かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

前話で読んで下さる方が増えて、本当に嬉しいです。
ありがとうございます。

引き続き、更新頑張りますので応援して下さると嬉しいです!



第14話 運命

<惑星コルサント アミダラ議員のペントハウス>

 

太陽が沈み、人工的な光が支配する惑星コルサントでひと際目立って光を放つものがあった。

それはパドメのペントハウスからもはっきりと確認できる。

 

強烈な光を放つのはジェダイ聖堂だった。

このコルサントに建てられた聖堂は、銀河系各地に築かれたジェダイ寺院の中でもオーダーの本拠地として機能している。

 

多くの高層ビルが立ち並ぶコルサントでも、特に巨大で特徴的なこの聖堂から火が立ち上っている様は、まさに異様な光景だった。

その光は街を昼間のように不気味に照らし、市民の心を不安で縛っている。

 

パドメはその光景を、愛する夫から贈られたネックレスを握りしめながら見つめていた。

彼女の胸元で光を反射しているこのネックレスは、ヴェリウスのカイバー・クリスタルが嵌め込まれた物だ。

大切な妻の安全を願い贈られたこのクリスタルは、ヴェリウスと離れた今でも彼のフォースと共鳴しているようだった。

 

「・・・ヴェリウス」

 

彼女は祈った。

夫の無事を。

今はただその事しか頭になかった。

彼さえ無事なら、他に望むものなど何もなかった。

 

その時、パドメはジェダイが用いるスターファイターが発着場に接近してくるのを確認する。

ペントハウス周辺を一度旋回すると、ゆっくり高度を下げてくる。

彼女は喜びと安心感に心を震わせた。

自身が心待ちにしていた人物がやって来たのだ。

パドメは薄着なネグリジェ姿なのも構わずに外へ飛び出す。

彼女には、少しでも早くヴェリウスに触れることしか頭になかった。

 

ファイターが着陸し、ハッチが開くとローブに身を包んだ人物が確認できる。

 

「ヴェリウス!」

 

 

 

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時は少し遡り—————

 

<惑星ウータパウ 秘密の発着場>

 

オビ=ワンとティアは、グリーヴァスの死体が転がる発着場に辿り着いていた。

ドロイド軍の将軍を倒してから数時間しか経っていないのにも関わらず、既に長い時間が経過したような錯覚に陥っていた。

 

グリーヴァス討伐を果たし、残りはこの惑星に展開する分離主義勢力を制圧すれば彼らの任務は終了する。

その筈だった。

 

「どうしてクローン達が・・・」

 

ヴェリウスの指示でオビ=ワンと合流したティア・アテミスは、彼と協力しながらドロイド軍の制圧に尽力していた。

実際、共和国軍の大部隊に奇襲を受けた分離主義勢力は司令官であるグリーヴァスを失い、指揮系統が完全に混乱していた。

共和国軍の勝利は時間の問題だったのだ。

 

「分からない。ヴェリウスの言っていた悪い予感とはこの事だったのか?」

 

オビ=ワンはヴェリウスが口にしていた事を思い出していた。

 

 

『オビ=ワン、この任務が決まった頃から何か嫌な予感がするのです。 感じますか?』

 

『いや、特には感じないが・・・』

 

『何か・・・大きなことが起こる気がするのです』

 

『まずはこの戦争を終わらせよう、それからでも遅くはないさ』

 

 

まさに彼の悪い予感は的中していた。

ヴェリウスが不安を口にするのを聞いたのは初めてだったが、彼の言葉を戯言だと吐き捨てることは無かった。

しかし、ここまで脅威が身近に迫っているとは考えていなかったのだ。

 

「マスターは他にも・・・何か嫌な予感がしていたのだと思います。そうでなければ、作戦行動中に任務を放棄するはずはありません」

 

「ヴェリウスは、『何かあればこの場所に来るように』そう言っていたのだな?」

 

「はい、マスター・ケノービ」

 

ドロイド軍の制圧を終了させた第212突撃大隊は、撤収の準備を開始していた。

『今なら惑星の封鎖線にも綻びが生まれているはずだ』とオビ=ワンは考えていた。

しかし、時間を掛け過ぎる訳にもいかなかった。

このクローンの反乱が、他の場所でも起きている可能性があったからだ。

仮にすべてのクローンが反乱を起こしたのであれば、銀河中に散らばっているジェダイは後ろから撃たれることになる。

共に戦ってきた戦友たちの手によって。

 

