俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
自分の教室を出て、他の屋内展示の様子を見に行く。
やっぱりと言うべきか、予想通り早乙女さんはついてくる。
流石にもう諦めて、大人しく未来の後輩に校内を案内してやろう。
「コスモちゃん、よくあの問題を一発クリアできましたね〜」
「えへへ〜。最推しのソラちゃ――じゃなかった、
「そ、そうなんですか……えへへ〜」
振り返らなくても分かる。
今のソラは絶対に嬉しさを隠しきれないニヤニヤ顔だ。
実際、最初に会った時もソラの事に言及していたし、使っているデッキも型は違えど【聖天使】だし。
早乙女さん、本当にソラに憧れているんだな。
「ニヤけたソラちゃん……じゃなかった、赤翼センパイきゃわ〜★」
「えへへ〜、別に畏まった呼び方じゃなくていいですよ〜」
「ホント? やったー、公式の許可ゲットー!」
少し前まであった圧と圧のぶつかり合う空気は何処へやら。
一応打ち解けてくれたようで、俺としては安心できる。
あとは変な注目が向けられなければ最高だ……俺がな。
「ねぇねぇソラちゃんセンパイ。次はどこ行くの?」
「次は漫画研究会ですね。よくある部活動内で作った漫画の展示だって聞いています」
「
というわけで次は例のアレを放置している漫画研究会に行きます。
この学校はAやSといった上位クラスのように、ひたすらファイターとして研鑽を積む人間の方が多い。
しかし早乙女さんの言うように、試合での強さ以外を伸ばす者達もいる。
そんな彼らの進路希望はカードのイラストレーターや、世界観構築をするテキストライターなど。
所謂カードデザインに関する仕事だ。
「過去には漫画研究会に在籍していた人が、卒業後UFコーポレーションの関連企業に就職して専属イラストレーターになったという話も何件かあるそうです」
「ウチの漫研って美術部も兼ねている側面があるからなぁ。他にも経済系の授業を取っていた生徒は、卒業後に起業してカードショップ始めるなんて話もよく聞く」
実際そういう授業の一環として、この文化祭ではレアカードのオークションやオリパ専門の模擬店なんかがある。
経済の実践演習のようなものなんだろうけど、実際どのくらい有益なのかは俺もよく知らない。
「さてと、もうすぐ漫研の部室なわけだが……」
既になにか争っている声が聞こえてくるなぁ。
しかも絶対にしょうもない争いとみた。
「ソラぁ、ちょっと俺だけ先に行ってくる」
「じゃあ私達はちょっとゆっくり歩いて行きます」
というわけでソラに早乙女さんを任せて、俺は駆け足気味に漫研の部室へと向かった。
「なぜ『おねショタ本』と称して『ショタがいじめっ子からお姉さんを寝取られる本』を描いた! これでは読者の脳が破壊されて情緒不安定になる。癖の冬がくるぞ」
「漫研に属する者は自分達の事しか考えていない。あといじめっ子の末路はあとがきに記しただろ!」
「あとがきで罰を与えようなどと!」
「この私が、新たな性癖の扉を開けてやろうというのだ!」
「歯ぁ喰い縛れ! そんな性癖、修正してやる!」
「グアっクス!? ……これが、純愛か」
介入たくないなぁ……もうコイツらにまとめてメテオ落としても許されるよな?
もうカード使った武力介入なら許されるよな?
「おいそこのアホども。そのふざけた頭にメテオ落とされたくなかったら……分かってるよな?」
「ひえっ」
「ぎゃ、逆襲の余地は?」
「あるわけねーだろ、テメーを目標にして駆逐するぞ。それともここで俺とセンチメンタリズムな運命でも感じるか? デッキ抜いてよぉ」
ここまで言えば分かってくれたようで。
馬鹿な争いをしていた漫研の男どもは即座に「大変申し訳ありませんでした」と言って土下座をしてきた。
分かってくれれば良いんだ、分かってくれれば。
「ったく。とりあえずその本は頒布中止な」
「な、なぜ!?」
「文化祭でド直球エロ同人誌を出していいわけねーだろ!」
というわけで、明らかにアウトな『NTR本』は頒布禁止命令を出します。
内容はアレでも画力は間違いなく高いのが妙に腹立つな。
これで終われば良いと思いつつ、この漫研という組織も一枚岩ではない。
男子が終われば次は女子だ。
「して……ころして……殺して……」
「だからナマモノ本はよしなさいって言ったのよ! あとカプ算の順番が逆よ」
「ハァァ!? それ言い出したら戦争でしょーが! デッキ抜けや【///聞くに耐えない罵詈雑言///】女ァァァ!」
こっちも争ってやがる。
つーかナマモノ本ってなんだよ。殺してとか嘆きの声まで聞こえたけど。
そんな事を思いながら漫研女子のやっている場所に近づくと……
「わぁ……エッチだぁ」
「えっ、これ、先生が財前くんのお兄さんと……えぇ!?」
「見とうなかった……兄のBL本なんぞ、見とうなかった」
女子中学生三人組と再会できたぞ。こんな場所で再会しても気まずいだけだぞド畜生。
「いやオイちょっと待て。聞き間違いじゃなけりゃ俺と財前でそういう本を!?」
「え!? それは、そのぉ……たまたまですよー、何故かたまたま偶然100%そっくりなキャラが出ているだけなのでー」
「自白と判断するぞ」
思わず頒布していた漫研の女子を問い詰めてしまう。
つーかそのカップリングのどこに需要があるんだよ!
