かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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第11話 胎動

<アウター・リム・テリトリー某所>

 

ヴェリウスは銀色に塗装されたイータ2アクティス級軽インターセプターを操り、単独で広い宇宙を飛んでいた。

このインターセプターの外装表面にはナブー・ロイヤル・スターシップと同じ技術が使われており、そのクロミウムが放つ銀色の輝きはスターファイター(戦闘用)に分類される物としては異質だった。

 

議長誘拐事件後に、ヴェリウスが独自に改造を施したこのインターセプターには小型のハイパー・ドライブ装置が搭載され、その荷重分を考慮して2基のツイン・イオン・エンジンの出力向上が図られている。

これにより、短距離であれば外付けのドッキング・リングを使用せずにハイパー・スペース航行が可能だった。

 

しかし、今回ヴェリウスが目指していた座標は小型のハイパー・ドライブでは距離があり過ぎる為、今回は外付けのドッキング・リングを使用していた。

ハイパー・スペースを抜けた先に指定した座標の惑星を確認する。

 

「座標ではこの辺りか・・・R2、あの星かな?」

 

『~~~♪』

 

ヴェリウスとR2は銀河外縁部に存在する名も無き惑星を目指していた。

レーダーを頼りに地表に向かって高度を下げていくと、目的地を目視で確認する。

 

「R2、少し離れた所に降りるよ」

 

ヴェリウスは、岩が多いこの星で群生している針葉樹林の中に船を隠す。

彼がこの星を目指した理由は、今は亡き師の最後の言葉だったからだ。

“何か”が起こる前に、その言葉の意味を知る必要があると感じていた。

 

「君はファイターに残って。 何かあれば助けてね?」

 

R2はこのセリフに慣れっこだった。

主人がパドメからヴェリウスに変わり、クローン戦争開戦に伴い危険な場所にも数えきれないほど経験した。

その度に『何かあれば助けに来て欲しい』と言われた。

しかし、実際に自分が助けに行く状況に彼は陥ったことはない。

ヴェリウスは殆どの事を一人でやり遂げてしまうからだ。

 

R2としては自分が居なくても良いのではないかと考えたこともあったが、ヴェリウスはそれを否定した。

『君がいるから安心して任務に当たれる』のだと。

自分としてはもっと頼って欲しいと思う所だが、彼としては不測事態に対応できる相棒が居るから助かるのだと。

 

だから今回も彼を待つ。

いつまでも彼を待ち、彼が必要となった時に駆けつけられるように。

それが自身に与えられた役割だから。

 

 

 

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<惑星ウータパウ遠征組 ヴェネター級スター・デストロイヤー船内>

 

オビ=ワン率いる第212突撃大隊は、独立星系連合の司令官であるグリーヴァス逮捕の為に辺境の惑星ウータパウへ向かっていた。

 

「奴を倒せばこの戦争は終わる。 諸君、気を引き締めて頼む」

 

『『『サー・イエッサー!!』』』

 

ドックに集合しているトルーパー達にオビ=ワンがそう言葉を掛ける。

クローン戦争も終盤に差し掛かっていることは、一兵士たちまで感じていることだった。

そして、この戦争に決を与える役割を与えられたことに兵たちの士気は非常に高かった。

 

「共和国の命運は貴官らの肩に掛かっている。 準備は抜かりなくな、解散!」

 

指揮官であるクローン・マーシャル・コマンダーのコーディーが兵士らを解散させる。

高度に訓練された第212突撃大隊の兵士らは、これから行われる戦いに備える為に動き出すのだった。

 

「マスター、奴(グリーヴァス)はウータパウにいると?」

 

「確実とは言えない。 だが奴がいればこの戦争は終わる」

 

「スカイウォーカー将軍はいらっしゃらないのですか?」

 

ティアは確実にグリーヴァスがいるのか気になっているようだ。

それに付随して、この重要な局面でアナキンがこの任務に参加していない事にコーディーは疑問を感じていた。

戦力を出し惜しみする必要などないからだ。

 

「・・・アナキンには別の任務がある。 それにヴェリウスが参加する」

 

