俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二百七十話:化神、駆ける!

 聖徳寺(しょうとくじ)学園、校舎屋上。

 そこで慌ただしく動いていたのは、今では評議会OBである(ワン)牙丸(きばまる)

 そして愛梨(あいり)のパートナー化神であるウィズと、ツルギに頼まれて手伝いに来た卯月である。

 

「また一個見つけたのね!」

「どこ?」

「ここなのね。なんか硬い鉄の扉と、グルグル巻きの何かが入っているのね」

 

 学園の間取り図を広げながら、ウィズとコミュニケーションを取る卯月。

 ウィズは身体から細い根を伸ばして、発見した爆弾の在処を指し示した。

 すると卯月は赤ペンを取り出して、即座にその場所へ丸をつける。

 

「これで7個か……予告されていた個数を余裕でオーバーしているね」

「でも今、化神のみんなが探し回ってくれてます」

「そうだね。今ほど彼らを認識できない事を悔やむ事はないだろう」

 

 卯月がつけた赤丸を見ながら、牙丸はどこか悔しげにそう口にする。

 自分達を助けてくれる存在が目の前にいる。しかし自分は彼ら化神を見る事もできなければ、触れる事もできない。

 その事実がどうしようもなく、牙丸にもどかしい気持ちを抱かせていた。

 

「それにしても、天川(てんかわ)の妹が化神と話せる人間だったとはね」

「なんでできるのか、アタシもよく分かってないです」

「キミにはパートナー化神はいないのかい?」

「いないですよ……ちょっと憧れはあるけど」

 

 牙丸と卯月がそんな会話をしていると、爆弾を解除してきた化神達が戻ってきた。

 

「ただいまブイ!」

「見つけた爆弾は、我々で無事に解除できた」

「ありがと。ブイドラ、シルドラ」

 

 卯月に褒められて、2体のチビ竜は嬉しそうに尻尾を揺らしてしまう。

 そうこうしていると、次はカーバンクルとエオストーレが戻ってきた。

 

「キュプ、戻ってきたっプイ」

「ただいま戻りました。やはり指定された場所に爆弾がありましたね」

「キュップイ。しかも全部誰かの召喚器と繋がっていたっプイ……もう繋がりも断ったけど」

 

 化神達が解除した爆弾には、卯月が赤ペンでバツ印をつけていく。

 ちなみにウィズは捜索の為に根を伸ばす事に集中しているので、見つけても爆弾を解除する程の余力がない。

 なのでこうして、見つけた場所に他の化神が急行して解除して行っているのである。

 

「さーて残るは……ブイ〜、なんか6個以上ある気がするブイ」

「案の定だな。恐らく反評議会連合も6人以上で襲撃に来ているだろう」

「ブ〜イ。嘘つきばっかブイ」

 

 間取り図につけらてた赤丸を見ながら、ブイドラとシルドラは敵に対する愚痴を溢してしまう。

 さらに追い討ちをかけるように、カーバンクルの証言が飛んできた。

 

「ツルギ達が戦っている場所。あそこの時点で6人は賊がいたっプイ」

「おやおや。数でどうにかできる相手とでも勘違いしたのでしょうか……その程度でどうにかできる相手ではないというのに」

「仕方ないっプイ。先を見通す力を持たず、己の器すら知る事もしなかった哀れな馬鹿者……それが彼奴らの正体っプイ」

「辛口の評価ですね。ですがワタクシも同感です」

 

 反評議会連合の者達に、カーバンクルとエオストーレは淡々と辛辣な評価を下していく。

 それはそうとして、化神達は残りの爆弾がありそうな場所を確認して、新たに見つかった爆弾を解除する為に校内を駆け巡る。

 

「キュプ〜、あと何個あるっプイ?」

 

 爆弾を解除して屋上に戻って。

 カーバンクルは再び卯月が広げている間取り図に目を通す。

 エオストーレも同じように間取り図を見ながら、ウィズに現在の調査完了範囲を質問した。

 

「ウィズ。あとはどの辺りが残っていますか?」

「もうすぐ物置が集まっている場所まで根が伸びるから、そこで最後なのね。あとはアーサーならデッカい身体使ってアチコチ探しているのね」

 

 アーサーは自身の巨体を活かして爆弾を探している。

 不完全な存在故に物質をすり抜けてしまう化神だが、アーサー程の巨体ともなれば広い面積を一度に調べる事ができる。

 そして機械という特性を持つ都合、アーサーの位相と爆弾の位相が重なってしまえば、まとめて起爆プログラムを無力化する事もできるのだ。

 

「キュップイ……あとはアーサー達が戻って来てくれれば」

 

 カーバンクルがそう言うと、屋上に2体の化神が帰還してきた。

 アーサーとシーカーである。

 

「ようお前ら! オレ様の帰還だぜ」

「オ待たせ致しました。発見した爆弾は無事解除完了です」

 

 シーカーは1個、アーサーは2個の爆弾を解除してきた事を報告。

 その爆弾があった場所を知らせると、卯月はすぐさま該当箇所に赤丸をつけるのだった。

 

「にしても、コレで10個か……ロックじゃねぇなー」

「ココからココまではワタシ達で隈なく調査済みです。もう爆弾は残ってオりません」

「なら残すは倉庫エリアだけっプイ」

 

 終わりが見えてきた、あともうひと踏ん張りだ。

 その事実は卯月を通して牙丸にも伝えられる。

 

