みどり色です。
引越しの予定が入ったり、色んな予定が重なったりと中々更新できませんが気長にお待ち頂けると幸いです。
児童、生徒、学生の皆さんは夏休み期間だと思いますが、熱中症などにお気をつけて部活や遊び、趣味を全力で!
え?
大人は?
安心してください。
日本経済を支えている社畜の皆さんは、私と一緒にお仕事です()
<銀河外縁部 ある惑星>
荒くれ者達に法律やルールなどいうものは存在しない。
『生きたいように生きる』
それが彼らの本質であり、生き方だった。
しかしそんな彼らにも守らなければ生きてはいけない決まりがあった。
『強者には逆らうな、戦うな』という生ある者ならその枠組みから外れる事の出来ない理(ことわり)が存在した。
“弱肉強食”
それが原始から続く真理だった。
現在、外縁部を中心に海賊や犯罪者組織が台頭している。
そして彼らが集結する、ある惑星が存在した。
そこには、まるで一国を象徴するような城がそびえ立っている。
城の中に立ち入る事を許されるのはごく一部の人間のみで、さらに城の内部でも立ち入り制限が設けられているエリアも多く存在した。
徹底した情報統制の下、この犯罪者組織は加速度的に勢力を拡大していた。
◇
「貴様は何者だ・・・?」
薄暗い空間には濃く煙が立ち込めており、その空間の一角で膝を着く人影があった。
怯えた様子のその人物は赤い体色を持つザブラクの男性で、血走った黄色い瞳で目の前の人物を見上げている。
その者は漆黒の仮面に漆黒のローブという出で立ちだった。
ローブの隙間からは同じく漆黒の鎧が覗いている。
「シス卿の称号を得ているからどれほどの力かと思えば・・・この程度か」
妙に響くその声は、その場全体に木霊するようだった。
少しずつ煙が晴れてくると、そこは玉座の存在する大広間のような場所だった。
「何だ、その力は・・・大き過ぎる—————!」
恐怖の色に染まった瞳でそう口にするのはかつてダース・モールの名で知られた元シス卿だった。
クローン戦争末期、モールが率い、マンダロアを実効支配していた犯罪同盟シャドウ・コレクティヴは既に崩壊していた。
後に【マンダロア包囲戦】と呼ばれるようになったこの戦いで共和国軍とマンダロア・レジスタンスに敗れたモールは、同時期に発生したオーダー66の混乱の最中に姿を消していた。
その後、モールは同犯罪同盟に所属していた組織を中心にクリムゾン・ドーンの名で知られるようになる犯罪シンジケートの影の指導者として、海賊や犯罪者組織を使って銀河外縁部を中心に組織的な犯罪行為を行っていた。
各地で海賊などによる犯罪が多発している裏にはモールの影があったのだ。
銀河一の規模にまで発展した犯罪シンジケートを率い、恐れられているモールだったが今は見る影もなかった。
モールを見下ろす人物の漆黒の仮面の下に光る青い瞳には、目の前で跪く存在がまるで虫けらのように映っている。
「・・・貴様に問う。ダース・ティラナスの名で知られるシス卿はどこにいる?」
「な、なに?」
モールはこの男の言っている言葉の意味が分からなかった。
ドゥークー伯爵は分離主義評議会を率いる国家主席、独立星系連合の指導者だった。
先のクローン戦争末期、【コルサントの戦い】でドゥークー伯爵が敗れたことは戦争の当事者でなくても広く知れ渡っている事実だ。
「や・・・奴は一年前に死んでいる。銀河中の誰もが知っている事実だ」
モールは怯えた様子でありながらもゼロの質問に答える。
例え、それが単純に事実を口にしただけだとしても“彼”にとっては全く意味合いが違った。
「・・・なに?」
漆黒の騎士の雰囲気が一瞬にして別人のように変化する。
仮面の下から覗いていた青い瞳は、いつの間にか黄色に変色している。
漆黒の騎士—————ゼロが徐に腕を上げ、モールに向かって突き出す。
すると目には見えない強力な圧力によって、モールの義足がみるみるうちに潰されていく。
「ひぃぃ!」
「・・・詳しく話せ。私の気が変わらぬうちに」
「お、お、お慈悲を・・・!!」
その瞳は恐怖に支配されていた。
若くしてシス卿の地位を手に入れ、かつては一国の指導者、今では銀河一の犯罪組織を率いる程の実力者だが、今は見る影もなかった。
命乞いをする元シス卿の叫び声が響き渡る。
しかし、その声が他者の耳に届くことはない。
この大広間にはモール以外の生存者は一人として残っていなかった。
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<惑星コルサント ジェダイ最高評議会>
