かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

大っっっっっっっ変長らくお待たせしました。
Twitterでご案内しておりましたが、最期まで書き上げてから更新しようと思っていたのですが、まだかかりそうなのでとりあえず二日間で2話更新しようと思います。

明日も上がりますのでよろしくお願いいたします!



スピンオフ 第6話 偽りの騎士

<ミッド・リム領域>

 

共和国とゼロ・ドーン、双方の艦隊が入り交じり激しい砲火の嵐がこの宙域を支配していた。

そんな中、ヴェリウスはフォースを通じて何かを感じ取っていた。

危険を報せるものだ。

しかし、それは自らの身に迫るものではないように感じる。

 

「将軍?」

 

ヴェリウスの変化を敏感に感じ取ったコーディーは自らの上官に言葉を掛ける。

彼は痛いほど知っていた。

ジェダイは自分たちには感知できない「何か」を敏感に感じ取るのだと。

 

「コーディー、こちらの損害を掌握した後、アナキンの指揮下に入って欲しい」

 

「?」

 

「アナキン、聞こえる? 212大隊の指揮を任せたい」

 

『ヴェリウス?』

 

「私には・・・やることがあるようだ」

 

コーディーの返答を待たずに501大隊の指揮を執っているアナキンへと通信を繋げる。

本来であれば共和国艦隊の総指揮を執っているヴェリウスが戦場から離れるというのはあり得ないことだった。

敵前逃亡と取られても仕方のない行動だ。

しかしヴェリウスの変化を敏感に感じ取ったアナキンは静かにそれを承諾する。

 

『ヴェリウス、無事に戻って来て下さい。貴方はこれからの銀河に必要なお方だ』

 

「うん、すぐに戻ってくるよ。アナキンも気を付けて」

 

『フォースと共にありますように』

 

 

 

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<コルメ宙域 ナブー星系>

 

ヴェリウスはハイパー・ドライブが搭載されている自身の専用機である改造型イータ2アクティス級軽インターセプターを用いて、ナブー星系までジャンプしていた。

 

「R2、湖水地方に降りるよ」

 

『~~~♪』

 

彼は相棒であるアストロメク・ドロイドのR2-D2に進路を設定させる。

嫌な予感がしたヴェリウスはフォースに導かれるように愛する妻の暮らす思い出の地へと向かうのだった。

 

 

 

 

【先刻】

 

ヴェリウスが“何か”を感じ取ったのと時を同じくして、漆黒の装いをした一人の騎士が惑星ナブーへと降り立っていた。

そこは今まで訪れたどの惑星よりも穏やかで、優しく、不思議な感覚を覚える場所だった。

 

彼は歩みを進めると、外界から隠されるように存在する一つの島を確認する。

自らの身体に存在する膨大な数のミディ=クロリアン、フォース感応者として高い次元に位置する彼は目的の場所がそこなのだと自然と理解する。

 

 

漆黒の騎士—————ゼロはフォースによって強化されたその身体能力を用いて大きく跳躍し、ある屋敷へと音もなく降り立つ。

歴史的な価値すら感じさせるその屋敷には、湖からやってくる優しい風が吹き付け、満月が照らし出す月下と水面に反射する光によって幻想的な空間を作り出していた。

 

その屋敷のバルコニーでは至極色のドレスに身を包んだ人物が静かに揺れる湖を眺めていた。

ゼロはその姿を確認すると、自分の中の時間が停止したような錯覚を覚える。

その目に映る光景は非常に現実感の薄いものだった。

 

ドレスの人物—————パドメがその気配に気が付き、ゼロへと振り返る。

月下に照らされたその姿はまるで物語に登場する妖精のように美しいものだった。

 

「・・・ヴェリウス?」

 

パドメは思いもよらぬ突然の来訪者に驚き、目を大きく見開く。

彼女の目に映るのは1年もの間、再会が叶わなかった想い人の姿だった。

見慣れない鎧を身に着けてはいるが見間違いようがなかった。

以前と同じように腰まで届く長髪は月夜に照らされ美しく輝き、漆黒のマントは風に揺られている。

 

