みどり色です。
今回は主人公の弟子であるティア・アテミスに割とフォーカスした回です。
今後の展開も考えて、ティアというキャラクターに触れて欲しいという考えから書きました。
例に漏れず、今回も展開が遅いです。
細かい描写などをしていくと、どうしても文字数ばかり増えて進みが遅くなってしまうのは悩むところです。
『テンポよく進めろよ!』等の苦情はX(Twitter)かコメントまで()
<惑星ウータパウ 離着陸プラットフォーム>
ティア・アテミスはヴェリウスの命により、ウータパウに存在する秘密のファイター発着場にいた。
いつの間にかこの星に来ていただけでなく、周辺の偵察までしていた自らのマスターに彼女は驚きを隠せなかった。
出会った頃に比べれば慣れてきたとはいえ、マスターには驚かされてばかりだ。
それだけ危険な任務を任されることも多く、仕える身としては心配が絶えない。
それでも、初めに比べてマスターが私を頼りにしてくれるようになったのは単純に嬉しかった。
弟子になった当初は必ず自分の傍に居させるか、危険だと判断した時は待機を命じられることも少なくなかった。
特定のクローン部隊を率いていないマスターは、本当に忙しそうにしていた。
決まった部隊を与えられていないという事は、それだけ様々な任務を与えられ、使い勝手が良いと言える。
評議会はあえてこの立場にマスターを置いた。
ジェダイ評議会も、もっとマスターを労わって欲しいものだ。
困ったら『とりあえずヴェリウスに任せるか』という風に思っているように感じてならない。
確かにマスターは与えられた任務を必ず成功させ、評議会が期待している以上の成果を報告してくる。
それに慣れてしまうと、マスターに求めるレベルは必然と高くなり、彼らからすると“この成果は当たり前”となってしまう。
当たり前になってしまうと、本来他のジェダイに任せて良いレベルの任務でも、上げてくる成果がマスターよりも劣ったものになり、これまた必然的にマスターへの任務付与率が上がってしまう。
それでは、マスターの評価が上がらないように思ってしまう。
何故なら『当たり前の任務を当たり前の成果で終わらせる』という認識になるから。
彼はもっと敬われるべきだし、最高のジェダイなのは間違いない。
それを評議会のマスター達は理解するべきだ。
・・・ふぅ、愚痴っぽくなってしまったが評議員達はもっとマスターの負担を減らすべきだし、もっと評価すべきだ。
そういった事に関心がないマスターは、自分がどれほど素晴らしく、優秀な人間かを絶対に分かっていない。
・・・それも含めて魅力的な人なのだけれど。
彼を最も理解しているのは私だ。
マスターを想う気持ちも。
この気持ちを伝えたいけど、禁じられていることは理解している。
けど、マスターも同じように考えていて、私たちが結ばれるという想像をしていることも事実だ。
ティアがマスターであるヴェリウスの事を考えていると、遠くからビークルが接近してくるような音が聞こえる。
既に戦闘が始まっているのは確認済みであり、ヴェリウスからここに“奴”が来るかもしれないから足止めを頼むと指示を受けていたのだ。
「ん? 誰だ、貴様は?」
ホイール・バイクを停止させたグリーヴァスは、自らのファイターの傍らに佇む人物を確認し、声を掛ける。
その手には既に2本のライトセーバーが握られている。
『奴がこの場に来たという事は、マスターはグリーヴァスを取り逃がしたということ? それとも何か別の思惑があるのかしら?』
ティアは心の中でこの状況に至った経緯などを考えるが、直ぐにその思考を停止させる。
今は目の前の敵に集中すべきだと考えたからだ。
幾度となく実力あるジェダイから逃げ延び、多くのジェダイの命を奪ってきたグリーヴァスを相手に、油断も手を抜く選択肢も無かった。
ティアは静かに腰から銀色のヒルトを取り出し、起動の為のスイッチを操作する。
そこからは緑色に輝く刀身が出現し、辺りに低い起動音が響く。
「がははははっ! この星を去る前に良い土産ができたわ!」
グリーヴァスはヴェリウスのライトセーバーを手に入れられなかった代わりとして、ティアのセイバーに目を付けたのだ。