『彼が参加するから問題は無いだろう』とオビ=ワンは語る。

コーディーはそれを聞いて、ヴェリウスの事を考え始める。

 

初めて見たヴェリウスに対する印象は、決して良い物では無かった。

軍属の者からすると、ハッキリとした口調で命令されるのに慣れているが、ヴェリウスはそう言った類の人種では無かったし、軍隊には向いていないと決めつけていた。

加えて、他のジェダイは将軍として部隊を率いているが、彼は必要な時に必要な場所に戦力として配置されることが多かった。

 

特定の部隊を率いず、ハッキリとした物言いをしないヴェリウスに対して、正直に言うと初めは好感を持てなかった。

しかし、後にそれは間違いだったと悟った。

 

“彼の力”を最大限発揮するには直接指揮をする部隊は無い方が良いのだ。

それらは彼の足枷になり、最良の戦果を得られない。

そして穏やかな物言いも、すぐに慣れた。

と言うか、初めは自信の無さの表れなのかと思ったが、決してそんなことは無かった。

将軍は常に冷静に、現場の状況を適切に判断していた。

それは前線の事だけでなく、後方部隊の動きや兵站に至るまで。

部隊を指揮せざるを得ない状況になっても、彼はその優れた能力を遺憾なく発揮した。

 

 

単純な優男・・・とも違う。

自ら積極的に先頭に立ち、その能力を振るう姿を見れば敵に同情してしまう程だった。

 

“軍神”

 

彼と戦場を共にした兵士たちが、口を揃えてそう言った。

独特な雰囲気を纏っていて、彼が居るだけで場の空気は彼の影響を強く受ける。

スカイウォーカー将軍もジェダイ中では異質だと思っていたが、彼もまた普通のジェダイとは違うのだと、クローンである自分でも感じることだった。

 

だが、共和国にとって重大な局面、作戦であるにも関わらずそのヴェリウス将軍がこの場に居ないというのは腑に落ちない。

単独での行動と言うのも珍しくはないのかもしれないが、この状況で別行動をとる必要性を全く感じなかった。

 

レックスがいれば、とも思ってしまうがそんな事を考えても無駄なのは理解している。

兵士とって命令に従い、任務を完遂することが何よりも重要なのだ。

『この装備が無かったから』、『この人が居なかったから』と理由をつけて“任務を成し遂げられなかった”というのはあり得ない。

 

“優秀な兵士は命令に従う”

 

俺たちは命じられた通り、共和国の為に戦うだけだ。

戦場が俺たちの居場所なのだから。

 

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ヴェリウスは現在、銀河外縁部のある惑星に来ていた。

岩の多くさっぱりとした景観の惑星だが、そこから針葉樹が岩を砕き、中の栄養分を吸って強く生きていた。

 

上空から目的地を確認していたヴェリウスは、迷うことなく歩みを進めている。

船は相棒のR2に任せており、彼は自分の目的に集中していた。

その足取りは決して速いものではなく、この星の息遣いを感じるようにゆっくりと地を踏みしめている。

 

「動くな」

 

目的地に近づいたところで、ヴェリウスは後方から停止の指示を受ける。

ゆっくりと振り向くと、そこには銀色に青いペイントを施された特徴的なアーマーを全身に装備した人物が立っていた。

そのアーマーは、どこかクローン・トルーパーが身に着けている物に似ている。

 

「お前は・・・」

 

「久しぶりだね、賞金稼ぎ」

 

「あの時のジェダイか、本当に来るとはな」

 

その場にいたのは賞金稼ぎのジャンゴ・フェットだった。

正体不明の来訪者がヴェリウスだと分かると、ジャンゴはブラスターを腰の高さまで下げる。

しかし、未だ銃口は彼に向けられたままだった。

 

「何しに来た、ジェダイ?」

 

「“彼”の・・・最期の言葉の意味を知る為に」

 

ジャンゴは真剣な眼差しでそう語るヴェリウスと、数秒間視線を合わせる。

ジオノーシスで対峙した時の危険な雰囲気は感じられなかった。

あの時、ヴェリウスから感じられたオーラはジェダイが纏う物では無かったことをよく覚えている。

 

「・・・はぁ、ティラナスめ」

 

