俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第二章、エピローグ


第五十一話:戦いが終わる。仲間が増える。

 外ではセミが鳴き声をあげている。

 俺達チーム:ゼラニウムがJMSカップを制覇してから、大体一ヶ月が経った。

 有名な公式大会を制したという事もあって、学校では色々と持て囃される日々が続いた。

 まぁそれもやっと最近落ち着いてきたんだけど。

 

 デカい大会で成績を残したという事もあって、受験での加点ポイントは十分に稼げたと思う。

 だって速水が「これからは一般科目の勉強に専念できるな」とか言ってたし。

 きっと俺とソラはこれから、一般科目の勉強をさせられるんだろう。それだけが憂鬱だ。

 

 そういえば一つ、かなり気になる事がある。

 アイを散々苦しめた、あの黒岩ってプロデューサーだ。

 あれはJMSカップが終わった翌日ことだ。

 黒岩は数々の汚職が明るみに出て、警察に捕まった。

 所属事務所は随分と対応に追われていらしい。

 いや、それはともかく。

 このタイミングで黒岩が逮捕されるのは……なんだか話が出来すぎている気がする。

 だって俺、監禁された事を結局訴えてないもん。

 そもそも、たかが中学生にどうこうできる男じゃない。

 

「いったい誰がやったんだろうな……」

 

 まぁ答えは神のみぞ知るなんだけどな。

 そもそも黒岩の事だ、あっちこっちから恨みでも買ってたんだろう。

 なんか廃人みたいになってるらしいけど、きっと天罰だ。

 

 さて、そうなるともう一つ心配事が出てくる。

 そう、アイの事だ。

 

「全然連絡取れないな」

 

 黒岩が逮捕された影響も大きいのだろう。

 アイにメッセージを送ってみるけど、既読はつかない。

 相当バタバタしてるんだろうな。

 いや、それ以前に無事で済んでいるのかが心配だ。

 

「……やっぱり、信じて待つしかないか」

「ツルギくん、何見てるんですか?」

 

 俺の前にソラがひょこっと顔を出す。

 今日は土曜日。

 俺とソラは受験勉強の息抜きに、カードショップに来ていた。

 

「あぁ、アイの事だよ」

「アイちゃん、まだ連絡つかないんですか?」

 

 俺は無言で頷く。

 連絡がつかないのはソラも同じだった。

 二人でアイの心配をする。

 

「大丈夫、ですよね」

「そう思いたいんだけどな」

 

 ここ一か月はTVでも見かけない。

 SNSの更新も止まっている。

 いったい今頃何してるんだか。

 

「ま、信じるしかないか」

「そうですね。アイちゃんならきっと……」

 

 きっと壁なんか乗り越えて帰ってくる。

 確かな友情を抱いているからこそ、俺とソラは信じていられた。

 

「さーて! せっかく受験勉強から逃げてきたんだ。思いっきりファイトしよーぜ」

「はい! 今日は勝ちますよ!」

「望むところだ」

 

 この世界の日常風景。フリーファイトコーナーに足を進めようとする俺達。

 その時だった。

 背後から、一人の少女が声をかけてきた。

 

「あら、それなら私も混ぜてくれないかしら?」

 

 聞き慣れた声。

 待ち望んだ声。

 俺とソラは、勢いよく振り返る。

 そこに居たのは、栗色の髪をツインテールにまとめた女の子。

 

「久しぶりね。ツルギ、ソラ」

「アイちゃん!」

「アイ!」

 

 変装も何もしていない、アイの姿がそこにはあった。

 

「ごめんなさいね。色々忙しくて連絡もできなかったのよ」

「いいんです。それよりアイちゃんは大丈夫なんですか?」

「えぇ大丈夫よ。全部終わらせてきたわ」

 

 笑顔でそう答えるアイ。きっと納得いく結果に終わったんだろう。

 いやそれよりもだ。

 

「なぁアイ。変装しなくていいのか? この店結構人がいるぞ」

「あら。それなら何も問題ないわ」

 

 だって……と、アイは悪戯な笑みを浮かべて続ける。

 

「私、アイドルは廃業したのよ」

「……え?」

「廃業……えっ、引退したんですか!?」

「そうよ。アイドル続けながらじゃ、サモンするにも息苦しくて」

 

 困っちゃうわね、と気楽にアイは言ってくる。

 えっ、本当に引退したんですか!?

 

「アイ、本当アイドル辞めたのか?」

「本当に辞めたわ。事務所に辞表叩きつけてきたもの」

「でもアイドルって急に辞められないって聞いたことがあるんですけど」

「あぁ違約金の話ね。私結構稼いでいたから、一括で払ってきたわ」

 

 わぁいお金持ちだー。支払い方も男気がすごぉい。

 いや、どうりでTVで見かけない筈だよ。

 そもそも引退したんじゃ、映らないわな。

 

「あれ? じゃあミオと夢子はどうなったんだ?」

「あの二人なら、他の事務所に移籍したわ。私の実家のコネもフルに活用してね」

「そっか……二人とも元気にしてるんだな」

 

 それを聞けて、ひとまずは安心した。

 まぁそれはそれとしてだ。

 

「なんつーか、アイも思いっきりがスゴいな」

「ふふ。ツルギに感化されたのよ」

「えっ、俺のせい?」

「えぇ。貴方のせいで……私は新しい夢を見つけられた」

 

 そう言うとアイは、召喚器を手にした。

 中に入っているデッキは、言うまでもないだろう。

 

「私には、こっちの方が性に合うみたい」

「……そうか。それに気づけたんだな」

 

 サモン至上主義の世界。そこで生きるにはきっと、一番馴染む夢なんだろう。

 でもそれは、誰かに強制されたものではない。

 誰かに刷り込まれたものでもない。

 アイが自分で選び、進もうとした未来なんだ。

 

「よかったな、アイ」

「おかげさまで、とても清々しい気分よ」

 

 壁は乗り越えられた。アイの目に後悔は浮かんで無い。

 全てを終えて、アイはこれから自分のための物語を描いていくんだ。

 

「そうだわ。ツルギ達に一つお願いがあるのだけど」

「ん? お願い?」

「なんでしょうか?」

「私も、貴方達のチームに入れてくれないかしら」

 

 チーム:ゼラニウムへの加入希望。

 ちょっと予想外のお願いに、俺とソラは数秒呆気に取られる。

 だけど……断る理由なんて、何も無かった。

 

「ツルギくん」

「あぁ。速水もきっと許してくれるさ」

 

 俺はアイに手を差し伸べる。

 

「ようこそ。チーム:ゼラニウムへ」

「ふふ。許しが出て安心したわ」

 

 俺の手を握るアイ。

 そこにソラも手を乗せる。

 

「これからは仲間として、よろしくね二人とも」

「はいです!」

「あぁ、よろしくな」

 

 新しい絆が芽生えたところで、俺達はフリーファイトコーナーに向かう。

 もうアイを縛りつけるものは何も無い。

 これから彼女は自由にファイトをしていくのだ。

 

 戦いが終わった夏の始まりの日。

 俺達チーム:ゼラニウムに、新たな仲間ができた。

 

 

 

 

 




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 第二章、後書き
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