かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

以前から時々話題にしていたIF作品です。

このルートⅠは時系列としてはオーダー66が発令された後になります。
できる限り、当時の投稿に遡らなくても分かり易いように進めるつもりですが、なにぶん書いているのがみどり色なのであまり期待しないでくだちぃ☆

え?
最初から期待していない・・・?


IF
IFルートⅠ①


クローン戦争も終盤に差し掛かり、独立星系連合の司令官であるグリーヴァスがウータパウに潜んでいるという情報がジェダイ評議会にもたらされた。

空振りする可能性も高かったが無視するには大きすぎる情報。

この時はグリーヴァスを倒せば長きに渡る戦争が終結すると、誰もが信じて疑わなかった。

 

誰も知る由はなかった。

このウータパウでの戦いが始まりに過ぎないということを。

 

 

これはかつて選ばれし者と呼ばれた騎士ヴェリウスの“あり得たかもしれない”一つの可能性—————

もう一つの物語である。

 

 

 

<惑星ウータパウ グリーヴァスのプラットフォーム>

 

ヴェリウスがライトセーバーを引き抜くと、支えを失ったグリーヴァスの身体はプラットフォームに力なく倒れこむ。

 

ヴェリウスは純白に輝く光剣を納刀し、僅かに視線を動かす。

その青い瞳には、こと切れているグリーヴァスが映っている。

 

『彼を倒したからと言って、本当に銀河は平和になるのだろうか?』

 

その瞳は喜びや、安堵と言った感情を宿してはいなかった。

それはこの任務が決まってからずっと抱えている“不安”が消えていないことを示していた。

彼を不安の渦から離さない“何か”は小さくなるどころか、その靄の規模を大きくしている。

 

「マスター!」

 

そんなヴェリウスの内心を知らないティアは、グリーヴァス討伐を果たした師に駆け寄って行く。

『これで戦争が終わる』

元々、争いを好まないティアはそれが嬉しかった。

忙しくも平穏な日々を、ヴェリウスと二人で宇宙を飛び回る生活を心待ちにしていたのだ。

彼女にとっては待ちに待った瞬間だ。

 

「ティア、オビ=ワンに報告を」

 

しかし、ヴェリウスの纏う雰囲気はティアとは対照的なものだった。

彼女は少し寂しそうな表情を浮かべながら、師の指示に従うのだった。

 

 

 

 

「マスター・ウィンドゥ、お話があります」

 

「スカイウォーカー? オビ=ワンからグリーヴァスを倒したと知らせがあった。非常時大権を手放すよう議長に告げに行く」

 

「返さないでしょう・・・忌まわしい事実です」

 

「?」

 

「パルパティーン最高議長はシスです」

 

アナキンからもたらされた情報に、ウィンドゥは一瞬言葉を失う。

 

「シスの、暗黒卿か?」

 

「ええ、探していた相手でした」

 

 

 

 

「ティア、君はオビ=ワンの下へ」

 

「・・・マスター?」

 

ヴェリウスのかつて見たことのない雰囲気に、ティアは不安を隠しきれない。

“彼と離れてはいけない”直観的にそう感じていた。

 

「何かあればオビ=ワンを連れて、この場所に戻るんだ」

 

『良いね?』とティアに念押しするが、彼女は師の言葉を素直に受け入れることができなかった。

かつて感じたことのない程の“何か”が渦巻くヴェリウスの心に影響を受けているのだ。

ティアの感能力は並みのジェダイとは比較にならないほど強いものであり、これは彼女が生まれ持った才能の一つだ。

 

「マスター、私———不安なのです。“貴方と離れてはいけない”そう感じます」

 

ティアは師の手に触れようとする。

しかしヴェリウスは、彼女の手が触れる前に背を向けて歩き出してしまう。

 

「大丈夫、オビ=ワンと居れば安全だよ」

 

違うのだ。

ティアにとって、ヴェリウスの代わりになるものなど無かった。

彼が居なければ意味がなかった。

それを伝えなければならないのに、言葉が出てこなかった。

彼女の瞳には涙が浮かんでいた。

 

しかしヴェリウスが振り返ることはなく、彼女の涙を見ることは無かった。

ティアは腕を伸ばすが、愛しい想い人には届かない。

傷一つない陶器のような白い手は、まるで迷子のように宙を漂う。

 