「お久しぶりです。マスター・ヨーダ」
「うむ、お主の顔が見られてホッとしておるよ」
そう言いながら穏やかな表情を浮かべるのは最高評議会のグランド・マスターであるヨーダだった。
ヴェリウスの一年ぶりの帰還を喜んでいるのだ。
「それでは、これまでの報告を—————」
「まずは座ってくれるかの。其方の席はここじゃ」
ヨーダは自分の隣の席、かつてメイス・ウィンドゥが座っていた場所を示す。
ヴェリウスは彼の突然の言葉に驚きの表情を浮かべる。
「私が・・・マスターに?」
「異論があるかの? 寧ろ“遅すぎた”くらいだと思っておるが」
ヨーダは『うーむ、これは困った』と口にしながらアナキンの方を見ている。
ヨーダの視線を受け止めたアナキンも口角を上げていた。
二人はどう見ても困っていない様子だが、長く顔を見せなかった自分に対する小さな仕返しなのかもしれない、とヴェリウスは察する。
「とんでもございません。謹んでお受けいたします」
ヴェリウスはお辞儀をしてから示された席に向かう。
この時をもってヴェリウスは正式にマスタークラスへの昇格とジェダイ最高評議会入りを果たすのだった。
「外縁部で拡大している海賊行為への対応に向かっていたアソーカから連絡が入りました。既に事態は沈静化し、駐留軍の到着を待ってコルサントに帰還するとのことです」
ヴェリウスの着席を待ってからアナキンが口を開く。
「しかしクローンも、彼ら以外の軍属も不足しています。外縁部全域をカバー出来るほどの戦力は今の共和国にはありません」
アナキンが言葉を続ける。
オーダー66が効力を持っていた時間は一晩と短かったが、発令された最初の数時間で多くのジェダイが命を落とした。
生き残ったジェダイも、クローンと共和国に対する不信感で去って行った者も多い。
軍を指揮するジェダイ将軍やジェダイ・コマンダーの数も圧倒的に不足しているのだ。
「長きに渡る戦争の影響でジェダイ自体に不信感を持つ人々も増えました。平和の守護者である筈のジェダイが『ただの戦争屋に成り下がった』と・・・・・」
この一年、銀河を旅していたヴェリウスは自分が感じたことをそのまま口にする。
共和国に、民主主義に忠誠を誓い、人々の安全と生活を守る為に剣を抜いたジェダイだったが、結果的に彼らが身を投じた戦いによって命を落とした民間人が多いのもまた事実だった。
「加えて、例の闇の戦士の件もあります」
アナキンはセレノー城で剣を交えたゼロについて触れる。
彼が複雑な表情を浮かべているのは、先の戦いで悔しい思いをしたことも無関係ではないだろう。
「うーむ、その者について詳しく調べる必要もあるのぅ」
「・・・いえ、それには及びませんマスター・ヨーダ」
ヴェリウスはセレノー城で知り得た情報を二人のジェダイ・マスターに共有する。
自身のクローンであること、生まれてからシスによって訓練を受けていたこと、その実力と戦闘スタイル、その他にも自らが見聞きした全てを。
ヴェリウスからもたらされた情報に二人は驚きを隠せないと共に、フォース感応者としての能力がクローンに備わっている事実に非常に強い危機感を感じているようだった。
評議会には暗い空気が垂れ込めていた。
「フォース感応力がクローンに備わるということは可能なのでしょうか? それも限りなく高いレベルで」
アナキンは至極当然な疑問を口にする。
ゼロのフォースは強大だった。
正確なミディ=クロリアン値を計測したわけではないが、並みのジェダイとは比較にならないほど高い値が出るのは想像に難くない。
それは先の戦いで剣を交えた二人、ヴェリウスとアナキン共通の認識だった。
「うーむ、クローン・トルーパーも一人一人その身に宿すフォースは違っておる」
「フォースが強いクローンが生まれても不思議ではないと?」
アナキンの問い掛けに、ヨーダは考え込むように『うーむ』と深いため息をつきながら目を閉じる。
どのような原理でフォース感応力の高い子供が自然発生するかも分かっていない。
種族の特性として、一般的な生物よりもミディ=クロリアン値が高いということもあるがフォースを操れるほどの数値を持つことは稀だろう。
そもそもミディ=クロリアン値が高いからといって、フォース感応者として優れているかといえばその限りではないのだ。
「とにかく今は友の帰還を喜ぶとするかの、うん?」
ゆっくりと目を開けたヨーダが口を開く。
「・・・はい、マスター・ヨーダ」
