俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百六十五話:2日目……反評議会連合

 時刻は午前9時。

 冬の青空が綺麗に広がっている中、文化祭は2日目を迎えた。

 で、一般来場者が入り始めた現在。俺はどうなっているのかと言うと……

 

「おはようお兄。大丈夫……じゃなさそうなんだけど」

卯月(うづき)魔剤(エナドリ)って労働には必要な栄養素なんだな」

「ちょっと台詞が末期過ぎるんだけど、本当に大丈夫?」

 

 疲れています。

 2日目にも来てくれた卯月と智代(ちよ)ちゃん(まい)ちゃんだけど、早々に心配そうな目で俺を見てきています。

 

「せんせぇ目の下クマできてるー」

「大丈夫だよー舞ちゃん。ちょっと睡眠時間が2時間下回っただけだから」

「先生、それは言い訳の余地なく寝不足です」

「本当に大丈夫なの、お兄?」

 

 まだギリギリ大丈夫だと思う。

 結局あの後、学園に泊まった俺達は夜通し校内の見回りをしていた。

 とはいえ昼間のアレコレで体力を消耗した者も多く、途中で寝落ちしたメンバーが出たのは必然だった。

 

(まぁ、実際には今日ステージに出る予定の女子達に関しては、こっちから休むように言ったんだけど)

 

 で、残りのメンバーで校内を巡回し、寝落ちした者の穴は他のメンバー……というか俺が埋める形で動き続けていた。

 加えて化神の皆様にも協力してもらい、校内に不審者がやってこないか警戒し続けた訳だけど。

 結果的には何も異常は起きなかった。

 化神の面々にも色々生命反応的なものを探知してもらったけど、やっぱり何もなかった。

 

「夜通し校内を巡回してたけど、不審者はいなかったから安心安心めでたしめでたし」

「ごめんお兄。アタシ的には目の前にいる兄が一番安心できないんだけど」

「先生、少し休んだ方が良いんじゃないですか?」

「一般開放の時間が終わったら休むよ」

 

 それまでは頑張ります。

 何故ならエナドリ飲んで元気前借り済みだからな。

 あと10時間くらい頑張ってやる。

 

「それで。今日は智代ちゃんのリベンジも兼ねてるのかな?」

「はい。昨日はその、不覚にもアレだったので……」

「……早乙女さん、今日も来るって言ってたよ」

「先生。同じ配信者として今日コスモちゃんに遭遇したらリベンジします」

 

 それは配信活動的なやつという認識で合ってるよね?

 もしくは交流的な意味合い。

 と、ここまで言ってから俺はある事を思い出した。

 

「そうだ。よかったら3人ともチャレンジファイトのコーナーに行ってくれないか? 勝ったら景品が貰えるんだけど」

「別にいいけど……お兄、なんか企んでない?」

「Sクラスの生徒を狙い撃ちしてくれ。Sクラスを倒した時の景品は学園長の自腹なんだ」

 

 そして俺は無駄に豪華な景品の内容を3人に伝える。

 相手も強いし、智代ちゃんと舞ちゃんには良い修行になるだろう。

 

「と言うわけでだ。高を括っている学園長にお灸を据えるためにも……全員、本気で勝ちに行ってよし」

「りょーかい。勝つだけで年間パス貰えるとか、コスパ最高じゃん」

「はーい! 全力で稼ぎにいきまーす!」

「私も一狩り……じゃなくて勝ちに行きますね」

 

 よしよしやる気に満ち溢れているようで、俺はすごく嬉しいぞ。

 そのまま是非とも学園長のサイフポイントを0にして、この世に絶対は無いのだと思い知らせてやってくれ。

 

「お兄は今日も巡回の仕事?」

「その予定。トラブルとか不審者があったらデッキを抜くお仕事——」

 

