かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

11 / 35
皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

お久しぶりです。
割とバタバタしているのでペースは遅いですが、気長にお付き合いください。

駐屯地で山帰りの荷下ろしをしている際に、後期教育中の新隊員が目の前でぶっ倒れるという小さい事件もありました。
マジで暑いので皆さん熱中症等についてはご注意を。
水の飲み過ぎも身体の塩分濃度を薄めてしまうので、その辺についても上手く調整する事をオススメします。



第9話 表裏

<惑星コルサント アミダラ議員ペントハウス>

 

激しく燃え上がっていた夕日は完全に沈み、辺りは人工的な光で満ちていた。

この星が眠ることは無く、多種多様なスピーダー、船が忙しなく行き交っている。

 

私はそんな景色をバルコニーから眺めている。

ナブーで過ごす時間とは全く違う。

あそこは常に穏やかだった。

 

だがここにもフォースはある。

視覚や聴覚といった五感から得られる情報は完全に異なるが、辺りに満ちているフォースは確かにそこにあった。

この眠らない星も、宇宙と言う名のフォースの一部なのだ。

 

3年前のジオノーシスでの一件(EP2)以来、私はより深く、広くフォースと繋がる事が出来るようになっていた。

今この宇宙は間違いなく混沌に包まれている。

人々は苦しみ、疲弊し、死がより身近に存在する。

だがより深くそれを感じられても、“フォースにバランスがもたらされる”という事が何を指すのかは分からないままだった。

 

「ヴェリウス、また考え事ですか?」

 

私の背に話しかけたのは、櫛で髪を梳かしているパドメだ。

彼女の姿を見るだけで、自分の心が満たされるのを感じる。

“選ばれし者”なんて関係ない。

彼女の存在が私を満たしてくれる。

 

「おいで、パドメ」

 

私は両腕を広げながらパドメを呼び寄せる。

彼女は髪を梳かすのをやめ、嬉しそうな表情を浮かべながら私に身を預ける。

 

両手で彼女の身体を抱きしめると、形容し難い幸福感に包まれる。

 

私は目を閉じる。

街の人工的な光も、行き交う船の音もここには無かった。

在るのは彼女と言う存在だけだ。

 

「ヴェリウス・・・私、本当に幸せだわ。 こうして貴方が傍にいてくれるだけで」

 

『他にはなにもいらない、貴方の愛さえあれば良い』と彼女は続ける。

私も彼女との時間が永遠に続けば良いと思っている。

ナブーの湖水地方で何ものにも縛られず、いつまでも彼女と暮らせればどんなに良いかと。

 

私はこの時、ある決心をする。

ずっと考えていた事だが、今言わなければならないと感じたのだ。

 

「パドメ—————」

 

「?」

 

自分の名を呼んだだけで続きを口にしなかった為、パドメは首を傾げながら顔を見上げてくる。

私は彼女の目を見ながら続ける。

 

「—————パドメ、私もずっと望んでいた・・・君と一緒に過ごせる日々を」

 

彼女は口を閉じ、私の言葉に耳を傾けている。

そして私の言葉を待ち続けている。

 

「私の中で君と言う存在は何よりも大きく、そして大切なものになった」

 

「・・・」

 

「パドメ、愛している・・・心の底から」

 

彼女の瞳に涙が溜まっていくのが分かる。

それでも私から目を逸らすことは無かった。

彼女は本能的に感じているのだろう。

ずっと待ち望んでいた事が現実になると。

 

「結婚しよう、そしてあの地で共に暮らそう」

 

「—————い・・・はい!」

 

涙に言葉を詰まらせながらも、パドメは懸命に私の言葉に応えようとしている。

そんな彼女の姿が堪らなく愛おしく、その想いに応えるように強く彼女を抱きしめる。

 

「ヴェリウス、愛しています」

 

少し気が落ちついたのか、彼女はそれだけを口にした。

私たちはこの時、今までで最も幸福を感じていた。

時が流れるという事を忘れ、いつまでもお互いの存在を感じていた。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<ジェダイ聖堂 アナキンの自室>

 

