俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二十九話:そして二人は出会いました

 さて、速水の誘いで俺達はJMSカップに出場する事になったのだけど。

 大会本番までまだ時間はある。チーム名も決めなきゃだし。

 

 で、ただ頭を悩ますだけじゃ時間がもったいない。

 というわけで、今日は土曜日。俺達三人は特訓も兼ねたファイトをするために、近所の大型カードショップに集まる事にした。

 

 ……なのだが。

 

「ちと早く来ちゃったかな?」

 

 現在時間は午後12時30分。

 集合時間まであと30分はある。

 しかも速水は『急用ができた、少し遅れる』とのメッセージつきだ。

 アイツも忙しいやつだな。

 

「ソラが来るまでまだ時間ありそうだし。どうしようかな?」

 

 売ってるカードでも見るか?

 でも俺高額カードを買う気はないけど。だって大体持ってるし。

 そもそも使ってるデッキが一応貧乏デッキですし。

 ストレージコーナーは以前見たけど、微妙なんだよな。

 だってこの世界のパック封入率の都合上、ストレージには弱いバニラカードがほとんどなんだよ。

 かといってサプライは召喚器と保存用のデッキケースがあれば、十分なんだよな。

 

 スリーブは買わない。何故かって?

 この世界のカード、滅茶苦茶頑丈なんだよ。ちょっとやそっとじゃ目立つ傷をつけられない。

 完全に謎素材で出来ている。改めてアニメ世界だと実感するわ。

 

「誰か捕まえてフリーファイトでもするかね~」

 

 それが無難な気がしてきた。

 でも最近フリーだと逃げられる事あるんだよな。

 ちと暴れ過ぎたかね?

 

「速水に言われた通り、無情なる殺戮兵器と認識されてるのかもなぁ」

 

 いかん、ちょっと涙が出てきそうだ。

 でもどうせ暇なんだ、誰かいい感じのファイターを捕まえよう。

 

 そんな事を考えながらショップの仲を彷徨っていると、見覚えのある女の子を発見した。

 帽子にサングラス。そして栗色の長い髪。

 うん、絶対に見間違えない。俺に過去二番目のインパクトを与えた女の子だもん。

 

 でも今は都合がいい。

 俺はワクワクを胸に抱きながら、アイに声をかけた。

 

「よっ。今日も遠征か?」

「あらツルギ。会えてよかったわ」

「今日はショップ大会はやってないけど、買い物目当てか?」

「違うわ。強いて言うなら、貴方目当てかしら」

「俺目当て?」

 

 なんて奇特な事を言うんだ。

 こんなサモン以外取り柄のない一般人を目当てに遠征してくるとは。

 変わり者すぎるだろ。

 

「なにか失礼な事を考えてないかしら?」

「気のせいじゃないかな?」

 

 ソラといいアイといい、なんでこう妙な所で勘がいいんだ。

 女の勘ってやつか?

 

「ふぅ、まぁいいわ。今日のお目当てには出会えた事だし」

「俺なんかを目当てにするのも変な話だな」

「そんな事ないわ。貴方強いじゃない。それだけで私にはお目当てにする価値があるわ」

「そりゃ光栄だね。でもメッセージ送ってくれれば、もっと楽に会えるのに」

「い、色々忙しいのよ」

 

 髪先をくるくると弄りながら、そう言うアイ。

 まぁそうでしょうね。だって君アイドルだもんね。

 ただ一つ迷うのは、それをここで追求してもいいのかどうかだ。

 本人が打ち明けないうちは、触れない方がいいのかな?

 色眼鏡とか嫌がる可能性もあるし。

 

「それにしても行き当たりばったりじゃないか? もし俺が他のショップに行ってたらどうするんだよ」

「その時は腹いせのフリーファイトをしてから帰ったわ」

「わぁ物騒」

「貴方も似たようなものじゃないの? ギャングを瞬殺してたじゃない」

「返す言葉もございません」

 

 実際暴れすぎて、人が離れてます。

 でも、だからこそ今アイに出会えたのは幸運だった。

 

「ねぇ、ツルギはこの後予定はあるの?」

「一応仲間と一緒にサモンの特訓。だけど俺は早く来過ぎたんだ」

「じゃあ暇なのね」

 

 そう言うとアイはバックから召喚器を取り出した。

 うんうん、そう来なくっちゃな。

 

「フリーファイトスペースに行くか」

「えぇ。今日も楽しませてちょうだい」

「安心しろ。超絶楽しませてやる」

 

 これは派手派手な暇つぶしができそうだ。

 俺はアイを連れてフリーファイトスペースへと向かった。

 

 で、俺とアイはサモンファイトをしたわけだけど。

 アイの実力が高いのもあって、それはそれは白熱した。

 だけど、俺もそう簡単には負けない!

