俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜 作:鴨山兄助
「オイ、さっさと奪ったカード出せ。約束だろ」
「グヌヌ……誰がテメェの言うことなんか」
「嫌ならもう一戦するか? 俺は何度でも相手してやるぞ」
「……わかった」
懐から数枚のカードを取り出して、差し出してくるギャング。
本当に聞き分けのいい悪党でよかったよ。
……聞き分け良すぎる気もするけど。
「貴方もよ。奪ったカード返しなさい」
「敗者は勝者に絶対服従。これを守るのはファイターとしての誇りだ」
アイが戦っていたギャングも、素直にカードを差し出した。
いや本当に素直だな。ファイターとしての誇りを持つのは結構だけど、悪党としての誇りとかは無いのかな?
「畜生、テメェら覚えてろよ!」
「ファイトの相手ならいつでもしてやるぞ」
一応負けてプライドに傷はついたのか、ギャング二人はやたら悔しそうにその場を去っていった。
いや本当にサモン脳で良かったよ!
普通の喧嘩になったら勝ち目ないもん!
それはともかく。
「はい、取り返したぞ。どれが誰のカードだ?」
「こっちもあるわよ」
さっきまで泣いていた子供達に笑顔が戻る。
俺とアイは手分けして、子供達にカードを返してあげた。
「ツルギ兄ちゃん、ありがとう!」
「お姉ちゃんもありがとう!」
「カードを盗られたらいつでも言え。悪い奴は俺が倒してやるから」
子供の笑顔を守るのは大人の使命です。
……俺今中学三年生だけど。
俺が子供達の相手をしていると、一人の女の子がアイの顔をじっと見ていた。
どうしたんだ?
「あら、どうかしたの?」
「おねえちゃん……どこかで見たことある気がする」
「え!? き、気のせいじゃないかしら?」
「そうなのかな?」
「きっとそうよ」
アイさん。なんか一瞬スゲー動揺してませんでしたか?
というかまるで、滅茶苦茶顔バレしたくないような……そんな感じがする。
日差し強くもないのにサングラスしてるし。
いや、目が弱いのか?
まぁいいや。
とりあえず子供達のカードを取り返せたし、一件落着。
カードを受け取った子供達を解散させると、彼らはカードショップの中へと入っていった。
「お疲れ様。貴方、私より早く終わらせてたわね」
「まぁ相手が弱かったからな。それより悪かったな、変な事に巻き込んじまって」
「いいのよ。誰かの夢を守るのは得意なの」
「面白いこと言うな」
「フフ、貴方も面白そうなファイターだったわよ」
強そうなファイターにそう言ってもらえると、嬉しくなる。
これはショップ大会で当たるのが楽しみだ。
……ん? ショップ大会?
「あっ! 今何時だ!?」
「今は12時30分ね……あっ」
「大会受付! 12時30分までだ!」
「急ぐわよ」
「がってんでい!」
俺とアイは大急ぎでカードショップの中に入る。
しかし、遅かった。
「それではこれにて、ショップ大会の参加受付を締め切らせていただきます」
入店と同時に締め切られた受付。
無情、あまりにも無情すぎる。
「お、遅かったか……」
「ふぅ、これは仕方ないわね」
「畜生、あのギャングめ〜」
次に会ったら、滅茶苦茶トラウマ植えつけてやる!