パドメは走り出す。

決して遠い距離では無かったが、少しでも早く愛する人の下へと辿り着きたかったのだ。

そして待ち望んだ想い人の胸に飛び込み、力強く抱きしめる。

 

「ヴェリウス! ああ、ヴェリウス!」

 

パドメはその瞳から留めなく涙を流している。

愛する人の名を、切なさ、寂しさ、嬉しさ、様々な感情を含んだ声で呼び続ける。

 

しかしパドメはふと違和感を覚え、想い人の顔を見上げる。

そこには間違いなく自身の愛する人の顔があった。

だが何故だろう?

目の前の人物が自分の知っているヴェリウスだとはどうしても思えなかった。

 

「—————パドメ、そこから離れて下さい」

 

闇の中から静かに現れた人影に、ゼロは視線を移す。

そこにはかつてジェダイ聖堂のグレート・ツリーで刃を交えた騎士の姿があった。

 

声の主—————ティア・アテミスの警告にパドメはゼロから距離を取る。

パドメの瞳は疑心の色に染まり、形容し難い恐怖を感じていることを示している。

 

「何が目的かは分かりませんがあなたが求めるような物はここには無いはずです」

 

ティアはジェダイ評議会の命令でパドメ・アミダラの護衛に就いていた。

ただでさえ人手不足のジェダイであったが、ヴェリウスに執着するゼロ出現の可能性を無視できなかったのだ。

限りなく低い可能性であってもヴェリウスに関係の深い人物に接触してくる可能性を鑑み、今のジェダイ・オーダーでも実力者であるティアにその任務が任された。

そしてその懸念は最悪な形で現実となったのだ。

 

「・・・・・」

 

ゼロは無言で銀色に輝くヒルトを取り出す。

彼の表情からはその感情を読み取ることは難しい。

 

「・・・戦う以外の道もある筈です」

 

「それは命乞いか?」

 

ゼロは静かににライトセーバーを起動する。

真紅の光刃が闇夜の中に浮かび上がり、バルコニーと室内を不気味に照らし出す。

 

ティアはこの戦いが避けられないものと悟ると、二振りの光剣を起動する。

ゼロはその場から動かず、ティアは彼との間合いをはかっていた。

 

二人の実力差は明らかだった。

そもそもティアは自分が勝てるとは考えていなかった。

“ただ時間を稼ぐ”

それが自らの役割なのだと。

 

「ティア!」

 

状況が掴めないパドメの悲痛な叫びがその場に響き渡る。

愛する夫と瓜二つの人物の突然の出現、加えてティアと剣を交えている現状にパドメは混乱していた。

 

「パドメ、ここから逃げて下さい。彼の狙いは貴女です」

 

その声は決して大きくはなかったが、ティアの余裕の無さが色濃く含まれていた。

しかしその思惑通りにさせるゼロではなかった。

静かに歩み出し、ティアとの距離を詰める。

月下に照らされた夜の世界に響く光剣の起動音。

まるで死神の歩みのように、ゆっくりだが確実にティアの下へと迫っていた。

 

ゼロはセーバーを振り上げたかと思うと、無造作に感じるような動作で振り下ろす。

ティアは長短二振りのセーバーをクロスに構え、身体が弾き飛ばされる程の衝撃をなんとか防ぎ切る。

 

無慈悲にもゼロは再び同様の軌道でセーバーを振り下ろす。

何度も、何度も。

歯を食いしばる。

堪らず膝を着く。

セーバーを握る彼女の握力は限界だった。

そして何度目かの振り下ろしによって片方のセーバーが弾き飛ばされてしまう。

 

「ティア!」

 

