かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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お陰様で引越しも無事に終えることができました。
引越し業者使わなくても大丈夫でしょムーブをかましたら搬出・搬入だけで12時間以上かかりました。
本当にありがとうございました。

そして原因不明の体調不良により、2週間ほどくたばっておりました。
更新が遅れたことをお詫び申し上げます。




スピンオフ 第5話 独立国家

独特の起動音を鳴り響かせながら、純白と真紅の光剣が交差する。

まるで演武でもしているかのようなその衝突は、見る者の心を奪うことだろう。

 

グレート・ツリーは風を受け、枝を揺らしていた。

その光景に対して抗議するかのように。

そして葉を散らしていた。

まるで涙を流すかのように。

 

 

セレノー城で目覚めたばかりだった先の戦いと異なり、ゼロの剣はより鋭く、より激しいものだった。

荒々しい中にも緻密さを感じさせるその攻撃がヴェリウスを襲う。

彼はゼロから繰り出されるその連撃を防ぐだけで精一杯のようだった。

そしてセーバーを弾かれると、一瞬の隙を突かれてフォース・プッシュで吹き飛ばされる。

 

「くっ・・・」

 

「どうした、その程度か?」

 

グレート・ツリーに衝突するとヴェリウスはその場に片膝を着きながら痛みに顔を歪める。

彼が本調子ではなく、実力が発揮できていないことは誰が見ても明らかだった。

 

「・・・つまらん最期だったな」

 

そう口にすると、ゼロはヴェリウスに向かって深紅の光刃を振り下ろす。

その刀身を形成するプラズマがヴェリウスの命を刈り取る瞬間、ゼロは強力な衝撃波を受けてノックバックする。

しかし彼はセーバーを地面に突き立て、その衝撃を耐え抜くとゆっくりと立ち上がる。

その視線は招かれざる人物へと向けられていた。

 

「賊が。マスターから離れろ」

 

ヴェリウスの危機を救ったのは、彼のかつての弟子であるティア・アテミスだった。

前髪の奥から覗く大きな瞳からは、侵入者に対する負の感情が読み取れる。

 

「ティア、来ては・・・いけない」

 

強い衝撃を受けて肺の空気が強制的に体外に排出されたヴェリウスは、呼吸を整えながらかつての弟子に警告する。

二人の実力差が明らかだと考えたのだ。

 

「マスター・・・貴方を失うくらいなら私は死を選びます」

 

彼女はヴェリウスに対して優しく微笑むと、すぐにゼロへと向き直って走り出す。

フォースを身に纏ったそのスピードは常人には決して出すことのできないものだ。

一瞬のうちに距離を詰めると、ティアは二振りの光剣を起動する。

 

彼女の用いるフォームⅥニマーンに分類されるジャーカイは、フォームⅢソレスの特徴を組み込んだ独自のフォームであった。

加えて彼女の師であるヴェリウスが用いるフォームの影響も受けていた。

フォームⅡマカシを始め、フォームⅣアタロ、フォームⅤシエン/ドジェムソ、フォームⅦジュヨーなどジェダイが用いる型の中で、ヴェリウスが主に操るフォームは全体的に攻撃的だと言えた。

そんなヴェリウスに師事していたティアの操るフォームが、元来のフォームに比べて攻撃特性が付加されたものになるのは必然だったのかもしれない。

 

長短二振りのセーバーを握りしめ、ティアは新緑のような色合いの光剣を侵入者に対して振りかざす。

しかし予測困難な軌道で襲い掛かる斬撃を、ゼロは苦もなく受け流す。

 

ティアは一度距離を取る為に、後方へと大きく跳躍する。

・・・が、ティアの身体が空中で一瞬停止したかと思えばゼロの下へと急速に引き寄せられる。

 

その先には『面倒だ』とでも言うかのように脱力した状態でセーバーを構え、ティアに向かって腕を突き出しているゼロの姿があった。

数秒後にはティアの身体を真紅の光刃が貫くだろう。

 

