俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
校舎内に入れば、すぐに屋内エリアの展示が目についてくる。
飲食系の模擬店などが中心だった屋外エリアとは違い、こちらは展示や食品以外の物販が中心だ。
とはいえ、流石に屋外と違って廊下という狭い道を進む事になり。
するとどうなるのか。
「えっ、あの子もしかして『
「ウソっ、コスモちゃん?」
「本物? そっくりさんじゃなくて?」
こうなります。
外では奇跡的に牙丸先輩が目立っていたおかげで誤魔化せていたけど。
流石に屋内じゃあこうなるか。
早乙女さん、仮にも有名人だもんな。
「おはこんCosmo〜★ 今日は推しセン達と文化祭デートしてます★」
いかにもな営業スマイルを浮かべて、早乙女さんはファンらしき人々に軽く挨拶を返していく。
推しセンって、推しのセンパイって意味なのかな?
というか一般リスナー(?)の皆さん、早乙女さんに絡んでこないあたり凄まじく民度が良いな。
全世界のミーハー人間は見習え。
「う〜ん、流石に今日は誰も近づいてこないか〜」
「あれ? 今日が特殊なだけ?」
予想通りだけど少し残念といった様子の早乙女さん。
やっぱり有名人らしい諸々は今までに経験してきたんだろうなぁ。
……でも何で今日に限って平和なんだ?
「ツルギくん、もしかして『なんで今日に限って』なんて思ってませんか?」
「思ってる。なんで?」
全く分からない俺に対して、ソラはため息を一つ吐く。
「ツルギくん……
「そうだな」
「配信で色々やって……やらかしましたよね?」
「それについてはノーコメ……あっ」
もしかして、そういう事か?
「中学の頃から大会で大暴れして。智代ちゃんの配信でも大暴れして……ツルギくんも大概有名人なんですよ」
「でもそれで人が避けるなんて――」
「殺戮兵器。キュップイ殺し。メテオマスター。アンチ兎愛護団体。ホラー映画よりも恐怖。振り向かなくても死。無限カス」
「本人の知らない異名が増えてるなぁ」
でもつまりこういう事だよな?
側から見れば早乙女さんの隣に俺というヤベー護衛がいるという認識だと言いたいんだな?
俺は場にいるだけでセキュリティとして機能する、便利な置き物カードじゃないぞ。
上げるぞ、レアリティ。
「でもセンパイ達とのんびり回れるから、コスモ的には全然OK★」
「悲しい皺寄せが集中しているから、俺的にNG出していいかな?」
泣くぞ。ちびっ子にまで遠巻きにされてたんだからな。
とまぁ気を取り直して、屋内エリアの出し物を見ていくとしよう。
まずは我がクラス、1年A組の出し物だ。
「センパイのクラスってなにやってるんですかぁ?」
「詰めファイトチャレンジ。教室に何台かパソコンを置いてるんだけど、そこでクラスの皆が作った詰めファイトに挑戦できるって催し」
「勝利条件もいくつかあって、みんなそれぞれ個性的な問題を作ってます」
もちろん、ちゃんと解ける問題しか用意してないぞ。
というわけで俺達は自分の教室に入っていく。
やはりサモン社会なだけあって、教室は詰めファイトチャレンジに挑む一般参加の人達で賑わっている。
「これ、解いたら景品もらえるんですか?」
「あぁ、と言っても屋外エリアのチャレンジファイトと違って、駄菓子が一個もらえるだけなんだけど」
流石にあんな馬鹿みたいに豪華な景品は用意できません。
そう思いながら俺は、早乙女さんが視線を向けている教卓の方を見る。
本来であれば受付と景品の受け渡し場所なのだが……何故か黒板に見覚えのない文字が書かれていた。
「『
「なんだろうね、俺も知らない」
本当になに?
確かに俺も詰めファイトの問題一つ作って提供したけど、本当にコレはなに?