パドメの悲痛な叫び声が響き渡る。

しかし、ただその光景を眺めている彼女ではなかった。

バルコニーから室内へと全力で駆け出し、室内のテーブルに置いてあったELG-3Aブラスター・ピストルをゼロに向かって構える。

このブラスター・ピストルはパドメが普段護身用に身に着けている物だ。

 

ゼロは何をする訳でもなく、ただ彼女の行動を見守る。

彼の表情からは何も読み取ることはできない。

しかしパドメはブラスターを構えるだけで、その引き金を引くことができなかった。

姿かたちが同じでも、目の前の人物が愛する夫ではないと直感的に理解はできても、心と頭がそれを受け入れ切れていなかった。

 

「どうした? 撃たないのか?」

 

「あ、ああ・・・———」

 

ゼロの声は、自身に向けられ発せられたその声は聞き間違いようのない、愛する夫と同じものだった。

吸い込まれるように錯覚するほど深い青い瞳も、自ら光を発しているように感じる金色系統の長髪も、彫刻と見間違う程に整った顔立ちも、何もかも彼女が待ち望んだ人物のそれだった。

パドメの心の叫びは言葉にならない悲痛な嗚咽となり、身体はその場に崩れ落ちる。

 

「彼女は、やらせない・・・!」

 

「自ら死を望むか」

 

ゼロはティアに向き直ると鮮血のように赤い光を放つ剣を向ける。

ティアも無駄な抵抗と理解しているようだったが、その場に立ち上がりながら自らの手に残った一振りのセーバーを構え直す。

 

 

 

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<ミッド・リム領域>

 

「前方のプロヴィデンス級に砲火を集中、トライビューナルとヴィジランスにも打電しろ」

 

総司令であるヴェリウスに変わり、共和国艦隊全体の指揮を執っているアナキンの指令が各所へ飛ぶ。

ゼロ・ドーンのプロヴィデンス級にアナキン、アソーカ、ヴェリウスの旗艦であるヴェネター級スター・デストロイヤーの砲火が集中する。

 

アナキンの旗艦であるレゾリュートと正面で砲火を交えていたプロヴィデンス級は艦の前方にシールドを集中していた。

そこにトライビューナルとヴィジランスに左右を挟まれる形となり、いかに分厚い装甲を誇っているといってもシールドが無ければヴェネター級のターボレーザー砲に耐えることは不可能だった。

両側面に対する集中砲火を受けたプロヴィデンス級は瞬く間に炎に包まれ、制御を失い、味方の艦を巻き込みながら轟沈していった。

敵艦を左右で挟むというのは本来であればあり得ない戦術だった。

敵艦への攻撃を外した場合や貫通した砲弾がその先にいる味方に被害を及ぼす可能性があるからだ。

高い次元の練度、仲間を心から信頼していなければ取れない作戦だ。

戦況はアナキンの卓越した作戦指揮、大胆であり緻密な戦術により共和国軍の優勢に進んでいる。

 

『マスター、“奴”の艦はどこだと思う? てっきり最前線にいるものかと思ったけれど・・・』

 

トライビューナルで指揮を執っているアソーカから通信が入る。

彼女の言葉はアナキン自身も感じていたことだった。

 

「ずっと後方にいるのか、それとも・・・。それに奴ではない暗黒面の力を感じる」

 

自ら口にした言葉だったが“ゼロが後方にいる”ということはあり得ないとアナキンは考えていた。

それに加えてゼロではない暗黒面の存在という新たな悩みの種が増える。

 

ヴェリウスは何かを感じて戦線を離れた。

それが何を意味しているかは明白だ。

 

『アナキン?』

 

「・・・ヴェリウスが心配だ」

 

『マスター・ヴェリウスに限って—————』

 

「ゼロは強敵だ」

 

『マスター・ヴェリウスが勝てないというの?』

 

「・・・・・アソーカ、艦隊の指揮を任せる。僕は彼の所へ」

 

 

 

________________________________________

 

 

 

闇夜が支配する時間、辺りを照らし出すのは月と無数に広がる星々だった。

広大な草原が広がり、視線を横に移せば月光を受けて煌めく湖が存在する湖水地方。

 