ヴェリウスは素早くグリーヴァスのファイターに乗り込むと、無情にも空高く舞い上がる。

ティアはその姿を見送ることしか出来なかった。

その瞳からは、一滴の雫が頬を伝っていた。

 

 

 

 

「お前を逮捕する、シス閣下」

 

「アナキン、こうなると言ったであろう? ジェダイの反乱だ! 奴らは銀河を支配するつもりなのだ!」

 

「シスの復活はもはやあり得ない、お前の負けだ」

 

「・・・違う、それは違うぞジェダイ! 死ぬのは貴様だ!!」

 

そう口にすると、シス卿の手から強力なフォース・ライトニングが強烈な光を発しながら繰り出される。

 

「お前の愛する人を救えるのは私だけだ! どちらか選べ!!」

 

「み、耳を貸すなアナキン!」

 

『彼を殺されては死の運命にあるパドメを救うことができなくなる』という考えが、あの悪夢がアナキンの理性を揺るがす

 

「いけない! 裁判に委ねるべきです!」

 

「こいつの支配は裁判所にも及んでいる。生かしておいては余りに危険だ!」

 

「そんな力は無い・・・頼む、殺さないで!」

 

「ジェダイの道に反します・・・!」

 

アナキンの言葉に耳を貸さないウィンドゥは、紫色に輝くライトセーバーを振り上げる。

シス卿の命を刈り取る為に。

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

「なんだ・・・これは?」

 

グリーヴァスのファイターで惑星コルサントへと向かっているヴェリウスは、現在ハイパースペースを航行していた。

そんな中、突如として多くの命が失われるのを感じたのだ。

フォースを通して感じられるこの騒めきは、多くのジェダイが命を落としていることを告げていた。

 

それだけじゃない。

何か・・・大きな力が—————

 

 

 

『僕は何ということを・・・』

 

『其方の運命に従っただけのこと。余の弟子となり暗黒面の力が如何なるものかを学ぶのだ』

 

『何なりと仰せに従います』

 

『立て、ヴェイダー卿』

 

 

 

木霊のように不鮮明だがフォースを通して、あるイメージ入ってくる。

それはとても信じられるようなものでは無かった。

いや、信じたくないものだった。

 

 

 

『オーダー66を実行せよ』

 

 

 

その時、懐にしまっていたホロクロンが突然起動する。

ホロクロンは宙に浮き、その形状を変化させていく。

ホロクロンが起動し終わると、コックピット内を強烈な光が覆いつくした。

 

 

 

 

『私の忠誠をお疑いか?』

 

『あぁ、常に』

 

『ご要望には全て従ってきました!』

 

『事を成し遂げるためには、まだまだ不足よ』

 

『サイフォ=ディアス、カミーノ、クローン兵、貴方の頼みにどれだけの裏切りを重ねて来たことか・・・・・』

 

『いや、それは余の為ではなく大義の為・・・其方はより大きな理念に従ったまでのこと』

 

『彼はどうする気ですか?』

 

『あぁ、そうだったな。あの少年———ヴェリウスだったか』

 

『其方が“選ばれし者”と信じ、訓練してきた少年・・・奴が本当に選ばれし者だったならば、時が来れば余の下に迎え入れるつもりだったが—————』

 

『あの子は“選ばれし者”です。その身に宿すフォースの大きさは計り知れない』

 

『確かに少年のフォースは強い。だが余を欺くことはできぬ』

 

『あの子は特別です。今までのジェダイとは全く違う考えを持ち、その心は純粋だ』

 

『その性質は時に危険をもたらす』

 

『約束したはずです。あの子には手を出さないと』

 

『あぁ・・・其方の激しい怒りを感じる。余が憎いか?』

 

 

 

 

『お主がどのような選択をしても私はその道を信じておる。お主が選んだ道、それがこの銀河にとって正しい道となるだろう・・・そう信じておる』

 

『お主が私を恨んでいても仕方のないこと、それだけの事をしてしまったのだ。だが、これだけは分かって欲しい。お主を本当の息子のように想っている・・・今までも、そしてこれからも』

 

 

 