『ゴホッゴホッ』と咳をしながら、グリーヴァスは腕に持つ2本のライトセーバーを起動する。
「苦しまずに殺してやる!!」
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□遡ること数年前
私はマスター・ヴェリウスのパダワン見習いとなった事で、今までの生活が一変した。
様々な任務を与えられるマスターに同行する事で、紛争や外交、そして分離主義者との戦争に身を投じてきた。
ジェダイ評議会がマスターに大きな期待を寄せていることは理解しているけど、あまりに忙しすぎる気がする。
そんな中でもマスターは愚痴一つこぼすことなく、少しでも時間を見つけては私に訓練を施してくれる。
◇
<ジェダイ聖堂 訓練場>
ヴェリウスとティア・アテミスは任務の報告の為にコルサントへと戻ってきており、聖堂にある訓練場へと足を運んでいた。
「もう一度」
「はぁはぁ・・・はい、マスター」
ヴェリウスは弟子のティアに声を掛けると、対ライトセーバーの訓練が再開される。
既に立ち合いは両手で数えられる回数を超えている。
ヴェリウスはフォームⅡマカシの構えを取り、ティアは自らの師匠が用いるフォームⅤシエンの構えだ。
ライトセーバー戦における型の相性としては、マカシに対してティアが構えるシエンは選択として正しかった。
ヴェリウスは姿勢よく立ち、左腕は後ろに組んでいる。
右手に持つライトセーバーは下段に構えられ、その立ち振る舞いはまるで貴族の様だった。
ティアはその立ち振る舞いに尊敬以上の感情が湧くが、すぐに思考を切り替える。
勝てる可能性は万に一つも無いが、惚けてよい理由にはならない。
少ない時間で、彼は自分を鍛えてくれているのだ。
その期待に応えなくては、と。
ティアは乱れる息を整え、ライトセーバーをしっかりと構え直してヴェリウスと対峙する。
その優雅な佇まいに、隙を見つけ出すことができない。
どこを攻めても、優位に運べるイメージを浮かべる事ができない。
ヴェリウスの顔を見ても、どこか微笑んだような表情を崩さないでいた。
「ティア、もう始まっているよ?」
「わ、分かっています!」
赤面したティアは、その勢いのままセイバーを振るう。
ヴェリウスはこの対決が始まっていることに弟子が気づいていないなら悪いと感じてそう言ったのだが、ティアは攻めあぐねていただけだった。
しかし恥ずかしさが上手い具合に緊張を解き、ティアは力を込めた斬撃を振るった。
その攻撃を一歩後ろに下がる事でヴェリウスは回避する。
避けられることは想定していなかったのか、ティアは空振りしたことで体勢を崩してしまった。
その隙を見逃さず、ティアの膝関節に軽いフォース・プッシュを繰り出し、彼女は片膝を着いてしまう。
「常に先を読み、一つ一つの動き繋げることで隙は少なくなる」
ヴェリウスは手を差し出しながら、そう口にする。
ティアは師匠の手を借りながらその場に立つ。
彼の身体に触れたことで、ティアはフォースを通して思念を受け取る。
ヴェリウスは弟子のことを心配し、任務でも命を落とさないように気にかけていることが伝わってくる。
その為には弟子を強くすることが大切だと。
その思念を受け、ティアは強くならなければいけないと改めて思うのだった。
いつまでも守られ、後ろに隠れているような関係ではいたくないのだ。
マスターに心配をかけているようでは彼の隣には立てない、と。
そしてセイバーを構え直し、先程とは違って冷静に相手の動きを読みながら攻撃を開始する。
剣技の精度を重視するフォームⅡマカシは、力強い攻撃や、その連撃に弱い一面がある。
ティアはそのマカシの繊細なバランスを崩す為に、ヴェリウスの動きを見ながら連撃を加えていく。
後ろに下がりながら、ティアの斬撃を防ぐヴェリウス。
今度はあえて避けることはせず、彼女からの攻撃を自らのセイバーで受けていた。
一撃、一撃を確かめるように。
しかし、一向にヴェリウスの体勢を崩せないティアは焦り出していた。
『フォームの相性は良いはず・・・だが一向に状況が変わらない』
その現実が、意識が、彼女の剣技を鈍らせていた。
それを見て取ったヴェリウスは、手首のスナップを効かせてティアのライトセーバーを絡め取る。