まさにティアの身体にライトセーバーが吸い込まれるその刹那、純白の光刃が残酷な未来を阻止する。

 

「彼女は・・・やらせない!」

 

そう言い放つと、ヴェリウスはゼロのセーバーを押しのけると横方向に斬撃を繰り出す。

ゼロはその攻撃を後方に跳躍することで回避する。

 

「やる気になったか?」

 

「私は・・・君とは戦いたくない」

 

「ぬるいな。では戦う理由を作るとしよう」

 

ゼロはそう口にすると銀色に輝くヒルトを体側に構える。

自分たちに訪れるだろう近い未来を予測し、その攻撃に備えるようにヴェリウスとティアは咄嗟に身構える。

 

しかしゼロの取った行動は予想外のものだった。

彼はヴェリウス達に向かって自身の持つセーバーを放り投げる。

その攻撃を防ぐように守りの体勢を取った二人だったが、ゼロはフォースを用いてセーバーの軌道を変える。

 

その先にはフォース=センシティブの樹木として大切に育てられ、そして長い時間この聖堂とジェダイの騎士を見守った存在が在った。

ゼロの目標がグレート・ツリーだと気づいた二人だったが対応するには遅すぎた。

ただその場に流れる時間が酷くゆっくりと感じられる。

何もできず、ただ見ていることしかできない。

それはただの傍観と変わりなかった。

 

まるで深い血のような色の光刃がグレート・ツリーに吸い込まれる。

その刃を形成するプラズマが生み出す赤い光が、グレート・ツリーの葉や枝を照らす。

それはまるで生き物の鮮血が飛沫を上げているような光景だった。

 

長い時間を掛けて成長する木々、後にそれは気の遠くなるような時間を掛けて森になる。

しかしたった一つの火の粉は一瞬のうちに森全体を焼き尽くす。

それ以上にプラズマの刀身がその大木を切り裂くのは刹那的だった。

セーバーが真紅の光を放ちながらグレート・ツリーを過ぎ去ると、次の瞬間には破壊をもたらす為だけに軌道を変え、再びその大木へと舞い戻る。

 

—————グレート・ツリーはみしみしと音を鳴らしながら地面に倒れこむ。

それはまるで断末魔の叫びのようだった。

 

「どうして・・・」

 

ヴェリウスはこの木が好きだった。

無機物ばかりのこの星で、自然を感じられる数少ない存在だった。

フォース=センシティブというのも理由にはあったかもしれないが、彼にとって温もりを感じる存在であったことは間違いなかった。

 

「言ったはずだ。“戦う理由を作る”と」

 

「・・・この木を切り倒したからといって、君と戦うという理由にはならない」

 

「はっ! ここまで腑抜けた奴だったとはな」

 

ヴェリウスは静かだったが、平常心かといえばそうではなかった。

自分を殺し、努めて平静を装った。

でなければ、またあの時のように“成りそう”だったからだ。

 

 

対してゼロはヴェリウスの様子を観察していた。

『・・・効果が無い訳ではないようだな』

彼にとって、“ヴェリウスを葬る”ことは自身の存在を証明する唯一の方法だった。

オリジナルを超えることで、初めて“本物”になれると考えていた。

 

「・・・感じる。貴様の中には恐れがある」

 

「何を—————」

 

「私にはない。恐れや痛み、喜びの感情は疾うに捨て去った」

 

ゼロは仮面に手を掛け、そしてフードも取り去った。

その奥からは金色の長髪と黄色に染まった瞳が現れる。

 

「その姿は・・・!」

 

ティアは驚き、動揺を隠せない。

彼の正体を知る者はこの銀河中を探しても数える程しかいない。

ジェダイ評議会ですら先刻知り得たばかりだ。

彼女には知る由もなかった。

 

「あの方は・・・もういない」

 

ゼロは愁いを感じさせるような表情を浮かべながら、その手に持つ仮面を見つめる。

しかし次の瞬間には瞳を激しい怒りに染め上げ、頑丈な仮面を粉々に破壊する。

 