戦いの場は屋敷から広大な草原へと移っていた。

そこでは真紅と深緑、二色の光が幻想的な空間を創り出している。

 

片方のライトセーバーを屋敷で弾き飛ばされたティアは、一振りの光剣で漆黒の騎士の強力な斬撃を受けていた。

 

「・・・くっ!」

 

ゼロの剣術は荒々しさを感じさせながらも一切無駄のないものだった。

まるで演舞のような側面を見出せるジェダイの技とは異なり、相手を圧倒し、その命を刈り取ることを目的とした技術だ。

 

その強力な攻撃を受けていられるのは、ひとえにヴェリウスの下で修業の日々を過ごしていたからだった。

ヴェリウスはその穏やかな性格と柔らかい雰囲気とは対照的に、主として用いる技術は攻撃的なものばかりだった。

ヴェリウスにとって、全ては師であるドゥークーを超えるために訓練した技術だったが世代を超えて今は間接的にティアの命を守っていた。

ヴェリウスと訓練を重ねてきたその経験が攻撃的なフォームに対応する力を養ったのだ。

 

「悪くない」

 

ゼロは光剣を振るう手を下ろし、徐に口を開いた。

その表情は今までと異なり、目の前の人物に興味を抱いたようなものだった。

 

「剣に“奴”の影が見える。お前はあの男の弟子か?」

 

「・・・そうです」

 

ゼロの突然の行動を警戒しつつ、ティアはその問い掛けに答える。

荒い息を整え、体力の回復に専念しながら。

 

「私と貴様は似ている」

 

「・・・?」

 

「我らは影だ。決して陽の光を浴びることはない存在だ」

 

「なにを—————」

 

「もし日の下に姿を晒せばその身は朽ち果てる」

 

ゼロの発する言葉は、地に雨が染み込むようにゆっくりだが確実に心の中へと入ってくる。

そしてティアには彼が言わんとしている意味が理解できた。

 

「私があの男の影のように、貴様はあの女の影なのだろう。なぜ影に甘んじている? 何故求めない? 私には分かる・・・貴様は心の奥底では強く願っている」

 

「ち、違う!」

 

「何が違う? 独占欲、嫉妬心、“強い想い”が嵐のように貴様の中を渦巻いている」

 

ティアはゼロの言葉を否定した。

しかし彼女自身がその言葉の無意味さを理解していた。

分かっているのだ。

“彼”の一番になりたいと、“彼”を自分のものにしたいと心の奥底では願っているのだと。

 

「私はあの方の幸せを願っています! マスターが幸せなら私は—————」

 

「偽り」

 

「え?」

 

「貴様の言う“奴の幸せ”、そこにいるのはあの女では無い」

 

ティアは頭の中を、心の中を見透かされているように感じていた。

まるで丸裸にされ、ガラス張りの部屋に囚われの身になっているような感覚だ。

 

「口では奴の幸せを願っていると言いながら、真に求めているのはあの女の場所だ」

 

“貴様のように”とゼロはティアではない第三者へと言葉を投げかける。

ティアが振り返るとそこには意外な人物が佇んでいた。

 

「マスター・・・スカイウォーカー」

 

「ティア、下がっているんだ。ここは僕が」

 

そう口にすると、月光を反射する銀色のヒルトを取り出す。

アナキンのライトセーバーはヴェリウスとの模擬戦で破損していた。

代わりに彼の手に握られているのは、かつての師のものだった。

かつての師—————オビ=ワン・ケノービのセーバーを起動すると、独特な起動音と共に青いプラズマの刀身が発生する。

 

「偽りの騎士がまた一人、死に来たか」

 

「ゼロ、僕がお前を止める」

 

アナキンは身体とセーバーを回転させながらゼロとの距離を縮める。

そのままの勢いで光刃を横に振り抜くが、ゼロは難なく受け流して強力な攻撃を繰り出す。

 

