俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
男子生徒セクシーテロ事件(現場にいた女子による命名)から一夜明け、ついに文化祭当日の朝を迎えました。
開場まであと30分程度。
俺達帝王と補佐の面々(OBとして牙丸先輩もいる)は、評議会の執務室に集まって最後の確認などをしていた。
「えー……ほれじゃあ本日のお仕事について、
「…………
「なんれふか」
「何故、顔面が凄まじい事になっているんだ?」
困惑気味に聞いてくる黒崎先輩。
仕方ないじゃないですか。昨日の騒ぎで
そりゃあ顔だってモザイク不可避な状態になってます。
「それに
「
「すみません、俺も以下同文です」
「ねぇ
黒崎先輩に抗議しようとしているけど……
というかなんで俺以外の三人は軽傷なんだよ。
そりゃそうか、最後に音無先輩を止めたの俺だもんな!
当然一番ダメージ受けるよな!
「とまぁ気を取り直して。黒崎先輩お願いします」
「既に知っていると思うが、文化祭における評議会メンバーの仕事はただ一つ。校内の巡視とトラブルの防止だ」
などと黒崎先輩は簡単に言語化しているが、実際は結構大変な仕事でもある。
「全員知っての通り、
と、これだけなら「学園のイメージを守るためにトラブルが起きないよう監視の目を光らせろ」なんて単純な話になる。
だが我が校の文化祭は、そう簡単な話で終わらない。
特に、上位クラスに属する人間は等しく他人事ではないんだ。
「文化祭期間中は良くも悪くも校内は一般開放されている。そうなれば『元生徒』といった輩が良からぬ考えでやって来る事も珍しくない」
「一言で言えば『お礼参り』ってやつさ。残念だけどウチの文化祭では毎年あるんだよ」
黒崎先輩から引き継ぐように牙丸先輩が簡潔に説明してくれたが、そういう事である。
弱肉強食を極めたような学校故に、挫折して去っていく生徒も少なくない。
ただ去るだけならまだ良い方。中には夏休みの終わりに俺や黒崎先輩が戦ったような、堕ちた奴らもいる。
そういった報復目的でやって来る奴らもいるという話だ。
(しかもコレ、標的が評議会メンバーだけならまだマシ……)
ある意味一番面倒なのは、それ以外の生徒が標的だった場合だ。
この学園で誰かの心を折るのは、なにも評議会入りするような帝王だけとは限らない。
まぁ、それを防ぐために俺達が文化祭を巡回するんだけどな。
「基本的には肩の力を抜いて巡回をしてもらえれば良い。万が一の際には二年生か近くの教師に連絡。自分で始末できる場合は、遠慮なく自分で片付けておけ」
俺達にとっては簡潔かつ分かりやすく、黒崎先輩が指示を出してくれる。
自分で始末――つまり不審な輩はファイトで鎮圧せよという事だ。
分かりやすい世界で本当に助かる。
「評議会メンバーは基本単独で巡回を推奨。補佐の者達は単独でも構わないが、不安があれば複数人で行動しても良い。オレはもう外に出るが……
「ボクですか? 別に構いませんが」
そう言いつつも、何故自分が指名されたのだろうといった様子が見え隠れしている二年生の男子。
少し高めの身長に、赤いメッシュの入った青い髪を後ろで束ねている、メガネと糸目が特徴的な人物。
彼こそ俺の中では要注意人物の一人、二年生編の敵キャラクターでもある奏タクトだ。
(巡回ついでに、変なことしないか監視しようと思っていたけど……)
黒崎先輩がついているなら大丈夫だろ。手間が省けた。
そして黒崎先輩は「では解散」と言って、さっさと奏先輩を連れて執務室を出て行ってしまった。
なんというか……自由度が高くなった途端、自由に動く人だなぁ。
だが俺達もそろそろ外に出なくてはいけない。
そう考えていると、俺の頭上にカーバンクルが姿を現した。
「キュップイ。ツルギ〜、今日はボクも」
「わかってる。自由に動いてくれていいから」
「感謝っプイ。ボク達化神も文化祭を楽しみたいっプイ〜」
一応化神が認識できない人達もいるので小声で返事をする。
でもまぁ、化神達にも文化祭を楽しんでもらえるなら何よりではあるか。
よく見ればソラの後ろではエオストーレが、アイの近くではウィズも似たような事を言っている。
そして財前の方は……
「オイ小太郎! オレ様も人間の文化祭ってーのを楽しみてーんだが、良いよな!?」
「好きにしろ」
「よっしゃァァァ、そうこなくっちゃな! 文化祭でもオレ様ロックでビート奏でてやるぜェェェ!」
財前の腕に巻かれている謎の指令ブレスから、よく知る声が聞こえてくる。
えっ、あれもしかしてアーサー? そんな携帯機モードみたいな姿にもなれたの?
