言ってるのか分からないけど、信じていれば成せるんじゃね?」
もう考えて答えるのが面倒くさい。
というかソラも鼻血出てるじゃん。この前も出してたけど大丈夫なのかな?
「ソラちゃーん! アイちゃーん! おまたせ……」
そうこうしていると、
が、藍は俺達の姿を見た瞬間、元気いっぱいな笑顔のまま固まってしまった。
「え……」
え?
あー……なんかもう嫌な予感がするから耳塞いどこ。
「え”っぢだぁ“ぁ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ッ”!? 男子がえ“っぢな“格好じでる”ぅ“ぅ”ぅ“ぅ“ぅ”ぅ“ぅ“ぅ”ぅ“ぅ“ぅ”ぅ“!?」
藍さん大絶叫。
うるせぇぞ原作主人公。濁点つけ過ぎだろ。
「天川くん」
「九頭竜さん……」
「とりあえず服を着よう。今の藍の絶叫で、間違いなく
「野郎どもォォォォォォ! 逃げるぞォォォォォォ!」
流石に
速水や財前、そして牙丸先輩もこの後の展開を察し即座に逃走体勢へと移行する。
その後、俺達男子は「グルルルルルルァァァァァァ!(訳:藍たんに汚い筋肉を見せるんじゃあない!)」と叫ぶ四足歩行の音無先輩から逃げ惑う事となり。
電車が運行を再開するまで、追いかけっこをする羽目になるのであった。
これはそんな文化祭前日のハチャメチャな青春(?)の1ページなのでした。