俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百六十六話:王が来た

 各自の持ち場は、くじ引きによって無事割り振りが完了。

 化神の皆には爆弾の捜索と解除を頼み、俺たちはそれぞれの戦場へと向かっていた。

 

 速水は鳳凰院(ほうおういん)妹と共に、現在は文化祭用のゲートで彩られている、校門近くの広場へ。

 黒崎(くろさき)先輩は音無(おとなし)先輩を半強制的に連れて、共にチャレンジファイトコーナーへ。

 そしてステージに出る予定のソラ達は、予定通りドームの控え室へと向かってもらった。

 

(とはいえ……どうせ爆弾なんか仕掛ける手合だからなぁ)

 

 爆弾は合計6個、ファイトを挑んでくる者は6人……なんて書いてあったけど、絶対にそれ以上の数を仕掛けていそうだ。

 指定された場所は3つ、それぞれ2人ずつ配置されているらしいが虚偽の可能性なんていくらでも考えられる。

 だけどまぁ、このくらいは俺だけじゃなく全員想像できた範疇だ。

 

(念の為、鳳凰院姉がソラ達に加勢してくれて良かった)

 

 これで少しは楽に済ませられるだろう。

 牙丸(きばまる)先輩も、とある役目のために動いてくれている。

 ちょっと特殊な人手も必要なので、既に卯月にも連絡して協力を頼んでおいた。

 あとは反評議会連合の挑戦を受けて、何事もなく文化祭を終えるのみ。

 

(学園の敷地は確かに広い。だけど俺達には広範囲に手を伸ばせ……いや、根を伸ばせる頼もしい味方がいる)

 

 具体的にはウィズだ。

 初めて出会った時もそうだったが、アイツは自分の一部として根を伸ばす事ができる。

 試しに「学園中に根を伸ばして、爆弾を探したりできる?」と聞いてみたところ、「朝飯前なのね」と返ってきた。

 

(化神は普通の人間には認識できないから、太い根を伸ばそうとも関係ない)

 

 それどころか化神は、存在が不安定なおかげで幽霊のように壁をすり抜ける事すらできる。

 俺も言われるまですっかりこの事を忘れていた。化神のすり抜け現象なんて、目覚めた直後のカーバンクルでしか見たこと無かったからな。

 

(ウィズの根に加えて、アーサーが巨体を化神の特性を活かして爆弾を探してくれている。場所を特定したら、他の皆が解除に向かうという手筈だ)

 

 だから俺達は俺達の仕事に集中しよう。

 そう考えながら、俺は自分に割り当てられた場所へと向かっているのだが……

 

「何をしているのですか、虹帝(こうてい)?」

「いやぁ、ちょっと転けそうだから慎重に歩きたくて」

 

 普通の人には認識できないし触れる事もできない。

 逆に言えば、認識できる人間は触れる事もできてしまう。

 つまり今……校庭に向かうための道が木の根だらけで歩き難い事など、(かなで)先輩には認識すらできないのだ。

 

「本当に、大丈夫なのですか?」

「大丈夫ですよ奏先輩。ただちょ〜っと足元が悪いだけなんで」

「何も変わらないように見えますが?」

 

 でしょうね。

 仮に奏先輩が化神を認識できる人だったら、とっくにパートナーをお披露目しているだろうし。

 きっと化神すらも利用して、何か暗躍でもしようとしただろう。

 でもそれをしてないなら、この人は間違いなく化神が見えていない。

 となれば結局、今ここでウィズの張った根に苦戦しているのは俺くらいだろう。

 

「グエっ!」

「ぴゃあ!? ちょ、なんで急にコケたんです!?」

「クッ……気にするな、邪魔な根があっただけだ」

 

 前言訂正、財前もいたんだった。

 あと禰津海(ねずみ)さんも一緒である。

 

六帝(りくてい)評議会……戦いに応じる帝王はその内半数。連合側が素直に受け入れるかどうか」

「受け入れますよ。あっちは帝王を討ち取る事が目的、仮に討伐に失敗しても爆弾を使って汚名を着せれば十分。戦場に出てきたのが補佐であっても、人目につく場所で使者や代行者を名乗ってしまえば、連合側も戦わないなんて選択をするメリットが薄い」

「責任の所在は選出した帝王にあり、補佐の敗北は彼らにとって帝王を貶める材料にしかならない……という事ですか」

「そういう事です」

 

 少しぎこちない足取りで進みながら、俺は奏先輩とそんな会話を交わす。

 即座に爆弾を起爆させる事はない。戦う相手を過度に選別する事もない。

 どれだけタチの悪い状況を作って来ようとも、連合側は必ずファイトはしてくれるという確信がある。

 良くも悪くもカードゲーム至上主義の価値観が、今の俺達に時間を与えてくれたようなものなんだ。

 