「あの方・・・いや、“ドゥークー”は弱かった。だから死んだのだ」

 

ゼロの足元に仮面の残骸が零れ落ちる。

 

「ヴェリウス、貴様も同じだ。弱さ故に守れない・・・何も成し遂げられはしない」

 

ゼロは顔を上げ、ヴェリウスに向き直る。

 

「私は貴様と同じ過ちは犯さない。そして全てを手に入れる」

 

彼の瞳は燃えていた。

その瞳は覚悟を決めたものだった。

 

ゼロは二人に背を向けて歩き出す。

ヴェリウスは彼を呼び止めることができなかった。

この場を去ろうとするゼロを止めることができなかった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<惑星コルサント ジェダイ評議会>

 

「各地で“クリムゾン・ドーン”と呼ばれる犯罪シンジケートの動きが活発化しています」

 

ジェダイ・マスターであり、ジェダイ評議会のメンバーであるアナキン・スカイウォーカーが口を開く。

ゼロの襲撃から既に数日が経過していた。

 

「うーむ、動きが早すぎる」

 

「アソーカ、例の噂は本当なのか?」

 

「“漆黒の鎧に身を包んだ金色の騎士”、大きい被害が出る時には必ずその姿が確認されているようです」

 

『あくまで生存者がいる場合のみ・・・ですが』とアソーカは付け加える。

この会議には臨時でジェダイ・ナイトのアソーカ・タノとティア・アテミスが参加していた。

それ程までにジェダイ・オーダーの人員が不足しているのだ。

 

「先日の襲撃よりも以前に“彼”は犯罪シンジケートを掌握していたと思われます」

 

アナキンはさらに言葉を続ける。

以前から、“ある犯罪シンジケート”が外縁部を中心に勢力を拡大していたことは周知の事実であったが、先のゼロによる襲撃を境にその動きをさらに活発化させていたのだ。

 

「ヴェリウス、お主はどう思う?」

 

ヨーダは先程から口を閉ざしているヴェリウスに問いかける。

俯いた顔をゆっくりと上げると、そこには愁いを感じさせる美しい顔が露になる。

 

「・・・彼はこう言っていました。『全てを手に入れる』と」

 

疲れたような表情を浮かべながら、ヴェリウスは静かに答える。

ティアはその様子を心配そうに見守っていた。

 

その場を静寂が支配する。

少しの間、彼らは考えを巡らせていた。

 

 

その静寂を破ったのは、臨時で参加しているアソーカだった。

 

「・・・各地に散らばったジェダイに連絡を取ることはできないのでしょうか?」

 

目下の問題の一つである“人員不足”、それを最速で解決する方法は以前オーダーに所属していたジェダイの帰還だ。

アソーカを始め、何人かのジェダイはオーダーに戻って来た者もいる。

しかしその人数は決して多くなかった。

 

かつてオーダーに属していた多くのジェダイは一年前の事件(オーダー66)をきっかけに、共和国への忠誠を無くしていた。

師や弟子、友人の多くを失った。

それも信頼し、共に戦場で命を預け合っていたクローン・トルーパーの手によって。

 

さらに忠誠を誓った筈の共和国、そのトップがシスの暗黒卿だったのだ。

それを見抜けず、手のひらの上で踊らされていた評議会に対する不信感もあるだろう。

 

上手くいくなら手っ取り早い策ではあるが、実現は難しいだろう。

そもそも生き残ったジェダイの数が多くないと予測できることもこの策の成功を困難にしていた。

 

「シグナルの発信は可能じゃが・・・難しい問題だのう」

 

ヨーダが悲しみを含んだような様子で口を開く。

アソーカの提案を直接否定したわけでは無かったが、どう考えているかは誰が見ても明らかだった。

 

「犯罪シンジケート構成員の相手はクローンだけでも十分対処可能だと考えますが、問題はゼロの存在です」

 

