俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百五十話:卯月と友達と文化祭

 学園の空に昼花火(段雷)の音が鳴り響いている。

 聖徳寺(しょうとくじ)学園大文化祭が始まった合図だ。

 校門が開かれ、入場待ちをしていた一般客が学園の敷地に入ってくる。

 

「こうマジマジと見てみると、不思議な気分になるよな」

 

 俺は校門のすぐ近くで、入場してくる人々を見ながら何となしに呟いてしまう。

 ここは仮にもカードゲームの専門学校。その文化祭にやってくる一般客は老若男女と幅が広く、数も多い。

 前の世界では絶対に考えられないような光景を目にしながら、俺はこの世界に於けるカードゲームの重要性を再認識してしまうのだった。

 

「開場したらすぐ来るって言ってたんだけどなぁ」

 

 入ってくる人々をキョロキョロと見渡しながら、俺は目的の三人組を探す。

 一応言い出しっぺという手前、今日は巡回の仕事がてら妹達に文化祭の案内をする予定なのだ。

 そんな事を考えていると、探し人は向こうからこちらへと来てくれた。

 

「お兄、来たよー」

「せんせぇ、おはようございまーす!」

「おはようございます先生」

 

 私服姿の仲良し女子中学生三人組。

 卯月(うづき)とその友人、(まい)ちゃんと智代(ちよ)ちゃんだ。

 先日の配信終了後に、俺が文化祭に招いたのだ。

 

「わぁ〜、すっごい人の数だね智代ちゃん」

「そうだねぇ。聖徳寺学園の文化祭は毎年沢山人が来るって聞いてたけど、ちょっと想像以上かも」

 

 学校の文化祭とは思えぬ程に人が多いからか、その物珍しさで舞ちゃんは目をキラキラと輝かせている。

 そして智代ちゃんも同意している辺り、どうやらウチの文化祭はこの世界でも珍しい規模感らしい。これが平均値じゃなくて本当に良かった。

 だがこの程度の反応で済ませられるのは、あくまでこの世界の一般人のみである。

 

「ねぇお兄……これは本当に文化祭なの?」

「文化祭だぞ。ちょっと規模がデカい普通の文化祭だぞ」

「普通の定義について議論の必要があるわね……でもそっか、この学園ってそもそも敷地がバカみたいに広いんだった」

 

 あまりの規模感に、卯月は校門を通過しただけで頭を抱え始めている。

 まぁ前の世界が基準だとそうなるのも必然だよな。

 だがここから先は更なるフリーダムが一般参加者を待ち構えているぞ。

 

「とりあえずコレ、文化祭のパンフレット兼学園内の地図。万が一迷子になったら最寄りの生徒か先生に助けを求めてね」

「学校の文化祭で迷子って……ここならあり得るか」

 

 そうだぞ卯月。ウチは敷地が広いから普通に迷子になれるぞ。

 もちろん文化祭中は迷子センターも用意されている。

 

「学園内での写真撮影は一部のエリアを除いて、良識の範囲内なら自由。動画撮影だけはNGなので気をつけて」

「はい先生」

「わかりましたー!」

 

 智代ちゃんも舞ちゃんも、いい返事だぞ。

 ちなみに写真は個人の顔が見えなければSNSへの投稿もOKだ。

 

「それじゃあ六帝(りくてい)評議会の【虹帝(こうてい)】が、文化祭をご案内しよう」

「「よろしくお願いしまーす」」

「……もう二度と蛇姫の名を弄るなよ、お兄」

 

 背後から卯月の冷たいジト目を感じる。

 二つ名がついたからって、酷い言われようだ。

 

 そんなわけで俺は、卯月達三人を連れて文化祭を案内する事となった。

 まずは敷地に入ってすぐに広がる屋外エリアから。

 屋外エリアにある出し物は定番の飲食系模擬店から、変わり種まで。王道邪道入り混じっているのが特徴だ。

 