折れるようにため息をつくジャンゴ・フェット。

『付いて来い』

それだけ言ってジャンゴはブラスターをホルスターに戻して歩き出す。

 

暫く付いていくと、ドーム状の建物が目に入る。

ヴェリウスが空中で確認した物だ。

 

ジャンゴに続いて中に入ると、そこは必要な物は揃っているがあまり生活感が無い雰囲気だった。

 

「座っていろ」

 

それだけ言うと、ジャンゴは奥の部屋に消えて行った。

ヴェリウスは言われた通り、椅子に座って彼を待つ。

少しすると、ジャンゴが消えて行った奥の部屋から少年が現れる。

 

「こんにちは、お邪魔しています」

 

ヴェリウスが笑顔でそう声を掛けると、怪しむような視線を向けていた少年だったが、『ああ』とだけ答える。

 

彼の子供かな?と少し興味が沸いたヴェリウスは引き続き少年に話しかける。

 

「私はヴェリウス。 彼のお子さん? 名前は何て言うの?」

 

「・・・ボバ」

 

「ボバか、宜しくね?」

 

「・・・お前、ジェダイだろ? 何しに来たんだ?」

 

ジェダイが訪ねてくるのもおかしいが、父が家の中に招き入れるのも納得がいってなかった。

対するヴェリウスはと言うと、警戒しながらもボバが話をしてくれるのが嬉しかった。

 

「うん、私の・・・父のような人がいるんだけど、彼が死に際に言ったんだ。 『真実を知りたければジャンゴ・フェットに会え』って」

 

ヴェリウスは真実をありのままに答えた。

 

ボバは『ふーん?』とだけ言った。

正直、マスターがどうしてジャンゴ・フェットに会えと言ったのか分からなかった。

しかし、“真実”と言うものを知るにはここに来るしかなかった。

マスターが死に際に残すという事は、何か重要なことなのだと。

 

そう話をしていると、奥からジャンゴ・フェットが姿を現す。

その手にはジェダイやシスが用いる情報保存用の装置であるホロクロンが握られていた。

ホロクロンには様々な情報を保存でき、情報の流出を防ぐためにフォース感応者にしか扱うことが出来なかった。

 

「これを渡すようにと依頼を請けた。 報酬は既に貰っている」

 

ジャンゴはヘルメットを外しながらそう言って、ホロクロンをヴェリウスに投げてよこす。

手に収まるような小さな依頼物を預かり、指定した人物が訪ねてくれば渡すだけと言う幼い子供にでも出来るお使いのような依頼。

たったそれだけの依頼だったが、ティラナスは破格の依頼料を提示してきた。

断る事も出来たが、そうはしなかった。

もう一度、この男(ヴェリウス)に会ってみたかったのかもしれない。

ジャンゴは、そう心の中で思うのだった。

 

「彼がこれを?」

 

私はそのホロクロンを開こうとするが、何故か上手くいかない。

何か仕掛けがあるのかもしれない。

 

「・・・開かないけど?」

 

「・・・俺に言うな。 俺はただお前にそれを渡すように依頼されただけだ」

 

彼は呆れたような表情をしながらそう口にする。

ジャンゴの言う事はもっともだ。

そもそもホロクロンはフォース感応者にしか扱えない。

彼がフォースを操る賞金稼ぎと言うなら話は別だけど。

 

ただ・・・・・

 

「私にも開けられないとなると・・・彼はホロクロンの事を何か言ってなかった?」

 

「『終わりの始まりに開く』そう言っていたよ」

 

そう答えたのはボバだった。

彼が答えたことに意外そうな顔をしているのは私だけでなかった。

 

「奴がそう言ったのか?」

 

「うんパパ、去り際にそう呟いたのを聞いたんだ」

 

「・・・だそうだ」

 

終わりの始まりに開く?