アナキンが言葉を続ける。

以前の評議会はメイス・ウィンドゥが進行を務めていたが、今はアナキンがその役を担っていると言って差し支えなかった。

そして彼の言う通り、犯罪シンジケート、特にゼロの存在が事態をより複雑にしていた。

当代最高クラスの実力を持つアナキン、ヴェリウスと剣を交えて生き残っただけでなく、彼らを追い詰めたその力は疑いようのないものだった。

 

「非常に短い時間でしたが、刃を交えた際に感じた力は今まで対した敵の中で“彼”に敵う者はおりませんでした」

 

アナキンの言葉にティアが続く。

彼女はあの時、死を覚悟したのだ。

たった一度でも瞬きをすれば、その瞬間に命を刈り取られる。

それ程の実力差があった。

しかし彼女は逃げなかった。

自身の身体が死を迎えることよりも、大切な人の為に戦うことを選んだのだ。

今でも彼女に命があるのはヴェリウスの手助けと、ゼロの気まぐれ、様々な要因が重なったに過ぎない。

 

「うーむ、少なくともマスター・ヴェリウス、マスター・スカイウォーカーに頼る他ないのう」

 

最高評議会のグランドマスターであるヨーダは最低でもヴェリウス、アナキンの二人を主軸にする部隊でなければゼロに対処するのは困難であると結論付けた。

“今のオーダー”内でアソーカとティアの実力は高いレベルに位置していたが、彼女たちだけではゼロに対応するには実力不足であると暗に告げていた。

 

「全ての犯罪行為に“彼”が直接介入するのは不可能です」

 

クリムゾン・ドーンによる犯罪行為全てにゼロ自身が関わる事は不可能であり、一般の構成員のみの犯罪行為であればクローン・トルーパーだけで十分鎮圧が可能だ。

しかし犯罪が起きる度にヴェリウス達が対処に向かうのは現実的ではなかった。

事態対処が空振りに終わった場合、他の場所にゼロが出現する可能性が高くなる。

 

「まずはクローン・トルーパーを含めた共和国軍将兵の部隊編制ですが—————」

 

会議が進む中、ヴェリウスは前向きな姿勢を取る事はできなかった。

事実、先の戦いではゼロに完敗していた。

彼が自らの意思で去って行かなければ、ティア共々殺されていただろう。

自身の力に疑問を持っている今の自分にはゼロを止めることはできない。

ヴェリウスはそう考えていた。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

惑星都市と呼ばれるギャラクティック・シティー。

その高層ビルなどの建築物が密集する摩天楼の表層構造の下には、コルサント・アンダーワールドと呼ばれる数千もの階層が広がっている。

静けさや穏やかさ、自然を愛するヴェリウスにとってコルサントはまさにその正反対といえる場所だった。

 

 

彼は目的もなく彷徨っていた。

無意識に下へ、下へと歩みを進める。

そして気が付けば、普段であれば足を踏み入れることのないアンダーワールドへとやって来ていた。

 

消えることのない人工的な光、どこに視線を移しても草木などが目に入ることは無い。

道には正体不明の異物が散らばり、鼻を刺すような異臭が街全体に充満しているようだった。

 

ヴェリウスは堪らずに近くの店に入店する。

そこは酒場だった。

薄暗い店内の中心ではドロイドと人間種の男性が酒類を提供していた。

 

「・・・見ねぇ顔だな。上のモンが何の用だ?」

 

薄汚れた顔に警戒の色を浮かべた店員が声を掛けてくる。

ヴェリウスの身に着けている服や纏っている雰囲気を見て、アンダーワールドの住人では無いことは一目瞭然であった。

店員は面倒ごとに巻き込まれることを懸念しているような様子だ。

 

「いえ、用という訳では無いのですが・・・」

 

ヴェリウスのハッキリしない様子に店員は眉をひそめている。

しかし長年の勘で、ヴェリウスが面倒ごとを持ち込んだ訳ではないことを察する。

 

「用もねぇのに店に入って来たってのか?」

 

ローブに身を包み、フードで顔を隠したイレギュラーな登場は常連客の視線を集めるのに充分であった。

いつの間にか、この店内にいる者全員の視線を集めることとなった。

 