その時、上空から特徴的な船が突然舞い降りる。

船は高い技量で操縦されており、極力スピードを落とさずに着陸する。

すると、中から現れたのはオビ=ワンにとって“多少”馴染みのある人物だった。

突然現れた人物は周囲の安全を確認し、“荷物”を見て一言だけ口にした。

 

「・・・これは“倍”貰わないと割に合わないな」

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<惑星コルサント アミダラ議員のペントハウス>

 

パドメはファイターから降りて来た人物を見て、その場に立ち止まる。

自身が待ち望んでいた夫では無かったからだ。

 

「パドメ、君を助けに来た!」

 

フードを取り払い、素顔を現したのはアナキン・スカイウォーカーだった。

荒い息をしながら、興奮気味にパドメに近づいてくる。

 

「アニー!?どうしてあなたが?」

 

いつもと異なるその様子に若干の違和感を覚えながらも、パドメは彼に疑問を投げかける。

そして自身が酷く軽装なことを思い出し、両腕で自身の身体を覆うようにして隠す。

 

「君の身が心配で。大丈夫、僕に任せておけば全て上手くいく」

 

そう言いながら、アナキンはパドメに手を伸ばしながら近づいてくる。

しかし彼女は、一歩後ずさることでその手を避ける。

 

「私の?それよりも何があったのです?ジェダイ聖堂が襲われたと聞きました」

 

彼女が後ろに下がったことで、アナキンの目が鋭いものになる。

しかし、その感情を隠すように思いつめた様子で話し出す。

 

「・・・ジェダイが共和国転覆を図った。マスター・ウィンドゥが最高議長を殺そうとしたのをこの目で見た。僕は共和国を裏切れない、最高議長に忠誠を尽くす」

 

『元老院と、君にも』と言葉を続ける。

彼によってもたらされた話は、とても信じられるものでは無かった。

 

「ヴェリウスは?ティアやオビ=ワンはどうなったのです?」

 

「・・・わからない。彼らが今でも議長に忠実なことを祈るばかりだ」

 

「アニー、あなたはどうしてここに?」

 

再びアナキンへと疑問を投げかける。

本当にジェダイの反乱が起きているのだとしたら、彼がここにいる理由が分からなかった。

事態終息の為に無駄にしている時間などない筈だった。

 

「言っただろう?君の身が心配で来たんだ。君のことは僕が守る。僕を信じてくれ」

 

そう口にするアナキンの目は、とても正常なものとは言えなかった。

ぶつぶつと独り言を口にしている。

 

『君を死なせたりしない。君を救えるのは僕だけだ。ヴェリウスじゃない、僕なんだ。僕だけが君を幸せにできる—————』

 

アナキンが呟く言葉が断片的に耳に届く。

その様子にパドメは恐怖感が増す。

今のアナキンは正常ではないと感じた。

 

「あ、アニー?具合でも悪いの?医療ドロイドに診てもらった方が・・・」

 

「僕は大丈夫さ!寧ろこの身を縛っていた鎖からようやく解放されたんだ!素晴らしい気分だよ!必ず君を死の運命から救ってみせる」

 

「・・・何の話をしているの?」

 

アナキンは、フードを目深に被った謎の人物がパドメを突き刺す夢を見ていた。

彼の母が死ぬ間際に見ていた夢と同じものだった。

しかし、暗黒面の力を受け入れたアナキンはその未来を自分の手で変えられると信じていた。

 

「夢を現実にはさせない。君を死なせたりはしない」

 

パドメの目には、アナキンが何かに取り憑かれているように映っていた。

しかし彼女の中でアナキンは、幼き頃より知っている幼き少年、弟のような存在のままだった。

 

「アニー、アニー?何も心配することはありません、あなたは少し悪い夢を見ただけだわ」

 

「パドメ、違うんだ—————」

 

「大丈夫、大丈夫です」

 

パドメは心の中に芽生えた恐怖心を抑え込み、母が子にするように、姉が弟にするように優しく語りかけながらアナキンを抱きしめる。

 

先程までの昂った様子は影を潜め、彼はその身を包み込む心地良さに支配される。

長年想い求めていた彼女の温もり、香り、全てがアナキンにとって完璧だった。

 

しかし唐突に、アナキンは身体に触れる硬い物体に意識が行く。

それは何故かとても不快で、意識してしまうと気になって仕方がなかった。

名残惜しいが彼女を自分から離し、その感じた異物へと目を向ける。

 