マスターがそう言ったのだとしたら、何か意味がある事なのだろう。

けれど現状では、その意味を知る術は無かった。

 

「・・・分かった、2人ともありがとう」

 

私は彼らに礼を示し、出口に向かって歩き出す。

外に出た所で、ジャンゴに呼び止められた。

 

「おい、仕事がある時は連絡しろ」

 

「・・・え?」

 

「なんだ、その顔は?」

 

「いや、私にそんな事を言うなんて意外だったから」

 

彼らはクローン大戦の開戦のきっかけになったジオノーシスの戦いの際に、分離主義勢力側にいた。

加えて賞金稼ぎというのは、ジェダイのような人種を極端に嫌う。

意外に思っても不思議じゃないでしょ?

 

私は再び礼を言ってその場を後にする。

賞金稼ぎと時間を共にするという不思議な経験だったが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

 

 

 

「変な奴だったね」

 

「そうだな、ここも知られてしまった」

 

「(他の場所に)移る?」

 

「・・・いや、奴なら問題ないだろう」

 

『それに他へ移ってしまえば依頼を請ける時に困る』とジャンゴは口にする。

依頼なんて遠隔でいくらでも請けられるのに、敢えてそう口にする様子からも父が楽しそうにしているように感じた。

そしてボバもまた、父の気持ちが何となく分かるのだった。

 

 

 

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<惑星ウータパウ>

 

あ、オビ=ワンだ。

髭を撫でながら考え事をしているようだ。

眼下ではグリーヴァスが分離主義勢力の幹部らに、惑星ムスタファ―に行くように命じているのを確認できる。

 

グリーヴァスは無数のバトル・ドロイド達に護衛されており、どう対応するべきか決めかねているようだ。

 

 

ジャンゴが潜んでいた惑星から目的地であるこのウータパウは割とすぐの距離にあり、短時間のジャンプで辿り着いた。

ウータパウ行きが決まり、すぐにファイターでジャンゴ・フェットの下へ向かったことで、私にはかなりの時間的余裕が生まれた。

 

オビ=ワンは軍を率いる必要がある為、出発までの準備と言うのもそれ相応の時間が掛かる。

武器・弾薬、兵器や食料、燃料関連や細かい装備品、兵站という所まで考えると軍隊と言うのは非常に多くの物が必要なのだ。

それらをどの位の期間分が必要なのか?補給は来るのか?

様々な要因で決まってくるが、とにかく部隊を動かすには準備にも時間が掛かる。

 

その時間を利用して、私の単独行動をするゆとりが生まれた。

寧ろ少し時間が余ったくらいだ。

それが功を奏して付近を偵察する事も出来た。

 

 

オビ=ワンの後ろでは、ヴァラクティルと呼ばれる四足歩行の生き物が控えている。

このウータパウで騎乗用の生物として飼いならされており、非常に忠誠心が高く、頭の良い生物だ。

鮮やかな緑色の鱗と頭から背骨に沿って生える青緑色の体毛を持つ大きなトカゲ?の様な見た目をしている。

しかし、嘴は鳥類系のように鋭い形状をしている。

 

静かにヴァラクティルに近づき、驚かさないように彼?彼女?自身で私を認識させる。

悪意が無いと分かったのか、ヴァラクティルは警戒心を解いてくれる。

 

本当に頭の良い子だね。

私は新しい大きな友人の身体を撫でる。

体長は15m程だろうか?

立派な体躯をしている。

 

「あ、君は女の子なんだ。 とても美人だね」

 

ヴァラクティルから感じるフォースで、彼女が雌だということが分かる。

そう言いながら頭を撫でていると、彼女は気持ちよさそうに目を細め、鳴き声を発している。

そこでようやくオビ=ワンが私の存在に気が付いた。

私が声を発しないと気が付かないなんて、まだまだですねオビ=ワン?

 

「ヴェリウス!? お前いつからそこにいた!?」

 

「少し前からです。 グリーヴァス・・・やはりこの星に潜んでいたんですね」

 

私は眼下でヌート・ガンレイらに指示を出しているグリーヴァスに目を移す。

奴を捕らえれば・・・・・

 

「ああ、だがかなりの護衛の数だ。 そのままノコノコ出て行っても蜂の巣に—————」

 

「ちょっと失礼しますね」

 

私はそのままグリーヴァスの下へ飛び下りる。

オビ=ワンは驚いた様子だったようだが、上に置いてきてしまったから確認のしようがない。

 

 

 