というか合宿の時に財前が腕に巻いてた指令ブレスと全く同じデザインだったけど、もしかしてアレもアーサーの一部だったのか?
……あんまり深く考えないようにしよう。頭痛くなりそうだ。
「で、みんなはどう動く?」
速水の一声で意識が本題へと戻れた。
確かに大まかにでも動き方を決めておかないとな。あんまり固まって動くわけにもいかないし。
とは言っても、俺はもうある程度決めてるんだけど。
「俺は校門からスタートする。妹とその友達が来るんでな、序盤は案内がてらの巡回になりそう」
「そうか。ならこちらは他の場所から巡回するか」
そう言って自分達のスタート地点を決め始める速水。
……流石に俺がいるからって安心し過ぎるのはやめてくれよ。
多少は近くに人手はいて欲しいからな!
「じゃあ私達も被り過ぎない程度に、適当に回りましょうか」
「そうですね。二日目はステージで穴を空けてしまうので、私たちは特に頑張らないとです」
ざっくり決めてしまうアイとソラ。
まぁそのくらいの方が良いのかもしれない。
「じゃあアタシは
「うん、お金払うね」
「払わなくていいから! ノータイムでお財布出さなくていいから!」
ふと思い出したかのように、お友達ゼロだった時代の悪影響が顔を出してくる。
今のも絶対に出店で使うお金とかではなく、一緒に文化祭を回る料金を支払おうとしていたぞ。真顔だったし、両足がありえないくらい震えてたし。
「私も私も私も私も、マイラブリーゴッテス
「あっ、音無先輩は執務室でお留守番です。万が一の時のために電話番をしていてください」
「えっ!? 私の銀河ツラ×藍伝説は?」
「ありません。先輩は表に出せないので大人しくしていてください」
さもなくば足を撃ち抜く。
と言いたいところだけど、本当に言ったらこちらが撃たれそうだ。
なので今日はとある人物に音無先輩の監視役を押し付けます。
「えーっと、評議会補佐の
いる筈なんだけど、今のところ姿が見えないんだよな。
音無先輩の監視役を押し付けたいんだけど、どこにいるんだろうメスガキさん。
「あっ……あのぉ……お呼びですかぁ……?」
なんだか妙に卑屈な声色で反応が返ってきたんだが。
まさかメスガキさんに限ってそんな事はないだろう。
というか今の誰の声なんだ……そう思って振り返ると、そこには中等部の制服に身を包んだ一人の女子生徒がいた。
「…………誰?」
「ひぃっ! ね、禰津海ですぅ……ごめんなさいぃ……」
へぇ〜禰津海さんっていうんだぁ。
メスガキさんと同じ黄緑色の長い髪だけど、ツインテにしてないし、メガネもかけてるし、よく似た人だなぁ。
…………は? 禰津海さん?
「えっと、本当に禰津海ティアナさん?」
「はひっ、そうです」
「…………いやいやいや、俺が聞いてた禰津海さんってもっとこう――
『この大天才であるティアナ様が、先輩達を理解らせてあげる〜!』
『うわぁ、この程度で負けちゃうの〜? ホント幼児以下のざ〜こ』
『ティアナ様がザコの為にわざわざファイトの時間を作ってあげたんだから、地べた舐めて感謝しなさい』
――って感じのキャラだったけど!? 少なくともそんな卑屈極めた陰キャ女子みたいな子じゃなかったけど!?」
マジで何があった!?
この後悪さしようものなら俺が締め上げて理解らせようと思ってたけど、これどう見ても既に理解らせ完了してるじゃねーかァァァ!