「わぁー! ソースの良い匂いだー!」

「焼きそばやたこ焼きはよく聞きますけど……あの辺りは文化祭だと珍しいですね」

「だろ。俺も最初にアレが模擬店で出るって聞いた時はびっくりした」

 

 そんな智代ちゃんと俺の視線の先にあるのは、野球部がやっている『回転焼き』の模擬店。

 まさか専用の道具が学園の倉庫にあるとは思わなかったぞ。

 

「でも先生、アレって模擬店の名前で揉めなかったんですか?」

「あぁ、野球部の奴らなら滅茶苦茶揉めてたぞ」

 

 やれ『大判焼き』だの『御座候』だの『ベイクドまんまる』だの。

 クソ忙しい準備期間中に何度も喧嘩していたから、嫌でも記憶に残っている。

 

「よく『回転焼き』で落ち着けましたね〜」

「あぁそれはな」

 

 こういう事なんだよ。

 俺は智代ちゃん達を連れて野球部の模擬店へと近づいていく。

 あとは簡単だ、頑張って模擬店をしている健全な高校球児達にご挨拶をすればいい。

 

「調子はどうだ?」

「ひぃっ!? 大丈夫です、なにも問題ありません」

「……コレの名前は?」

「「「押忍ッ! 回転焼きですッ!」」」

「よろしい」

 

 そうだ。理解(わか)れば良いんだよ、理解ってくれれば。

 

「というわけなんだ。平和的解決だろ?」

「うわぁ……お兄……」

「せんせぇ、力こそパワーで『回転焼き』にしちゃったんだ〜」

 

 おい引くな女子中学生三人組よ。

 仕方ないだろ、コレが一番手っ取り早い手段だったんだからさぁ。

 そもそも名前論争で余計な時間を食うな、揉めるな、仕事を増やすなって話だ。

 

「それにしても、飲食系の模擬店が充実してますね〜」

「だろ。ウチの学校ってその辺結構自由にやらせてくれるんだ。だから飲食系の模擬店もバリエーションに富んでいる」

 

 定番の焼きそば、たこ焼きなどの粉物か始まり。

 カレー、炒飯、うどん、ラーメン。

 果てはスムージー、スコーン、パンケーキなどのスイーツ系もあるぞ。

 

「わぁ〜、見てみて! 焼肉の模擬店があるよー!」

「文化祭で焼肉って、自由過ぎるでしょ」

「俺もそう思う。でもあの部活がやる焼肉は何故か拒否しちゃダメな気がしたんだ」

 

 卯月の気持ちもよく分かる。だけど魂がやらせろと叫んで仕方なかったんだ。

 聖徳寺学園デジタル研究会の焼肉屋台。

 

「ねぇお兄、飲食系以外はどんなのがあるの?」

「屋外エリアだけでも色々あるぞ。玩具研究会によるレトロ対戦ホビー色々体験イベントとか、学園らしく在校生に挑戦できるチャレンジファイトコーナーとか」

 

 まぁこんなの一部でしかないんだけど。

 

「ほら卯月、あそこ見てみ」

「…………なにあれ」

「見ての通りだ。我が校のボディビル部による、男子ボディビル大会だよ」

「なんでカードゲーム専門学校にボディビル部があるの!?」

 

 そう言うなよ、常識なんてあって無いようなもんなんだからさ。

 困惑顔とドン引き顔が混在したような表情を浮かべている卯月に対して、舞ちゃんと智代ちゃんは珍しそうにボディビル部が一日で作り上げた専用ステージを見ている。

 流石ボディビル部の部員というだけあって、全員男子高校生とは思えない筋肉の仕上がり具合だ。

 

「ヘイヘイ! キレてるキレてる!」

「肩に300枚バベルデッキ乗せてんのかい!」

「大胸筋が広過ぎてアナログファイト用のプレイマットにできるぞ!」

「腹筋割れ過ぎて潤沢過ぎる手札かと思ったぞ! どんだけドローしてんだ!」

「その筋肉がありゃあ相手のデッキも破壊できるだろー!」

 