 だから今日も妹達の案内役をしてやろうと思っていた。

 しかし突如としてポケットに入れていたスマホから、メッセージの受信音が鳴ってきた。

 この音は評議会用のグループのやつか……時間やタイミングを考えると、あまり良い話ではなさそうだな。

 そう思いながら、俺はスマホを取り出してメッセージを確認する。

 

「……悪い卯月。今日は3人で回っていてくれ」

「なんかお仕事発生した?」

「多分。あんまり良くない話だと思う」

「分かった。んじゃ無理はしないでね」

「善処する」

 

 智代ちゃんと舞ちゃんにも同様の事を告げて、俺はすぐさま評議会の執務室へと走って向かった。

 メッセージの送り主は黒崎先輩。内容は「緊急。全員執務室に集合」とだけ。

 流石に黒崎先輩が緊急と言うレベルだ、穏便な話にはならなさそうだ。

 

 

 

 

 俺が大急ぎで執務室に戻ってくると、既に何人か集まっていた。

 場所的にここから一番近い、大型ドームに居たであろうソラやアイ達だ。

 ステージのリハーサルをしていたのか、全員衣装に身を包んだいる。

 

「あうっ、ツルギくんも呼ばれたんですね」

「グループメッセージだったんだから当然でしょ。でも予想外の形で衣装のお披露目になったわね」

 

 俺の存在に気づくや、顔を真っ赤にしたソラはアイの背に隠れてしまう。何回目だろうか、この流れ。

 元々ソラから話に聞いていたけど、アイが本業の人に制作を依頼したというだけあって、如何にもアイドルらしい華やかな衣装となっている。

 全員白と青を基調としているけど、事前にイメージカラーでも決めておいたのか、確実異なる差し色が衣装に入っている。

 ちなみにソラは水色、アイは緑色だ。

 

「えへへ〜、どうよツルギくん! 可愛いでしょー」

「ねぇ(らん)。なんでそんなに堂々としていられるの? ボクまだちょっと恥ずかしいんだけど」

 

 しかし元アイドルであるアイは兎も角として、藍は相当楽しんでいるのか自信満々かつ堂々とステージ衣装姿を見せてくる。

 そんな藍の背に隠れてしまっているのは、ソラと同じく顔を真っ赤にしている九頭竜(くずりゅう)さん。お前もか。

 こちらのイメージカラーはよく知る色だな。

 藍は赤色で、九頭竜さんは銀色。

 ……そう、よく知る色と衣装なんだよなぁ。

 

「どうしたのよツルギ。急に遠い目なんかして」

「気にしないでくれ。みんなよく似合っていると思イマスヨ」

 

 言えるか……声に出して言えないから心の中で叫んでやる。

 それではド派手に、せーの!

 

(どう見ても二年生編エンディング曲のパッケージイラストじゃねーかァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!)

 

 これアレだよ、アニメとかでたまにあるエンディング曲のCDパッケージでのみ描かれる、女性キャラの謎アイドル衣装。

 たしかに前の世界でも二年生編のエンディング曲がそんなんだったけど、流石にそれは予想できねーよ!

 あぁいうのって本編とは無関係な存在じゃないの!? まさかの文化祭のステージで回収するパターンが存在するの?

 

(そうだ……二年生編のエンディングって、藍と九頭竜さんによるデュエット曲だったんだよな)

 

 という事はステージで歌う曲もそうなるのかな。

 そこにソラとアイが参戦する特別バージョンが聴けるって事なのかな。

 ……そう考えたらワクワクして、ちょっと胸が熱くなってくるな。

 

「ツルギくん、本当に大丈夫ですか? ものすごい百面相をしていますけど」

「大丈夫だ。ステージが楽しみだな〜って思ってただけだから」

「それであんな百面相できるんですか!? ちょっと期待値上げすぎじゃないですか!?」

 

 ソラが思いっきりツッコミを入れてくるが、事実なんだから仕方ない。

 実際アイが(本人曰く100%趣味で)全力のプロデュースとレッスンをしたとの事だし、絶対見逃せないステージだろ。

 問題は黒崎先輩が伝えたい案件が深刻な厄ネタじゃない事くらいだ。

 