「あの手紙を信じるなら校庭には2人。それは俺が相手しますけど、あっちに他の仲間がいたら」

「それはボク達が相手するという話です。しかし大丈夫ですか?」

「なにが?」

「あまり……緊張感がないようなので」

 

 眼鏡の位置を直しながら、奏先輩はそう問いかけてくる。

 緊張感ねぇ。

 自分では緊張しているつもりだけど、間違いなくこの世界基準じゃ緩い感じなんだろうな。

 だけど……

 

「先輩、それ財前にも言えると思うんですけど」

「おい天川、僕はキミ程能天気な神経を持っていない」

「とか言って、お前も結構リラックスしてるじゃんか。お隣にいる禰津海さんを見てみろよ」

 

 失ったメスガキ属性を呼び起こしてメンタルを保とうとしているらしいが、どう見ても上手くいっていない。

 表情は辛うじてそれっぽいが、「ざぁこ」なんて発言は出る気配もない。

 何より腰から下……というか足が笑っている。何なら足が爆笑している。

 

「財前。禰津海さんが転けないように気をつけてくれ」

「はぁ……言われなくてもそうする。そしてキミはもう少しファイト中の絵面を考えるべきだ。特に今日はね」

「前向きに検討だけはする。だけど事故の責任は負いかねます」

 

 特に今回のような試合なら余計にな。

 フィニッシュくらいは派手に決めたいし、せっかくなんだから全員でSR切り札大集合させようぜ。

 なんてちょっとした願望を脳内に描いている内に、目的地である校庭が近づいてきた。

 

「準備は完了しているらしいな」

 

 校庭——『ちびっこサモンスクール』が行われていた場所を見ながら、財前はそう呟く。

 校庭は広く逃げ道の確保もしやすいからか、所謂『お礼参り』の類との戦場になった前例は一度や二度ではない。

 そんな過去からの学びなのか、既に一般来場者や子供達はスタッフの生徒によって安全な後方まで逃がされていた。

 

「話が早くて助かる……けど、連合さん明らかに数が多いように見えるんだけど」

「そのくらいキミも想定内だった筈だろう? 今日は特別な観客で満席なんだ。気合いでも入れてカッコよく決めてやろうじゃないか」

「気持ちは分かるけどさぁ、ちゃんと計画通りのプレイングでいけよ」

 

 フフンと鼻息の音を立てながら、財前が変な気合いを入れようとしていたので、咄嗟に釘を刺してしまう。

 大丈夫だとは思うけど、変なタイミングで試合を終わらせないでくれよ。

 でもまぁ……不安がってるちびっ子達が見てるんだ。

 入場のタイミングくらい、帝王らしく振る舞っても良いだろう。

 

「退避誘導の対応、感謝します」

 

 子供達の対応をしているスタッフ担当の女子生徒を見つけたので、俺は素直に礼の言葉を述べる。

 

「あっ、虹帝」

「すいません、アレの対応ちょっと時間かかるかもなんですけど……もうちょっとだけ子供達への対応頼みます」

「は、はい!」

 

 小さな子供達に囲まれている女子生徒は、すぐに明るく笑みを浮かべてくれた。

 下手すると不安を覚えている子供の対応をする方が、大変な仕事かもしれない。

 でも俺らは今からファイトしに行かないとなんで、本当にご苦労おかけします。

 そうして俺が女子生徒に申し訳なく頭を下げていると、後ろから財前が声をかけてきた。

 

「おい天川、さっさと行くぞ」

「分かってる。でもちょっとくらいカッコよく決めてからでも良いだろう?」

「はぁ、キミという男は……だから早く済ませろと言っているんだ」

「お前が話の分かる奴で、俺は嬉しいよ」

 

 なら短く済ませよう。

 

「もう大丈夫」

 

 目の前にいる小さな子供達へ告げる言葉は、これに尽きる。

 

「俺が——」

「王が来た!」

「……財前、俺のセリフを取るな」

「キミが遅かっただけだ」

 

 清々しそうに言いやがって。

 ここは俺がカッコよくドンッと決める場面だろう。

 拗ねるぞ、男子高校生が駄々っ子のように。

 

「……奏先輩、どうしました?」

「いや、なんでもありません」

 

 振り返ると、奏先輩が静かにこちらを見つめていた。

 何か思うものでもあったのか……あったのかもしれない。

 単なる推測であっても、未来に繋がる小さな積み重ねの一つになっていてくれれば良い。

 

(ん……よく見れば禰津海さんも?)

 

 少し距離を置いているけど、奏先輩と似たような感じで棒立ちしている。

 けれど禰津海さんは……特別何かあるとは思えない。

 というか既に変化が起きすぎていて、何も予測できない。

 

(考えるのも面倒だし、さっさとアレの相手をしてやるか)

 

 ご丁寧にアチラは既にファイトステージに立っている。

 俺達四人は迎撃のために、校庭に足を踏み入れた。

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