アナキンはヨーダの言葉に同調する。
ここで話していても答えは出ない。
なら今できることを考え、実行するだけだった。
「フォースと共にあらんことを」
◇
「マスター!!」
会議が終了し、退出するヴェリウスを待っていたのは彼のかつてのパダワンだった。
ブルネットカラーの前髪から覗く、大きな丸い水色の瞳を輝かせている。
「ティア! 久しぶりだね」
ヴェリウスは自身に飛び込んできた、かつての弟子をしっかりと受け止める。
彼は弟子の顔をよく見たいと思い彼女の肩を掴むが、当の本人がヴェリウスの身体にしがみ付いて離れようとしない。
『仕方ないな』と微笑みを浮かべながらため息をつくと、ティアの背中に腕を回して抱きしめ返し、もう片方の手で彼女の頭を撫でる。
いつまでそうしていただろうか、徐に彼女はヴェリウスから離れる。
『満足したのかな?』と頭の中で考えるが、ムスっとした表情で彼女がそれを否定する。
「・・・満足などしておりません」
「えっ・・・と、いきなり心を読むのはやめて欲しいんだけど・・・」
ティアには先天的な能力として、物体や人物から記憶や思念などを読み取る事の出来る能力を備えていた。
加えてフォースを通じて治療、ストレス軽減や癒し、鎮静効果などを相手に与える体質も備えている。
ダース・ベイダーの放ったライトセーバーによる斬撃を背中に受けたヴェリウスは、瀕死の重傷を負った。
そんなヴェリウスが今でも命があるのは、ティアの持つ強力なヒーリング能力、そして彼らの胸元で光るカイバー・クリスタルのお陰でもあった。
彼女の能力を精神プロテクトで防ぐことは可能だが、今は気を張っている訳でもない為、表面にある意識を読み取ったのだ。
「・・・周りの目もあるので、今は“一旦”離れます」
周りの目も何も今更な気もするヴェリウスだったが、それを口にしてはいけないと長年の経験で何となく理解していた。
パドメといい、ティアといい、女性との接し方はランコアと戦うよりも遥かに難しいと感じるのだった。
ん?
それよりも『一旦』というのはどういう意味なのだろうか?
ヴェリウスは弟子の一言に妙な引っ掛かりを感じるが、特に気にしないことに決める。
・・・というか、こんなにも自分を出す子だっただろうか?
「元気にしていた? 騎士になったと聞いたよ。本当におめでとう」
ヴェリウスは柔らかい表情を浮かべながら彼女に微笑みかける。
それを受けたティアは堪らず再びヴェリウスに抱き着くのだった。
会いたくて仕方が無かった。
寂しくて仕方が無かった。
そして心に開いた喪失感を埋めるように任務に打ち込んだ。
しかし、どんなに忙しくしてもその寂しさが消える事はなかった。
だがどうだろう?
彼に一度、たった一度微笑みかけられただけで、今までの喪失感が嘘のように消え去る。
ティアは満たされていた。
この一年、埋まることのなかった心が。
◇
ヴェリウスとティアは並んでジェダイ聖堂内を歩いていた。
ヴェリウスの姿が珍しいのか、彼らから距離がある者たちですら頻繁に視線を向けている。
ヴェリウスは戦争終結の立役者であり、シスの暗黒卿ダース・シディアスを討ち取った男だ。
ジェダイの歴史に永遠に語り継がれるのは間違いなかった。
「いつまでこちらに?」
「しばらくは居るつもりだよ。席を空けていられる状況でもないしね」
『そうですか』と呟くティアはとても喜んでいる様子だった。
そんな弟子の姿を見てヴェリウスもまた心が温まる。
「・・・? マスター、どうされたのですか?」
「しばらく見ないうちに綺麗になったなって」
「え!?」
ヴェリウスがティアの顔をまじまじと見ている為、彼女が疑問に思いそれについて問いかけると予想外の言葉が飛び込んでくる。
ヴェリウスには他意はなく、思ったことをそのまま口にしただけだった。
久しぶりに会う親戚の子供を褒めるような感覚だ。
しかし、ヴェリウスに対して今でも密かに熱い想いを秘めている彼女にとっては“そこそこ”ハードな出来事だ。
「あ、ごめん。勿論今までも美しかったけど、より一層って意味だよ?」
先程の言い方だと、『今までは綺麗ではなかった』と言っているようにも受け取れることに気が付いたヴェリウスはフォローを入れる。
彼は今までの経験から『何でもない一言でも女性相手だと地雷になり得る』と学んでいた。
今回に関してはそれが彼女にとって止めの一撃になるとも知らずに。
「・・・・・」
ティアが急にその場に立ち止まり、無表情のまま何もない空間一点を見つめる。
