俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百六十九話:俯瞰する少女

 ツルギ達六帝(りくてい)評議会の面々と、反評議会連合の試合が開始して少し経った頃。

 校庭で行われている戦いを遠巻きに見ている少女が一人いた。

 今日も文化祭を訪れていた早乙女コスモである。

 

「ふーん……そういう作戦なんだ〜」

 

 ファイトを見守っている子供達よりも、さらに後ろからコスモは召喚器が出している立体映像に目を向けている。

 相手にダメージを与えないようにしつつ、とにかく防御や耐久に徹して時間を稼ぐ。

 ツルギは3体のモンスターを使い回して、富屋(とみや)の攻撃を防ぎ続け、タクトとティアナも防御に徹している。

 そして小太郎はというと。

 

「ライフを2点支払って、〈レフト・ドラゴショベル〉を召喚!」

 

 ショベルカーのような意匠を持つ機械の竜が、小太郎の場に呼び出されていた。

 働く車とドラゴンという分かりやすい組み合わせに、ファイトを見守っていた男児達は歓喜の声を上げている。

 

〈レフト・ドラゴショベル〉P7000 ヒット2

 

「召喚時効果でデッキを上から3枚オープンし、系統:《機械》を持つカードを1枚選んで手札に加える。僕はアームドカード〈マグネティック・ディフェンサー〉を手札に加えて、残りは墓地へ送る」

 

 カードを手札に加えるだけでは終わらない。

 小太郎の新たなモンスターは、さらに仲間を呼び寄せる。

 

「〈レフト・ドラゴショベル〉の追加能力! 自身の効果でアームドカードを手札に加えていれば、墓地から系統:《ライト》か《センター》を持つモンスターを1枚選んで手札に加えられる」

 

 必要なカードを墓地から手札に回収した小太郎は、先程手札に加えたアームドカードを仮想モニターへと投げ込むのだった。

 

「手札を1枚捨てて、アームドカード〈マグネティック・ディフェンサー〉を顕現!」

 

 そして場に現れたのは、丸い磁石のような物質の集合体。

 ツルギに続いてアームドカードを出した事もあり、子供達は大いに盛り上がっている。

 

「さらに僕は、〈ライト・ダンプコング〉を召喚!」

 

 続けて召喚されたのは、巨大な荷台を二分割したような剛腕を持つゴリラ型のメカ。

 ダンプの名の通りこちらも働く車の意匠を持っており、男児達の心を大いにときめかせている。

 

〈ライト・ダンプコング〉P6000 ヒット2

 

「チッ! お得意の3体合体か」

「生憎と今は中核を担当する〈アーサー〉がいない……だが〈アーサー〉無しでの戦いを、僕が想定していないと思うのか?」

「なんだとッ!?」

「2体合体に適したモンスターも存在するんだ! 僕は〈レフト・ドラゴショベル〉と〈ライト・ダンプコング〉で【合体】!」

 

 効果発動によって合体を開始する2体の機械獣。

 ゴリラはパーツを一度分離して、胴体と脚部に。

 竜も一度パーツを分離して、両腕とバックパックに変形する。

 バラバラだった2体の建設メカのパーツは一つとなり、破壊と創造を司る機械巨人が誕生する。

 

「完成! 【建設王(けんせつおう)】……ダイッッッ、ビルッッッ、ダァァァァァァァァァァッ!」

 

〈【建設王】ダイビルダー〉P13000 ヒット4

 

 働く車の意匠を持つ2体の機械獣が合体し、巨大な人型ロボットとなる。

 その演出を目にしただけで、ギャラリーの男児達の興奮は最高潮に達していた。

 

「〈マグネティック・ディフェンサー〉を〈【建設王】ダイビルダー〉に武装(アームド)! さぁ、どこからでもかかって来るといい」

 

 特殊な磁石による追加装甲を得た〈ダイビルダー〉だが、小太郎は攻撃をする事なくターンを終了してしまう。

 他の試合の様子も含めて、ギャラリー(主に男児)は十分以上に盛り上がっている。

 だがコスモはその様子だけ見届けると、誰かに見つかる前に早々とその場を去るのだった。

 

「みんな頑張ってるね〜★」

 

 学園の中を適当に歩き回りながら、コスモはどこか楽しそうにそう呟く。

 誰に対して言ったわけでもない……普通の人間なら間違いなくそう見えてしまう。

 だがコスモの持つ召喚器の中には、確かに彼女と意思疎通をする存在がいた。

 

「分かってるって★ 御筆(みふで)センセェから連絡が来たらすぐ行くから」

 

 それまでは少し遊ばせて欲しい。

 足元に伸びている木の根を踏まないように、コスモは器用に歩みを進める。

 