 

 現在の状況。

 ツルギ:ライフ2 手札0枚

 アイ:ライフ1 手札0枚

 場:お互いになし。

 

 気づいたらなんかギャラリーもできていた。

 フリーファイトでギャラリー出来ると、テンション上がるよね。

 

「ツルギ、貴方はやっぱり強いわね」

「おうよ。それだけが取り柄だからな」

「ライフはお互いに風前の灯火。手札もお互い0枚」

「だけどこの状況で俺がモンスターを引ければ、滅茶苦茶面白い展開だよな?」

「フフ。そうね、そんな奇跡が起きれば面白いわね」

「じゃあ起こしてやるよ、奇跡ってやつを! 俺のターン!」

 

 ギャラリーが固唾を飲んで見守る。

 俺が指先に力を込めて、最後のドローをした。

 

「……最高のタイミングだぜ、相棒!」

「まさか、本当にモンスターを引いたの!?」

「あぁそうさ! メインフェイズ!」

 

 こういう奇跡が起きるから、カードゲームは楽しいんだ。

 俺は手札に来た相棒を仮装モニターに投げ込む。

 

「奇跡を起こすは紅き宝玉。一緒に戦おうぜ、俺の相棒! 〈【紅玉獣】カーバンクル〉を召喚!」

 

 俺の場に出現した巨大ルビーが砕け散り、中から可愛らしい緑色のウサギが召喚される。

 

『キュ〜ップイ!』

 

〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1

 

 最弱のSRカード。

 だが今この場面においては、最高のフィニッシャーだ。

 

「ヒット1……そう、私の負けね」

「あぁ、ジャストキルだ! アタックフェイズ! 行け〈カーバンクル〉!」

『キューップイ!』

 

 気合い入れたカーバンクルは勢いよく駆け出し、アイへ体当たりをした。

 

 アイ:ライフ1→0

 

 ツルギ:WIN

 

 ファイトが決着し、立体映像が消え去っていく。

 ド派手なファイトをしたからか、ギャラリーから拍手喝采が鳴り響いた。

 

「ありがとうな。いいファイトだった」

「私こそ、貴方で満たされる素敵なひと時だったわ」

「なんか言い方が卑猥な気がするんですが」

「フフ、ちょっとしたお茶目よ」

 

 お願いですから男子中学生に強い刺激は与えないでください。

 無垢なボーイなのです。

 

 それはともかく。

 ファイトを終えた俺とアイは、感想戦に入った。

 やっぱり良いファイトの後はしたくなるよね。

 

「そういえばアイ。汎用魔法カード使うようにしたんだな」

「えぇ、ツルギに教えられたもの」

「テクニックに関しては任せてくれ。自信があるんだ」

「フフ。それは身をもって理解させられたわ」

 

 だから言い方がなんか卑猥なんだよ。

 声が可愛い分、余計にエッチな感じがする。

 

「そういえばツルギは色々な戦い方をしてるわね」

「そうだな。それが俺と〈幻想獣〉の強みなんだ」

「良いわね。すごく楽しそうで」

 

 どこか消え入りそうな声でそう言うアイ。

 

「ねぇツルギ。サモンは楽しいかしら?」

「そりゃ勿論。じゃなきゃ強くなんてなれない」

「……もしも、もしもよ。サモンをするのが辛くなったら、その時はどうすれば良いと思うかしら」

 

 なんだか妙な事を聞いてくるな。

 

「サモンが辛いねぇ。想像したことも無いな」

「そうよね……ごめんなさいね、変な事を聞いて」

「……まぁ強いて言うなら。俺の場合はどこまで行っても結局サモンに戻ってしまうんだよ。だから辛さを感じたら、自分のデッキと向き合う」

「自分のデッキと?」

「サモンが辛くなる時ってのは、大体がデッキとの対話ができてない時だと思うんだ。だからじっくり自分の魂のデッキと向き合う。そうすれば何か突破口が見つかるかもだろ」

「そうよね……自分のデッキと向き合わないといけないわね」

「アイはその点大丈夫だろ。だってさっきのファイトも滅茶苦茶楽しそうだったじゃん。自分のデッキと向き合えてるファイターじゃないと、あそこまで戦う事はできないだろ」

 

