俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第四十四話:どうする!? 始まった決勝戦!

 ツルギが倉庫の中で頭を悩ませている頃。

 控室では速水とソラが焦りを覚えていた。

 

「天川は何をしているんだ! もうすぐ決勝戦が始まってしまうぞ!」

「ツルギくん、どうしたんでしょう?」

 

 念のため速水が男子トイレを確認しに行ったが、ツルギの姿はない。

 ソラも近くを探してみたが同様だ。

 二人の中で何かよくない予感が生まれる。

 

「もしかして……あのプロデューサーの人になにかされたんじゃ」

「……可能性はゼロ、とは言えないな」

 

 速水の脳裏には黒岩の悪い噂が浮かび上がる。

 噂通りの男だとすれば、ツルギに何かをしても不思議ではない。

 そんな不安と焦りの中、控室に大会スタッフがやって来た。

 

「もうすぐ決勝戦が始まります。チーム:ゼラニウムの皆さんはベンチ入りしてください」

 

 速水は時計を確認する。

 確かにもうすぐ試合開始時間だ。

 速水は数秒悩んだ末に、一つの覚悟を決める。

 

「赤翼、ベンチに行くぞ」

「えっ、でもツルギくんが」

「アイツは必ず来る。天川ツルギは、ここで逃げ出す男ではない」

「それは、そうですけど」

「俺と赤翼で先鋒と次鋒を担う。天川を大将戦に据えれば、時間は稼げる」

 

 それに……と速水が続ける。

 

「天川とアイを必ず戦わせる。俺達はその使命を全うした上で、この大会を優勝するんだ」

「速水くん……はう、そうですね」

「俺が先鋒で出る。試合が終わればすぐに天川を探しに行く。だから赤翼、その後は任せるぞ」

「はい! がんばります!」

 

 その場しのぎの計画。だが無いよりはましだ。

 速水は姿を消したツルギの事を信じながら、ソラと共にベンチへと向かった。

 

 

 

 

 ドーム内のステージはライトアップされている。

 観客席は満席。歓声も鳴り響いている。

 片方のベンチにはチーム:ゼラニウムの二人が。

 もう片方のベンチにはチーム:Fairysの三人と黒岩が座っていた。

 

 Fairysの三人は、チーム:ゼラニウムの異変にすぐに気が付いた。

 

「ねぇ、ミオちゃん」

「うん。ツルギって子がいないよね。なんで?」

 

 ミオと夢子は混乱していた。

 愛梨をあれほどまでに気にかけてくれていた少年が、ここにきて姿を見せていない。

 逃げたとは到底思えない。あの少年には逃げる選択をするほどの弱さは無かった。

 ではなぜ居ないのか。

 考えれば考えるほど、ミオと夢子は分からなくなっていった。

 

 だが一方で、愛梨は黒岩の顔を無意識に見やった。

 そこには下種な笑みを浮かべた黒岩の姿があった。

 

「プロデューサー。ツルギに何かしたの?」

 

 愛梨は圧を込めた声で、黒岩を問いただす。

 

「ん~。少し大人の話をしただけさ。交渉は決裂したけどね」

「ちゃんと答えなさい」

「彼なら今頃、どこかで道に迷ってるのではないかな? まぁ、試合には間に合わないだろうね」

 

 それは最早自白であった。

 ミオと夢子は顔を青ざめさせ、愛梨は静かに怒りを覚える。

 

「プロデューサー、なんで、そんなことを」

「全ては君達Fairysが羽ばたくためだよ。この大会で優勝できれば、箔も付く」

「だからって、決勝戦の相手に危害を加えるなんて」

「証拠はない。金で買った協力者もいる。仮に訴えられたとしても、私とたかが中学生。世間が信用するのはいったいどちらだろうなぁ?」

 

 純然たる悪意とどす黒さ。

 それを目の当たりにしたミオと夢子は言葉を失った。

 

「どうしようミオちゃん」

「探しに行こう! 決勝戦なんてやってる場合じゃないよ!」

「それを俺が許すとでも?」

 

 ドスの利いた声で、二人を制する黒岩。

 

「お前たちはこの決勝戦に出て、勝つ。それがシナリオだ」

「でもプロデューサー!」

「日高。そんなに引退したいか?」

「ッ! アタシは、アイドル辞めてでも」

「よしなさいミオ」

 

 ミオの言葉を愛梨が制する。

 

「アイっち!」

「貴女が無茶をする必要は無いわ。夢子もよ」

「愛梨ちゃん……」

「流石宮田だな。聞き分けが良い」

「勝てば良いんでしょ。いつもみたいに」

「そうだ」

「なら私が先鋒で出るわ。早く終わらせ」

「「ダメ!」」

 

 先鋒で出ようとした愛梨を、ミオと夢子が制止する。

 

「アイっちは大将戦で出て!」

「そうだよ! だってセンターなんだよ!」

「……でも大将戦には誰も来ないわ」

「そんなことない」

「ミオ」

「絶対来る。だって、アイっちの友達でしょ。絶対来るよ」

 

 少し震えた声で、ミオは愛梨にそう告げる。

 

「ミオちゃん、愛梨ちゃん。先鋒は私が行くね」

「うん。アタシは次鋒で出る。だからアイっちは大将」

「……わかったわ。好きにしなさい。プロデューサーもいいでしょ」

「そうだな。勝利という結果を得られれば十分だ」

 

 黒岩が許可を出した。ミオと夢子は静かに胸をなでおろす。

 これで時間稼ぎの口実はできた。

 

「じゃあユメユメ。先鋒お願いね」

「うん。任せて」

 

 夢子は先鋒としてファイトステージに上がる。

 ミオと愛梨は、その背中を静かに見送っていた。

 

 だが愛梨の中には、形容しがたい空虚さと、ドロドロの黒さがかき混ざっていた。

 仲間のお膳立ては何となく察している愛梨。

 感謝の気持ちはあるが、それ以上に恐怖が芽生えていた。

 

「……ツルギ」

 

 今の自分は、本当にツルギと戦うに値するファイターなのか。

 愛梨は答えが分からぬまま、ベンチで俯いていた。

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