それはそれとして。
「アイ、マジですまん。俺が巻き込んだせいで」
「謝る必要はないわ。私が自分で選んだ結果だもの」
「でも遠征さんだろ?」
「問題ないわ。遠征の楽しみは大会だけじゃないのよ」
そう言うとアイは「フフ」と小さく笑った。
「フリーファイトも遠征の醍醐味よ」
「まぁ、そうだな」
「貴方、名前はツルギだったわよね?」
「そうだけど」
「中々強そうなファイターじゃない。憂さ晴らしも兼ねて、私とファイトしてくれないかしら?」
これは思わぬお誘い。
大会では是非アイと戦ってみたいと思っていた俺には、嬉しい展開だった。
「それ、むしろ俺の方から誘いたかったやつだよ」
「あら、殿方を立てたほうが良かったかしら?」
「そんな大層なことはしなくていいよ。お互いファイターなんだ。デッキで語り合おうぜ」
「フフフ。素敵な考え方じゃない。気に入ったわ」
「じゃあ、ファイトスペースに行こうぜ。久々に骨のあるファイターと戦えそうだ」
「あら、私は簡単に攻略される女じゃないわよ」
「なお楽しみだ」
俺はアイを連れてフリーファイトスペースへと移動した。
余分な言葉は必要ない。
フリーファイトスペースで、俺とアイは10回程ファイトをした。
帽子とサングラスで表情は上手く見えなかったけど、ファイト中のアイは本当に楽しそうで、俺まで楽しさが込み上げてくる思いだった。
そして思った通りアイは強かった。
俺でさえ何回か苦戦させられる程の、腕前を持っている。
ファイトが終わった後に感想戦をしたけど……カードの知識も、この世界の人間にしては中々のものだった。
俺もついつい、色々と〈
「ツルギ、貴方カードに詳しいのね」
「それくらいしか取り柄の無い人間なんだ」
「面白い人ね」
それから夕方になるまで、俺はアイとカードについて語り明かした。
最終的にはアイの方が時間切れとなってしまったが、意気投合した俺達は、お互いのSNSのIDを交換する事になった。
うん、こうしてサモン仲間が増える事はとても嬉しいことです。
「ん、アイリ? こっちが本名?」
「あっ、えっと、そうね。そんな感じよ」
「じゃあアイリって呼んだ方がいいのかな?」
「……ややこしくなるから、アイでお願い」
なんかよく分からないけど、とりあえず了解しておいた。
アイはまたこちらに来るとのことだ。
俺達は再びファイトをする約束をして、その日は別れる事にした。
◆
で、帰宅する俺。
「ただいまー」
「お兄、おかえり」
リビングでお菓子を食べながら、卯月が出迎えてくれる。
「ショップ大会はどうだったの?」
「色々ありすぎて、今日は出られなかった。でも新しいサモン仲間ができたぞ!」
「へぇー」
露骨に興味なさげだな、我が妹よ。
ちなみに卯月もたまに大会に出て、成績を稼いでいる。
まぁデッキがデッキだから、対戦相手泣かせまくりだけど。
「ところでさお兄。その新しいサモン仲間って男? 女?」
「女の子だけど、それがどうした?」
「……お兄さぁ、ソラさんの事といい、サモンでハーレムでも築きたいの?」
「なんでそうなるんだよ」
そんな下心断じてありません!
……本当にないよ。
「お願いだから、刺されるのだけは勘弁してね」
「……善処します」
多分大丈夫だろ。多分。
そんな会話をしながら、卯月はテレビのチャンネルを適当に変える。
最終的に行き着いたのはグルメロケの番組だった。
芸人やアイドルが、色んな料理を食べてリアクションをとっている。
「そういえば卯月。お前の推しアイドル達はどうだった?」
「全員もれなくサモン脳。ちょっと推し続けるか迷ってる」
「諦めて受け入れた方が早いと思うぞ」
どうあがいても、この世界でサモン脳からは逃れられないのだ。
そんな事を言っていると、テレビに新しい人達が登場した。
『続いてのロケをしてくれるのは、今人気急上昇中のアイドルグループ! 『
『『『こんにちはー!』』』
テレビに映っているのは、三人組のアイドルグループ。
正直俺はアイドルの事なんて全く分からないし、八割同じ顔に見える。
だけど今日は違った。テレビに映った女の子の一人が、妙に気になったのだ。
『それでは簡単な自己紹介をお願いします』
『はじめまして! 『Fairys』の日高ミオでーす!』
『同じく『Fairys』の佐倉夢子です。よろしくお願いします』
三人の内二人が自己紹介する。
だが気になってるのはこの二人じゃない。
最後の一人が前に出て、自己紹介をする。
『はじめまして。『Fairys』のセンターをしている、
ユニットのセンターを名乗った女の子。
栗色のツインテールに、出るとこ出たスタイル。
そして何より、滅茶苦茶聞き覚えのある声!
「……えっ?」
いや待て、気のせいかもしれない。
ただのそっくりさんかもしれない。
俺はじっくりとテレビを見る。
『今日は買い物ロケだけど、どうする? 変装しちゃう?』
『もうミオちゃん。ロケで変装したら怒られちゃうよ~』
『あら、私サングラスなら持って来てるわよ』
『愛梨ちゃん!?』
天然ボケ(?)にスタジオ大爆笑。
だが重要なのはそこじゃない。
あのサングラス……滅茶苦茶見覚えがあるんだけど。
『ちなみにグラサンつけるとどんな感じなの?』
『こんな感じよ』
そしてサングラスをつけた姿が披露される。
……え? マジで?
「……そういえば」
俺は今日交換したSNSのIDを確認する。
アイのアカウント名は、アイリ。
愛梨→アイリ→アイ……あぁ、なるほどね。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」
「お兄、うるさい」
いやいや我が妹よ、驚かない方が無理あるぞ!
そりゃ子供の中に見覚えがある子がいるよ!
そりゃサングラスと帽子で顔隠すよ!
「この展開、まさか過ぎるだろ……」
出会ったあの子は、アイドルでした。