 

「こんにちは」

 

ヴェリウスは下のフロアに着地し、背を向けているグリーヴァスに声を掛ける。

彼の存在に気が付いたグリーヴァスの護衛であるIG-100マグナガード2体と、周囲に展開しているバトル・ドロイドが武器を構える。

 

「ん? 誰だ、貴様は?」

 

「おいヴェリウス!」

 

遅れて登場したオビ=ワンは、まずヴェリウスに向かって不満を口にする。

対してグリーヴァスにとっては、またもや歓迎されない人物の登場だ。

 

「ケノービ将軍! ふはははははっ! 貴様はこの小僧のお守か?」

 

「・・・ですって父上?」

 

「冗談はやめてくれ・・・それよりもヴェリウス、何か作戦はあるんだろうな?」

 

「いえ、特には。 ですがこの程度のドロイドは驚異の内には入りません」

 

オビ=ワンからすると、ヴェリウスが無策で飛び込むような事はしないと思っていたばかりに意外な返答だった。

そのままヴェリウスは、静かに前へ進み出る。

 

「ふはははははっ、馬鹿なガキだ。 殺せ!」

 

グリーヴァスが護衛のマグナガード2体に命令を下す。

その命令を受け、それぞれが手に持つエレクトロスタッフを起動する。

電導性に優れた素材で作られているこの棒状の武器は、電磁モジュールから発生するエネルギー帯によってライトセーバーによる攻撃を防ぐことも可能だ。

出力の調整によって、相手を衰弱させるレベルから致死量のエネルギーを与えることまで出来る。

 

「オビ=ワン?」

 

「どうした? 面倒な方を押し付ける気か?」

 

「まさか、貴方の手を煩わせる訳にはいきません」

 

ヴェリウスは『周りのドロイドをお願いします』とオビ=ワンに伝える。

彼はグリーヴァスと護衛のマグナガードを引き受けると言う。

1体でも並みのジェダイ・ナイトと渡り合える性能を誇るマグナガードを2体、加えてドロイド軍の司令官であるグリーヴァスを。

 

静かにその場に佇むヴェリウスに向かって、2体のマグナガードが接近する。

 

「・・・“抜く”までもないか」

 

マグナガードの様子を伺っていたヴェリウスは、脱力していた腕を胸の高さまで持ち上げる。

その行為は生物が呼吸をするのと同じような、至極自然な動作だった。

もはや“意識”すら感じさせないその動きに、機械であるはずのマグナガードも反応を示さなかった。

ヴェリウスの前まで進んだマグナガードは、その手に持つエレクトロスタッフを振り上げる。

 

 

—————その殺人的な攻撃が、ヴェリウスの命を刈り取ることは無かった。

ヴェリウスに攻撃を加えようとしたマグナガードは、左右からプレス機に掛けられたかのように、みるみるうちに圧縮されていく。

そして、あっという間にグリーヴァスの護衛は高級な素材をふんだんに使った球体になってしまった。

 

「“これ”、返すね」

 

ヴェリウスはそう言いながら、フォースを用いて球体を飛ばす。

反射的にそれを避けたグリーヴァスだったが、驚きの目を隠せない。

幾度となくジェダイと戦いを繰り広げてきたが、マグナガードに対してライトセーバーを用いないどころか、原形を留めない程に潰した者などいなかったのだ。

 

その間にも残りのマグナガードがヴェリウスに攻撃を仕掛ける。

グリーヴァスと違い、完全な機械であるマグナガードには感情など無かった。

感情があれば、無策に攻撃を仕掛けるようなことはしなかっただろう。

 

彼はマグナガードの頭を、腕を、脚を引きちぎっていき、それを同じようにグリーヴァスに飛ばす。

回避を諦めたグリーヴァスは、腰部に装備していたライトセーバー二振りを起動してそれらを切り刻む。

その瞳は目の前に立つジェダイに対する憎悪の炎に燃えていた。

 

「殺してやる!」

 

そう言うとグリーヴァスは腕を分割し、腰部に装備されていた残りのライトセーバーを取り出す。

計四本の腕には、それぞれ青と緑のライトセーバーが握られている。

 