一振り一振りが空間を歪めているように錯覚するほどの斬撃。

目にも留まらぬ速さの応酬がその場で繰り広げられる。

青と赤、その対照的な光は月下が降り注ぐ草原を照らし出す。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<惑星ナブー 上空>

 

銀色に輝く改造型イータ2アクティス級軽インターセプターは無数の赤い光弾の雨に晒されていた。

その強力なレーザー砲を撃ちだすのは重改造型のスター・クーリエだった。

機動性で劣るスター・クーリエは“奇襲”という圧倒的有利な状況を利用し、そのハンディキャップを埋めることでインターセプターの後方には張り付いたのだ。

 

しかし改造型のジェダイ・インターセプターは、その大型化されたツイン・イオン・エンジンの出力とインターセプターの特性である旋回性能を遺憾なく発揮する。

 

「R2、掴まっていて!」

 

「@%$#&\―――!!」

 

共和国で最高のパイロットの一人であるヴェリウスはその優れた反射神経と操縦技術を駆使して操縦桿を操る。

常人離れしたヴェリウスの要求に機体が悲鳴を上げながらも、彼の専用機は高速域からの急旋回に応えてみせる。

 

大気圏内での最高速度、機動性能で劣るスター・クーリエはイータ2アクティス級に後ろを取られる形でその優位性を失う。

強力な2門のレーザー砲に晒された改造型のスター・クーリエは、機体から炎を上げながら地表へと墜落していく。

 

 

 

 

「君は・・・・・」

 

「なるほど。確かに“あの方と同じ”だ」

 

墜落した重改造型のスター・クーリエ<シミター>から姿を現したのはかつてダース・モールの名で知られたザブラクの元シス卿だった。

 

友であるオビ=ワンと因縁深い人物だが、意外にもヴェリウスがモールと直接相対するのはこれが2度目だった。

 

「モール、君が犯罪者組織を裏で率いているとの噂は本当だったようだね」

 

「ほう、そこまで掴んでいたとは驚きだ」

 

モールはそう口にすると、ローブを地面に落し通常よりも大型のヒルトを取り出す。

その充血した黄色い瞳には負の感情、怒りの炎が燃え上がっているようだった。

 

「貴様には借りがあったな」

 

「シスに借りを作った覚えはないけど?」

 

「黙れ! 忘れたとは言わせないぞ。14年前、かつてこの地で受けた屈辱を!」

 

モールはまるで獣の咆哮のような叫び声を上げると、その場から大きく跳躍してヴェリウスに斬りかかる。

大型のヒルトの上下からそれぞれ真紅のプラズマが発生する。

 

ヴェリウスはセーバーを起動することなくモールの猛攻を躱し続け、僅かな隙を見逃さず“軽い”フォース・プッシュを繰り出す。

体勢を崩されたモールはその場に膝を着く。

 

モールが視線を上に移すと、月明かりに照らされた白金の髪と漆黒のマントが目に入る。

ヴェリウスが身に纏っているのはかつてドゥークーが身に着けていた格式高い礼服だ。

その漆黒の装いと髪の色はモールのトラウマを刺激する。

たった一人でモールの“王国”を攻め落とした漆黒の騎士と姿が重なったのだ。

 

「があぁぁ!!」

 

モールはその幻影を振り払うが如く、猛烈な連撃を繰り出す。

とても義足とは思えないそのアクロバティックな動きはかつて『ナブーの戦い』で見せたものと酷似している。

そして今はダブル=ブレード・ライトセーバーによる攻防一体の戦法を封印し、一切反撃をしてこないヴェリウスに対して攻撃に全振りした戦術を用いる。

 

ザブラクの戦士は激しい攻撃の合間、合間に負の感情が宿ったその瞳でヴェリウスの表情を捉える。

そのヴェリウスの顔が視界に入るたびに、モールの怒りは増していく。

 

「俺を・・・俺を憐れむな!!」

 