「……お姉様、すずもアレやりたかったデスよ」

「おやめなさい鈴音(すずね)……正直ワタシも今になって後悔しているわ」

氷帝(ひょうてい)に拉致されなければ……デスね」

 

 気づけば鳳凰院(ほうおういん)姉妹も執務室にやってきていた。

 というかメイド服の人こと鳳凰院妹、マジで久しぶりに見た気がする。

 ……そういえば2人とも、前の世界では揃ってエンディングじゃなくてキャラソン送りでしたね。

 音無(おとなし)先輩の手伝いをしていて参加できなかったそうだけど、ある意味これも因果とか運命ってやつなのかな?

 

 そして気づけば評議会メンバーと牙丸(きばまる)先輩は執務室に集まり、残すは黒崎先輩と音無先輩だけとなった。

 

「全員集まっているな?」

「ん〜〜〜ッッッ! んぐ〜〜〜ッッッ!?」

 

 黒崎先輩がやってきた……鎖でグルグ巻きにした音無先輩を担いで。

 

「あの、黒崎先輩? それは……」

天川(てんかわ)、察しろ」

 

 はい察しました、これ以上追求はしません。

 そりゃあそうだろうな。

 アイドル衣装の藍がいる状態で、音無先輩に自由を与えたら不味いよな。

 幸い藍に関してはアイと九頭竜さんが手で目隠ししているので、色々とセーフです。

 

「それで裏帝(りてい)? 緊急の要件とは」

「あぁ、少し待っていろ」

 

 鎖で拘束された音無先輩を床に捨てるや、黒崎先輩は執務室の隅に置いてあったダンボール箱を持ってきた。

 見覚えの無いダンボール箱だ。少なくとも夜明け頃には無かったはずの物だ。

 

「単刀直入に言う。政帝派こと旧評議会補佐の連中が、オレ達に挑戦状を送りつけてきた」

 

 政帝派。

 その言葉が聞こえた瞬間、執務室の空気がピリッと張り詰めた。

 昨日、そして昨晩も何故か姿を出さなかった旧評議会補佐達からか。

 

「何か仕掛けてくるとは思っていたが……ダンボール箱で挑戦状とは、随分と大掛かりだな」

「こればかりは俺も財前に全面同意。お手紙で済ませられなかったのか?」

「プレゼント付きというやつだ」

 

 俺の言葉にそう返してくる黒崎先輩。

 プレゼント……猛烈に嫌な予感がする。

 それは財前も同様だったようで、俺と同じく眉間に皺を寄せていた。

 

「天川、この前起きたビルの爆破事故を覚えているか?」

「忘れるわけないじゃないですか。それで電車が止まってサウナ行きになって……まさか」

「起爆実験だったそうだ。旧評議会補佐……今は『反評議会連合』と名乗っている連中のな」

 

 そう言いながら、黒崎先輩は一通の手紙らしき封筒を手に持って見せてきた。

 反評議会連合。

 そんな大層な名前がどうでもよく思えるくらい、ビル爆破の方が気になってしまう。

 

「ちょっと見せてくれるかい?」

 

 牙丸先輩が黒崎先輩から封筒を受け取り、中に入っている手紙を読み始める。

 その直後、黒崎先輩は突然、執務室に備え付けられていたテレビを点けた。

 

「学園のあちこちに爆弾を仕掛けた……ね」

 

 手紙を読みながらそう声に出す牙丸先輩。

 案の定そういうパターンってわけか。

 ただそうなると一つ疑問が浮かんでしまう。

 

「爆弾か。学生が用意できる代物で、あんな大爆発を起こせるのか?」

「確かに、無関係な事故を利用したハッタリという可能性はあるね」

 