 

 

 

『其方が“選ばれし者”だ、ヴェリウス』

 

 

 

 

 

 

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<惑星コルサント アミダラ議員のペントハウス>

 

「・・・これは?」

 

「え?」

 

パドメが滞在するペントハウスからはジェダイ聖堂から煙が上がっているのが確認できる。

彼女は祈った。

夫であるヴェリウスの無事を。

何か良くないことが起きているという不安に支配される。

 

そんな中、アナキン・スカイウォーカーが突如として現れた。

しかし彼はどう見ても正常ではなかった。

家族のように想っているアナキンに対してこの時は恐怖の感情しか沸かなかったが、パドメは勇気を出して彼を落ち着かせるように努める。

しかしアナキンは彼女の胸元で輝くクリスタルを目にしてからその様子を一変させた。

 

「・・・僕が贈ったジャポーのお守りは?」

 

幼い頃にジャポーの木の切れ端で作った幸運のお守り。

肌身離さず身に着けていたそのお守りを、ジェダイになる為に生まれ育った惑星を飛び出した時に彼女へと贈ったのだ。

『僕のことを忘れないで』という言葉と共に。

 

「ア、アニー?」

 

しかし実際はどうだろう?

今彼女の胸元で光を放っているのは別の異物だった。

願いを込めて贈った物は、彼女の“中”には存在しなかった。

 

「アニーと呼ぶな!!!」

 

突然アナキンが激高したことにより、パドメはビクッと身体をこわばらせる。

 

初めはアニーと愛称で呼ばれることが嬉しかった。

より近い関係で、親しい間柄だと実感できたからだ。

しかし時が刻まれた今ではどうだろうか?

 

その呼び方は、母(シミ)が彼を呼ぶ時と同じだった。

確かに愛は感じる。

しかしそれは、自分が求めている"愛の形"では無かった。

気付いていたが———気付かないフリをしていたのかもしれない。

それを自分が認めてしまえば、全てが終わってしまうと思ったからだ。

 

しかし最も確実で、決定的とも言えるものが目の前にある。

その事実はアナキンが自ら押し留めていた感情を解放するきっかけとなってしまう。

 

「—————奴のか」

 

「・・・・・」

 

「ヴェリウス!! 奴の物か!?」

 

アナキンの怒号にパドメは息を詰まらせる。

しかし彼女は、自身の胸元で煌めくカイバー・クリスタルをぎゅっと握り込む。

そして少し安心したような表情を浮かべながら深く息を吸うと、先程までとは違い芯の通った表情で彼に対する。

 

「はい、これはヴェリウスが贈ってくれた物です。とても大切な・・・命よりも大切な物です。これがあれば離れていても彼と共に在ると実感できる。私は強く在れるのです」

 

彼女は力強い瞳で、クリスタルを握りしめながらそう語る。

パドメは"彼"に対する気持ちを、想いを偽ることなどできなかった。

彼女の中で、それは決して許されないことだった。

 

次の瞬間、アナキンは闇の感情に支配された。

言葉にならない獣のような咆哮を上げ、無意識のうちにライトセーバーが起動されると青い光剣が目の前の人物に深々と突き立てられるのだった。

 

 

 

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<惑星コルサント 上空>

 

ヴェリウスは先刻のことを考えていた。

師であるドゥークーの真実。

その記憶と、記録を知った彼は自分がどうするべきなのか決めかねていた。

彼はヴェリウスがどんな選択をしようともそれが正しいことだと言った。

それはヴェリウスを信じての言葉であり、彼の行いはこの世のためになると確信していたのだ。

ヴェリウスは以前から共和国の腐敗と、ジェダイの在り方に疑問を持っていた。

それと同時に“フォースにバランスをもたらす”という予言について、未だに何を指すのか分からないでいた。

 

「私は・・・」

 

思い悩むヴェリウスだったが、その思考は突然中断される。

フォースを通して危険を感知したのだ。

しかし、それは自分自身に対する警告では無かった。

 

「・・・パドメ?」

 

ヴェリウスは操縦桿をしっかりと握り直し、ファイターを急速旋回させる。

“彼女”に危険が迫っていた。

 

 

 

 

『パドメ、君を助けに来た!』

 