突然、手の中からヒルトを握る感覚がなくなり、青く輝く刀身が突きつけられるティア。
「少し休憩しようか」
『頑張ったね』とヴェリウスは弟子を労い、セイバーを腰にしまうと自らが絡め取った弟子のライトセーバーを拾いに行く。
彼女の下に戻ると、ティアは俯いていた。
「? どうしたの?」
『疲れちゃったかな?』と心の中で思うヴェリウスだったが、彼女の内心は違っていた。
「マスターは本当にお強いです・・・相性の良いはずの型で何度も挑んだのにも関わらず、私は何もできませんでした」
彼女は悔しがっていた。
強くなりたいと決意し、今の自分にできることを出し切ったが結果的には何もできなかったのだ。
ヴェリウスの弟子になり、短い期間ではあるが様々な経験もした。
少しでも成長した所を見せて、彼に喜んで欲しかったのだ。
「ティア、君は本当によくやっているよ? いつの間にシエンを覚えたの?」
「マスターのお姿を・・・いつも見ていましたから」
そう、ティアは師であるヴェリウスのことをいつも一番近い所から見ていた。
直接剣技を教わる時間が少ないからこそ、師の動き一つ一つを見逃さないように。
「君は器量が良い、私よりもずっとね。 それにライトセーバー戦における型の相性に目を付けるのも流石だよ。 最近のオーダーは対ライトセーバー戦をそこまで重視してなかったからね」
ヴェリウスは弟子の頭を撫でながらそう口にする。
それは心からの言葉であり、ティアもそれをしっかりと感じていた。
この状況が心地よく、先程までの疲れが減少していく。
「でも全てが教科書通りとはいかない。 相性が良いからと言って必ずしも勝てる訳じゃない、それは君も分かっているでしょ?」
「はい、マスター」
対ライトセーバー戦において、型の相性と言うのは非常に重要な要素となる。
近しい実力を持つ者同士が対決すれば、型の相性が良い方に戦況は傾くだろう。
しかし、それ以上に大切なのは地の力だ。
元々の実力が劣っていれば、優れた型を扱おうとも勝負にはならない。
イニシエイトが有利な型を使おうとも、マスタークラスには勝てないことは誰でも分かる事だろう。
加えて、扱う本人の適正と言う問題もある。
ヴェリウスはこれについて話し出す。
「君は私が主に扱うマカシやシエン、ジュヨーを鍛錬しようと思っているよね? それは決して間違ってはいないし、多くの師と弟子がそうしてきた」
『私を含めてね?』と続ける。
ヴェリウスも、当初は師であるドゥークーが駆るフォームⅡマカシの習得に勤しんだのだ。
ティアは彼の言葉に相槌を打つ。
「でも正解でもないんだ。 ライトセーバー戦に相性があるように、それを扱う本人にも型との相性がある」
「型との相性ですか?」
「うん、例えばオビ=ワンは初めの頃フォームⅣアタロを使っていた。 これは彼の師であるマスター・クワイ=ガンがそうだったから」
「知りませんでした・・・」
「そして色々考えた結果、彼はフォームⅢソレスを極めることに決めたんだ。 結果的に、彼はあのマスター・ウィンドゥに“ザ・マスター(※)”と呼ばれるほどの腕前になった」
※ソレスを極めし者
変則的でアクロバティックな動きと、一撃の攻撃力よりも連撃と機動性に特化したヒット&アウェイを戦法として用いるフォームⅣアタロ。
対して、攻撃力や機動性よりも防御を優先し、堅牢で効率的、必要最小限の動きに重きを置いたカウンターを得意とするフォームⅢソレス。
全く異なるフォームだがオビ=ワンの場合ソレスが向いていた、と話すヴェリウス。
「アナキンを見てみれば分かるだろうけど、彼はマスターの得意なフォームを使っていない。 自分には攻撃性の高いフォームが合っていると早い段階で気づいたんだ」
「という事は私も・・・」
「うん、自分にあった型を見つけて鍛錬するのが良い。 今まで君の癖や動き、力の入れ具合、性格なんかを見ていて分かったけど—————」
ヴェリウスは『私が教えてしまっても良い?』と口にする。
それは彼の優しさだった。
自分に教えることもできるが、本人自らが気付くことで得る物があるからだ。
「・・・いえ、私が探します。 自分に合った型を」
彼女の顔からは、先程までの悩むような表情は消えていた。
自分に目標ができ、その為の道筋も見えたのだ。