「君が、私を?」

 

ヴェリウスからすると、単純な疑問を投げかけただけだったが、グリーヴァスは嘲笑と受け取ったようだ。

怒りを滲ませながら、手首を回転させて構えを取る。

 

そこに、もはや胴体だけとなり動くことが出来ないマグナガードをフォースで飛ばす。

メインコンピューターが胴体にあるマグナガードは首を飛ばされようが、脚を飛ばされようが機能を停止する事はない。

しかし、自らの主人が起動したライトセーバーによって、完全に機能を停止するのだった。

 

「ゴホッ、ゴホッ・・・馬鹿め、ジェダイの技はドゥークー伯爵からすべて教わっておるわ!」

 

「・・・なに?」

 

ヴェリウスがフォースによって投げつけた攻撃を防ぎ切ったグリーヴァスは、自分の実力の高さをアピールする。

 

ライトセーバーを使わなくとも奴を倒せると踏んでいたヴェリウスは、グリーヴァスが本当にドゥークーから技を教わっているのであれば、それを確かめたいと思ってしまった。

 

静かに腰からライトセーバーを取り出すと、静かに起動する。

その銀色のヒルトからは、白色に輝くプラズマが発生する。

 

その純白に輝く刀身をみたグリーヴァスは目の色が変わる。

今まで多くのジェダイを倒し、ライトセーバーをコレクションとして奪ってきたが、白いライトセーバーを見たのは初めてだったのだ。

『欲しい』

そう心の中で思うグリーヴァス。

 

「ふはははははっ!」

 

新しいコレクションが増える事に喜びを覚えたグリーヴァスは、笑い声を上げながら手首を高速で回転させる。

2本のライトセーバーがとてつもない速度で回転する事で、周囲は甲高い音が鳴り響く。

その回転しているセーバーは地面と接触し、火花を散らしている。

 

しかしヴェリウスはその様子を静かに佇み、傍観する。

彼にとってグリーヴァスの行動は、威嚇にも動揺を誘う行為にもならなかった。

 

ライトセーバーによる攻撃が届く距離まで近づくと、グリーヴァスは力強い斬撃を繰り出した。

4本の腕による多方向からの攻撃は、今まで多くのジェダイの命を刈り取ってきた。

フォースによる先読みや、驚異的な反射神経を備えるジェダイでも、この攻撃を防ぐことが出来る者はそう多くない。

 

しかしヴェリウスは、自身を襲う攻撃を最小限の動きで“いなし”、あえて懐に入ることで身体の大きく、腕が長いグリーヴァスの動きを制限している。

思うように戦えないグリーヴァスは雄叫びを上げながら、その攻撃を激しくする。

 

しかし、グリーヴァスの繰り出す攻撃は時に空を斬り、時に純白のライトセーバーによって受け流され、対峙するジェダイの身体に傷を付けることは叶わなかった。

 

「随分と独特な剣技だね。 本当に“彼”に技を教わったの?」

 

グリーヴァスがドゥークーに教わったのは殆どがジェダイの戦法であり、技術には興味がなかった。

戦い方を知れば、その弱点を知れる。

敵であるジェダイと同じ技術を用いる事を是とはせず、独自の戦闘スタイルを用いた。

そして、その方針はある意味では正しかった。

正攻法とはとても言えない戦い方に、多くの若いジェダイや戦技に重点を置かない者は翻弄され、欺かれ、貶められた。

そして彼は自慢のコレクション(ライトセーバー)を増やしていった。

 

だが、目の前の敵にはそれが通じない。

フェイントも、連撃も、力を込めた一撃も、奴の身体を切り刻むことは出来なかった。

 

「があぁぁぁぁ! 何なのだ貴様は!!」

 

そう口にしながら、より一層嵐のような攻撃を激しくする。

しかしヴェリウスは汗一つ流さず、その美麗な顔を崩すことなく淡々と作業を繰り返す。

 

その場にはヴェリウスが用いる純白の光剣と、彼の持つ白金の長髪が合わさって舞踏会や演舞のようにも見える。

 

しかし、その光景は突然終わりを迎える。

第212突撃大隊の大部隊が現れたのだ。

歓迎しない来客に対応を追われる分離主義勢力のバトル・ドロイド達。

 