「そうか……もう少しなんだね」

「残すは倉庫エリアだけ。これが終われば」

 

 ツルギ達が時間稼ぎをする理由も無くなる。

 爆弾という脅威さえ無ければ、難なく勝ちに行ける。

 

「なぁウィズ。もう倉庫しか残ってないなら、オイラ達が直接行くブイ」

「そうだな。貴様も疲れただろう、ゆっくり休むと良い」

「ヤーなのね! ここまで根を伸ばしたんだから、ウィズは最後までやり切るのね!」

 

 ブイドラとシルドラの言葉に、ウィズが妙な意地を出したその時であった。

 

——ゾワリ——

 

 異様な気配が木の根を伝ってウィズに伝わってくる。

 

「な、なんなのね……今の……」

 

 一瞬、だが確かに感じた気配。

 人間のそれではない、爆弾のプログラムでもない。

 これは間違いなく化神の気配。

 暗く光を滅するような、深い闇のような力。

 それでいて、何故かこの気配にウィズは覚えがあった。

 

「えっ……これって……」

 

 気配を感じ取ったのはウィズだけではない。

 カーバンクル、そしてエオストーレも感じ取っていた。

 

「今の……気配は……」

「キュプゥ……なにか、良くないものを感じるっプイ」

 

 厳しい表情を浮かべるエオストーレに対して、カーバンクルは簡単な所感を述べる。

 そしてウィズは気配の正体を探るように、木の根を伸ばして倉庫エリアを隈なく調べ上げた。

 だがその結果見つかったものは……

 

「解除……されてるのね。爆弾がもう、解除されているのね!」

 

 驚愕。ただそれだけの感情が籠った叫び。

 見つけた十字架の中にあった爆弾を、全集中で探ってみたウィズ。

 中身のプログラムを弄れなくとも、起爆プログラムそのものが書き換えられている事は理解できてしまった。

 人間の仕業ではない。誰が何時、何故解除したのか。

 その真意はウィズには分からない。

 

「ウィズ。他に爆弾はあったっプイ?」

「な、ないのね……今見つけた11個目が最後の筈なのね」

「キュップイ。それじゃあミッションコンプリートっプイ」

 

 気になる事はある。

 だが今優先すべきは、爆弾という危機が去ったという事実を伝える事だ。

 カーバンクルは卯月の元に駆け寄り、その知らせを告げる。

 

「仕掛けられた爆弾11個。全部解除完了っプイ!」

「じゃあ、もうお兄達が本気を出しても」

「問題ないっプイ。ボク達もすぐにデッキに戻るっプイ」

 

 卯月はすぐさま牙丸に爆弾の解除が完了した事を伝える。

 そして予定していた手筈通りに、牙丸は爆弾解除の知らせを評議会の皆に伝える為に、一度屋上を後にするのだった。

 

「ブイドラ。我らも」

「ガッテンブイ! (らん)のところに行くブイ!」

 

 そしてブイドラとシルドラも、ドームで待つパートナーの元へと急行する。

 アーサーとシーカーも同様に、すぐさまパートナーのデッキへと戻りに行った。

 だがそんな中、ウィズは伸ばした木の根を消しながら、酷く動揺していた。

 

「なんなのね……あの気配……あれじゃあ、どう考えても……」

「ウィズ、考えるのは後回しっプイ。今は待っているパートナーのところに戻るべきっプイ」

「そうですよ。それに恐らく……あの化神はワタクシが対峙すべき相手と思われます」

「キュプ。だからウィズは、まずパートナーの心配をしてあげて欲しいっプイ」

 

 カーバンクルに諭され、ウィズは渋々自分を言い聞かせたように「分かったのね」と答えるのだった。

 そして伸ばした木の根を回収し終えて、ウィズはいつも通りに翼を羽ばたかせ始める。

 

「ふぅ、やっと身体が軽くなったのね」

「お疲れさま、ウィズ」

「貴女もお疲れ様なのね。ツルギの妹さんなのね?」

「うん。そうだけど」

 

 爆弾の捜索に集中していたので、ウィズは卯月の事をキチンと見る事ができていなかった。

 だがそれが終わった今、ウィズは改めて卯月の事をジッと見つめる。

 

「……貴女は普通なのね。変な兄妹なのね」

 

 卯月の魂には一切の傷が入っていない事を確認するや、ウィズは一方的にそう言い残して飛び立って行くのだった。

 言葉の意図が分からなかった卯月は、ただ首を傾げる事しかできない。

 

「なんのこと……いや、どうせお兄が変な事でもしたんでしょ」

 

 すぐさま容疑がツルギに向かい、卯月の中で結論付けられてしまうのだった。

 

「エオストーレ、ボク達も行くっプイ」

「そうですね」

「それじゃあ卯月。行って来ますっプイ」

 

 卯月に軽く会釈をすると、カーバンクルは屋上から飛び降りて、ツルギの元へと急行した。

 エオストーレも同じく翼を羽ばたかせて、ソラの元へと向かう。

 

 だがツルギの元へ向かう途中、カーバンクルは先程感じ取った異様な気配について考えていた。

 

(あの妙な気配……あまりにも似過ぎていたっプイ……)

 

 そっくりであった。

 カーバンクルそしてウィズもよく知る化神のそれに、あまりにも似ていたのだ。

 

(なんだか、嫌な予感がするっプイ)

 

 そうなってしまう程に、その化神の気配は似ていたのだ。

 

 化神……エオストーレに。

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