 観客からの掛け声も気合い入ってるなぁ。

 ことごとくカードゲームに関連した掛け声なのが気になるけど。

 

「……アホばっか」

 

 すまない卯月。この掛け声に関しては正直否定できない。

 

「い、一応ボディビル部の出し物はアレだけじゃないんだ」

「そういえば、隣になにか模擬店がありますね」

「あっちが本命なんだよ智代ちゃん。男子ボディビル部による手作りマカロンの模擬店」

「あんな熱苦しい筋肉ダルマが激カワSNS映えスイーツ屋台なんてしてたら、カオス過ぎて頭痛くなるでしょーがー!」

 

 叫びたい気持ちは分かるぞ卯月。というか俺も最初は心の中で同じ気持ちだった。

 でもあの模擬店結構人気なんだぜ。しかも普通に美味しいマカロン出してくれるんだぜ。

 一つ問題があるとすれば店番の奴らが全員上半身裸の上にエプロン着用だという事くらいだ。

 

「んみゅ? せんせぇー、なんか十字架に磔られてる人がいまーす」

「あぁ、アレは漫画研究会の会長だな」

「な、なんで漫研の会長が十字架に……?」

 

 困惑して苦笑いを浮かべている智代ちゃん。

 そりゃそうだよな、事情知らない人には何故か外で過酷な罰を受けている人がいるという異様な光景に見えるよな。

 しかも漫研の出し物は屋内だから余計変に見える。

 

「あの人は元漫研の会長にしてSクラスの三年生。通称【豊胸将軍】平胸盛(たいらにむねもり)と呼ばれる男。これまでずっと己のサモンの実力を以って、下級生達に女性キャラの胸を盛る事を強いる恐怖政治、その名も『盛るペコ政治』をやってきた男なんだ」

「心ッッッッッッッッッッッッ底碌でもない男なのは理解した」

「それが昨日、ついに下級生に敗北して追い出されたらしくてな。なんでも『おっぱいは、おっぱいは力なんだ。大きさに関係なく、おっぱいは全てドスケベ漫画を支えてくれるものなんだ。それを、それをこうも無秩序に盛っていくなんて……それは、それは酷いことなんだよ!』とかなんとか相当激アツなやり取りの末に一年生の男が逆転勝利したらしい」

「本当にどうでもいい」

 

 そのあと「ここからいなくなれー!」という叫びが学園に響いてきた事は覚えている。

 とりあえずこの元漫研会長は後で誰かに片付けてもらおう。

 

「お兄、この学園って色々と自由過ぎない?」

「サモンの実力で色々決まる弱肉強食の学園だからな。トンチキな要素なんて数え出したらキリがないぞ」

 

 いや本当に、細かいのまで数え始めたらキリがないんだよ。

 この学園では大らかな心で過ごしましょう。

 

「さてと、それじゃあ次はどこ見に行く? それとも模擬店で何か買って食うか?」

「あたしスイーツ色々食べたいでーす!」

「私は色々幅広く見て回りたいなーって」

 

 なるほど、舞ちゃん智代ちゃん共に性格が見事に反映されているな。

 

「というかお兄は大丈夫なの? 評議会の仕事もあるんでしょ」

「巡回の仕事だな。トラブルとか起きたらそれをデッキで黙らせにいくだけの簡単なお仕事です」

「物騒」

 

 そう言うな妹よ。

 文化祭の最中なんだ、その物騒が起きない事が一番良いんだよ。

 

「確かに、先生がデッキ片手にトラブルの解決に行くのは物騒ですねぇ……」

「力こそパワーで解決しそー!」

 

 物騒のニュアンスが変わってきたな。

 これじゃあトラブルそのものが物騒というよりも、俺が出ること自体が物騒という事になるじゃないか。

 でもこの学園だからなぁ、絶対どこかで俺が出なきゃいけないトラブルは起こりそうなんだよな。

 