俺はとりあえず受付にいたクラスメイトの女子に聞いてみる事にした。
「あの、この『虹帝チャレンジ』ってなに?」
「
「なにそれぇ!?」
そんなに凶悪な問題にした記憶はねーぞ。
確かに初見殺しの要素は詰め込んだけど、それを突破できれば後は楽々な問題だぞ。
つーかよく見たら景品の駄菓子の隣に、見知らぬ未開封ボックスがある。
「もしかしなくても、この未開封のブースターパックの箱は……」
「当然『虹帝チャレンジ』をクリアした人への景品。それだけの難易度があると、ほぼ満場一致で決まったわ」
マジかよ、詰めファイトをクリアするだけで未開封ボックス一個貰えるとか。
前の世界ならノータイムで挑戦者が殺到するぞ。
「ちなみに今のところクリアした人はゼロ。あとさっきからずっと財前が苦戦してるわ」
「……なにやってんだアイツ」
指差された方へ振り向いてみると、確かにそこには見覚えしかない男がいた。
マジで財前じゃねーか。
「だァァァァァァッ! どういう問題なんだこれはァァァ!? 1ターンで残りライフ1000点なんて削り切れるわけないだろう!」
ちゃんと勝てるようになってるぞ〜。
あとお前、俺と最初にファイトした時どうやって負けたのか思い出してみろ。
「なにやってんだ財前」
「ッ! て・ん・か・わぁぁぁぁぁぁ」
あまりにも見てられなかったので、思わず財前に近づいて声をかけてしまう。
だが財前は今にも血の涙を流さんという勢いで、ギギギと振り向いてきた。
お前何回失敗したんだよ。
「なんなんだこの問題はッ! 解けるわけないだろう!」
「ヒントはちゃんと最初に表示されるだろう? それよく読め」
「なーにが『視野を広く持とう』だ! 嫌がらせのつもりか!?」
だってそれがヒントなんだもーん。
それ以上はなにも教えないからな。
「
「私もちゃんと見てはいないんですけど……問題のチェックと解き方解説を見た担任の先生が、すごくドン引きしていたことだけは覚えてます」
後ろの二人、聞こえてるぞ。
確かに
ちゃんと解ける問題だからいいじゃん。
「はいはーい! コスモ挑戦してみたいでーす★」
財前からクレームを受けつつ、そんな事を思っていると、早乙女さんが挑戦したいと言い出してきた。
あれかな、『虹帝チャレンジ』という名称に配信者魂が反応したのかな。
「天川、その子はまさか」
「お前の思っている通りの子だよ。色々あったんだ」
「……頼むから、王先輩の次に刺されるのはやめてくれたまえ」
「刺されるような展開なんてありえねーよ」
あとドサクサに紛れて牙丸先輩は女に刺されるって断言しやがったなコイツ。
向こう数年は大丈夫だろうけど……正直、否定しきれないのが一番怖いんだよな。
「……本当に刺されないでくれよ」
「なんでそんなに心配するんだよ」
卯月もそうだけど、俺の事を『ハーレムという野望』を抱いている男だと思っているのか?
言っておくけど、俺はハーレムものは趣味じゃないからな。
「はい、コスモ挑戦しまーす★」
とか何とか財前とやっている内に、早乙女さんが空いたパソコンの前に座っていた。
一応どのパソコンからでも問題には挑戦できるようになっているけど、果たして早乙女さんはクリアできるのだろうか。
俺は気になって、ついつい早乙女さんの後ろからモニターを見てしまう。
それはソラと財前も同じであった。
「えっと、クリア条件は『次の相手ターン終了時までに勝利せよ』。ヒントは『視野を広く持とう』かぁ……ふむぅ〜★」
「……ツルギくん? なんですかこの問題」
俺の作った詰めファイトに早乙女さんが挑戦し始めるや、ソラは目を点にしながら俺に問いかけてきた。
まぁ確かに一見すると無茶苦茶かもしれないし、解き方が分からないかもしれない。
何故なら開始時の盤面がこうなんだ。
自分:ライフ1 手札6枚 残りデッキ20枚
場:なし
相手:ライフ1000 手札0枚 残りデッキ100枚
場:〈マリン・フタバ〉