 そうだ。だから妙な質問なんだ。

 アイは十分デッキと心を重ねられている。

 だから辛いなんて事は起きないと思うんだけどな。

 

「そうね……ありがとうツルギ。なんだか少し楽になったわ」

「ならよかった」

 

 サモンは楽しむのが一番です。

 勿論自分のお気に入りデッキでだ。

 

 しかしそれにしても……

 

「ソラはまだ来ないのかな?」

「ツルギの仲間かしら」

「あぁ。もうすぐ来るはずなんだけど」

「ツルギくん、後ろにいますよ」

 

 俺はもの凄い勢いで振り向く。

 そこには口元は笑っているけど、何故か目が笑ってないソラがいた。

 

「ソ、ソラ。いつの間に」

「ツルギくんがファイトしていた辺りからですよ」

「声かけてくれれば良かったのに」

「だってツルギくん、そちらの子と楽しそうにしてたじゃないですか」

 

 何故だろうか、ソラの言葉に物凄い圧を感じる。

 

「ツルギくん。ファイトしたんですか? 私以外の女の子と」

「うん、したけど……なんか怒ってる?」

「いいえ、怒ってないですよ。ツルギくんがまた女の子と一緒にいるな~なんて思ってないですよ」

 

 意識して女の子と一緒にいるわけじゃないやい!

 たまたまだからね!

 だからソラさん、ハイライトをオンにしてください怖いです。

 

「ねぇツルギ。この子は貴方の彼女かしら」

「か、彼女ですか!?」

「いや違うぞ」

「ゴフッ」

 

 何故かソラが大ダメージを受けた。

 どうしたんだこの子。

 

「ツルギ……貴方はもう少し女心を学ぶべきよ」

「なんでさ」

 

 マジでわからん。

 俺がやや混乱していると、アイはソラに話しかけた。

 

「ねぇ、貴女はツルギの仲間かしら」

「はい、そうです! ツルギくんの一番弟子です!」

「えっ、そうなの?」

 

 俺に弟子がいたなんて初耳なんだけど。

 ちょっとした教え子とは思ってたけど。

 

 妙に堂々と言うソラを、アイはじっと見つめる。

 

「……貴女、重い女でしょ」

「おもっ!?」

 

 いやそれは無いだろアイさんよ。

 だってソラは小柄&瘦せ型ですぜ。

 むしろ軽い方だろ。

 

「あんまり重いと、逃げられるわよ」

「し、失礼ですね。そういう貴女はツルギとどういう関係なんですか!」

「私と彼は、ファイトでお互いを追い詰め合った仲よ」

 

 アイの言葉を聞いて何故かショックを受けるソラ。

 いや何でだよ、今の言葉にショックを受ける要素あったか?

 

「私、まだツルギくんを追い詰めてないのに……」

「いやそれは時間の問題かと思うんだけど」

「でも! 私はツルギ君からデッキを受け取って、サモンを直接教えて貰ってますから!」

 

 だからソラさんや、なんでそんなに対抗意識を燃やしてるんだ。

 というかそれを言ったところでアイにダメージを与える事なんて……

 

「な、なんですって……」

 

 できてるー!?

 いや何でだよ! なんでそれでダメージ受けてるんだよ!

 サモン脳か、サモン脳が全て悪いのか!?

 

「貴女、名前は?」

「赤翼ソラです」

「私は……アイよ」

 

 俺を挟んでバチバチと火花を散らす女子二人。

 あの、俺を挟まないでもらえますか?

 

「ツルギ、ちょっとこの子を借りてもいいかしら」

「えっ?」

「ツルギくん、速水くんが来たら適当に言っておいてください」

「えっ?」

 

 なに、なんなのこの流れ。

 いや予想つくけどね、この後二人が何するのか察せるけどね!

 

「ちょっとアイさんと」

「このソラって子と」

「ファイトしてきます」

「ファイトしてくるわ」

 

 有無を言わさぬ圧を放ちながら、そう言う二人。

 はい、俺には止める勇気なんてありません。

 

「い、いってらー……」

 

 アイとソラは怖い顔をしながら、フリーファイトに赴いた。

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