ヴェリウスは店員の言うことは最もだと考え、失礼にならないよう注文を行ってその場のカウンター席に腰を下ろす。

店員は訝しげな態度を崩さなかったが、拒否することなく商品を提供する。

 

酒の類を常飲しないヴェリウスは、流れ込んでくるアルコールに喉を焼かれるような感覚に覚える。

ストレートで提供された黄金色の蒸留酒はアルコール度数が高い物だった。

 

「なんだ、イケるじゃねーか」

 

店員がそう口にすると、同じ物をヴェリウスの空いたグラスに注ぐ。

拒否する間も与えないこの店員は、中々のやり手なのかもしれないとヴェリウス心の中で感心する。

 

「・・・それで、上のお偉いさんがこんな場所に何の用だ?」

 

アンダーワールドの住人からすると、ギャラクティック・シティーに住んでいる者は金に余裕のある所謂“お偉いさん”という認識だ。

特定の認識はなく、『俺達とそれ以外』という実にシンプルな線引きだった。

 

「私は・・・分かりません」

 

「はぁ? 何の用もないのにこんな場所まで降りて来たってのか?」

 

未だ警戒の色を残していた店員だったが、その必要も無いと結論付けたようだった。

店の中にいる二人組に合図を送る。

客を装った店の関係者なのだろう。

ヴェリウスはその事には触れず、店員の問い掛けに答える。

 

「自分のことが分からなくなってしまった」

 

ヴェリウスは独り言のように口にする。

そして再びグラスを傾け、一気に喉へと流し込む。

 

「なんだそりゃ、アンタ暇なんだな」

 

「・・・え?」

 

「それに随分と恵まれてるようだ」

 

そう言いながら、店員は同じ蒸留酒を空いたグラスに注ぐ。

ヴェリウスには店員の言っている意味が理解できなかった。

『どうして自分が暇で恵まれていることになるのだろうか』と。

 

「ここの連中は一日を生きるのに必死な連中ばかりだ。寝床に入る時は明日食うもんの心配をしてる」

 

彼の思いもよらない言葉にヴェリウスは顔を上げる。

店員はいつの間にかもう一つグラスを取り出し、自分用に酒を注ぎながら続ける。

 

「それだけじゃねぇ、ここはいつ殺されたって不思議じゃねぇ場所だ。“テメー”の命なんかよりもひとかけらのパンの方が価値が高いんだ。生まれたばかりのガキが一端になるまでデカくなるよりも俺が元老院議員になる方がよっぽど現実的だ」

 

「・・・・・」

 

「ここにはそんな連中が腐るほどいるんだ。『自分のことが分からなくなった』なんてことを考えている暇も金も安全もないんだ。アンタが恵まれていなきゃ一体なんだってんだ」

 

 

私は彼に言葉を返すことができなかった。

生まれた時から孤児ではあったが、ジェダイ・オーダーという家があり、“マスター”という父を思わせる存在もあった。

規律と厳しい訓練の日々は幼い子供には大きな負担となったが、食べ物や寝床、命の心配をすることはなかった。

銀河は広い。

わざわざジェダイ聖堂を狙う賊もいない。

仮に襲撃があったとしても、多くの騎士がたちまち解決してしまうだろう。

 

ここの世界の住人との根本的な違いを痛感したと同時に、こんなにも近くに解決しなければいけない“問題”があったにも関わらずそれが野放しになっていることが信じられなかった。

・・・いや、知ってはいたが本当の意味では理解できていなかったのだ。

 

「私は—————」

 

言葉を続けることができなかった。

自分には悩んでいる時間などないのだ。

その資格さえ無いのかもしれない。

 

「分かったってんなら金を払ってさっさと行け。ここはアンタのような人がいる所じゃねぇ」

 

そう言うと、店員は会計額を提示する。

 

・・・?