「相手の場には【合成】で召喚された〈マリン・フタバ〉が1体。でもあのカードって【合成】で出ていたら全てのダメージを1点減らす効果がありましたよね!? なのに相手のライフは1000点もあるんですか!?」
「その上、自分のモンスターは手札にあるヒット1のそれらしか入っていないというオマケ付きだ……赤翼、もっとこの男に言ってやってくれ」
「ツルギくん……これ本当に解ける問題なんですか?」
疑り深いなぁ、ちゃんとヒントは与えただろ。
詰めファイトで視野を広く持つ。
ただコレだけの問題だ。
「う〜ん……ねぇツルギセンパイ。コレって詰めファイトだから、デッキの並び順も固定なんですよね?」
「そうだぞ。詰めファイトだからな」
俺がそう答えるや、早乙女さんは「ふ〜ん」と一言呟きマウスを操作し始める。
自分のデッキの配置順や相手の墓地のカード。
それらを一通り確認し終えるや、早乙女さんは「解けたかも」と小さく口にした。
「なっ!?」
「えっ? コスモちゃん、これ解けるんですか?」
「多分。ちょ〜っとやってみますね〜★」
そう言うと早乙女さんがマウスを動かして、詰めファイトを解き始める。
「まず手札にいるモンスターを全部召喚しますね★」
まず場に出てきたのは、味方の幻想獣に【指定アタック】を与える効果を持つ〈スナイプ・ガルーダ〉。
そしてご存知俺の相棒〈【
「次に魔法カード〈トリックプレゼント!〉を発動。手札のカードを相手に渡すんだけどぉ……コレで魔法カード〈エルダーサイン〉を相手の手札に入れて、コスモは1ドロー、1点回復」
「ん? 強力な蘇生効果を持つ〈エルダーサイン〉を手放すのか?」
疑問符を浮かべる財前に対して、むしろ俺はニヤけるのを抑え込む事に集中してしまう。
期待感を膨らませながら、俺は静かに早乙女さんの答えを見守る。
「で、今引いた魔法カード〈バックキャンセル〉はっつどー! ライフを1点払わなきゃだけど、さっき回復しておいたから無問題★」
「コレでコスモちゃんの手札は残り1枚……あっ! 最後の手札って」
「ライフ4以下なので〜、魔法カード〈逆転の一手!〉をはっつどー! 手札が3枚になるようにドロー!」
そうだ。詰めファイトではデッキの配置も固定になる。
つまり適切なタイミングでドロー使えば、自動的に答えも手札にやってくるんだ。
「次は魔法カード〈冤罪給付金〉。相手の手札にあるカードを1枚選んで、強制的に使わせちゃう★ コスモはさっき相手の手札に入れた〈エルダーサイン〉を強制発動させまーす★」
「自分か相手の墓地に存在するモンスターを復活させる魔法カード。でもコスモちゃんの墓地にモンスターはいない……という事は」
「相手の墓地に眠るモンスターが、相手の場にやってくる」
ソラと財前、正解。
実は詰めファイト開始時からずっと相手の墓地には1体だけモンスターが眠っていたんだ。
その名も〈ピスケスエンジェル〉、魚座の聖天使だ。
「あっ、でも相手の手札に防御魔法が――」
「相手がドローしたので、魔法カード〈ワンタイムクロック〉♪ 相手の手札から魔法カード〈バブルエレメント弐式〉を除外します★」
「……ツルギくん、ここまで込みの動きで問題作ったんですか?」
「当然」
だからこそ、早乙女さんはクリアできると確信できた。
ここまでやれたなら、もう相手の倒し方は見えている筈だ。
「しかしここからどうやって相手を倒すと言うんだ」
「……あれ? もしかしてこれ、相手モンスター利用する問題ですか?」
流石にソラは勘づいたか。
そして早乙女さんも遂にアタックフェイズに入る。
「アタックフェイズ! 〈カーバンクル〉で〈ピスケスエンジェル〉を指定アタック!」
攻撃指示を受けたパソコン内のカーバンクルが、相手の天使に自爆特攻をする。
当然パワー負けをして破壊されてしまうのだけど……ここからが本題だ。
「モンスターを戦闘破壊したから、相手の〈ピスケスエンジェル〉の【天罰】が発動♪ 1枚ドローしてもらいます★」
