みどり色です。
EPⅢ完結後の世界を少しだけ触れるための作品になり、話数もそこまで多いものにはしない予定です。
今回はスピンオフを進めていくに当たっての序章になっており新キャラが登場します。
ストーリーの進み具合によって、細かいキャラ設定を投稿する予定です。
スピンオフ 1話 影
スピンオフ登場人物
□名前
ゼロ(No.0)
□階級
シス・アプレンティス
□容姿
人間種
髪色:不明
瞳色:不明
身長:ドゥークーと同程度
黒で統一された仮面、鎧、ローブを身に着けている。
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<27BBY(EP1から五年後)>
血のような深紅の輝きを放つ二振りの光剣が触れ合うたびに、その薄暗い空間を眩しく照らしている。
銀色に輝く特徴的なカーブを描いたヒルトを優雅に携えるのは、白髪が混じり始めている長身の男性だ。
貴族のような雰囲気を纏っている男性に対するのはまだ幼い子供だった。
その顔は薄暗い空間故に確認することは出来ない。
その子供が呼吸を整えると、再び光剣を構えて長身の男性へと向かって行く。
二人の間にそびえ立つ圧倒的な体格差と技量の差は、この戦いを一方的な暴力と言って差し支えないものにしていた。
子供の剣が長身の男に届くことはない。
長身の男が手首を捻るだけで子供が握るライトセーバーは弾かれ、その小さな身体が吹き飛ばされる。
その衝撃と痛みは反射的に子供の瞳に涙を浮かべさせる。
「・・・もう一度」
長身の男が静かに口を開く。
その言葉には優しさや同情、思いやりと言った相手を気遣う感情は存在しない。
寧ろ瞳に映る幼子に対する怒りや憎しみと言った負の感情が読み取れるようだった。
幼い子供には己の身体に走る痛みよりも、この男性から向けられる負の感情の方が辛く、悲しかった。
誰からも愛情を受けず、与えられるのは痛みと厳しい訓練の日々。
どうして自分はこんなにも恨まれているのか、憎しみを向けられているのか、その子供には分からなかった。
ただ、期待に応えなければ今以上に嫌われてしまうかもしれない。
そうならない為に子供は必死に努力する。
子供は立ち上がり、その小さな手でヒルトを握り直す。
そして壁のように立ちはだかる男性へと向かって行く。
自身の存在価値を証明する為に、自分と言う存在を確かなものにする為に—————
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五年後—————
ジオノーシスでクローン戦争が勃発し、ドゥークー伯爵は惑星を脱出したその足でコルサントのある場所を訪れた。
自らの主人に、“こと”の顛末を報告するためだ。
フードを目深に被ったドゥークーの主人は、彼の報告を満足そうに聞いた。
これでまた、自身の目的達成の為に一歩が踏み出されたのだ。
「友よ、かつてより進めていた計画はどうなっておる」
「全て順調、問題なく進んでおります」
「よろしい・・・“あれ”はもしもの時の為の保険だ。抜かりの無いように事を運ぶのだ」
「仰せのままに、マスター」
◇
<アウター・リム・テリトリー 惑星セレノー>
「ヴェリウス、本当に大きくなった・・・お主には辛い思いをさせてしまったな。愚かな師を許してくれ」
ドゥークーはジオノーシスで10年ぶりに再会したかつての弟子の事を考えていた。
ヴェリウスの実力を確認すると同時に、負の感情によって彼の成長を促すこともできた。
彼の実力は今後、さらに急成長を遂げるだろう。
今回の再会、そして共にした時間は想い描くような形では無かったが、ドゥークーにとってどんな形でもヴェリウスに会えたことはこの10年間で最も喜ばしい出来事だった。
ドゥークーの行動は、全てヴェリウスを想っての事だった。
彼の前から姿を消したのもシスの暗黒卿に手を出させないため。
サイフォ=ディアスが始めたクローン計画の乗っ取りを指示されたが、ジェダイ抹殺のプロトコルからヴェリウスを守る為の抜け道も用意した。
後は彼次第、ヴェリウスの選ぶ選択がこの銀河にとって良い道だと信じている。
「ヴェリウス・・・」
ドゥークーは再会した彼の成長が何よりも嬉しかった。
子を持ったことは無いが、父という存在の気持ちが分かるような気がした。
ヴェリウスの事を考えていたドゥークーの頬が自然と緩む。
彼の笑みを見た者は久しく誰もいなかっただろう。
“影”を除いて。
「“マスター”、この度の共和国との開戦、誠におめでとうございます」
どこからともなく現れたその影は、ドゥークーに対して敬意を示すように跪く。