そこには自ら意志を持つかのように、強く煌めくクリスタルが在った。

 

いや、これはただのクリスタルではない。

ジェダイと非常に繋がりの深い物だ。

フォースと共鳴する前は無色透明だが、このクリスタルは間違いなく"誰か"と共鳴した物だ。

そして目の前にあるクリスタルの強く青い輝きは、何故か"彼"を思い起こさせる。

 

「・・・これは?」

 

アナキンの中で負の感情が生まれ、渦巻き、溢れ出す。

先程まで彼を包んでいた穏やかなものは既に存在していなかった。

この時だけは目の前にいるものに対して、彼は負の感情しか抱けなかった。

 

「え?」

 

アナキンの突然の変わりように、彼女は戸惑いを隠せない。

 

「・・・僕が贈ったジャポーのお守りは?」

 

幼い頃にジャポーの木の切れ端で作った幸運のお守り。

肌身離さず身に着けていたそのお守りを、ジェダイになる為に生まれ育った惑星を飛び出した際に彼女へと贈ったのだ。

『僕のことを忘れないで』という言葉と共に。

 

「あ、アニー?」

 

しかし実際はどうだろう?

今彼女の胸元で光を放っているのは別の物だった。

願いを込めて贈った物は、彼女の“中”には既に無かった。

 

「アニーと呼ぶな!!!」

 

アナキンの激高に、彼女は身を竦めている。

初めはアニーと愛称で呼ばれる事が嬉しかった。

より近い関係で、親しい間柄だと実感できたから。

しかし時が経った今ではどうだろうか?

 

その呼び方は、母(シミ)が自分を呼ぶ時と同じだった。

確かに愛は感じる。

だがそれは、僕が求めている"愛の形"では無かった。

気付いていたが、気付かないフリをしていた。

それを自分が認めてしまえば、全てが終わってしまうと思ったからだ。

 

しかし最も確実で、決定的とも言える物が目の前にある。

その事実がアナキン自ら押し留めていた感情を解放するきっかけとなってしまう。

 

「・・・奴のか」

 

「・・・・・」

 

「ヴェリウス!! 奴の物か!?」

 

アナキンの怒りにパドメは息を詰まらせる。

しかし彼女は、自身の胸元で煌めくカイバー・クリスタルをぎゅっと握り込む。

そして少し安心したような表情を浮かべて深く息を吐くと、先程までとは違い芯の通った表情で彼に対する。

 

「はい、これはヴェリウスが贈ってくれた物です。とても大切な・・・命よりも大切な物です。これがあれば離れていても彼と共に在ると実感できる。私は強くあれるのです」

 

彼女は力強い瞳で、クリスタルを握りしめながらそう語る。

パドメは"彼"に対する気持ちを、想いを偽る事などできなかった。

彼女の中で、それは決して許されないことだった。

 

次の瞬間、アナキンは闇の感情に支配された。

言葉にならない咆哮を上げ、無意識のうちにライトセーバーを起動して青い光剣が目の前の人物に突き立てられる。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<スレーヴⅠ船内>

 

ジャンゴ・フェットは、別れたばかりのジェダイ騎士(ヴェリウス)から依頼を請けていた。

突然通信が入ったことに驚いたが、ティラナスといい、奴といい、依頼料の相場が分かっていない。

他の賞金稼ぎだったら、“ぼったくられる”のは確実だ。

“ただの人員輸送”それだけの簡単な仕事で破格の依頼料。

取るに足らない子供でもできる簡単な仕事、その筈だった。

 

「まさかお前が現れるとは思わなかったな」

 

「マスター、この方をご存じで?」

 

「少し前にちょっとな、奴に殺されそうになったとだけ言っておこう」

 

オビ=ワンは三年前にカミーノの激しく荒れ狂う海に落とされたことを思い出しながら、鋭い目つきで賞金稼ぎの方を睨む。

その言葉を聞いて、ティアは興味ありげな様子な瞳で彼を観察している。

その二つの視線を受けて、ジャンゴはマスクの下で深いため息を吐く。

 

「・・・倍でも割に合わないな」

 

ジャンゴ・フェットはそう独り言のように呟く。

視線は広大な宇宙空間に向いているが、間違いなく同乗者に関係する言葉だった。

 

「では、あなたは息子さん?お名前はなんていうの?」

 