パルパティーン最高議長とロイヤリスト・コミッティーのメンバーとの会食を終えたアナキンは、ジェダイ聖堂の自室で睡眠を取っていた。

いつ振りかの纏まった時間を得られ、穏やかな寝息を立てていたその様子から一変し、徐々に苦悶の表情が浮かんでいく。

身体からは汗が吹き出し、息が上がっていく。

 

 

 

『どうして貴方が・・・』

 

 

 

そこにはタトゥイーンでの出会い(EP1)からずっと想いを寄せている人物がいた。

しかし、彼女から伝わってくるのは困惑や疑念、失望などといった幸福とは無縁の感情だった。

 

フードを目深に被った人物が、腰に差した光剣を取り出し起動する。

その様子を見た彼女は困惑した表情をさらに深める。

 

『何故・・・』

 

【やめろ・・・】

 

その人物はゆっくりと彼女に歩み寄る。

 

【やめてくれ・・・!】

 

そして剣を無造作に、躊躇いもなく彼女の身体に突き立てる。

 

【やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!】

 

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

アナキンは飛び起き、夢の中と同様に叫び声を上げていたことに気づく。

荒くなった呼吸を整えようとするが、身体のコントロールが効かない。

 

今のは3年前(EP2)に見ていた母の夢と同じだった。

ある日突然、母の夢を見る事はなくなったがあれが予知夢のようなものだったと本能的に感じていた。

もし母が既に死んでいて、“彼女”も同じ運命を辿ろうとしているのなら・・・・・

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<ジェダイ聖堂>

 

「マスター、ヴェリウスを見ませんでしたか?」

 

早朝にパドメのペントハウスを訪れたアナキンだったが、彼女は不在で会う事が叶わなかった。

そこでヴェリウスを探しているのだが、彼もまた見つける事が出来ないでいた。

 

「いや? どこかで羽でも伸ばしているんじゃないのか? 任務続きだったから休息を与えられている筈だ」

 

我々と同じでな、と付け加える。

オビ=ワンはジェダイ最高評議会のメンバーと言う事もあり、一般的なジェダイと比べて多忙だ。

休息を与えられていても、突然の呼び出しが掛かる事も慣れっこだった。

 

「・・・お前も十分に身体を休めておけよ。 ドゥークーが死んだ今、戦況はこちらに有利だ。 サルーカマイは陥落、マスター・ヴォスの部隊はボーズ・ピティへ移動している。 近いうちに事態が大きく動くことになるだろう」

 

今のアナキンにとって、戦争よりも気に掛かる事があった。

その様子を感じ取り、オビ=ワンは眉をひそめる。

 

「落ち着きがないな? まるでパダワンの頃に戻ったようだ」

 

「・・・いえ、何でもありません。 ヴェリウスを見かけたら僕が探していたことをお伝え頂いても?」

 

「それは勿論構わんが・・・おい、アナキン!」

 

それだけ言い残すと、アナキンは小走りでその場から去っていった。

 

「・・・何も起こらなければ良いが」

 

オビ=ワンは、らしくもない弟子の様子を見て不安がよぎる。

しかしかつて師に言われた、『不安に囚われる様ではまだ若い』という言葉を思い出す。

 

「・・・やはり父と言われるには若いだろう」

 

つい昨日、ヴェリウスに言われたことを思い出しながらそう口にする。

そして豊かに蓄えられた顎髭を撫でながら、会議の為に最高評議会へと足を運ぶのだった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<銀河外縁部 惑星タトゥイーン>

 

コア・ワールドから遠く離れた辺境の惑星に降り立ったのは、一人のジェダイ騎士だ。

彼の生まれ故郷である砂漠の星は双子の太陽を周回している為、焼き付くような乾燥した気候をしている。

 

彼はこの環境が嫌いだった。

 

外を10歩も歩けばたちまち砂が服の中に入り込み、100歩も歩けば脇や股に入り込んだ砂ぼこりで肌が傷付く。

地表に降り注ぐ強烈な太陽光も相まって、子供が暮らすには適していない。

何もそれは自然環境に限った話ではない。

銀河中から放浪者や賞金稼ぎ、盗賊が集まるこの星には法律など存在しなかった。

ハットに支配されたこの星では、子供が生きていくには余りにも過酷だった。

 

 