絶対にないだろ、誰得なんだよそのナマモノBL本!
「あの、この『
「ください★」
「コピ本なので200円です」
なんか別の本が俺の近くで売れていったんだけど。
聞き間違いじゃなけりゃ凄まじいタイトルの本だったけど……つーか購入したのソラと早乙女さんかよ。
そのタイトルのどこに購買意欲が出たんだよ。
「とりあえずこのBL本は本人権限で頒布禁止ね」
「そ、そんなぁ……」
「あとそこのコピ本も中身を確認させ――」
「大人しく頒布禁止札を貰い受けます」
「よーし素直だな。じゃあ手が空いたんだからテメーらが磔にしたバカをさっさと回収してこい。邪魔なんだよ、景観のよぉ」
即席で作った頒布禁止札を長机に貼り付けながら、俺は漫研の面々に指示を出す。
どうやら様子からして、完全に回収を忘れていただけらしい。
迷惑な話だ。
「ところで、あんなデカい十字架どこにあったんだ? 倉庫か?」
「えっ、アレなら昨日から既に置かれてたやつですけど」
「……漫研が用意したヤツじゃないのか?」
「違います。ちょうどいい十字架で、頑丈だったから使っただけです」
マジで誰だよあの十字架置いたやつ。
バカの回収が終わったら、後で設置者探さないとな。
そんな事を考えながら、バカの回収に向かう漫研の背を見届ける。
とりあえずここのトラブルはこれで大丈夫だろう。
人の少なくなった漫研の部室でそう思いながら、俺は自分の知り合い達の方へ目を向けてみると……
「きゃぁぁぁ、もしかしてCHIYOちゃん!? コスモ何回か配信みたよー★」
「えっ、コスモちゃんに認知されてた? えっ、なにが起きたの? 今日が私の命日?」
「ねぇねぇ、今度コスモとコラボ配信しない? コスモ的にもめーっちゃやりたい★」
「
早乙女さんが智代ちゃんに絡んでいた。
というか早乙女さん、智代ちゃんの事知ってたんだ。
だけどね、その辺にしてあげてね。
智代ちゃんがあまりの出来事に魂抜けちゃってるから。
「CHIYOちゃん、SNSにツーショ載せていい?」
「ふぇ!? は、はい」
「ありがとう♪ じゃあ撮るよー、はいチーズ★」
「い、いえ〜い」
「えへへ〜『文化祭でCHIYOちゃんとエンゲージ』っと」
早乙女さんも大概マイペースな子だなぁ。
トントン拍子で写真撮ってSNSに上げてる。
あと智代ちゃんが完全に真っ白になっているから気づいてあげて。
「卯月〜、あれ智代ちゃん大丈夫だと思うか?」
「大丈夫、じゃないでしょうか……」
「どうした卯月、言葉遣いが変だぞ」
「見たくもない実兄のBLを見てしまった妹の気持ちにもなれ!」
それは……心中お察しします。
「それと、多分アレは大丈夫じゃないと思う」
「やっぱり? どう見ても真っ白になってるよな?」
「この状況下で智代が配信テンションにすらなれないって、相当キャパオーバー起こしてるよ。SNSまで繋がったっぽいし……というかお兄、なんで早乙女コスモと一緒にいんの!?」
「色々あった。懐かれた」
「えぇ……クラスメイト、アイドルと続いて今度は年下配信者に毒牙を? 本当に刺されるのだけはやめてよ」
毒牙とはなんだ、刺されるような事はしてないって。
なんで誰も彼も俺がハーレム野望を持っているかのように言うんだ。
俺はラブコメでも一対一ものが好きなくらいなんだぞ。
だからそんな冷め切った目で兄を見るな、泣くぞ。
「あれ? そういえばソラは……」
「ソラさんならそこで舞と一緒にいるけど」
そう言って卯月が指差す先には、確かにソラと舞ちゃんがいた。
漫研部室の隅っこで、屋外エリアの模擬店(甘味がメイン)について語り合っている。
あの二人も食という繋がりがあるから仲良いんだよな。
「ぷひゅ〜」
あっ、とうとう智代ちゃんが倒れちゃった。
「わー!? 智代ちゃんだいじょーぶ!?」
「あー、ついに倒れたか……お兄」
「イエスマム。保健室までご案内します」
舞ちゃんや卯月に手伝ってもらい、俺は智代ちゃんをおぶる。
保健室が比較的近い場所で本当によかった。
「あー、悪いソラ。智代ちゃんを保健室に連れてくから、早乙女さんの事頼む」
「はい……えっ?」
申し訳ないけど、一時的に早乙女さんをソラに任せる。
まぁあの子的には一番の推しであるソラと二人きりなら、色々と話もできて嬉しいだろう。
「終わったら連絡入れるから、適当に回っててくれ」
「えっツルギくん!?」
「はーい♪ ソラちゃんセンパイと待ってまーす★」
よし、早乙女さんが了承してくれたなら大丈夫だろ。
というわけで俺は智代ちゃんを保健室に連れて行きます。
「行っちゃいました……」
「二人きりですね、ソラちゃんセンパイ★」