俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜   作:鴨山兄助

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第八十二話:竜帝との遭遇

 さて、みんなと解散した俺は施設の敷地にある売店街に来ていた。

 冷静に考えたら合宿施設の敷地に、二十件近く売店が並んでいるのも中々すごいな。

 それはそうとして、売店街には学生は少ししか見えない。

 恐らく他の皆はポイントを稼ぐために、狩るか逃げるか、はたまた詰めファイトで稼ぐかをしているのだろう。

 だとすれば、今ここにいる奴らは俺と同じ選択をしたんだ……と思いたいな。

 

 とりあえず売店をいくつか眺める。

 用意周到なことで、通常の値札とは別に『ポイント支払い用』の値札が付けられている。

 ざっと見た感じ、1p=1円くらいの価格設定らしい。

 多少誤差はあるが、そのくらいの認識で良さそうだ。

 いや本当に、わかりやすいレートで良かったよ。

 

「それはそうとして、実質今の所持金は2000円ってところか」

 

 言ってはなんだが、売店街の飯は観光地価格のような感じで少し割高だ。

 鶏白湯ラーメン一杯『1300p』とかだったからな。

 良い素材使ってるんだろうけど、今求めるものとは対極にある。

 

「流石にスーパーは無いけど……幸いにしてコンビニがある」

 

 多少割高とはいえ、コンビニなら安く済ませられるだろ。

 運が良ければ生野菜が手に入る。

 しかも施設内にバーベキュー場がある都合か、お隣には肉屋があるらしい。

 目指せ節約自炊生活。

 

 ……本当にアイをこっちに寄越さなくて良かった。

 もしアイツに任せていたら、とんでもない散財プランを組まれていただろう。

 アイの下宿先の惨状を知っているから余計にな!

 

「とりあえずコンビニ行くか」

 

 いい気分になれそうなコンビニに入る。

 中はごく普通な感じ。

 ただし例に漏れず、値札は2種類あるな。

 

「レートはどこも同じ感じか」

 

 1p=1円。

 コンビニ商品も同様だった。

 下手に観光地価格で食事するよりは、こっちでインスタント食品を揃えた方が安そうだな。

 

「ラッキー、野菜あるじゃん」

 

 数は少ないが、生野菜も売っている。

 人参、玉ねぎ、もやし、カボチャ。

 これだけあれば十分だ。

 調味料も売っている。

 

「これなら何とか自炊もできそうだな」

 

 まぁバーベキュー場とかの利用料金にもよるけど。

 ひとまず目処はついた。

 俺は一度コンビニから出て、みんなにメッセージを送ろうとする……

 

「あれ?」

 

 その子は、コンビニのレジで何かを買っていた。

 灰色の長い髪が特徴的な女子生徒。

 というかあの後ろ姿は、一発で誰か分かってしまう。

 そもそも隣に銀色のチビ竜が飛んでいる。

 

「お会計1870pです」

「はい」

 

 おい今初期ポイントのほとんどを消費しなかったか?

 俺の見間違いじゃなければ、あの子って九頭竜(くずりゅう)真波(まなみ)だよな?

 で隣にいるのはシルドラだよな?

 

「ありがとうございましたー」

 

 お会計が終わった彼女は、ふとこちらに気づく。

 あっ、やっぱり竜帝こと九頭竜真波さんだ。

 多分このまま放置が正解なんだろうけど……なんか気になってしまう。

 俺はコンビニから出た九頭竜さんに声をかけた。

 

「あのさ、九頭竜さん」

「なに?」

「ポイントを食費に全部突っ込んでるように見えたけど、宿代は大丈夫?」

 

 俺がそう言うと、九頭竜さんは数秒真顔になった後、急激に焦り始めた。

 あっ、これ考えてなかったな。

 というか君はそういう子だもんね。アニメでも後半からはポンコツっぷりを発揮しまくってたもんね。

 

「ど、どうしようシルドラ」

「落ち着けマナミ。目の前の彼を倒してポイントを奪えば良いんだ」

「残念だけどまだ二時間経過してないから、俺はファイト拒否するぞ」

 

 九頭竜さんは絵に描いたように「ガーン」とショック受けていた。

 うん……本当に考えてなかったのね。

 まして一年生で六帝評議会に入る程の実力があるから、慢心していたんだろう。

 

「どうしよう、シルドラ」

「仕方ない。ファイトが解禁されるまで待つとしよう」

「その間に竜帝を倒したって箔狙いの奴らに囲まれなければいいな」

 

 九頭竜さん、またも「ガーン」とショックを受ける。

 もう少し後先考えようよ。

 

「そこのシルドラさんや、ポイントやお金のやり繰りを教えなかったのか?」

「王は教育を受ける側だ、授けるのは部下にやらせれば良い」

「さいでっか」

 

 と、ここまで話して九頭竜さんはようやく目を見開く。

 

「貴方……シルドラが見えるの?」

「見えてるぞ、入学式の時から」

 

 ブイドラのおかげで化神って名称も知ってるぞ。

 それはそうとして、シルドラの反応が薄いな。

 

「まぁ、見えているだろうな。貴様のデッキからも同類の気配を感じる」

 

 は? 同類とな?

 俺のデッキに化神がいるとでも?

 

「そう……貴方も、あの武井って子と同じなんだね」

「まぁそうなるな」

 

 それより俺のデッキに化神がいるのか教えてくれない?