ティアの興味は、ジャンゴの隣に座る小さな少年へと移る。

その顔はクローン・トルーパーの候補生たちと瓜二つであり、彼らのホストとなったジャンゴの関係者だという事が分かる。

 

「・・・ボバ」

 

「良い名前ね!私はティア、宜しくね?」

 

若干の居心地の悪さを感じながらもボバは『・・・ああ』とだけ答える。

このやり取りは、彼らの記憶に新しかった。

この仕事を依頼してきた“奴”との。

 

「ちょっと借りるぞ」

 

その会話を静かに見守っていたオビ=ワンは、唐突に機体に設置されている無線機を使いだす。

クローンの反乱を受けて、少しでも多くの仲間と連絡を取る為だった。

 

「おい、勝手に触るな。外に放り出すぞ」

 

「緊急コード913、こちらオビ=ワン・ケノービ」

 

ジャンゴの言い分も最もだが、今のオビ=ワンらに『はい、そうですか』と大人しくしている余裕はなかった。

 

「繰り返す。こちらオビ=ワン・ケノービ、誰か聞こえていたら応答を」

 

『マス—————ビ・・・マスター・ケノービ?』

 

オビ=ワンが緊急事態に使用するコードで無線を飛ばしていると、ある人物から返答があった。

惑星オルデラン代表の元老院議員であるベイル・オーガナだ。

 

「オーガナ議員!クローン達が反乱を起こしました」

 

『今マスター・ヨーダを助けた所だ。至る所で反乱が・・・我々の座標を送る』

 

話を聞いていたジャンゴは只事で無い状況だと察する。

『これはいくらもらっても割に合わないな』と心の中で呟くのだった。

 

 

 

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<惑星コルサント 上空>

 

ヴェリウスは先程までの事を考えていた。

師であるドゥークーの真実。

その記憶を、記録を知った彼は自分がどうするべきなのか決めかねていた。

ドゥークーは、ヴェリウスがどんな選択をしようともそれが正しい事だと言った。

それはヴェリウスを信じての言葉であり、彼の行いはこの世のためになると確信していたのだ。

以前から共和国の腐敗と、ジェダイの在り方には疑問を持っていた。

しかし、“フォースにバランスをもたらす”という事について、未だ何を指す事なのか分からないでいた。

 

「私は・・・」

 

思い悩むヴェリウスだったが、その思考は突然中断される。

フォースを通して危険を感知したのだ。

しかし、それは自分自身に対する警告では無かった。

 

「・・・パドメ?」

 

ヴェリウスは操縦桿をしっかりと握り直し、ファイターを急速旋回させる。

“彼女”に危険が迫っていた。

 

 

 

 

<アミダラ議員のペントハウス>

 

『パドメ、君を助けに来た!』

 

『アニー!?どうしてあなたが?』

 

『君を死なせたりしない。君を救えるのは僕だけだ。ヴェリウスじゃない、僕なんだ。僕だけが君を幸せにできる—————』

 

『・・・何の話をしているの?』

 

『ヴェリウス!! 奴の物か!?』

 

『とても大切な・・・命よりも大切な物です。これがあれば離れていても彼と共に在ると実感できる。私は強くあれるのです』

 

 

 

フォースを通して、あるイメージが入ってくる。

高揚、恐れと不安。

期待、欺瞞や悲しみ、怒り。

様々な感情が渦巻く中、ヴェリウスは彼女が傷つくのを感じる。

ヴェリウスはパドメに贈ったカイバー・クリスタルを通して、自身のフォースを流し込んだ。

少しでも、彼女の傷を癒すために。

 

ただでさえフォース・ヒーリングは大きな力を使う。

直接ではなく、クリスタルを経由する間接的な治療は、より神経を疲弊させ大きな力を必要とした。

そもそも彼はヒーリング能力に長けている訳ではなかった。

それを身に宿す大きなフォースと、それを扱う技量の高さで何とかパドメの命を繋ぎ止めているのだった。

 

ペントハウス上空に辿り着いたヴェリウスが目にしたのは、青く輝く光だった。

その光はこの場所に向かってくる最中にも確認出来るほど強い光を放っていた。

『彼女はここにいるよ』、『早く・・・早く来て』そう必死に語り掛けてくるかのように、強い光を。

 

ファイターから降り立ったヴェリウスが目にしたのは、仰向けで倒れこむ妻の姿だった。

意識は無く、腹部を貫かれた傷が痛々しい。

それはライトセーバーによる傷だった。

 