「うん、その方が良いし君ならできる」
私の期待の弟子なんだから、とヴェリウスは再びティアの頭に手を置くのだった。
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□現在
<惑星ウータパウ 離着陸プラットフォーム>
向かってくるグリーヴァスに対して、ティアは弓を引くような独特な構えを取る。
ドロイドの将軍は、構わず手に持つ二振りのライトセーバーで斬撃を繰り出す。
図らずも師と同じように、ティアはあえて距離を詰める事で敵の攻撃が最大限発揮される位置よりも手前で斬撃を防ぐ。
グリーヴァスの手首を回転させながら多方向から仕掛ける攻撃に、ティアの防御は弾かれる。
しかし、その勢いを利用して遅れたカウンター気味の攻撃を返す。
攻防一体の技術は、フォームⅢソレスの得意とするところだ。
しかし、ティアのカウンターはタイミングが遅れたことで有効打とはならない。
ドロイド軍の将軍は両手に持つライトセーバーを使って彼女の攻撃を防ぐと同時に、もう一方のセイバーで斬撃を加える。
その攻撃に対して、ティアは手首のスナップを使うことで素早い防御転換を行っていた。
これは師の用いるフォームⅡマカシの技術を応用したものだ。
マカシやシエンと言った単純な攻撃的なフォームは、彼女には合わなかった。
しかし、苦手なフォームだからと言って学びがないわけではない。
彼女はそれに気づき、自分の用いられる技術として一部を昇華したのだ。
グリーヴァスの攻撃を何とか防いでいるティアだったが、その実力差には明らかな開きがあった。
派手さで相手を威圧し、混乱させるグリーヴァスの戦法だったが、彼女は師に教わった通り視覚情報に惑わされないように心掛けた。
加えて人間の身体のような“しなやかさ”を持たない機械の身体は、癖やタイミングを掴んでしまえば軌道を予測する事は不可能では無かった。
すぐに片が付くと踏んでいたグリーヴァスは考えを改める。
見た目はか弱い人間の小娘だとしても、相手はジェダイだ。
警戒し過ぎるという事は無いだろう、と。
「ゴホッゴホッ、少しはやるようだな小娘! 先程のジェダイ野郎といい、邪魔な連中だ!」
「“先程のジェダイ”?」
「金髪の小賢しい小僧だ! 忌々しいジェダイめ!」
そう吐き捨てると、グリーヴァスは連撃を叩きこむ。
左右から飛んできた斬撃は、生物を一瞬で事切れさせる力を持つ。
しかしティアは、グリーヴァスの後方に跳躍することで回避する。
グリーヴァスは振り向きざまにライトセーバーを繰り出すが、ティアは両手で持つ緑色の光剣で受け止める。
間髪入れずにグリーヴァスはもう一方のセイバーで、ティアのプラズマの刃を殴りつけるように攻撃する。
弾かれたティアは距離を取る。
パワーという一点で見ても、グリーヴァスの方にアドバンテージがある。
無理に力比べをする意味はないと考えたのだ。
『マスターからの指示は、奴がこの場に来た時の足止めであり決して無理をしないように、との事だったけど・・・』
ティアはライトセーバーを構え直して、状況を見据える。
「・・・その“金髪のジェダイ”はどうしたのかしら?」
彼女は時間稼ぎの一手に移る。
対してティアからそう投げかけられたグリーヴァスは、一つの考えが浮かぶ。
“奴”を利用すれば、こちらに有利に働くと。
「ゴホッゴホッ、なんだ? 奴が気になるのか?」
「・・・」
ティアは答えない。
ドロイドの将軍は、それを肯定と受け取った。
いつもそうだ。
ジェダイは師と弟子、それぞれと深い関りを持つばかりに隙が生じる。
これを見逃す手はないと考えた。
「がははははっ! 奴はこの手で切り刻んでやったわ!!」
それを聞いたティアは俯く。
間違いない、この小娘は奴の弟子なのだ。
それを確信したグリーヴァスは、一気にティアへと距離を詰める。
そしてグリーヴァスは、俯き、身体を振るわせているティアへと向かってライトセーバーを突き立てる。
次の瞬間、その場に一つの銀色に輝くヒルトが落ちる。
そのライトセーバーは重力に従って地面である離着陸プラットフォームとぶつかり、周囲にその音が木霊するのだった。