「木の根って事は、隠神島(いぬがみじま)にいたっていう化神かな? スッゴい伸びるんだね〜、ちょっと面白いかも★」

 

 学園中に張り巡らされている木の根に視線を向けながら、コスモはアハハと可愛らしく笑う。

 そんな彼女の真上を、一つの巨影が通り過ぎていった。

 

「うわぁ……アレってさっき合体ロボット召喚してたヤツの化神だよね。大きいんだ〜★」

 

 化神は良くも悪くも不完全な存在。

 不完全さ故に物質をすり抜けられるなら、その巨体も今は最大限に活かせる。

 その思惑を察したコスモは関心したように「へぇ〜」と口にするのだった。

 

「みんなよく考えるんだね〜★ コスモちょっと関心しちゃったかも」

 

 しかしそれはそれとして。

 

「合体ロボ男かぁ……お姉ちゃんの男趣味、コスモにはちょっと分かんないかも★」

 

 先程遠巻きに見た小太郎の姿を思い出しながら、コスモは苦笑してしまう。

 校舎内に仕掛けられた爆弾は合計11個。

 予め御筆から詳細を聞かされていたコスモは、反評議会連合を叩くためにも爆弾解除に手を貸そうと考えていた。

 

「うーん、この感じだとコスモの出番はないかな〜?」

 

 身体の大きな化神に、広範囲での探知が可能な化神。

 これだけ役者が揃っていれば、敢えて自分が手を貸す必要はないだろう。

 そう考えながら、コスモは適当に校内を散歩し続ける。

 気づけば木の根がまだ到達していない、物置の近く来ていた。

 

「あっ! あの十字架、こんなところに置かれてたんだ……」

 

 ふとコスモの目についたのは、元漫研会長が磔にされていた十字架。

 昨日コスモのデッキに入っている化神が察知していた、爆弾を仕込んだ造形物の一つである。

 

「文化祭だからって、なんで誰も変に思わなかったんだろ〜? もっと疑ってかからないと死んじゃうよ★」

 

 物置の近くに無造作に置かれた十字架を見ながら、コスモは嘲るようにそう吐き捨てる。

 その時であった。コスモのスマートフォンに電話がかかってきたのだ。

 画面には『御筆センセェ』と表示されている。

 

「もしもーし、早乙女コスモです★」

『早乙女くん、例の支援者の居場所が特定できた。地図は既に送ってある。至急向かって始末するように』

「はーい♪ コスモにお任せ〜★」

 

 それだけ返事をすると、御筆の方から通話は切られた。

 コスモは自身のスマートフォンを操作して、送られてきた地図データに目を通す。

 

「ふーん、ちょっと離れてるんだ」

 

 それは聖徳寺学園から少し離れた場所。

 今から行かなければ、きっと『財団』のお偉いさんから叱られてしまう。

 コスモは心底面倒臭そうに「あーあ」と言うと、渋々といった様子でスマートフォンを仕舞うのだった。

 

「もうちょっとお祭り楽しみたかったのにな〜、それに……」

 

 昨日観に行くと約束したソラのステージもある。

 せめてそれだけでも観てから……等という気持ちは、コスモの中には欠片も存在しなかった。

 

「……まぁいっか★ あんなヤツのステージとかどうでも良いし★」

 

 だがこのまま立ち去っては面白くない。

 何か置き土産でもしていこうか……コスモがそう考えた時であった。

 後方からゆっくりと、木の根が近づいてきていた。

 化神、ウィズの伸ばしている根である。

 

「……いいこと思いついちゃった★」

 

 伸びて来る木の根を見た途端、コスモは悪戯っ子のような笑みを口元に浮かべる。

 そしてコスモは自身の召喚器から、1枚のカードを取り出した。

 

「ねぇ、この爆弾解除しちゃって★ ……うん、気づかれても良いから……ちょっとビックリさせちゃえ★」

 

 十字架にカードを押し当てながら、コスモはその化神と軽い会話を交わす。

 そして木の根がすぐそこまで迫ってきた、次の瞬間。

 

「お願い——」

 

 コスモが名を呼ぶと、化神はその願いに呼応する。

 そしてカードの中に眠る化神は一瞬にして、爆弾のプログラムを書き換えてしまった。

 流石にこうなれば、木の根を通じて化神の存在は感知されてしまう。

 

「じゃあね〜、また4月に会おうね★」

 

 警戒したのかピタリと動きを止めている木の根に向かって、コスモは軽々しく別れの挨拶を口にする。

 化神の宿ったカードを召喚器に仕舞うと、コスモは何事もなかったかのように立ち去ってしまう。

 

 コスモがいた場所、爆弾が仕掛けられていた十字架の上。

 そこに黒い羽が一枚落ちて……すぐに消え去ってしまうのだった。

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