ヴェリウスは特に意識していた訳では無かった。

しかしモールを見るその瞳には、その表情には彼を憐れむような感情が宿っていたのだ。

かつてシスの暗黒卿として暗躍した人物の変わり果てた姿を憐れんだのか、かつてジェダイ最高の騎士の一人と呼ばれたクワイ=ガン・ジンを打ち破った程の戦士がこの程度なのかと落胆したのか、それはヴェリウス自身にも分からなかった。

 

「・・・君は私には勝てない。それは君自身、よく理解している筈だ」

 

ヴェリウスは腰部に帯刀していたヒルトをその手に持つ。

芸術的な造形をしたヒルトは月光を眩しいほど反射していた。

そしてヴェリウスの持つ白金の髪は月光とヒルトが反射する光によって、銀色に輝いて見える。

その姿を目にするだけで、モールは次元の違いを感じずにはいられない。

自分とは異なる領域の存在、かつての師(ダース・シディアス)ですらここまでの差は感じなかった。

 

それでも・・・

 

「殺してやる・・・!」

 

モールは戦う以外の方法を知らなかった。

ゼロに屈服したモールだったが、ジェダイに負けを認めるようなことは出来なかった。

それだけはできない。

たとえ、自らの命が終わりを迎えることになっても。

 

モールは声にならない咆哮を上げながら、銀色の騎士に斬りかかる。

その向かう先にいるヴェリウスは酷く悲しい表情を浮かべていた。

 

 

 

“一閃”

まるで目にも留まらぬ閃光、闇夜に煌めく月光の一筋のようだった。

 

 

 

真紅の光剣を起動したまま、モールはその場に立ち尽くしていた。

そのはるか後方で、ヴェリウスは純白の光刃が立ち昇る銀色のヒルトを携えていた。

 

 

 

 

「14年前・・・既に貴様は俺を越えて、いた。今更勝てる筈も・・・無かったか」

 

モールは優しい風の吹く、柔らかい草原へと身を横たえながらかつての記憶を思い返していた。

直接剣を交えた訳では無かったが、ナブーの離着陸パッドで初めてヴェリウスを目にした時から彼の内に秘める強大な力を感じ取っていたのだ。

“3人のジェダイの中”でヴェリウスが最も危険だと。

 

あの時のヴェリウスは笑っていた。

彼自身にその自覚は無かったが、自分の力を試せる機会がやって来たのだと無意識に高揚していたのだ。

いつも狩る側に立っていたモールにとってそれは初めての経験であり、屈辱以外の何ものでも無かった。

年端も行かない少年に“恐怖”を覚えたのだ。

 

「自ら死を選ぶことはなかったのに・・・」

 

そんな元シス卿の傍らにヴェリウスは膝を着いて身を寄せている。

その顔を見ると、複雑な感情を抱いていることが分かる。

 

「・・・貴様には理解できまい」

 

モールの命は燃え尽きる寸前だった。

ヴェリウスは“その刻”が訪れるのを、彼を見守る事しかできなかった。

 

「その・・・ままでは“あの方”には勝てない————必ずや後悔することにな・・・る」

 

モールは“呪い”のような言葉を残して事切れる。

その場に一人残ったヴェリウスの周囲を静寂が支配するのだった。

 

「フォースと共にあれ—————」

 

 

 

________________________________________

 

 

 

ヴェリウスから離れた場所では、彼らとは異なる赤と青のプラズマの光刃が激しくぶつかり合っていた。

常人には決して反応できない程のスピードでライトセーバーが振るわれており、独特な発生音が耳に届く唯一の音色のように錯覚するようだった。

この二人が繰り広げているライトセーバー戦はこれまでの長い歴史の中で最も高次元の戦いだった。

 

かつて“真の選ばれし者”と呼ばれたアナキンは一年前(EP3)と比べても明らかに力をつけていた。

ジェダイに対する疑念や、自分の力が正当に評価されていないと考えていたことによる不信感などが払拭され、今は誠に銀河の平和を願っている。

平和への願い、それを実現するための働きはかつて自らが犯した“罪”に対する贖罪、自己犠牲の信念なのかもしれない。

 