『アニー!? どうしてあなたが?』

 

『君を死なせたりしない。君を救えるのは僕だけだ。ヴェリウスじゃない、僕なんだ。僕だけが君を幸せにできる—————』

 

『・・・何の話をしているの?』

 

『ヴェリウス!! 奴の物か!?』

 

『とても大切な・・・命よりも大切な物です。これがあれば離れていても彼と共に在ると実感できる。私は強く在れるのです』

 

 

 

フォースを通して、あるイメージが入ってくる。

高揚、恐れと不安。

期待、欺瞞や悲しみ、怒り。

様々な感情が渦巻く中、ヴェリウスは彼女が傷つくのを感じる。

 

 

ファイターから降り立ったヴェリウスが目にしたのは、仰向けで倒れこむ妻の姿だった。

意識は無く、腹部の傷が痛々しい。

周囲には人体が高温で焼かれた際の特有の匂いが微かに漂っていた。

それは明らかにライトセーバーによる傷だった。

 

「パドメ!!」

 

ヴェリウスは駆け寄り、すぐにその強大なフォースを流し込む。

しかしどんなにフォースを用いようとも、パドメに変化は現れなかった。

 

既に彼女は事切れていた。

しかしヴェリウスは治療をやめない。

“この事実”を受け入れる術を彼は知らなかった。

パドメのいない世界の生き方をヴェリウスは知らなかった。

 

 

その時、突然ペントハウスのプラットフォームに雫が落ちる。

初めは一つ、二つと数えることができたがすぐに無数の雨が降り出す。

 

ヴェリウスはその場に座り込むと、倒れ込む妻の亡骸を抱きながら暗雲立ち込める空を仰ぎ、咆哮のような声を上げる。

彼らを中心にフォースの波動が発生し、周囲のガラスが砕け散る。

ヴェリウスの叫びは止まらない。

 

 

この間もクローンは反乱を起こし、ジェダイは反乱者として狩られている。

全てある一人のシス卿の思い描いたとおりに進んでいた。

 

 

 

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<銀河元老院 パルパティーンの執務室>

 

暗殺に失敗したジェダイ評議会のメンバー達の遺体は既に片付けられ、メイス・ウィンドゥとの戦いで砕け散った窓ガラスも早急にドロイドが交換作業をしている。

 

そんな中、執務室に設けられたシスの遺物を保管している隠し部屋でパルパティーンは一人不気味な笑みを浮かべていた。

その顔は先の戦いで傷付き、かつての面影は感じられなかった。

 

パルパティーンはこの広い銀河で次々にジェダイが抹殺されていることを感じ取っていた。

同時に新たに弟子となったダース・ヴェイダーが聖堂に残るジェダイを片付けている。

間もなくだった。

もう間もなくで長きに渡る計画が成就する。

再びシスが銀河系を支配する時は近い。

 

だがその時、突如として正体不明の暗黒面の力を感じる。

それはヴェイダーのものではなかった。

いやヴェイダーはおろか、パルパティーン自身の力を大きく超えていた。

 

その“強大過ぎる”力を感じたことで、パルパティーンは動揺するどころか再びその顔に笑みを浮かべる。

彼の心の奥底を真に理解する者は誰もいなかった。

 

 

 

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<タナヴィーⅣ>

 

このタナヴィーⅣは、惑星オルデランの王室であるオーガナ家が所有しているコレリアン・エンジニアリング社製のCR90コルベットだ。

オルデラン代表の元老院議員であるベイル・オーガナが惑星間の移動や、交渉任務などでこのコルベットを用いている。

 

「他に何人のジェダイが生き残りましたか?」

 

「うーむ、誰からも連絡がないのじゃ」

 

そう話すのはオビ=ワンとヨーダだ。

惑星キャッシークにおける分離主義者との戦いにおいて指揮を執っていたヨーダは、他のジェダイと同じようにクローンの裏切りに遭った。

その際に、ウーキー族のターフル、チューバッカの助けを借りて惑星を脱出していたのだ。

 

「クローンがジェダイ聖堂を襲うのをこの目で見た。それでヨーダを探したのだ」

 

ベイル・オーガナはこれまでの経緯を簡潔に口にする。

その言葉を受け、オビ=ワンはジェダイ聖堂と連絡を取る手段を問いかける。

 