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□時は少し遡り
「ヴェリウス! 奴を逃がしてどうする!?」
「大丈夫ですよオビ=ワン、それよりも彼女をお借りできますか?」
声を荒げるオビ=ワンに対して、冷静な様子のヴェリウスはヴァラクティルを貸して欲しいと言う。
それを聞いたオビ=ワンは、呆れた様子で口を開く。
「はぁ・・・追いかけるなら、みすみす逃がす必要は無かったんじゃないのか?」
「いやぁ、逃がすつもりは無かったのですが」
ははは、とヴェリウスは戦場であるこの場には似つかわしくない笑みを浮かべる。
それを見たオビ=ワンは、また一つ溜息をつく。
『宜しくね』と言いながらヴァラクティルに跨ったヴェリウスは、先程とは違い真面目な雰囲気でオビ=ワンに声を掛ける。
「オビ=ワン、この任務が決まった頃から何か嫌な予感がするのです。 感じますか?」
「いや、特には感じないが・・・」
だがオビ=ワンは分かっていた。
ヴェリウスの強大なフォースは、自分には感じない深い部分まで敏感に反応するのだと。
その為、彼の言葉を『気のせいだ』と吐き捨てることは無かった。
「何か・・・大きなことが起こる気がするのです」
「まずはこの戦争を終わらせよう、それからでも遅くはないさ」
そうですね、と返すヴェリウス。
しかしこの時ばかりは、彼の言葉を聞いても安心することができなかった。
オビ=ワンにしても、本心でそう言ったわけでは無かった。
長い間、ヴェリウスと共にいたが彼がこのような事を言うのは初めてだったからだ。
この希望的観測ともいえる言葉は、自身に向けた言葉と言っても良かった。
「とにかくお気を付けて、何かあればご自身の安全を優先してください」
「ああ、分かったよ。 お前は銀河に平和をもたらしに行け」
それはグリーヴァスを倒してこいという意味の言葉だったが、ヴェリウスには異なった意味に聞こえるのだった。
“選ばれし者”や“フォースにバランスをもたらす者”、その言葉が頭に浮かんでしまう。
ヴェリウスはオビ=ワンの言葉に静かに頷き、ヴァラクティルを操る。
彼女は雄叫びを上げ、猛烈な勢いで走り出すのだった。
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<惑星ウータパウ 離着陸プラットフォーム>
一振りのライトセーバーからプラズマの光刃が消え失せて銀色のヒルトが地面に落下し、辺りはその衝突音が響き渡る。
グリーヴァスは自らの右腕を見る。
そこにはあるはずの“物”が無かった。
手首から先は切断されており、断面は発熱しているのが分かる。
若きジェダイに目を移すと、その左手にはもう一振りの短いライトセーバーが握られている。
「グオォォォ、貴様!!」
グリーヴァスは怒りに任せて、左手に持つ残ったライトセーバーで攻撃をするがティアの二刀流に防がれてしまう。
彼女が用いているのは、フォームⅥニマーンに分類されるジャーカイだ。
フォームⅠからⅤまでをバランスよく組み込み、発展させたのがフォームⅥニマーンである。
保守的なジェダイは攻撃性が高いフォームを是とせず、全体的にバランスが取れており、連携に向いているこのフォームを好んで訓練した。
剣技における修業の負担が軽いこのフォームは、外交術や政治的戦略に重点を置けることから『外交的フォーム』とも呼ばれた。
しかし、様々なフォームの特徴を取り入れた総合力重視のこのフォームは、極めるには長きに渡る訓練が必要となる。
保守的で、武力を好まないジェダイが多用するこのフォームを、達人の領域に達するまで鍛錬を行う者は稀であり、実際の戦場では力不足だと言わざるを得ない。
そしてティアは二振りのライトセーバーを構えている。
これはフォームⅥニマーンから派生したジャーカイと呼ばれる型だ。
ダブル=ブレード・ライトセーバーや二刀流の際に用いられるこのフォームは、それぞれに攻撃と防御に役割分担をさせる事や、二振りのブレードで激しい攻撃を加えることもできる。
ティアはヴェリウスとの訓練をきっかけに攻防一体のフォームⅢソレスを土台に、ジャーカイの特徴を取り入れた独自のフォームを開発、鍛錬した。
これが彼女の辿り着いた“答え”だったのだ。