彼はこの星で幼い頃より、奴隷という身分で生活をしていた。

奴隷ではあったが、機械に精通した類まれな才能により“それなり”の生活を送っていたが、それでも苦しい生活だったことは想像に難くない。

 

そんな彼の心の拠り所は、母親の存在だった。

たった一人の肉親であり、優しい母親からの愛情を受けて育った彼は、素直で真っ直ぐな少年に育つことが出来たのだ。

 

そんな母親を置き去りにしてしまった事を、彼はずっと悔やんでいた。

そしていつの日か、奴隷の身分から救い出す事を願っていた。

 

 

 

<惑星タトゥイーン モス・エスパ>

 

「R3、僕の近くに」

 

「~~~♪」

 

アナキンは相棒のアストロメク・ドロイドに傍にいるように命じる。

見るからに“悪そう”な人間が多いのを見ると、R3はアナキンの後ろにピッタリと追従する。

 

群衆の中を迷いもせずに進めるのは、アナキンの故郷がこのモス・エスパだからだろう。

13年の間で変化した所も多いが、根本的な街の構造は変わらないようだ。

 

かつて母親と住んでいた場所を訪れたアナキンだったが、そこに母の姿は無かった。

行方を知るために、彼はかつての主人の下へと向かっていた。

 

 

アナキンは街中のある一角に、小さな露店を開いている一人の年老いたトイダリアンを発見する。

その様子からは、とてもじゃないが商売が上手くいっているようには見えなかった。

 

「いらっしゃい旦那! この店に立ち寄るとはお目が高い!」

 

アナキンはそのトイダリアンの前に立ち、様子を伺う。

間違いなくかつての主人であるワトーだった。

 

「な、何か入用ですかい? 大抵の物は用意できると思いますぜ?」

 

突然現れた男の振る舞いに動揺を隠せないワトーだった。

何も言葉を発しないのも不気味だが、その身に纏う雰囲気はこのタトゥイーンの者ではない事を物語っていた。

 

その男を観察する為にワトーが視線を下げると、腰にぶら下がるライトセーバーが目に入る。

平和の守護者であるジェダイの騎士の持ち物だ。

自分たちのような人種が、一番関わりを持ちたくないのが彼らだった。

 

「じぇ、ジェダイ!? お、俺は何も悪い事はしてないですぜ!? 細々と商いを続けているだけでさ!」

 

相手がジェダイであることを察すると、年老いたトイダリアンは自分が如何に潔白か、聞いてもいない事を語り続けている。

 

『ワトー、シミ・スカイウォーカーはどこにいる?』

 

アナキンはハッティーズ語を使って話しかける。

ジェダイが取締りにでも来たと考えていたワトーは、突然の事に口を開けて固まってしまう。

 

「・・・アニー? お前チビのアニーだろ!?」

 

目の前にいるジェダイが、かつて所有していたアナキン・スカイウォーカーだと分かるといつもの調子を取り戻す。

挙句の果てには金を返さない者への取り立てを手伝って欲しいという始末だった。

 

「母はどこにいる?」

 

埒が明かないと考えたアナキンは、もう一度同じ質問をする。

好き勝手に話し続けていたワトーはその質問に口を紡ぐ。

 

「あぁ・・・シミか。 実はなアニー、お袋さんは売っちまった」

 

「売っただと?」

 

アナキンは思いもしなかった言葉に語気を強めて聞き返す。

その反応に不味いと考えたのか、ワトーは言い訳をするように言葉を続ける。

 

「もう何年も前だ。 悪いなアニー、だがこれも商売なんだ。 お前さんが居なくなってからというもの俺の商売は—————」

 

「売った相手は誰だ?」

 

ワトー自身の話に微塵も興味が無かったアナキンは、母親の所在を聞き出そうとする。

彼の下に母が居ないのであれば、ここにいる理由は無かった。

 

「—————あー、確かラーズって名のモイスチャーファーム(水分農場)をやっている奴だ。 へへへ、何と驚き、奴はシミを自由の身にして嫁にしちまったんだ! ぶったまげた話だろ!?」

 

「なんだって・・・今どこにいる?」

 

「ここからかなり遠い、確かモス・アイズリーのさらに先だぞ」

 

詳しい場所を知りたいというアナキンに対して、ワトーは売買記録で調べると口にする。

状況は明らかにややこしいものとなっていた。

アナキンは母親をもっと早くに助けに来るべきだったと後悔するのだった。

 