 財前の口にした疑問に、牙丸先輩が落ち着いて答える。

 ハッタリという可能性を考えているのは、俺以外にもいるらしい。

 単なる悪質な嘘を利用しているだけ……そんな雰囲気が執務室に流れそうになっていた。

 しかし黒崎先輩はテレビに目を向けながら、何度も自身の腕時計を確認している。

 

「……午前10時13分。(ワン)先輩、手紙に書かれてうたデモンストレーションの時間は合っていますね?」

「えっ、あぁそうだけど」

「今、その時刻を過ぎた。ニュース速報よりもSNSを調べた方が早いか」

 

 そう言うや、黒崎先輩はスマホを手に取りSNSを調べ始める。

 俺も不安になって自分のスマホでSNSを開き、「爆発」というキーワードで検索をかけた。

 検索結果はすぐに出る、それも悪い方向で大当たりだった。

 

「繁華街の廃ビルで爆発事故。場所もタイミングも手紙に書かれた通りか」

 

 黒崎先輩の言う通りだった。

 目撃情報も一つや二つではない、写真や動画も数が集まって真実を証明してくる。

 そうこうしている内に、テレビにもニュース速報のテロップが流れてきた。

 内容は言わずもがな。

 

「まさか、本当に仕掛けたのか」

「ご丁寧に爆弾のサンプルまで送りつけてきましたよ」

 

 唖然としている牙丸先輩に、淡々と黒崎先輩がそう告げる。

 そして黒崎先輩はダンボール箱から、一つの大きな金属の塊を取り出してみせた。

 時限爆弾のようなタイマー表示の画面もあり、如何にも爆弾ですといった雰囲気を出している。

 

「奴ら、反評議会連合の要求はこうだ。学園にこれと同型の爆弾を6つ仕掛けた。爆弾を解除したくばファイトに応じて勝利してみせろ……とな」

「6つ、あの規模の爆発を起こす爆弾を6つもだと」

 

 流石に速水も焦った様子を隠せないらしい。

 当然だ、文化祭中に爆弾が爆発すれば大事件なんてもんじゃない。

 恐らく反評議会連合という連中は、どうにかして爆弾を爆発させて、俺達現評議会メンバーの評価を貶めたいようだ。

 爆弾の個数も、六人の帝王に因んだってところか。

 

「ふむ……裏帝、爆弾は本物と考えて良いんですね?」

「それでいい」

「起爆方法、爆弾の詳細は他になにか?」

 

 財前は落ち着いて黒崎先輩に必要事項を質問していく。

 こういう時落ち着いていられるのは、コイツの強みだと思う。

 

「それなら手紙に書いてあるね。各爆弾は反評議会連合が持つ召喚器と連動している。こちらがファイトに勝てば起爆プログラムが削除されて無力化するが、逆に負ければ起爆プログラムが起動して爆発する……だってさ」

「なるほど。電子プログラムで制御しているという事か」

 

 牙丸先輩から説明を聞いた後、財前も自身の目で手紙の内容を確認する。

 電子プログラムによる制御か。通りで機械的な見た目の爆弾なはずだ。

 

「……どうせこの手の輩だ。どうせコードの1本でも切れば、その瞬間に爆発させるプログラムにでもしているだろう」

「一応オレから父さんに連絡して、爆弾処理班に来てもらう手筈になっている」

「だがそれで文化祭が中止になれば、それはそれで奴らの思うがまま……厄介な事を仕掛けてくれたもんだ」

 

 本当に財前の言う通りだ。

 こちら側の勝利条件が過酷過ぎる。

 爆弾が爆発してもアウト、文化祭を中止してもアウト。

 しかも財前の所見を聞く感じ、まだ何か罠を仕掛けている可能性も高い。

 

「敵が素直に爆弾を解除する保証もない。逆に俺達が勝てば起爆する仕掛けという可能性もある。爆弾が6つ以上ある可能性もある」

「そうだな。天川の言う通り、この手の連中は約束など平気で反故にする」

「本当に厄介だなぁ。俺も黒崎先輩くらい落ち着いて——」

 