「ジェダイに引き上げのシグナルを発しておる」

 

「“全員ジェダイ聖堂に戻れ”という内容だ。戦争は終わったと」

 

「早く戻らなくては・・・! シグナルを信じたジェダイが、罠に嵌って殺されます!」

 

ティアと共に驚きの表情を浮かべるオビ=ワンは、発信されているシグナルを止める必要があると口にする。

 

「同感じゃ、詳しく調べる必要もあるしのう」

 

彼らの会話を聞いていたティアは不安に囚われる。

危機を感じたヴェリウスは、先んじてコルサントへと向かったはずだ。

クローンの裏切りに気づいていなかった場合、彼らの不意打ちを受けることになる。

師の実力を信頼しているティアだったが、この時ばかりはその無事を確信することができなかった。

それと同時に、惑星ウータパウで師を止められなかったことを心から後悔した。

 

「マスターは何か嫌な予感がしていたのだと思います」

 

ティアが徐に口を開いたことで三人の視線が彼女に集まる。

 

「止めることができませんでした。行かせてはならないと感じていた筈なのに・・・!」

 

彼女は自分自身を責めていた。

ティアは両手を握りしめ、師の無事を祈った。

今の彼女には、祈ることしかできなかった。

 

「今はヴェリウスの無事を祈るしかないのぅ」

 

「彼は強い。私とは比べ物にならない程に」

 

『だから大丈夫だ』とオビ=ワンはティアの肩に手を置く。

その時、ティアの中にオビ=ワンの感情が流れ込んできた。

 

彼の言葉は確信というよりも願望に近いものだった。

しかし、ヴェリウスがやられるとは考えていないことも事実だった。

自分が生き残っているのだから、ヴェリウスは無事だろうと。

 

それよりも、彼の中で膨れ上がるのは弟子であるアナキンのことだった。

評議会の特命により、アナキンはコルサントに残っている。

そしてグリーヴァスを倒したという報告を上げてから起きたこの惨状に、当代最高クラスのジェダイであるオビ=ワンですら“不安”という感情を完全に排除することはできなかった。

 

 

『不安に囚われるようではまだ若いな。今という現実に意識を集中できなければ』

 

 

かつての師であるクワイ=ガン・ジンの言葉が思い出される。

『私もまだ若いな』と顎の髭に手を置くオビ=ワン。

弟子の無事を願いながら、彼は“今”に集中しようと努めるのだった。

 

 

 

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<惑星コルサント パドメのペントハウス>

 

ヴェリウスは妻であるパドメの亡骸を抱え、ペントハウス内を進んでいた。

彼は寝室に設置されているベッドにパドメを横たえる。

その際に寝具から愛おしい存在の匂いが漂った。

しかしその香りは、この時だけはヴェリウスの心をただ傷つけるだけだった。

 

ベッドに横たわっているパドメはまるで眠りについているように見える。

この空間はとても静かで、いつもと変わらない日常が流れているようにさえ感じる。

 

しかし現実は違った。

それらは偽りだった。

パドメは死に、クローンの反乱によって銀河中でジェダイが次々と命を落としている。

 

ヴェリウスはその場に膝を着き、俯いている。

彼の心の中では様々な感情が渦巻いていた。

怒りや悲しみ、無気力感や絶望—————

 

寝室の窓ガラスには激しい雨が打ち付けられていた。

周囲の窓ガラスは大半が破壊されたが、この場所は無事だった。

まるで世界が、これ以上パドメが傷付くことを拒絶しているようだった。

 

 

 

 

いつまでそうしていただろうか?