「 ? ティア?」
ヴェリウスは彼女が付いてきていないことに気づき、振り返って声を掛けるが反応がない。
ティアが再起動するまで、暫く時間を要したとか要していないとか・・・
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<ジェダイ聖堂 訓練場>
青と白、二つの光剣が激しくぶつかり合う。
あまり広くない訓練場だが、二人の騎士はその限定された空間を目一杯使っている。
鍔迫り合いの状況からアナキンは得意の攻撃的なフォームⅤシエンを用いてヴェリウスのライトセーバーを押し返す。
ヴェリウスはライトセーバーを弾かれるがその勢いを利用して身体を回転させると、中段にセーバーを振り抜く。
その斬撃を防がれると華麗な足捌でアナキンと身体を入れ替え、彼の背中目掛けて上段から光剣を振り下ろす。
アナキンは後ろを向いたまま自らのセーバーを頭上に横向きで構え、その振り下ろしを受け止める。
片手で握ったセーバーで受け止められるのは、機械の義手の出力も無関係ではないだろう。
この攻撃を防がれたヴェリウスは空いている背中に向けて軽く前蹴りを繰り出す。
するとアナキンは前転しながら受け身を取り、再びヴェリウスと正対する。
二人は口を開かず、無言のまま様子を伺い合う。
周囲にはただライトセーバーの低い起動音が鳴り響いている。
当代・・・いや、ジェダイの歴史を見ても最高レベルの実力を持つ二人の模擬戦は見る者の心を高揚させるに違いない。
先に動いたのはアナキンだった。
ライトセーバーと身体を回転させながら距離を詰めていく。
これは攻守一体型の動きで、彼が得意な技の一つだった。
回転の勢いを剣に乗せて力強い斬撃を繰り出す。
そのままアナキンは斬撃を途切れさせることなく、続けざまに剣を振る。
彼は力による威力特化のフォームⅤシエンと、フォースによって身体機能を高めたアクロバティックなスタイルのフォームⅣを織り交ぜた戦法を取っていた。
様々な角度から繰り出されるその連撃は、並みの騎士では対応する事は不可能だろう。
一年前にヴェリウスと剣を交えた時からアナキンの実力はさらに向上していた。
しかしいくら剣を振るってもアナキンの攻撃は届かなかった。
ヴェリウスは守りの型であるフォームⅢソレスを用い、後退しながらアナキンの攻撃を防ぎきっている。
そしてある瞬間、ヴェリウスは流れるような動作で用いる型をフォームⅡマカシに切り替える。
マカシはヴェリウスの師であるドゥークーが得意としていたフォームで、本来であればシエンやジュヨーなどの力強い攻撃を得意とするフォームを苦手としている。
事実、先の大戦で勃発した『コルサントの戦い』ではドゥークーのセーバーがアナキンの力強い攻撃に弾かれる場面が多くみられた。
しかしヴェリウスはライトセーバーを片手に持ち替え、アナキンの攻撃に合わせて身体を前進させる。
アナキンの高威力の斬撃が力を発揮する前に、攻撃の繋ぎの部分に針を通すような繊細な手つきでセーバーを滑り込ませる。
一貫して攻めの姿勢を取っていたアナキンは、攻撃を強制的に中断させられたことによって攻撃の流れが狂ってしまう。
そこから一気に展開が変わる。
ヴェリウスはそのままマカシを用いて、手首のスナップや洗練された足運びでアナキンの体勢を崩していく。
しかしアナキンは崩された体勢から強引に攻勢に転じることを試みる。
後退や守りは彼のスタイルではないのだ。
しかしパワーに重きを置いたシエンでは、マカシのスピードや手数には到底ついていけない。
加えて今アナキンは態勢を崩されている状況だ。
無理に攻撃を継続しようとしたアナキンはバランスを崩し、ライトセーバーを絡め取られてしまう
勝負がついたと思ったヴェリウスだったが、アナキンはフォース・プッシュを用いて彼をノックバックさせる。
そしてセーバーをフォースで引き寄せると、大きく跳躍しながらヴェリウスに光刃を上段から一気に振り下ろす。
体勢を崩された状態でアナキンの強力な斬撃を受けたヴェリウスはセーバーを弾かれ、守りの手段を失ってしまう。
そこにアナキンの光刃が突き出される。
これは訓練だ。
言うまでもないが、アナキンは寸の所でセーバーを止めるつもりだった。
しかし自身に光刃が迫ると、ヴェリウスの様子に変化が現れる。
戦いの最中でも穏やか・・・とでもいうべきか、どこか余裕を感じさせるオーラを纏っている彼の雰囲気が一瞬のうちに変化する。