その存在を認識した瞬間にドゥークーの顔から笑みが消え去る。
そんなものは最初からそこに存在していなかったかのように。
「なんだ、“それ”は」
「・・・失礼致しました、“ティラナス卿”」
そう言い直しながら、その人影は脇に抱えていた特徴の無い黒色の仮面を装着する。
漆黒のローブで身を包んでおり、その隙間からは仮面と同じ色の装甲が身体の節々に確認できる。
フードも目深に被っていたその人物は仮面を付ける事で顔も完全に覆われてしまった。
ドゥークーの口ぶりは、まるでその人物が顔を晒すこと自体が罪だと言わんばかりのものだった。
そして自身を“マスター”と呼ぶことを決して許さないと言う意思が込められていたように感じる。
「お呼びでしょうか、“マスター”」
そう口にしながら現れたのはダソミア出身のアサージ・ヴェントレスだった。
彼女は元ジェダイ・パダワンであり、現在はドゥークーの下でシスの暗黒卿になることを夢見て彼に師事している。
「うむ、ジャバザハットが管理する交易ルートはこの戦争の命運を左右する要素の一つと言えよう。ヴェントレス、お前がその任務に相応しいか見極めようではないか」
そう口にすると、ドゥークーは“影”を一瞥する。
それを受けた仮面の人物はその場に立ち上がり、ヴェントレスに相対する。
立ち上がったその人物はかなりの長身だった。
「仰せのままにマスター。アンタが噂の“ゼロ”かい? マスターの秘蔵っ子がどれほどの腕前か見せてもらおうじゃないか!」
ヴェントレスはそう言い放つと、腰部から二つのヒルトを取り出す。
それを起動すると深紅の光刃が出現し、威嚇するようにセーバーを回転させながら構えを取る。
ゼロと呼ばれた人物は、ヴェントレスの挑発を意に介していないようだった。
その表情は仮面によって読み取る事ができない。
武器を構えることなくその場にただ立っているゼロに対して、ヴェントレスはセーバーを振り上げながら斬りかかる。
しかしその光剣がゼロの身体を切断する事は無かった。
軽く手を上げたゼロはヴェントレスが繰り出した渾身の斬撃を、フォースを用いることで止めたのだ。
まるで時間が停止したかのようにヴェントレスは身動きが取れなくなる。
ゼロが軽くフォースで押し返すことで、ヴェントレスは解放される。
まるで周囲を飛び回る羽虫が邪魔だった時と同じように、顔の傍にある光剣が不快だっただけとでも言うような素振りだった。
「な、舐めるなぁぁ!」
ゼロの態度はヴェントレスのプライドを逆なでしたようだ。
彼女は奇声を発しながら暗黒面の力を用い、先程よりも激しい斬撃の嵐を繰り出す。
ゼロは最小限の動きでその斬撃を躱していく。
仮面の人物はライトセーバーを起動しない。
その必要がない、目の前の相手にはその価値がないとでも言うようだった。
息を切らしたヴェントレスは大きく後方に跳躍し、一旦距離を取る。
そして力を一瞬溜めるような素振りをすると、渾身のフォース・プッシュを繰り出す。
ゼロは『面倒だ』とでも言いたげな動きで左腕を上げると、彼女とは比べ物にならない程、強力なフォースの波動を発生させる。
ヴェントレスの繰り出したフォースは一瞬でかき消され、ゼロのフォース・プッシュが彼女の身体を襲う。
とてつもない衝撃を受けたヴェントレスは室内の壁に激突し、重力に従ってその場に倒れこむ。
それはとても戦いとは言えないものだった。
双方の間には圧倒的な差が、埋められない実力差がそこにはあった。
「そこまでだな」
「・・・ぐっ、この、“誰でもない存在”如きに」
ドゥークーがこの戦いの終わりを告げる。
その言葉を聞いて、ゼロはヴェントレスに背を向けて歩き出すが、彼女が苦し紛れに発した言葉に歩みを止める。
その手にはいつの間にか、銀色に輝くヒルトが握られている。
先の戦いでも決して使わなかった得物。
ヴェントレスに背を向けたまま、ゼロは深紅に染まる光剣を起動する。
その不気味に響く、低い起動音が周囲を支配しているようだった。
至極ゆっくりと、だが確かな動きでゼロは振り返る。
仮面に覆われた顔からは表情は伺えないが、その身に纏うオーラからは明らかな殺気が含まれていた。
“死ぬ”
ヴェントレスはこの世に生を受けてから、こんなにもはっきりと“死”を感じたことは無かった。
殺される、殺される、殺される—————!
ゼロが一歩を踏み出す。
それはヴェントレスにとっては死刑執行までの時間を報せるものだった。
あとどれくらい生きていられる?
奴はあと何歩でここまで辿り着く?
歩数を稼ぐにはどうすれば良いのか?