ヴェリウスは彼女を抱き上げ、すぐにその強大なフォースを流し込む。

彼のフォースを受けて、彼女の胸元にあるカイバー・クリスタルが煌めく。

『ありがとう』そう伝えるかのように。

 

ヴェリウスはパドメを抱き上げたまま歩き出す。

このコルサントに安全な場所はなかった。

クローンは反乱を起こし、ジェダイは反逆者として狩られ始めている。

事はシス卿の想い描いたとおりに進んでいる。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<スレーヴⅠ — タナヴィーⅣ>

 

「さっさと降りろ」

 

『面倒ごとに巻き込まるのは御免だ』と続けるジャンゴ・フェット。

彼らは元老院議員のベイル・オーガナに指定された座標に辿り着き、“荷物”を移すために二つの船はドッキング作業を完了させていた。

 

「言われなくても直ぐに降りるさ。ここは私の肌には合わん」

 

そう口にするオビ=ワンに続くティア。

しかし彼女は賞金稼ぎに向き直り、礼を述べる。

 

「あの・・・賞金稼ぎさん、本当にありがとうございました」

 

ジャンゴはその礼に一度手の動きを止めただけで、すぐに計器の確認作業に戻る。

彼からすると“報酬のクレジットに対する仕事を遂行しただけ”であり、礼を言われるような事ではないのだ。

 

「その、マスターとはどういった関係なのですか?」

 

ジャンゴからの反応がない為、ティアは言葉を続ける。

彼女の言葉にジャンゴは計器に伸ばしていた手を再び止め、ティアの方へと視線を移す。

 

「・・・お前こそ、“奴”とはどういう関係だ?」

 

ティアは少し悩む素振りを見せると『私のお師匠様です』と答える。

その言葉にジャンゴは『そうか』とだけ口にする。

 

「・・・それじゃあ、またねボバ」

 

「・・・ああ」

 

これ以上は会話を続ける気が無い事を感じ取り、ティアは仕方なくボバに声を掛けた後、タナヴィーⅣへと続くハッチへと足を進める。

 

「奴に伝えておけ『報酬のクレジットでは割に合わない。残りを必ず持って来い』と」

 

彼女に視線を移さずにジャンゴはそれだけを口にする。

その言葉を受けて、ティアは何となくだがこの賞金稼ぎがヴェリウスをどう思っているかを察する。

 

「はい、必ず」

 

そう返したティアは、スレーヴⅠ船を後にした。

残されたジャンゴとボバは、アジトへと帰るために計器を調整する。

 

「・・・アイツも変わってたね、パパ」

 

「ああ、“奴”の影響かもな」

 

ジャンゴが礼を言われたのは、ヴェリウスと合わせて今回で二度目だった。

違和感を覚えながらも、不思議と嫌な気分にはならなかった。

 

「アイツら、また来るかな?」

 

「どうだろうな。伝言を聞いたならいつか現れるだろう」

 

『それか仕事がある時に』と付け加えるジャンゴ。

それを聞いた息子が、嬉しそうな表情を浮かべたのを父は見逃さなかった。

 

 

 

 

<タナヴィーⅣ>

 

このタナヴィーⅣは、惑星オルデランの王室であるオーガナ家が所有しているコレリアン・エンジニアリング社製のCR90コルベットだ。

オルデラン代表の元老院議員であるベイル・オーガナが惑星間の移動や、交渉任務などでこのコルベットを用いている。

 

「他に何人のジェダイが生き残りましたか?」

 

「うーむ、誰からも連絡がないのじゃ」

 

そう話すのはオビ=ワンとヨーダだ。

惑星キャッシークにおける分離主義者との戦いにおいて指揮を執っていたヨーダは、他のジェダイと同じようにクローンの裏切りに遭った。

その際に、ウーキー族のターフル、チューバッカの助けを借りて惑星を脱出していたのだ。

 

「クローンがジェダイ聖堂を襲うのをこの目で見た。それでヨーダを探したのだ」

 

ベイル・オーガナはこれまでの経緯を簡潔に口にする。

その言葉を受け、オビ=ワンはジェダイ聖堂と連絡を取る手段を問いかける。

 

「ジェダイに引き上げのシグナルを発しておる」

 

「“全員ジェダイ聖堂に戻れ”という内容だ。戦争は終わったと」

 

「早く戻らなくては・・・! シグナルを信じたジェダイが、罠に嵌って殺されます!」

 