まるで何の感情も持たない機械のように“無”が彼を包み込む。
ヴェリウスは自身に迫る光刃に“無意識”に集中すると、アナキンの銀色に輝くヒルトがみるみるうちに圧縮されていく。
ジェダイにとって象徴であり、宗教的に重要な役割を持つライトセーバーだが、本体を構成している部品が破壊されればその機能を失う。
物理的に破壊されたセーバーからは青色の光刃が消失する。
一瞬、何が起こったのか理解が遅れるアナキンだったが、右手には残骸とでもいえる状態のヒルトが握られていた。
そしてヴェリウスは目が覚めたかのように、その纏う雰囲気が変化する。
いや、元に戻るという方が正しいかもしれない。
「あ、アナキン!」
『私は何という事を・・・』と言葉を続け、アナキンに駆け寄ると共に謝罪を述べる。
ヴェリウスは決して“自らの意思”で彼のセーバーを破壊したわけではなかった。
「いえ・・・それよりもヴェリウス、貴方の方が気掛かりです」
手元のヒルトに視線を落としつつも、アナキンは先程のヴェリウスの変化を案じていた。
暗黒面の力を感じたわけではない。
しかし、明らかにヴェリウスの纏う雰囲気が変わったのだ。
『かつて暗黒面に堕ち、ダース・ベイダーとして彼と剣を交えた際に纏っていた雰囲気に酷似している』
アナキンはそのように感じていた。
「・・・・・」
「これまでも同じような状態に?」
ヴェリウスが口を開かない為、アナキンは言葉を続ける。
そして彼は静かに首を横に振るのだった。
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<ジェダイ聖堂 瞑想室>
戦争終結から一年、ヴェリウスが“あの時”と同じ状態に陥るのは始めてだった。
光でも闇でもない・・・その狭間とでもいえる力を習得したヴェリウスだったが、いつもその力を制御下に置いていた。
いや、置いている“つもり”だった。
「『考える前に身体が反応している・・・自分の身体であってそうでない』そのような感覚に近いかもしれません」
「お主が言っておった“かつての状態”に近いと?」
ヨーダの問い掛けにヴェリウスは静かに頷く。
まるで世界に靄が掛かったかのような現実味の薄い視界に、ハッキリとしないようでクリアに感じる脳内は一種の全能感をヴェリウスに与えていた。
しかしそこに『自分の“意思”があるのか?』と彼は疑問を抱いていた。
「うーむ・・・ヴェリウス、お主は既にワシよりもフォースと深い繋がりを持っておる」
「まさか! マスターには到底及びません」
「事実を語っているまでじゃ。我らは長きに渡って暗黒面を遠ざけ、フォースを探求してきた。じゃが、フォースの意思を見出した者は未だ現れてはおらん」
ヨーダは気付いていた。
ヴェリウスが幼い頃より、他の子供たちとは大きく異なっていることに。
ドゥークーと共に光明面のみならず、シスに関係の深い場所を訪れ探求していたことを。
彼はずっと、暗黒面=悪だというジェダイの一貫した考え方に疑問を持っていた。
これは幼いイニシエイト達には受け入れられない考え方だった。
純粋な心を持っている子供たちは大人の教えが“正しいこと”だと信じ込んでしまう。
人一倍繊細だったヴェリウスは、同年代の者達から異端の目で見られた。
それからは自分の考えを隠すようになった。
ヴェリウスの他者に対する思いやりの心や優しさは、痛みや悲しみを知っているからこそのものかもしれない。
「お主の力は、“よりフォースとの繋がりが深くなった”という事なのかもしれぬ。どのジェダイ、どのシスよりも・・・・・とにかく、どんな時でも自分を見失わないことじゃ。飲み込まれてはならぬぞ、ヴェリウス?」
「・・・はい、マスター」
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<惑星コルサント ジェダイ聖堂内>
オーダー66で大きく傷つくことになったジェダイ聖堂は、この一年でその殆どが修復されていた。
ただ以前と異なるのは、長い歴史を誇るこの歴史的建造物の中を歩くジェダイの数が少ないということだろう。
クローン戦争と呼ばれる戦いが始まるよりも前、トレード・フェデレーションが惑星ナブーを侵略した当時は約1万人のジェダイが銀河中に存在した。
あれから14年、ジェダイの在り方そのものが変わってしまった。
この聖堂もそうだ。
マスターに拾われ、文字通り生まれてすぐこの場所で生活を始めた。
私にとって故郷であり、家だった。
しかしどうだろう?