メスガキとは真逆の卑屈女子が爆誕しているぞ。
「ひぃッ! ごめんなさい。生意気なこと言ってごめんなさい」
「マジで何があったんだよ……」
「それについてはボクから説明を」
知っているのか九頭竜さん。是非教えてくれ。
「ティアナは評議会決定戦に出られるくらい高い実力を持っていたけどれど、天川くんが言ったように性格に難がある子だった」
「そうだよな。評議会決定戦でもその片鱗が聞こえてきたんだけど……」
「先に結論を言うと、みんな揃いも揃ってティアナの天狗鼻を折っちゃったの」
なんですと。
俺は試合してないけど、そうなると他の奴がなにかしたのか。
「誰だよ、禰津海さんの試合相手」
「まず最初に藍。藍は普通に勝った」
「〈ビクトリー・ドラゴン〉で一気に決めたよ。ブイブイ」
そう言って笑顔でダブルピースを向けてくる藍。
そうかそうか。つまりお前は〈ビクトリー・ドラゴン〉の召喚時効果を受けやすい禰津海さんのデッキ相手に、全体除去とヒット上昇を派手にかましたというわけか。
「でもそれだけで心が折れるとは思えないんだけどなぁ」
「二戦目はソラ。先攻1ターン目に〈リブラエンジェル〉を召喚して――」
「ソラァァァ! やったんだな!? 先攻1ターン目に手札全破壊を!」
もう九頭竜さんが全てを言わなくても分かる。
ソラのデッキには〈リセットドロー〉が入っている、というか俺が入れたからよく知っている。
今まで確率的に成功している場面には遭遇してこなかったが、まさかの場面で成功させたがったな。
「えっとぉ……そのぉ……はい」
容疑を認めるソラ。
新しい禁止制限が施行される直前に、凄まじい華を咲かせやがった。
ちなみに近くにいたアイから補足説明が入り、ソラに敗北した直後に出た禰津海さんの叫びが「ティアナもうお家かえるー!」だったそうだ。
そりゃ叫びたくもなるだろう。
「てことはメンタルへし折ったのってほぼソラじゃ――」
「違う。ティアナのメンタルにトドメを刺したのは天川くん」
なんですと?
何故に試合もしていない俺が?
「ソラとの試合が終わった直後、すぐ近くのステージで天川くんと黒崎先輩が試合してた」
「あぁ、確かに例の叫び声が聞こえてきたのってその辺りだったな」
「その時の天川くん、どんな盤面作ってた?」
どんな盤面って、そりゃあ仮にも相手は黒崎先輩だから全力を出して……
「あっ」
そうか、タイミング的に試合の終盤だったから黒崎先輩も本気出してきてたんだ。
だから俺もそれに応えるように〈カーバンクル・ジョーカー〉を出して〈セブンソウルリバース〉も使って、さらに〈テスカトル・セイバー〉でパワー2倍にもしていたから……
「先攻1ターン目に手札を全破壊されて傷心しているのに、振り向けばパワー98000のトンデモ大型モンスターを場に出してテンション上がっている天川くんと、それに心躍るオリジナルスマイルで応戦する現帝王という大怪獣頂上決戦。それで自分が井の中の蛙だって理解しちゃったんだって。あと少し漏れたって」
「大変申し訳ありませんでした」
うん。それは俺も悪いわ。
だって黒崎先輩、フルモンスターデッキなのに的確に俺の一手に対抗してくるんだぞ。
あれは前の世界でもお目にかかれなかった真の【アルカナ】使いと言っても過言ではなかった。
普通に油断できない相手だったぞ……俺が勝ったけど。
「可哀想に、それでこんなにメンタルがボロボロになっちゃったのね」
「ごめんなさい。ワタクシ如き底辺のザコがイキがってごめんなさい。これからは身の程知らずのゲロカスと呼んでいただいて構いません」
「これは……ちょっと重症ね」
アイに頭を撫でられながら、禰津海さんは怯えたようにプルプルと震えている。
そんなに怖かったのか? モンスターのパワーなんてこの先もっとインフレするから、今のうちに慣れとけよ。
「よしよし。だいじょーぶだよー」
「アレでも怖い人じゃないから大丈夫」
気づけば藍と九頭竜さんという原作主人公組まで禰津海さんを慰めに行ってる。
原作アニメじゃ絶対にありえなかった光景だ。
俺が怖い人扱いされている事だけ気になるけど。
「そうですよ。ツルギくんは少し破天荒ですけど、全然怖い人じゃ――」
「お〜っと、今回ばかりはソラもこっち側だからな?」
「あ〜」
思わずソラの両肩を掴んでこちらへと引き寄せてしまう。
何食わぬ顔でそちらに行くことは許さん。
「とりあえず禰津海さん。今日は音無先輩のサポートをお願い。というか逃げ出さないように見張っておいて」
「ひぃっ!? わかりました、ころさないでぇ」
俺そんなに怖いかな? ちょっとショックなんだけど。
でも引き受けてくれたならそれでいい。
万が一逃したら俺がデッキを抜くだけだ……もちろん音無先輩に対してですよ?
「そんじゃあ俺らも、そろそろ行きますか」
面倒な仕事は押し付けたし、今日は仕事がてら文化祭を見て回りますか。
ヤベー奴は見つけた時に対処すればいい。
そして俺達も執務室を後にするのだった。
「キュ〜、ボクも屋台の準備を済ませるっプイ」
後ろから何か聞こえてきたけど……カーバンクルの屋台?