彼女は恐怖に支配された。
その負の感情は、暗黒面の更なる深淵へとヴェントレスを導いているようだ。
「聞こえなかったのか? 終わりだと言ったはずだ」
ゼロの前にドゥークーが静かに立ちはだかる。
その背丈は殆ど差が無いように見える。
彼を視認した瞬間ゼロが放っていた殺気は影を潜め、その場に跪き首を垂れる。
「御心のままに」
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【後刻】
ドゥークーは先のゼロとヴェントレスの決闘を思い返していた。
“肉体的”にも成熟し、ゼロの実力はドゥークーの予想を遥かに超えるスピードで伸び続けている。
最早並みのジェダイでは相手にもならないだろう。
それは奴の“血”に起因しているといって良い。
約束された力、そう言っても差支えのないポテンシャルを秘めている。
それに加え、戦闘力を伸ばすことを第一に考えた日々の過酷な訓練。
訓練と言えば聞こえは良いが、人権など度外視した拷問ともいえる日々を過ごして来た。
そして奴はそれに順応し、訓練を“こなしてしまっている”。
恐ろしいまでの才能と訓練によって、誰にも止められない存在に成る可能性もある。
・・・最早手遅れかもしれない。
そう考えながら、ドゥークーは自らの意識をフォースに溶かしていく。
彼は誰にも明かせない計画にために、深い瞑想に入って行くのだった。
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<セレノー城 ゼロの部屋>
ゼロの部屋は、ドゥークー伯爵の宮殿の地下に存在した。
使用人など誰も近づかないような場所に作られたこの部屋は、広い円形をした訓練場の隣にひっそりと作られている。
その部屋は装飾なども一切されておらず、必要最低限の物が設置されているのみだった。
「・・・ヴェリウス」
長身の仮面の人物は部屋に入りながら、先刻ドゥークーが口にした名前を思い出していた。
『ヴェリウス、本当に大きくなった・・・お主には辛い思いをさせてしまったな。愚かな師を許してくれ』
悲しみや後悔などの感情を含んだ声色でそう言葉を発していた。
しかし次の瞬間には今まで見たこともない表情を浮かべていた。
自分には決して向ける事の無いものだ。
『ヴェリウス』
ドゥークーは愛おしささえ感じさせる表情を浮かべていた。
あの微笑みは?
あの方にとって、その存在は一体何なんだ?
ゼロは決して忘れないように、その名を何度も口にする。
自らの心に刻みつけるように。
その時、部屋をノックする音に反射的に身構える。
何者かの接近に気づかない程、彼は意識を集中していたようだ。
「ゼロ様、失礼いたします」
「・・・ノアか」
「はい、清拭(せいしき)のご準備が整いました」
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□名前
ノア・デラ=セール
□容姿
人種:セレニアンの白人女性
髪:黒に近いブラウン色の髪を動きやすいよう綺麗にまとめ上げている
瞳:ブラウン
身長:169㎝
年齢:42BBY生まれの20歳(EPⅡ時点)
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ノアと呼ばれる人物がゼロを訪ねて来た。
彼女は代々セレノー伯爵家に仕える使用人の家の者だった。
すらっとした体型の美しいセレニアンで、教育の行き届いた所作が感じられる。
ゼロは静かに立ち上がると、身に着けている衣服に躊躇いなく手を伸ばす。
初めにローブを脱ぎ捨てると、薄暗い地下には似つかわしくない金色の長髪が露になる。
自ら光を放っているように錯覚するその髪は、まるで昔話に出てくる妖精のようだった。
身体に装着していた鎧を外し、黒のアンダー・シャツを脱ぐ。
鍛え上げられた190㎝を超える長身の身体には、隙間なく様々な傷が痛々しく刻まれていた。
最後に仮面を外すと、眉目秀麗な白人種の青年の顔が現れた。
年齢は20歳程だろうか、その顔は中性的でどこか妖艶ささえ感じさせるような美しいものだった。
ゼロが躊躇いなく素肌を露にする事に初めは顔を赤らめていたノアだったが、その身体に刻まれた痛々しい傷を目にすると徐々に表情が変わっていく。
ノアが言う清拭とは、ただ単に身体を拭くだけのものでは無かった。
日々の拷問ともいえる過酷な訓練によって彼が負った傷の手当という側面が強いのだ。
ゼロはバクタ・タンクによる治療を施されていなかった。
“癒える間もなく傷の上に新しい傷が刻まれる”
そのような環境に身を置かせられた。
夜眠る事も出来ない程の激痛と発熱、麻酔や痛み止めなども与えられる事は無かった。
これは“痛み”や“苦しみ”によって暗黒面の力を増長するという目的の為にダース・シディアスが命じた事だった。