 

 

<惑星タトゥイーン グレート・チョット塩類平原>

 

アナキンはワトーの売買記録により、ジャンドランド荒野の南端に位置するグレート・チョット塩類平原に水分農場を所有しているクリーグ・ラーズという男の住まいを知った。

彼はシミ・スカイウォーカーを奴隷の身から解放し、自身の妻としたのだと聞き、アナキンは驚きを隠せなかった。

 

「マスター・オーウェン、大切なお客様がお見えです!」

 

そう声を上げるのは、かつてアナキン自ら作り上げたプロトコル・ドロイドのC-3POだ。

このプロトコル・ドロイドは13年もの月日が経過してなお、本当の主人の事を覚えていたのだ。

その声に姿を現した男性は自らをオーウェン・ラーズと名乗り、アナキンの義兄弟だと語る。

 

「母はどこです?」

 

「・・・どう言えば良いのかな」

 

アナキンの問い掛けに、オーウェンは苦い顔を浮かべながらそう言う。

そこに次いで現れたのは片足の無い車椅子の男性だった。

オーウェンとよく似ていることからも、彼の父親だということが分かる。

ということは彼が・・・

 

「クリーグ・ラーズ、シミの亭主だ」

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<惑星ナブー 湖水地方>

 

ヴェリウスとパドメは再会した日の翌日、早くから船を飛ばして思い出の地に向かった。

そして辿り着いたこの地は惑星ナブーの湖水地方に存在するヴァリキーノ島。

かつてヴェリウスが護衛対象であるパドメと過ごした思い出の場所だ。

 

夕日が差し込む時間、屋敷のテラスにはその二人が向かい合っていた。

ヴェリウスはジェダイの正装という普段と変わらない出立ちだが、対面するパドメは美しい純白のドレスに身を包んでいる。

 

ヴェリウスは青く輝く石の付いたネックレスを取り出すと、愛する女性の首に掛ける。

その石は差し込む夕日を受けて、自ら燃え上がるような激しい輝きを見せていた。

まるで送り主の感情を示すかのように。

 

この青く輝く石の正体は、ヴェリウスの用いるライトセーバーにはめ込まれていたカイバー・クリスタルだった。

彼がイニシエイト時代に受けたギャザリングで獲得した物だ。

その石はヴェリウスの下から離れた今も、彼のフォースに深く感応していた。

 

『彼女を護ってくれ』

 

そう願いを込めて贈られたカイバー・クリスタルは、ヴェリウスの願いを受け取ったことを示すかのようにひと際激しく煌めいた。

 

 

 

 

そしてパドメの瞳もまた、涙で輝いていた。

その輝きは、ヴェリウスにとって何物にも代えがたいものだった。

彼女以上に愛おしい存在を知らなかった。

彼女以上に美しい存在を知らなかった。

 

ヴェリウスはパドメの手を取る。

 

彼女もまた、彼への想いを示すかのようにその手を握り返す。

 

燃えるような夕日に照らされた想い人は、この世の者とは思えないほど美しく、幻想的だった。

自らの胸元で光る石でも、彼の輝く青い瞳には勝らない。

彼以上に大切な存在を知らなかった。

彼以上に温かい存在を知らなかった。

 

 

 

 

パドメの瞳からは自然と涙がこぼれ落ちる。

負の感情など欠片も感じさせない純粋な雫。

 

自然と二人は引き寄せられる。

そしてお互いの気持ちを確かめるように、その愛を感じるように二人は唇を重ねる。

初めて唇を重ねたこの場所で。

 

 

 

この刻、この世界に存在するのはこの二人だけだった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

同刻

 

アナキンは、クリーグ・ラーズから事の顛末を聞かされた。

3年も前にタスケン・レイダーがシミ・スカイウォーカーを攫ったこと。

救出隊が編成されたが、生き残ったのは数人のみだったこと。

どう考えても、生存している可能性は皆無だった。

 

「本当にすまない」

 

クリーグ・ラーズは亡き妻の子供、義理の息子の顔を見る事が出来なかった。

俯きながら謝罪の言葉を口にする事しか出来なかった。

 