 めっちゃ気になる。

 

「それよりマナミ、これからどうする?」

「少しだけ隠れて、あとは全員倒す」

 

 わぁ脳筋。

 だから身を隠すにも限度があると思うんだよ。

 あと純粋にこの子の生活力が心配だ。

 

「はぁ……仕方ないな」

 

 うん、これは不可抗力だ。

 だから仕方ないんだ。

 

「九頭竜さん、この試練のコツはな――」

 

 俺は九頭竜さんに試練のコツを伝えた。

 同時に俺の仲間達が現在手分けして物価調査をしている事も含めてだ。

 

「ふむなるほど。平民にしては考えるじゃないか」

「コラ、そんなこと言っちゃダメ」

「いいさ、気にしてないから」

 

 むしろテンション上がってます。

 シルドラから生で上から目線をされるなんて。

 こんなんファンサービスの極みだろ。

 

「期間も実質二日間あるわけだし、できるなら自炊の方が節約できるぞ」

「自炊……料理かぁ……」

 

 難しい表情をする九頭竜さん。

 あ……君もなんですね。

 

「無礼者! マナミは料理ができないんだぞ!」

「シルドラ!」

「コンビニご飯は我らの生命線だ!」

 

 いや無礼なのお前だろ。

 そう突っ込みたかったけど、グッと堪える。

 突っ込んだら絶対に拗れる。

 

「じゃ、じゃあ誰か友達と協力してクリアを目指せば」

「無礼者ォ! マナミには友達がいないんだぞ!」

「シルドラー!?」

 

 だからシルドラさん、お前が一番無礼だって。

 あと九頭竜さんが可哀想になってきた。

 生活力ゼロなのに加えて、友達ゼロまで暴露されるなんて。

 幸い俺ら以外にシルドラの声は聞こえないんだけど……ここに(らん)がいないのは、ある意味救いか?

 

 うーん、これは……ちょっと放っておけないな。

 明らかにアニメと流れが変わってしまうけど、これはきっと仕方ない。

 

「あのさ、良ければなんだけど」

 

 俺が九頭竜さんを誘おうとした、その時だった。

 いかにも世の中を舐めていそうな、黒いドレッドヘアーの男子生徒がこちらに近づいてきた。

 

「おーい九頭竜。こんなところで奇遇じゃないか」

 

 何というか、いかにも見下してますって雰囲気だな。

 というか俺の事はガン無視かよ。

 

「九頭竜さん、コイツ誰?」

坂主(さかぬし)くん。ボクと同じSクラスの生徒」

 

 なーるほど、所謂エリートさん(現時点)でしたか。

 これはあれだな、Sクラス以外の生徒は格下だと思い込んでる小物だな。

 典型的すぎて逆につまんねーぞ。

 

「なぁ九頭竜、ポイント残ってるなら俺にくれや。さっき使っちってよ〜」

「嫌。ボクも今使いきったから」

「じゃあその手に持ってるやつくれよ。金なら払うからさ」

「金銭での取引はルール違反」

「そんな細けぇ事言うなって。どうせ金はいくらあっても困らねーんだ」

 

 うわぁ、テンプレかってくらいのクズムーヴ。

 逆に面白いなコイツ。

 

「じゃあファイトしようぜ。お互いのポイントとか色々賭けてよ」

「拒否する。ボクにメリットがない」

「良いのか? こっちはお前の事情も把握してるんだぜ」

 

 坂主がそう言うと、九頭竜さんが急激に顔を青くした。

 九頭竜さんの事情?

 すぐに出てこなかったので、俺は記憶を探る。

 そして……ある一つのマイナーエピソードを思い出した。

 まさかコイツ。

 

「な、なにを」

「親父の会社が持つ情報網を使えば簡単に手に入ったぜぇ。10年前の事とかな」

「なっ!」

「それとも、早速そこの雑魚にバラしてやろうか? 親なしの九頭竜さん?」

 

 言いやがった。

 俺の隣で九頭竜さんが顔を伏せ、シルドラは凄まじい怒りを顔に浮かべている。

 

 前の世界でも、わずかな媒体でしか言及されていなかった設定。

 九頭竜真波の両親は既に死亡しており、現在は叔父夫婦に引き取られている。

 彼女の両親の死に関しては色々とあるのだが、結論だけ言えば九頭竜さんの最大のトラウマだ。

 

 俺は……頭の中がスーっと冷えていくのを感じた。

 

「お前には特別に教えてやる。その九頭竜真波って女の両親はな」

「ターゲットロック」

 

 俺はほぼ無意識レベルで、召喚器を取り出し、坂主という男子に向けていた。

 

「あん? なんの真似だテメェ」

「ファイトを挑んだんだよ。猿山の木偶野郎」

 

 露骨に苛立った表情になる坂主。

 だが一つ確信が持てる。今この場では、俺の方が怒りを覚えていると。

 

「Aクラスなんて格下に挑まれたんだ。まさか尻尾巻いて逃げるなんて言わないよな?」

「舐めたなテメェ。今俺を舐めたなァ!」

「俺が負けたらポイントだろうが何だろうがくれてやる。お前が負けたら」

「ざけんな! 俺がAクラスに負けるわけないだろ!」

 

 そう叫びながら坂主は召喚器を取り出し、ファイトを承認した。

 

 そうか……可能性すらも考えないんだな。

 ならお前にはしっかり叩き込んでやろう。

 今俺の中で燃えている怒りを。

 

 ある日突然、親を失った人間を嘲笑った報いをな。

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