高い。

酒を数杯飲んだ程度で発生するような額じゃなかった。

ヴェリウスの若干“含み”のある雰囲気を感じ取った店員は言葉を続ける。

 

「なんだぁ? 文句でもあるってのか? これには相談料も入ってんだ。言っただろう。俺達には無駄にできる時間なんてもんはねぇんだ」

 

もはや気持ち良さを感じる程の強かさだった。

いや、清々しささえ感じる。

やはりこの店員はやり手だ。

 

その時、彼らに接近する存在を感じ取る。

その人物はフードを身に着けているが、ヴェリウスの良く知る人物だった。

 

「マスター、こちらでしたか」

 

優しく、そして心からの気遣いを感じる声色で話しかけてきたのは彼のかつてのパダワンだった。

ヴェリウスの様子をずっと心配していた彼女は、その後を追ってきたのだ。

 

「ティア、心配を掛けてしまったね」

 

そう口にするヴェリウスの声には、既に迷い色は無かった。

静かに立ち上がったヴェリウスはカウンターにクレジットを置く。

 

「ご主人、お世話になりました」

 

「ま、マスター! これはいくらなんでも高額では!?」

 

「うーんと、相談料なんだ。時間は貴重なんだよ?」

 

「・・・?」

 

それだけ言うとヴェリウスは歩き出す。

ティアもそれ以上は触れずに、彼の後ろを追従するのだった。

その大きな背中はいつもの、彼女のよく知っているものだった。

 

「ティア」

 

「はいマスター?」

 

「銀河を・・・この世界を平和にしよう。手伝ってくれるかい?」

 

「・・・永遠(とわ)に」

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<銀河外縁部 ある惑星>

 

「共和国と分離主義者達、かつて銀河は二分されていた」

 

城に設置されているバルコニーから長身の人物が口を開く。

漆黒の鎧とマントを身に着けた人物、ゼロの眼下には彼が率いるクリムゾン・ドーンの構成員が集結している。

そしてバルコニーにはクリムゾン・ドーンの幹部達が控えていた。

 

「独立星系連合は失敗した。影の支配者、ダース・シディアスの謀略によって」

 

ゼロはモールから全てを聞いた。

共和国と分離主義者の戦争すら、彼の策略だったということを。

 

「しかしそれは共和国も同じこと。まるで勝者かのように、今でも自分たちが銀河の中心のように立ち振る舞ってはいるが奴らにはかつてのような力も権益も存在しない」

 

少しずつ構成員達の熱が上がっていく。

ここにいるのは共和国に煮え湯を飲まされたことのある者ばかりだった。

 

「私は今ここに共和国の圧制からの独立を宣言する。だがこれはかつての独立星系連合の復活を意味するものではない。歴史の針を戻し、敗北者達と同じ道を歩む愚を私は犯さない。光の守護者と謳いながら権力者の駒に成り下がったジェダイのように、シディアスというたった一人の人間に翻弄されたかつてのシス卿のように」

 

モールの中には既にゼロに対する反抗心などは残されていなかった。

それはクリムゾン・ドーンの幹部達も同じだった。

ゼロの強大過ぎる力を目の当たりにし、“逆らう”という選択肢など彼らの頭からは消え去っていたのだ。

まるでこの世を統べるために存在するかのような彼の風格は、見る者全ての心を掴んで離さなかった。

ヴェリウスの人を引き付ける魅力、特性を一番厄介な形で受け継いだと言えるだろう。

 

【誉れある我が民よ。お前たちには人知れず道端で息絶えることは許さない。その身朽ち果てる時は共に戦場に在るだろう。私は民の為に、民は私の為にその命を捧げるのだ】

 

ゼロの声にはフォースの力が宿っていた。

彼の発する言葉は、元来のカリスマ性が加わることで聞く者の心に深く刻み込まれるようだった。

 

【我らが造る新しい国家の名は“ゼロ・ドーン”。この銀河をリセットし、無から始めるのだ。新しい世界を・・・我らの楽園を】

 

ゼロ・ドーンの民のボルテージは最高潮に達していた。

鼓膜を破らんばかりの声援はまるで戦場に降り注ぐ砲弾のようだった。

 