グリーヴァスは一旦距離を取り、残った左手を上下に分割させた。
右腕は分割する前に切り落とされた為、不格好な状態だと言わざるを得ない。
そして腰部に装備していたライトセーバーを起動し、二振りのライトセーバーを構える。
「動揺したように見えたのは演技だったのか? ゴホッゴホッ、卑怯な小娘め!」
その言葉を受けて、ティアは呆れたように返答する。
「あなたに言われる筋合いは無いわ。 それに動揺したように見えていたようだけど、それを勝手に勘違いしたのはそちらでしょう?」
『なにぃ?』と苦虫を潰したような様子が伺える。
その瞳は怒りに燃えていると同時に、想定外の事態に少なからずの動揺が伺えた。
既に想定していたよりも多くの時間が経過しており、追手が迫るのも時間の問題だった。
加えて、時間が経てばそれだけ共和国軍の包囲網は強固なものになり、脱出にもそれなりの危険が伴ってくるのは火を見るよりも明らかだったからだ。
「私は動揺していたのではなく“笑いを堪えていた”のよ、マスターが負ける訳ないもの。 小娘相手に必死に弱みを見出そうとするドロイド軍の将軍、可笑しくなっても仕方ないでしょう?」
この時の彼女は、いつもと違っていた。
直接的、間接的に自らの師が“蔑まれた”という事実に少なくない怒りを覚えていたのだ。
“先程のジェダイ野郎”、“金髪の小賢しい小僧”と皮肉った物言いに。
偽りだったとしてもマスターを“切り刻んだ”という発言に。
彼女にとってヴェリウスは、欠点などある筈のない完璧な人間なのだ。
いや、『人間なのだから一つくらいは欠点がある筈』という前提ですら彼女にとっては侮辱に当たるのだった。
グリーヴァスはティアの挑発に乗り、身体の左側に二振りのライトセーバーという不格好な状態で攻撃を仕掛ける。
しかし、左方向からの攻撃しか行えなくなったグリーヴァスは本来の実力を発揮することは難しかった。
攻撃方向が分かるというのは致命的なのだ。
加えてグリーヴァスの右側は無防備で、ティアが操るジャーカイに対応するのがやっとのように見える。
その時、生き物の雄叫びのようなものが聞こえたかと思うと、突然ヴァラクティルが現れる。
ヴァラクティルはプラットフォームに辿り着くと、強靭な脚で制動することで最高速度から一瞬で停止する。
「ティア、待たせたね」
「マスター!」
その背からローブをはためかせながら降りるヴェリウスは、弟子の身を案じて声を掛ける。
師の姿を見たティアの顔には一瞬で笑みが浮かぶ。
先程まで命の取り合いをしていたとは思えない変わり様だった。
ヴェリウスは弟子の下まで歩いていくと、彼女の頭に手を乗せて労いの言葉を掛ける。
「それで・・・将軍? 降伏する気はあるのかな?」
「ふざけるな小僧! このワシが降伏などするものか!!」
それは遥か昔の記憶なのか、心がそうさせるのか、かつてカリーシュの誇り高い将軍だった彼にとって“降伏”とは死を意味した。
今まで共和国との戦いで、形勢が不利とみると撤退と言う選択肢も多く取って来た。
だがこれは彼にとって敗北ではなかった。
生き延びるという事は“強さ”だった。
生き残り、最終的に勝った方が勝者なのだ。
勝者には生が与えられ、それ以外には死が待っていると。
その為、今回もグリーヴァスは生き延びることを第一に考えていた。
既に手傷を負い、形勢が不利な事は明らかだった。
周囲を確認し、撤退するための算段を立てる。
『そうだ、これは戦略的撤退なのだ。 生き残ればいくらでも機会はある』
そして懐から何か小さい装置を取り出す。
「ふはははははっ! 小僧、名は何という?」
「・・・ヴェリウス」
「ゴホッゴホッ、覚えておくぞ! 次に会う時がお前の最期だ!」
「逃がしはしない。 あなたを逃がすと苦しむ人たちがいるんだ」
ヴェリウスは弟子の頭に乗せていた手を下ろし、グリーヴァスに向き直る。
その言葉を受けて、グリーヴァスは手元の装置を操作する。
すると突然プラットフォームの端から大爆発が起こる。
咄嗟に弟子を庇い、身を屈めるヴェリウス。
対するグリーヴァスは、その爆発に乗じて自らのファイターに乗り込む。
「ま、マスター!?」
自分を守り、身を犠牲にしたヴェリウスを心配し声を掛けるティア。