この状況では惑星の封鎖も完了しており、生き延びるには奴らを皆殺しにするしかない。

そう考えたグリーヴァスは、自分だけでも助かる道を画策する。

しかし、逃げるにも目の前の男(ヴェリウス)が邪魔だった。

 

「無駄だよ、どこへ逃げようとも」

 

「がははははっ! 貴様のライトセーバーをコレクションに加えるのはまたの機会だ!」

 

そう言うと、グリーヴァスは突然下のフロアへと飛び降りる。

地を這う蜘蛛のような姿勢で、素早く移動すると特徴的なホイール・バイクに乗り込む。

そのバイクの進路上にいたクローン・トルーパーを薙ぎ払いながら、グリーヴァスは高速でバイクを操り、崖の向こうに消えて行った。

 

「ヴェリウス! 奴を逃がしてどうする!?」

 

部隊を指揮しながら、戦いの行く末を見守っていたオビ=ワンが声を荒げる。

しかし、その声を受けてもヴェリウスは落ち着いていた。

 

「大丈夫ですよオビ=ワン、それよりも彼女をお借りできますか?」

 

 

 

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<惑星コルサント 作戦指揮所>

 

『ヴェリウス将軍がグリーヴァスと対決、部隊も攻撃を開始しました』

 

「ご苦労、コーディー。 動きがあれば報告を」

 

「イエッサー。 コーディー、アウト」

 

ホログラムを通してコマンダー・コーディーの報告を受けていたメイス・ウィンドゥは、通信を終了して傍らに控えているアナキンに向き直る。

 

「現状を最高議長に報告するんだ。 その反応で彼の意図を読むことが出来るはず」

 

「はい、マスター」

 

メイス・ウィンドゥの指示を受けたアナキンは、その場を後にする。

その背中を見送ったウィンドゥは、同じくホログラムに映し出されているヨーダと、キ=アディ=ムンディ、トワイレックのアイラ・セキュラに向き直り、独り言のように呟く。

 

「議長の狙いはジェダイの破滅だ・・・身近にフォースの暗黒面を感じる」

 

『グリーヴァスを倒した後も非常時大権を手放さない時には、辞任を強要しなくてはな』

 

「ジェダイ評議会が一時的に元老院を支配する事もやむなしか・・・」

 

『最高議長がシスの暗黒卿の手先だとお考えですか?』

 

そう語るのはムンディとウィンドゥだ。

そしてその会話に付随して、アイラ・セキュラが評議員らに疑問を投げかける。

彼らはシーヴ・パルパティーンがジェダイの滅亡を狙っており、同時にシス卿の手の内だと考えていた。

 

『うーむ・・・いずれにせよ、事態は我らにとって最も好ましくない状況に向かっておることはたしかじゃ。 細心の注意が必要じゃ』

 

 

 

 

<元老院最高議長のオフィス>

 

メイス・ウィンドゥの命を受けたアナキンは、ウータパウでの戦況を報告するために議長のオフィスを訪れていた。

 

「失礼します。 マスター・ケノービからグリーヴァスと交戦中との報告が入りました」

 

「“マスター・ヴェリウス”の健闘を祈るしかないな」

 

「・・・僕も共に行くべきでした」

 

俯きながらそう口にするアナキン。

グリーヴァスの戦いには、自分の助けが必要だと考えているのだ。

 

「評議会が君の才能を遊ばせているのが腹立たしい・・・マスター・ヴェリウスと力を合わせれば万が一の失敗もあり得まい」

 

評議会がどうして君にジェダイ・マスターの地位を与えないか分かるか?と続けるパルパティーン。

その問いにアナキンは、『分からない』と答える。

自分が評議会に信頼されておらず、全てを教えようとしない事に不満もあると口にする。

 

「そうだろうな、君の力がさらに増せば自分たちの手に負えなくなることを分かっているのだ」

 

ジェダイが張り巡らした嘘偽りの霧から抜け出す必要がる、と続ける。

その場に立ち上がり、アナキンの肩に手を置きながら。

 

「フォースの全てを知りたければ手を貸そう」

 