ティアと共に驚きの表情を浮かべるオビ=ワンは、発信されているシグナルを止める必要があると口にする。

 

「同感じゃ、詳しく調べる必要もあるしのう」

 

彼らの会話を聞いていたティアは不安に囚われる。

危機を感じたヴェリウスは、先んじてコルサントへと向かったはずだ。

クローンの裏切りに気づいていなかった場合、彼らの不意打ちを受けることになる。

師の実力を信頼しているティアだったが、この時ばかりはその無事を確信することができなかった。

それと同時に、惑星ウータパウで師を止められなかったことを心から後悔した。

 

ティアは両手を握りしめ、師の無事を祈った。

今の彼女には、祈ることしかできなかった。

 

『マスター・・・!』

 

________________________________________

 

 

 

<惑星ナブー 湖水地方:ヴァリキーノ島>

 

ヴェリウスは、パドメが使用しているHタイプ・ヌビアン・ヨットで惑星ナブーの湖水地方へと辿り着いていた。

向かっている最中に王室への連絡は済んでおり、屋敷への医療設備の搬入などの必要な準備をさせていた。

 

そして現在、パドメはバクタ・ポッド(※)で治療を受けているが、未だ意識を取り戻していなかった。

※横置きタイプのバクタ・タンク

 

本来であれば、医療設備の整った場所で治療を受けた方が良いのだろう。

しかし、“共和国が置かれている現状”では信用できるものは少ない。

可能な限り人目を避け、治療を行うのが最善だという結論に達したのだ。

 

「パドメ・・・」

 

ヴェリウスはポッドに手を置き、愛する妻の名を口にする。

彼の目に移るパドメは、まるで眠っているかのようだった。

何度も目にした愛おしい想い人の寝顔。

しかし酸素マスクを装着され、治療用のバクタ溶液が満たされたポッドにいる事実は変わらない。

 

「ヴェリウス様」

 

そんな彼に声を掛けてくる人物がいた。

パドメの献身的で忠実な侍女であるドーメだ。

彼女はヴェリウスとパドメの関係を知る数少ない人物の一人であった。

 

「医者によると、もう目を覚ますことは無いかもしれないと・・・」

 

涙を浮かべながら何とかそう口にするドーメだったが、彼女は限界だった。

瞳に溜まった涙は頬を伝い、息を詰まらせる。

 

 

嫌な予感はしていたのだ。

ヴェリウスは自らを責めた。

任務に就く前に、彼女の安全を確保するべきだったと。

しかし、時は既に遅い。

過ぎた時間は戻らない。

ヴェリウスはこんなにも後悔したことはなかった。

 

 

『君がいない世界でどう生きていけばいい?』

 

悲しみと失意に満たされたヴェリウスの心には巨大な穴が空いていた。

彼はその穴の埋め方を知らなかった。

 

『私は君のいない世界の歩き方を知らない』

 

ヴェリウスには考えられなかった。

彼女と歩むことのできない世界を。

 

『君を否定する世界なんていらない』

 

ヴェリウスにとって彼女が存在しない世界は必要なかった。

価値のないものだった。

 

『そうか・・・間違っているのか、この世界が』

 

彼女がいない世界、それは偽りの世界。

彼女の存在が、ヴェリウスをこの世界に繋ぎ止めているのだ。

 

『それなら私が壊そう。この間違った世界を』

 

間違った世界を破壊し、正しい世界にすれば彼女は存在できる。

それが真理であり、唯一の方法。

 

『それをできるのは“選ばれし者”だけ』

 

それを可能にするのは、予言にある“選ばれし者”だけ。

“選ばれし者”はフォースにバランスをもたらす。

バランスとは—————すなわち彼女のいる世界。

 

『私は“選ばれし者”だ』

 




はい、お疲れさまでした。

アナキンが見ていた予知夢、その際にパドメに剣を突き立てていたのは自分自身でした。
彼自身も思いもよらぬことだったと思いますが、怒りと憎しみに支配されたアナキンの行動が、銀河の運命を大きく変える流れになりましたね。

※例の如く、細かい言い回しや誤字などは後程修正致します。

それではまた近いうちに・・・・・

今後の展開について、読者の皆様のご意見を頂ければと思いアンケートを実施させて頂きます。宜しければワンクリックをお願い致します!

  • ヴェリウス×パドメ幸せエンド
  • バッドエンド
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  • 全て作者に任せるエンド
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