彼の言葉を終始無言で聞いていたアナキンは、徐にその場に立ち上がる。

 

「どこに行く?」

 

「・・・母を探しに」

 

クリーグ・ラーズの言葉に、アナキンはそう答える。

その場にいた者は驚きの表情を浮かべる。

 

「3年も前の話だ・・・お母さんは死んだんだ。 無駄だよ」

 

そう後ろから声を掛けるが、アナキンが歩みを止める事はなかった。

 

 

 

彼はラーズ家が所有しているスピーダー・バイクに乗りこむ。

 

連日見ていた母の夢を、ある日突然見る事が無くなった。

その意味は火を見るよりも明らかだった。

 

アナキンは自分でも分かっていた。

既に母がこの世を去っている事を。

しかし認めたくなかった。

母の死を。

 

 

 

この砂の惑星を包み込む太陽が沈みかけていた。

この身を照らす激しい夕焼けが狂おしい程に憎かった。

 

彼は声にならない悲鳴を上げていた。

彼の瞳からは涙が流れていた。

 

しかし、彼はその現実に気づいていなかった。

ただ彼は、夕日を憎み、ジェダイを憎んだ。

 

母を救えなかった原因はジェダイにあると考えた。

自分がその場にいれば母を救えたと。

その力があるのに、振るえないのはジェダイのせいだと。

 

 

 

堕ちる夕日を睨む彼の瞳は、夕焼けのせいか黄色く輝いて見えるのだった。

 

 

 

________________________________________

後刻

 

<ジェダイ聖堂 訓練場>

 

ヴェリウスはジェダイ聖堂の高層階に設置された訓練場にいた。

夕焼けの時間、彼は窓の向こうに広がる景色に視線を向けていた。

しかし、彼の瞳に映るのは眼下に広がるコルサントの風景ではなかった。

 

遥か遠くに存在するナブーの湖水地方の夕暮れを見ているのだった。

そして同時に、この場に近づいてくる大きな力も感じ取っていた。

 

「お待たせして申し訳ありません。 少し手間取ってしまって」

 

そう話しかけてきたのはアナキンだった。

包囲戦の報告をしていた為、遅れたのは知っている。

どうしてかって?

私も呼ばれていたからね、行かなかったけど。

 

「報告があったんでしょ? 私は夕焼けを楽しんでいたから大丈夫」

 

そう答え私は再び窓の外、遠く離れた湖水地方へと想いを巡らす。

 

「貴方も呼ばれていた筈・・・いえ、何でもありません」

 

そう言いながら、アナキンは私の隣に立つ。

こうしてゆっくり話すのはいつ振りだろうか?

一人前の騎士に成長した彼を見ると、時の経過を嫌でも感じてしまう。

 

「—————僕は夕焼けが嫌いだ」

 

「え?」

 

思いもしなかったアナキンの言葉に一瞬困惑してしまう。

独り言のように呟いたその言葉は、偽りでない事は彼の顔を見れば明らかだった。

 

「それは・・・どうして?」

 

「・・・いえ、特に理由はありません」

 

嘘だった。

彼を見れば分かる。

その瞳、感情からは憎しみのようなものを感じる。

その場にいなければ感じ取れないほど静かで小さいが、確かに在る。

 

「・・・・・」

 

私は無言でアナキンの肩に触れようと手を伸ばすが、私の手が届く前に避けられてしまう。

彼は私の目をじっと見ている。

何をいう訳でもなく、ただじっと。

 

「・・・ヴェリウス、剣を抜いてください」

 

アナキンは一瞬瞳を閉じて、そう口にする。

そして私が答える前に、夕日に照らされて輝くヒルトを取り出し起動する。

 

 

 

青く輝く光剣が生まれ、ヴェリウスに向かって振り下ろされる。

咄嗟にその斬撃を避け、アナキンと距離を取るヴェリウス。

 

しかし彼は逃がさないとばかりに追撃する。

身体とセイバーを回転させながら威力を増大させた斬撃を繰り出すが、ヴェリウスはスウェーで空振りさせる。

しかしその空振りの勢いも攻撃に転化し、微妙に軌道をずらした斬撃が再び襲い掛かる。

 