「何ですって? どうして貴方がご存じなのですか?」

 

「私の師から学んだのだよ、暗黒面が如何なるものかを」

 

パルパティーンは暗黒面について知っており、フォースの全てを知りたければ手を貸すと口にする。

そしてアナキンは、この部屋で最初の会話を思い出す。

 

「暗黒面を知っていると? ・・・・・それに僕はマスター・ケノービがグリーヴァスと交戦中と申し上げた。 ヴェリウスが戦っているとは一言も言っていません」

 

アナキンの目に警戒の色が浮かぶ。

長年見守り、親切にしてくれていた相手が突然全く知らない人のように感じた。

 

「アナキン、大いなる神秘を解き明かすにはあらゆる側面から学ぶ必要がる。 ジェダイの独断的で狭い視野では不可能だ。 賢明で完璧な指導者になりたければフォースの全てを知り、受け入れるのだ」

 

どのジェダイよりも強い力を身に着けたければ自分に従え、とパルパティーンは語る。

目の前にいる人物は、今までの人物とは明らかに違っていた。

信頼し、尊敬し、忠誠を誓った議長はもう存在しなかった。

 

「フォースの暗黒面を学べば、お前の大切な者・・・死の運命にあるパドメを救うことも出来る。 私の知識を用いるがよい」

 

「シスの暗黒卿・・・!」

 

アナキンは懐からライトセーバーを取り出し、起動する。

青く輝く光剣は低い起動音を発しながら、シス卿に向かって立ち昇っている。

 

「まずは聞け、お前の悩みは分かっている。 いつまでも評議会の駒でいたくはあるまい」

 

それを聞くアナキンの目は怒りに燃えていた。

彼の纏う雰囲気も、より尖り、冷たくなっていく。

今まで信じ、良い人だと思っていた人物に裏切られた気分だった。

 

「・・・私を殺す気か?」

 

「ああ、殺してやりたい!」

 

その殺気を受けても尚、パルパティーンは落ち着いていた。

対するアナキンは、目の前にいるシスの暗黒卿に対する怒りが時間の経過と共に増大させる。

 

「そうだろうな・・・その激しい怒りがお前を強くする」

 

そう言われたことで、自分がシス卿の思惑通りに行動していることに気が付く。

アナキンは湧き上がる怒りを抑え、ライトセーバーを停止させる。

 

「・・・身柄をジェダイ評議会に引き渡す」

 

「それも良かろう、だが忘れぬことだ。 ジェダイの真の狙いを—————」

 

「・・・」

 

「—————暗黒面を学び、力を我が物にすれば死の運命にあるパドメを救うことも、あのヴェリウスをも超える力を手に入れることができる」

 

アナキンはパルパティーンの発する言葉一つ一つに揺れ動かされていた。

しかし今は、パルパティーンにずっと欺かれており、裏切られたという感情が強かった。

 

アナキンは何か考える素振りを見せると、評議会への報告の為にシス卿に背を向ける。

彼が悩み、苦しんでいることはその重い足取りを見れば明らかだった。

 

その背を静かに見送った暗黒卿の顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。

ジェダイ評議会に正体が知られることなど、既に関係のないことだった。

 

「時は満ちた・・・若きスカイウォーカーは必ずや余の僕になる。 新しい秩序、理、銀河帝国の誕生は近い・・・!」

 

長年の計画が成就する日が近いことを確信し、一人の暗黒卿の笑い声が響き渡るのだった。

 




はい、お疲れさまでした。
お待たせして申し訳ありません。

EP2のジオノーシス戦ではヴェリウスとパドメの乱入により、ジャンゴ・フェットは生き延びていましたね。
パドメを拘束し、連れ去ったジャンゴは怒りと悲しみの感情が溢れ出すヴェリウスと対峙した際に、普通のジェダイとは異なるヴェリウスに興味を抱いたようです。

いよいよクライマックスに向けて動き出し始めたので、非常に楽しみです。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

それではまた近いうちに・・・・・

今後の展開について、読者の皆様のご意見を頂ければと思いアンケートを実施させて頂きます。宜しければワンクリックをお願い致します!

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