所謂、“吹っ切れた”アナキンは大きく成長した。

技術も、それを扱う身も心も。

先の訓練でも、油断していたとはいえヴェリウスから“一本”取ることが出来たのもアナキンが自らの成長を感じる要因になっていた。

 

しかし、アナキンにとって目の前の戦士は今まで戦ったどの敵よりも強大だった。

一年前、暗黒面を受け入れ、ヴェリウスと剣を交えた時ですらここまで危険を感じることはなかった。

今思えば心のどこかで『ヴェリウスが自分を殺すわけがない』と考えていたのかもしれない。

その希望的観測は命の取り合いにおいて致命的であったが、幸か不幸かその考えは正しかった。

ヴェリウスは決して自分の命を奪おうとはしなかった。

だが目の前の男は違う。

姿形、遺伝情報が同じだったとしてもヴェリウスとは全く異なる存在なのだ。

 

「存外、楽しませてくれる」

 

以前よりも遥かに増したアナキンの力に、今まで変化の無かったゼロの表情が緩む。

自らに肉薄する実力の持ち主の登場を喜んでいるようだった。

 

アナキンはシエン、ドジェムソ、アタロなど攻撃的なフォームを用いて戦っているが、ゼロに関してもそれは同じだった。

ジュヨーやシエン、アタロなどアナキンと共通するフォームを用いている。

共通点が多いフォームを用いた場合、フォームの相性による優劣が出にくく、双方の実力差によって戦況は明確に分かれる。

今は拮抗しているように見える戦いも、何かしらの要因によって状況が変化するものだ。

そして、その時は意外にも早く訪れる。

 

 

 

 

「ゼロ様!」

 

「・・・ノア?」

 

そこに現れたのはセレノー伯爵家に仕える使用人であり、ゼロの世話係だったノア・デラセールだった。

彼女はヴェリウスの計らいでセレノー城へと戻ることを許されていた。

しかし、ゼロが犯罪者組織を率いて共和国に対して宣戦布告したことを知り、この戦いへの同行を懇願した。

本来であれば軍事作戦に民間人を関わらせるというのはリスクが大きく、よっぽどの理由がなければあり得ないことだ。

しかしジェダイ評議会、軍部としては長年ゼロの使用人をしていた彼女を何かしらの形で利用できると考えたのだ。

それに加えてヴェリウスの後押しがあったことも同行を許可された要因としては大きかった。

 

「おやめくださいゼロ様! これ以上、お命を—————」

 

「ノア、なぜ私の邪魔をする?」

 

彼がずっと幼い頃より世話係として傍に居たノアにとって、これ以上ゼロが傷付くのをただ見ている事など出来なかった。

いかに強大な力を持っていると言っても、一人で共和国に敵う訳が無いと考えたノアはゼロに関する情報をヴェリウスらに提供した。

そうすることで、間接的にゼロの身を守ろうとしたのだ。

 

戦いに発展すれば命を落としかねない。

その前に共和国、いや正確にはヴェリウスによって保護してもらおうと考えたのだ。

保護でなくても捕獲、逮捕、方法は何でも良かった。

ゼロが生きていてくれさえすれば、彼女はそれ以上を望んでいなかった。

 

しかし物事はノアの思惑とは全く異なる方向へと進んでしまった。

ゼロは共和国と敵対する道を選んだ。

結果的に、ノアによってもたらされた情報はゼロの命を危険に晒すこととなってしまった。

 

「私は・・・貴方様を」

 

ノアがその言葉を言い終わることは無かった。

改造型のイータ2アクティス級軽インターセプターが甲高い独特な飛行音を発しながらその場に現れたのだ。

ゼロが待ち望んだ人物、彼自身が存在する理由の訪れだ。

 

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