「…………おい天川、まさか〈ピスケスエンジェル〉のドローは」
「強制効果だぞ」
そう、〈ピスケスエンジェル〉は自分のライフが相手より多い場合に発動する【天罰】によって、カードをドローできる。
しかしその効果は相手モンスターを戦闘破壊した場合、必ず発動する強制効果なんだ。
流石に財前はもう分かっただろう。
なんせメインフェイズ中には以前俺が無限ブロックコンボで使った魔法カード〈バックキャンセル〉を発動しているからな。
「破壊された〈カーバンクル〉は手札に戻るけど〜、魔法カード〈バックキャンセル〉の効果で、手札に戻ってきたモンスターは即座に再召喚できちゃう★」
当然、再召喚された〈カーバンクル〉は攻撃可能な回復状態。
さらに〈スナイプ・ガルーダ〉の効果によって、【指定アタック】を付与されたままだ。
「相手のデッキにはもう防御魔法が入っていない……じゃあコスモの勝ちですね★」
「天川……何故キミが先生から『人の心』などと言われたのか。今ようやく真相を理解したよ」
「これ……〈カーバンクル〉を無限に特攻させるってことですよね? 相手のデッキが全部無くなるまで……」
「そういうこと。だから言っただろ? 視野を広く持とうって」
そもそも勝利条件が『このターン中に勝利』じゃなくて『次の相手ターン終了時までに勝利』な時点で、なにか変だと気づいてくれ。
「確かに、ライフを0にしろなんて一言も言ってませんね」
「勝利すべきタイミングも自分のターン中ではなかったな……相手のスタートフェイズ開始時にデッキアウトで勝てば、残りライフなど関係なかったのか」
「そーれ、突撃ー★」
そしてモニターの向こうで死にまくるカーバンクル。
一応ループが確定した時点で自動操作にできる隠し機能も搭載してもらったぞ。
「やったー! コスモ大勝利★」
「おめでとう早乙女さん……ほらみろ! ちゃんとクリアできるじゃないか!」
俺は思わず受付に向かってそう声を出してしまう。
が、即座にソラと財前に肩を掴まれてしまった。
「ツルギくん、あれは初見殺し過ぎます」
「〈カーバンクル〉を過労死させるのはまだしも、自分の手札を相手に与えて、さらにそれを強制的に使わせるなんて……その発想に至れるような人間がそうポンポンいてたまるか!」
そこまで言うこと無いじゃないか。
テキストを注意深く読めばいけるぞ。
「やったー! ボックスゲット★」
当の早乙女さんは受付に行って、無事に景品の未開封ボックスをもらい、嬉しそうにはしゃいでいる。
ちなみに受付にいたクラスメイトの女子は、分かりやすく唖然とした表情を浮かべていた。
「……後で早乙女さんに拡散してもらおうかな。俺の作った詰めファイト」
「やめろ天川。新しい地獄の扉を開く予感しかしない」
「そうかな? まぁなんでもいいけど……財前もそろそろ他のとこ回れよ」
お前絶対ここに長居してただろうし。
「分かっている。悔しいが少し頭がスッキリした」
「そっか。ならついでに――」
俺と一緒に来てくれないか? 流石に女子二名に挟まれながらの移動は急激に疲れるんだ。あとたすけて。
……と、言おうとしたが。俺はある物が見えたので口にしなかった。
財前が手に持っていたバインダー。
恐らく文化祭の案内図や、配布用のパンフレットが入っているのだろう。
だけど……その間に挟まっているのが見えてしまったのだ。
いつだか財前から聞いた、年季の入った桜色のノートが。
「天川?」
「いや……なんでもない。そっちも巡回ついでに文化祭を楽しんでいてくれ……
「……あぁ、そうさせてもらおう」
余計な事に付き合わせるわけにはいかない。
俺は静かに、教室を立ち去る財前の背を見届けるのだった。
「……次、行くか」
でないと俺までセンチになってしまう。
こんな時だからこそ、きっとあの子はそれを望まないだろうから。
だから今は多少の仮面を被ってでも、文化祭を楽しもう。