どうやらグリーヴァスが乗って来たホイール・バイクが爆発したようだった。
「平気だよ、ありがとう」
ヴェリウスはそう口にしながら、何もなかったかのように立ち上がる。
その身に纏う装束は煤(すす)一つ付いておらず、彼の言葉を裏付ける。
ホイール・バイクの爆発はプラットフォーム全体に被害を及ばすほどの規模だったが、ヴェリウスが発生させたフォース・フィールドによって彼らの身を傷つけることは無かった。
そしてグリーヴァスはファイターの発進準備を完了させ、今まさに飛び立とうとしていた。
ヴェリウスは静かに手を胸の前に突き出し、グリーヴァスのファイターに向ける。
するとどういう訳かファイターは動力を失い、エンジンが停止する。
グリーヴァスは一度も宙に浮かぶことなく、脱出は失敗に終わった。
「グオォォォ! 何故だ! 何をした!?」
怒り狂ったグリーヴァスはファイターから飛び降りて、ヴェリウスに向き直る。
既に打つ手はなく、彼の頭はジェダイに対する憎しみで沸騰寸前だった。
「動力を送る回路を無意味な場所にバイパスさせた。 エネルギーが来ないからエンジンも停止したんだよ」
ヴェリウスは飛び立つ寸前のファイターの内部をフォースで細工したのだ。
内部構造など勿論見える筈もなく、常人には不可能な芸当だった。
「殺してやる!!」
そう雄叫びを上げながら、地面に転がるエレクトロスタッフを拾って起動させる。
先刻爆発したホイール・バイクに装備されていた物だが、運よく爆風に乗って難を逃れたようだ。
ドロイドの将軍はエレクトロスタッフの出力を最大まで上げ、ヴェリウスに向かって振り下ろす。
しかし、その攻撃がヴェリウスを襲う事は無かった。
手を軽く出し、フォースを使ってその攻撃を受け止めたのだ。
宙に固まるように固定されるグリーヴァスだったが、機械の身体のメリットを最大限に利用する。
手の中にあるエレクトロスタッフを離し、左手を再び2本に分割させながら手首の無い右腕でヴェリウスを殴りつける。
それと同時に腰部に格納していたライトセーバーを取り出し起動すると、青と緑に輝く刀身が出現する。
だが、右腕による打撃も左腕に握る二振りのライトセーバーもヴェリウスの身体に触れることは無かった。
目にも留まらぬ速さでライトセーバーを起動したヴェリウスは、グリーヴァスの腕を全て肩部から両断した。
そのまま身体を回転させながらグリーヴァスの首を刎ねると、背を向けながら手の中でヒルトを回転させ、後方にライトセーバーを突き出す。
流れるような動きには一切の無駄がなかった。
グリーヴァスに背を向けて後ろ向きに突き出した光剣は、唯一の生体部分を貫いていた。
脳が格納された頭部を失い、心臓などの臓器を人口皮膜で覆っていた胸部をライトセーバーによって貫かれたグリーヴァスは、自らが絶命する瞬間すら認識できていなかった。
ヴェリウスがライトセーバーを引き抜くと、支えを失ったグリーヴァスの身体はプラットフォームに力なく倒れこむのだった。
はい、お疲れさまでした。
長々とお付き合いありがとうございます。
原作をご存じの皆さんなら、次回以降物語が大きく動くことはお分かりだと思います。
今回は箸休め的な感覚でいてもらえると嬉しいです。
グリーヴァスファンの皆様には全身全霊、魂を込めて全力の謝罪をさせて頂きます(土下寝)
最後にアンケートにご協力いただけると嬉しいです!
宜しくお願い致します!
それではまた近いうちに・・・・・
今後の展開について、読者の皆様のご意見を頂ければと思いアンケートを実施させて頂きます。宜しければワンクリックをお願い致します!
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ヴェリウス×パドメ幸せエンド
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バッドエンド
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複雑エンド
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全て作者に任せるエンド