避け切れないと判断したヴェリウスは、腰からセイバーを取り出すと同時に起動する。

そのヒルトから発生したのは純白の光剣だった。

 

青と白のプラズマが接触し、激しく発光する。

それらが生み出すエネルギーは、人間を簡単に事切れさせる力を持っていた。

 

アナキンは鍔迫り合いの状態から無理やりセイバーを押しのけ、大きく上段の構えを取ってそのまま力強く振り下ろす。

一見隙だらけのように見える体勢だが、フォームⅤシエンをマスターし、自然とフォームⅦジュヨーの型に近い動きを用いるアナキンの攻撃は予測が困難だった。

普通の騎士ならばこの攻撃で勝負がついた筈だ。

 

しかしヴェリウスは、アナキンが次々に繰り出す攻撃を完璧に受け流す。

オビ=ワンが用いるフォームⅢソレスとは違う。

受動的過ぎるソレスの防御技術とは一線を画す技術に、アナキンは攻撃を継続するしかなかった。

上段、中段、下段と様々な角度から斬撃を繰り出すが、ヴェリウスはいつどのように攻撃が来るかを完全に把握していた。

 

必要最低限の動きで攻撃を“いなす”技術は、フォームⅡマカシに通じるものがあった。

しかしその動きは、どのフォームにも該当せず、様々な型を訓練したアナキンでも予測が困難だった。

 

思い通りにいかない事に、アナキンは徐々に怒りを滲ませていった。

それと同時に彼の発する攻撃には激しさと力強さが増していくのだった。

 

ヴェリウスは“まずい”と感じた。

そこから勝負の流れは一変した。

受けに徹していたヴェリウスは突然攻めに転じ、アナキンはペースを乱される。

元々、彼の防御を崩せなかったアナキンにヴェリウスの攻撃を防ぎきることなど出来なかった。

 

僅か数回の斬撃で態勢を崩されたアナキンは、ヴェリウスの強力な攻撃に対応する事が出来ずセイバーを弾かれてその手を離してしまう。

そしてセイバーが後方に投げ出された瞬間に、ヴェリウスはそのセイバーをフォースで引き寄せた。

 

「アナキン、本当に強くなったね」

 

息を切らさずにそう口にした彼は、アナキンに対してライトセーバーを差し出す。

それを受けた自分はと言うと、ライトセーバーを弾かれ地面に座り込み、激しく息を切らしていた。

 

完璧だった。

ヴェリウスの演じた戦いは、アナキンが想い描く理想の遥か上を行っていた。

 

“選ばれし者”

 

それ以外に思いつく言葉が無かった。

この時のアナキンのプライドはズタズタだった。

 

 

 

アナキンの心に巣食う闇の部分。

それが見えてしまった。

あれ以上暗黒面の力が表層に出て来てしまえば、ジェダイ評議会にその存在が明るみになっていただろう。

そうなればアナキンはここには居られなくなってしまう。

それは避けなければいけなかった。

 

しかし、私の一連の行動は彼にとって面白くないものだったようだ。

彼から伝わってくる想いは、決して良いものではなかった。

 

「・・・君に追い抜かれてしまう日はそう遠くないね」

 

そう言葉を掛けるが、彼の心には響いていなかった。

何も彼の気分を良くしたくて発した言葉ではない。

アナキンの成長は目を見張るものがある。

ジオノーシスでの一件(EP2)から僅か3年で、ここまでの力を付けるとは思ってもいなかった。

備えているミディ=クロリアン数を考慮しても、私以上の実力を備えるようになる日はそう遠くない筈だと思う気持ちは本当だ。

 

「・・・貴方はいつもそうだ。 僕に無いものを持ち、僕の欲しいもの手に入れる」

 

そう呟くと、彼は静かに立ち上がってその場を後にする。

 

「アナキン!」

 

そう声を掛ける私の言葉を背に受けるが、彼が振り返ることは無かった。

彼が私を“見る”事はなかった。

 

 

 

 




はい、皆さんお疲れさまでした。

また物語としては進みませんでした。
全力の土下寝。

何かアナキンの闇堕ちルートが着々と進んでいるように思えてならないのですが・・・。
ただ、最後までどうなるか分かりません。
どんでん返しがある事も考慮してお楽しみ下さい。

それではまた近いうちに・・・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。