このゼロ・ドーンは独立星系連合に参加していた星々を吸収し、瞬く前にその規模を拡大していった。

先の大戦で指導者を失い、未だ混乱の渦中から抜け出せない国々はよりマシな案に縋るしかなかった。

世界は再び二つの国に二分されるのだった。

そしてそれは新たな銀河大戦の始まりを告げるものでもあった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

【後刻】

 

<ミッド・リム領域 ヴェネター級スター・デストロイヤー“ヴィジランス”>

 

「みんな、用意は良いかい?」

 

『はい、マスター。ただ彼が少し遅れてるみたい』

 

『おいアソーカ、誰のことを言っている? ヴェリウス、“僕は”いつでも行けます』

 

「ははは・・・それなら艦隊に指令を出すよ。どうやら向こうはやる気満々のようだしね」

 

ヴェリウスが率いる共和国軍は現在ミッド・リム領域に艦隊を集結させていた。

かつてオビ=ワンの旗艦としてウータパウで活躍した<ヴィジランス>は現在ヴェリウスが直接指揮している。

 

対してゼロ・ドーンと呼ばれる独立国家は旧独立星系連合を吸収し、共和国に対してその圧制と自らの権益を守るという名目で宣戦布告を行ったのだ。

彼らは既に銀河外縁部を脱し、このミッド・リム領域まで進軍していた。

このミッド・リムを越えられるとコア・ワールドまでの足掛かりとなってしまう為、ここが橋頭堡と言えた。

 

「ゼロ・ドーンは機能停止状態にあったバトル・ドロイドを再起動して使っているよ。慣れた相手だとは思うけど油断しないでね。それじゃあ始めようか、コーディー」

 

「イエッサー」

 

かつてオビ=ワン・ケノービ将軍が率いた第212突撃大隊はヴェリウスの直轄部隊として機能していた。

アナキンは引き続き第501大隊、アソーカは第104大隊を率いている。

第104大隊はジェダイ・マスターのプロ・クーンが率いていた部隊で、オオカミの紋章が入ったアーマーが特徴の精鋭部隊だ。

 

他にも名立たる部隊が参加しているが、ジェダイ将軍の不足によりクローン・コマンダーやクローン・キャプテン、クローンでない共和国軍士官が指揮を執っている。

 

 

両軍の距離が迫ると、ゼロ・ドーンのルクレハルク級やプロヴィデンス級からのターボレーザー砲が発射されると同時にスター・ファイターが発艦される。

殆ど同時に攻撃が開始され、その火砲に晒されたヴェネター級やプロヴィデンス級の船体が爆発、炎上する。

さらに数えきれない程のファイターがドッグファイトを開始し、両軍の青と赤という対照的な光弾がこの宙域を埋め尽くすようだった。

 

ヴェリウスはその光景をヴィジランスのブリッジから見守っている。

コマンダー・コーディーはそんな彼の様子を観察するが、彼の表情から何を考えているのか読み取ることは難しかった。

幾度もジェダイと戦場を共にしたが、ヴェリウスというジェダイはコーディーにとってさらに“難敵”だったようだ。

 

「コーディー、ヴェネター級を中心に両翼を伸ばして」

 

「イエッサー」

 

共和国軍は強固な編隊を組んでいたが、ヴェリウスは左右の部隊を先行させて敵軍を包囲するつもりだった。

下手をすると両翼の部隊は孤立に近い形になる可能性があったが、ヴェリウスは迷うことなくこの判断を下した。

先の大戦で“軍神”と呼ばれた理由の片鱗を見た気がしたコーディーであった。

 




はい、お疲れさまでした。
ヴェリウスの病み期?に関してはパドメに救ってもらおうと考えていたのですが、何故かバーの店長にその役を担ってもろうことになってしまいました。
・・・どうしてこうなった()

何故かめちゃくちゃ長引きそうな展開になっていますが、そこまで時間を掛けずに終わらせる予定です。
予定はあくまで予定なのでもしもの時はご了承ください。

それではまた近いうちに・・・・・
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