見た目は同じ場所だが、受ける印象は全く異なって感じる。
目的がある訳ではない。
しかし意味もなく聖堂内を歩き回っているのは、無意識にこの場所に慣れようとしているのかもしれない。
どのくらい歩き続けただろうか?
この広大な聖堂全てを見て回るにはかなりの時間が掛かる。
何しろ広すぎて数世紀の間、使われていない部屋がある程だ。
私は歩き続ける。
そして辿り着いたのは—————グレート・ツリーだった。
私はこの木が好きだった。
人工物ばかりのこの惑星で自然が感じられる数少ない場所というのもあるが、それだけでなく何かこう・・・落ち着くのだ。
父も母も知らないが、マスターは父親という存在を感じさせた。
対してこの木には安心?安らぎ?のような感情を抱いた。
母とは違うのかもしれないが、その影を少しでも感じたのだ。
私はグレート・ツリーの前に立ち、静かに瞳を閉じる。
◇
この場を訪れるのは本当に久しぶりだった。
マスターの下で修業を積んでいた頃はよく来ていた気がするが、彼が去り、騎士になり、弟子を持つようになってからはその機会が減った。
戦争が始まったのも要因の一つだろう。
聖堂は変わってしまったように感じていたが、この場所に来るとまるで昔に戻ったかのようだった。
隣に視線を移せば見上げるほど身長差のあるマスター・ドゥークーが居て、振り返ればマスター・クワイ=ガンと共に向かってくるオビ=ワンの姿が見えるような気がした。
他にもマスター・ウィンドゥやマスター・ムンディ、マスター・フィストーなど、多くの騎士の姿が。
しかしそれは現実ではない。
目を開けると、そこには先程と同じ景色があるのみだった。
いや、一つだけ“違った”。
「随分と寂れた場所だな。ジェダイ・テンプルというのは」
振り返ると漆黒の装いの人物が佇んでいた。
仮面を着けており、顔は確認できないが誰かはすぐに分かった。
「だが・・・なるほど。フォースと深い繋がりを感じる」
「何故・・・ここに?」
ゼロはグレート・ツリーに視線を向けながら、周囲に視線をゆっくりと移していた。
すると徐に仮面に手を掛ける。
その下から自分と瓜二つの顔が現れた。
二人の深い、青い瞳が交差する。
「見定めるため」
ゼロはそれだけを口にする。
たった一言だけだったが、その言葉には様々な意味が込められているのを感じた。
「ゼロ、私たちが戦う必要はない。戦争は終わった・・・全て一人のシス卿の企てだったけど、そのシスも滅んだ。今更—————」
「今更? 貴様にとっては過去でも、私にとっては違うのだ」
ゼロは今を生きてはいなかった。
過去に縛られ、過去に生きているのだ。
彼は今を、明日を望んではいなかった。
彼の未来は過去にあった。
「—————それにドゥークー伯爵はもうこの世にはいない。君があの人の弟子だったのは知っている。どんな扱いを受けていたのかも・・・本当にすまないと思っている」
ヴェリウスは謝罪の言葉を口にした。
それは彼の自己満足だったのかもしれない。
しかし今のヴェリウスには、それ以外の言葉が見つからなかった。
「・・・・・」
ゼロは口を開かない。
それが何を意味しているのか、ヴェリウスには分からなかった。
「・・・日の当たる場所で生きて来た貴様には理解できないだろう。私の心の内は」
そう口にすると、ゼロは仮面を持つ手を上げていく。
仮面が装着される一瞬、彼の瞳が黄色く変色したように見えた。
「君とは・・・戦いたくない」
ゼロの雰囲気が変わるのを感じ、ヴェリウスは言葉を掛ける。
数を大幅に減らしたとはいえ、ここにはヨーダもアナキンもいる。
戦うことになれば、ゼロは無事ではすまないだろう。
「では滅ぶしかない。貴様と私、この世に存在できるのは一人だけだ」