昨日負った傷の上に今日新たに傷が刻まれる。
そして明日にはその上から新たな傷が刻まれる、そんな生活を物心つく前から続けていた。
「・・・失礼します」
ノアはそう言うとお湯に浸したタオルを絞り、ゼロの身体に滑らせていく。
その手つきは優しいもので彼への思いやりを感じさせるものだった。
対照的にゼロはこの清拭を単純なる作業と捉えており、痛みがあろうがなかろうが関係のない事だった。
「傷はお痛みになられますか?」
「いや」
「ご不快ではありませんでしょうか?」
「ああ」
ゼロは必要以上の会話を行うことは無かった。
しかしノアは彼から返事が返ってくるだけで嬉しい様子だ。
まるで外部から隠されたように作られた地下に存在する空間。
そこでは不思議な時間が流れていた。
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三年後—————
<惑星セレノー セレノー城>
『友よ、いよいよだ・・・長きに渡る計画が成就する日も近い』
「はい、マスター」
ドゥークーはその場に跪いている。
ホログラムを通して通信をしているのはシスの暗黒卿ダース・シディアスだ。
シディアスは、“シスが再び銀河を支配する日が目前まで迫っている”と語る。
『ティラナス卿、我らの計画が失敗することは決して許されぬ・・・それ故に不確定な要素は邪魔なだけ。しかし“あれ”はきたる我が帝国に必要な力であることも確かだ』
彼はシディアスが何を言わんとしているのかを理解する。
かつて、力をつけ過ぎたアサージ・ヴェントレスを処分しようとしたが、“No.0”を処分するのは“もったいない”という訳だ。
『余が新しい弟子を迎え、ジェダイ共を根絶やした暁には銀河に新しい秩序が生まれる。“あれ”の力はその新たな世界で使えるであろう』
【No.0計画】
“真の選ばれし者”と呼ばれるアナキン・スカイウォーカーをシスに迎え入れる計画が失敗した際の予備として動き出した計画。
計画通り、アナキン・スカイウォーカーをシディアスの弟子に迎え入れる事が出来ればシス卿の手先として利用できる。
文字通り手足のように働き、全て命令通りに任務を遂行する人形として使える。
無駄のないシンプルな計画、だがそこにNo.0と呼ばれる“もの”の事など微塵も考えられていないものだった。
『時が来るまで“あれ”は封印するのだ、ティラナス卿』
「仰せのままに、マスター」
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【後刻】
セレノー城の地下に設置されているゼロの訓練場と彼の部屋、そのさらに下に一台のバクタ・タンクが設置されている。
そのタンクを目の前で見つめる二つの影があった。
「ノアよ・・・これまでの献身、ご苦労であった」
そう口にするドゥークーの視線の先には、溶液に満たされたタンクの中で瞳を閉じるゼロの姿があった。
「勿体ないお言葉で御座います。しかし、何故・・・?」
ノアは疑問に思った。
どうして今になってゼロをバクタ・タンクで治療を行うのかと。
どうして今までタンクを使わせなかったのかと。
彼女はその事に怒りさえ覚える。
ドゥークーはノアの怒りを感じ取るが、それを咎める気は無かった。
それは彼女の想いを考えれば当然の事だったからだ。
そしてこれから出そうとしている指示は、彼女にとって酷なことだという事も理解していた。
ドゥークーはこれから起きるだろう戦争の終結やジェダイ抹殺、銀河帝国の樹立など、とても信じられないような話を語る。
驚いたような表情を浮かべるノアだったが、主人の話を遮るようなこともなく最後まで静かにその話を聞いていた。
「その頃、私に変わって新しく伯爵の地位に“ある若者”が就く。その名をヴェリウス・・・お主の新しい主人となる者だ」
「ヴェリウス・・・?」
ノアはその名に聞き覚えがあった。
ゼロが繰り返し口にしていた名だ。
「その方は—————」
「それともう一つ、お主に頼みがある」
ノアの疑問は、ドゥークーが言葉を続けたことで遮られる。
しかし彼女は次の瞬間、その疑問が頭に残らない程の衝撃を受ける。
「私が命を落としたとの報せが届いたならば、彼を—————」
ドゥークーはゼロを見ながら言葉を続ける。
ノアの心臓は激しく鼓動している。
その言葉を聞きたく無い。
何故だかそんな気持ちになる。
しかし、現実は確実に訪れる。
「—————殺せ」
はい、お疲れ様でした。
「おい、ヴェリウス出てこないじゃねーか!」の苦情は全力で受け止めるので、好きなだけどうぞ。
皆さんが思ったような形で物語は始まらなかったとい思いますが、温かい気持ちでお付き合い頂けると幸いです。
それではまた近いうち・・・・・