 ふと、そこまで言いかけて、何か奇妙な事に気がついた。

 黒崎先輩は元々落ち着いた、クール系の人だ。

 だけどここまで面倒な事態になったというのに、不思議なくらい落ち着いたいる。

 やる時はやってくれる人とはいえ、焦りの欠片すら出していない。

 

 だからだろうか、俺は変な質問を一つしたくなってしまった。

 

「黒崎先輩……この爆弾のサンプルって、起爆プログラムは入っていたんですか?」

「入っていた。手に持った感じからして火薬も中に入っているだろう」

 

 きっと普通なら怖さの一つでも感じてしまう回答。

 だけど俺は逆に、何故か頭の中に「解決」の二文字が浮かび上がっていた。

 何故そう思ってしまうのだろうか。俺は落ち着いてここまでの情報を脳内で整理する。

 

(爆弾……個数は関係ない……電子プログラムで制御……プログラム……?)

 

 何かが引っ掛かる。以前の記憶が何かを俺に訴えようとしてくる。

 プログラム……プログラム……

 

「…………あれ? 電子プログラムで制御している?」

 

 あれ? もしかしてコレって。

 

「あの、黒崎先輩? つかぬ事を聞きたいんですが……もしかしてこの爆弾のサンプルって、もう()()()()()()ですか?」

「……正解だ、天川」

「あー、そっか……プログラムで制御って事は、そうなるのか」

「おい天川、何を勝手に納得しているんだ」

 

 すまん財前、ちょっとだけ待っていてくれ。

 多分今回はお前も大活躍できるから。

 でもとりあえず……

 

「カーバンクル」

「キュプ? 呼んだっプイ?」

「ちょっとコレの中身って読み取れるかな?」

「どれどれっプイ」

 

 召喚器の中に入っているデッキ。

 そこからカーバンクルに出てきてもらい、爆弾の上に乗ってもらう。

 俺の記憶違いでなければ……化神はこの爆弾を解除できる筈だ。

 

「キュプ〜。コレはもう信号を受信するプログラムも、起爆のために必要な電流を流すプログラムも書き換えられているっプイ」

「やっぱり」

「うわぁ……コレ、元のプログラムは勝っても負けても試合が終われば起爆する仕組みっプイ。しかも一つ起爆すれば時間差で他の爆弾も起爆する……性格の悪い仕掛けっプイ」

「うへぇマジかよ。でもまぁ黒崎先輩、つまりそういう事ですね?」

「そういう事だ。父さんには外で待機してもらうように言ってある」

 

 通りで黒崎先輩は落ち着いているわけだ。

 存在が電子プログラムに近い化神は、機械に触るだけで容易にプログラムをハッキングできる。

 夏休みに訪れた隠神(いぬがみ)島にあった研究所に入る時に、カーバンクルがセキュリティをハッキングしていた事をすっかり忘れていた。

 

 まぁとりあえず、なんにせよだ。

 

「えーと……見える人、全員集合」

 

 いつも通り俺の頭上に乗っているカーバンクルを指差しながら、俺は化神が見える人達に招集をかける。

 当然とはいえ、やっぱり禰津海(ねずみ)さんと(かなで)先輩は認識できない枠なんだよな。

 とりあえず俺はカーバンクルに頼んで、集まってもらったパートナー化神のいるメンバーにハッキング能力諸々について伝えてもらう。

 

「「「…………あっ」」」

 

 うん。そりゃあそうなるよな。

 だって化神は普通の人には見えないおかげで、秘密裏に爆弾を無力化する事が可能。

 要するにもう、勝ち確演出に近いんだ。

 

「なんだ、これなら僕達だけでもどうにかできそうだな」

「だな。ステージ組の皆様はドームに居てもらった方が良いと思う」

 

 拍子抜けといった様子の財前に、俺は自分の考えを伝える。

 極端な話、化神達に爆弾の捜索と解除を頼めばあとはどうにでもなる。

 化神への指示さえ出して貰えば、ステージ組の皆様は校内を駆け巡る必要なんてないんだ。

 