「今年だけでもトラブルが起きませんように」

「せんせぇフラグみたいな事言ってるー」

 

 フラグとか言わないでくれ舞ちゃん。

 それはともかく、次はどこを案内しようか。

 スイーツ系の模擬店を巡ってから屋内の出し物を案内しようかな。

 

「屋内の出し物だとレアカードオークションの模擬店に、オリパ屋さんの模擬店に……」

 

 そんな事を考えていると、俺の元に小さなシルエットが一つ近づいてきた。

 白い長髪を揺らしながら、一人の女の子がトテトテとこちらに近づいてくる。

 

「あっツルギくん。卯月ちゃん達もこんにちは」

「ソラさん、お久しぶりです」

 

 巡回ルートが早速被ったらしい。

 俺達を見つけたソラがこちらにやってきた。

 卯月に続いて舞ちゃんと智代ちゃんもソラに「お久しぶりです」と挨拶をしている。

 

「そういえば舞ちゃんと智代ちゃんはソラに会うの久しぶりか」

「うん! ちょうど1年ぶりくらいかも?」

 

 舞ちゃんに言われて「確かに」となってしまう。

 恐らくこのメンバーが揃うのは受験生の時以来だ。

 

「ツルギくんは卯月ちゃん達を案内している最中ですか?」

「だな。巡回がてらだけど……そっちはどうだった?」

「今のところトラブルは何もありません」

 

 えへへと可愛らしく笑みを浮かべて、ソラは報告してくる。

 なんというか、こういう女の子らしい仕草をされるとドキっとしてしまう。

 悟られたくないから頑張ってバレないよう隠すけど、上手く隠せているかどうか自分ではよく分からない。

 

「そ、そういえなツルギくん……その、この後、午後とか終わり際とかでも全然良いんですけど……えっと……」

 

 少し頬を赤くしながら、ソラが何かを言おうとしてくる。

 なんだか必死に言葉を選ぼうとしているけど、どうしたんだろうか?

 

「わぁ……智代ちゃん、あれって」

「うん……舞ちゃん」

「がってん承知。乙女のハートを優先しまーす」

 

 なんか後ろで智代ちゃんと舞ちゃんがコソコソと喋っている。

 というか一瞬二人のいる方向から「キュピーン」とか「電流が走る」みたいな効果音が聞こえたような気がしたんだが。

 すると突然、舞ちゃん達は俺に話しかけてきた。

 

「せんせぇ! 今日はご案内ありがとうございましたー!」

「あとは自分達で文化祭を回りますから、先生はゆっくりとお仕事に勤しんでください」

 

 何故か急に案内不要と言われてしまった……というか舞ちゃんも智代ちゃんも、めっちゃいい笑顔向けてくるじゃん。

 いい笑顔過ぎて明らかに何かの含みが見え隠れしている。

 そうこうしている内に、二人は卯月の両腕に抱きついて拘束していた。

 

「えっ、なに? どうしたの二人とも?」

「それでは先生。素敵な青春をお楽しみください」

「智代?」

「あとはお若いふたりでー!」

「舞?」

 

 何を勘違いしているのか分からないが、妙な気を使われてしまった事だけは理解した。

 そして卯月は友人二人に両腕を拘束されたまま、「あ〜」という間の抜けた声と共にどこかへと連行されていくのだった。

 なんと言うべきか、トントンと良過ぎるテンポで去られてしまったわけだが。

 

「……行っちゃいましたね」

「だな」

 

 流石にソラもポカンとしている。

 本当に風のように去って行ったからなぁ。

 だから……結果的にソラと二人きりになってしまったわけで。

 

「……なぁソラ」

「ひゃっ、はい?」

「良かったら……一緒に巡回しま、せんか?」

 

 自分で誘っておいて、自分で顔が熱を帯びている事が分かってしまう。

 だからソラの顔に視線を向けられない。

 だからこそ……

 

「は、はい! お願いしまひゅ」

 

 ソラがそう言ってくれた時は、本当に安心できた。

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