「すまない天川。俺達にも簡単に説明してくれないか」

 

 おっと、それもそうだな。速水の言う通りだ。

 だけど今日は化神という存在にについて知らない人がいるからなぁ。

 具体的には鳳凰院姉妹と奏先輩、禰津海さん。

 となれば誤魔化し文句は……コレしかないか。

 

「黒崎先輩の伝手で爆弾処理の専門家が、もう校内に潜入してくれたんだってさ。だから俺達がやるべきは専門家が全ての爆弾を解除するまでの時間稼ぎ」

 

 ちょっと無理はあるかもしれないけど、念のため化神を知る人に伝わる事を願って、俺は自分の頭上を指差しながらそれを言う。

 その意図が伝わったのか、速水は「そうか。理解した」と返してくれたし、牙丸先輩と音無先輩も納得したように頷いてくれた。

 やっぱり牙丸先輩と音無先輩の納得は説得力があるようで、 化神を知らない他の皆様も「そういう事なんだろう」と受け入れてくれた様子だった。

 

「さて、それではここから先のオレ達の動きについてだが……負けるのは論外として、素早く勝ってもダメだ」

 

 改めて黒崎先輩の口から爆弾の詳細について語られる。

 勿論ハッキング前の本来の起爆プログラムも含めてだ。

 流石に内容が内容なだけに、鳳凰院姉妹や禰津海さんは顔を青くしている。

 それでも大して表情を変えない辺り、やっぱり奏タクトはそうだよなと思ってしまう。

 まぁそれはいい。相手が打ってきそうな手は凡そ想像がつく。

 

「黒崎先輩。ちょっと俺から()()があるんですが」

 

 幸い必要な人材は揃っている上に、達成すべき事もハッキリした。

 ご丁寧に反評議会連合の皆様は、手紙に戦いの舞台となる場所を指定している。

 俺は自分の考え——策を執務室にいる全員に伝えた。

 

「そうだな、それでいい。オレは天川の案に乗ろう」

 

 ひと通り提案を聞き終えると、黒崎先輩は口元に小さな笑みを浮かべていた。

 

「なーんだ。それじゃあ何も心配しなくていいじゃん」

「うん。ボクも天川くんの案に賛成」

 

 藍と九頭竜さんも気づけば焦りが完全に消えていて、俺の提案に賛同してくれる。

 

「なんだか、一番強い手札を与えられちゃった感じがありますね」

「そうね……でも今回ばかりは、相手の運が悪かったのよ」

 

 ソラは苦笑して、アイは淡々とため息を吐いている。

 だけど俺の提案に対しては乗り気でいてくれた。

 それは速水や牙丸先輩、鳳凰院姉妹と音無先輩も同じであった。

 一方で反対しようとする人も一名。

 

「正気ですか!? そんな策とも言えぬ策で迎え討とうなどと!」

「奏、オレは天川の提案が最善の策だと考えるぞ」

「しかし!」

「いい機会だ。奏、お前は天川について行け」

「……命令ですか」

「あぁ、オレの帝王としての命令だ」

 

 黒崎先輩に食ってかかろうとした奏先輩だけど、何故か俺について行けと命じられていた。

 別に良いけど、なんで急にそうなるんだろうか。

 幸いな事に他に異論は一つも出ず(禰津海さんに関しては判別しかねる)、俺の提案は通ったようであった。

 ならば最後に決める事はただ一つ。

 

「じゃあ、誰がどこで戦うか決めようか……くじ引きで!」

「「「おぉー!」」」

 

 戦場の割り当てである。

 俺はスマホに入れておいたくじ引き用のアプリを起動して、皆で戦いの場を割り当てるのだった。

 

「本当に……大丈夫なのか?」

 

 糸目でも、奏先輩の呆れだけはしっかりと伝わってきた。

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