既にヴェリウスに時間の感覚は無かった。

 

嫌な予感はしていたのだ。

ヴェリウスは自らを責めた。

任務に就く前に、彼女の安全を確保するべきだったと。

 

しかし過ぎた時間は戻らない。

ヴェリウスはこんなにも後悔したことはなかった。

 

『君がいない世界でどう生きていけばいい?』

 

悲しみと失意に満たされたヴェリウスの心には巨大な穴が空いていた。

彼はその穴の埋め方を知らなかった。

 

『私は君のいない世界の歩き方を知らない』

 

ヴェリウスには考えられなかった。

彼女と歩むことのできない世界を。

 

『君を否定する世界なんていらない』

 

ヴェリウスにとって彼女が存在しない世界は必要なかった。

価値のないものだった。

 

『そうか・・・間違っているのか、この世界が』

 

彼女がいない世界、それは偽りの世界。

彼女の存在が、ヴェリウスをこの世界に繋ぎ止めているのだ。

 

『それなら私が壊そう。この間違った世界を』

 

この世界を破壊し、全てを白紙に戻す。

間違えたのであれば消してしまえば良い。

 

『そして創り直そう。正しい世界を』

 

正しい世界にすれば彼女は存在できる。

それが真理であり、唯一の方法。

 

『それができるのは“選ばれし者”だけ』

 

それを可能にするのは、予言にある“選ばれし者”だけ。

“選ばれし者”はフォースにバランスをもたらす。

バランスとは—————すなわち彼女のいる世界。

 

『私は“選ばれし者”だ』

 

ヴェリウスは徐に立ち上がり、パドメの亡骸に背を向けて歩き出す。

 

「~~~?」

 

ペントハウス離着陸パッドのファイターで待機していたR2がヴェリウスに声を掛けるが彼は無言で機体に乗り込む。

ヴェリウスはそのまま操縦桿を握り、空高く舞い上がるのだった。

 

 

 

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<惑星コルサント ジェダイ聖堂>

 

共和国軍の中でも精鋭で知られる第501大隊、アーマーに青いマーキングが施された彼らは長い歴史を誇る伝統的な聖堂内でジェダイを次々に抹殺していた。

その中には知った顔の者もいた。

しかし行動抑制チップの影響により、一種のトランス状態であるクローン達は無条件にジェダイを敵だと認識していた。

 

「ジェダイだ、殺せ」

 

クローンは決して一対一の戦いを挑まない。

三年という長い時間、戦場を共にしていた彼らにはジェダイの攻略法を熟知していた。

一人のジェダイを複数人で囲んで集中砲火、他にも幼いイニシエイトや経験の浅いパダワンを巻き込むような戦術を取ることで進んで身代わりになるマスタークラスを討ち取っていく。

 

バトル・ドロイドであれば制圧も可能だったかもしれない。

しかし、歴戦の兵士であるクローン・トルーパーが大部隊で進行してくるとなると話は違ってくる。

さらに“味方だと思っていた”クローンによる奇襲は戦術的に非常に有効なものだった。

 

その中でも異常な突破力を誇るジェダイがいた。

聖堂内に設けられた訓練場で、既に少なくない数のクローンを倒している。

 

「ヴェイダー卿」

 

「私が行く。お前たちはここのジェダイを片付けろ」

 

クローンからの報告を受けたヴェイダーは自ら問題を解決する道を選択する。

彼がアナキン・スカイウォーカーだった頃から、その特性は変わらなかった。

 

 

 

 

ヴェイダーが目的地に向かっている道中で思わぬ妨害を受けた。

その人物はアウター・リム包囲作戦で命を救ったこともあるセラ・ケトーであった。

ジェダイの騎士であるセラ・ケトーは人間種の女性であり、二振りのライトセーバーを使った超攻撃的なスタイルを取る。

ニマーンやジャーカイを基本スタイルとするも、彼女は二振りのセーバーを攻撃、防御に役割分担させることなく全て攻撃に用いるのだった。

 

「闇に堕ちたか、スカイウォーカー」

 

「セラ・ケトー、なるほど。報告にあったジェダイはシン・ドローリグか。まだ師に守られているのか?」

 

「暗黒面の誘惑に負けた貴様に何も言われる筋合いはないな」

 

セラ・ケトーがライトセーバーを起動すると深緑の光刃二本出現する。

そのままフォースを使った高速移動でヴェイダーとの間合いを一気に詰める。

速度の乗った斬撃を皮切りに息を着く間もない程の連撃を叩きこむ。

 

しかしヴェイダーは顔色一つ変えずに青色の光剣でその全てを防いでいる。

この立ち合いだけでセラ・ケトーはシス卿との実力差を悟った。

彼女は後方へと大きく跳躍し、ヴェイダーから距離を取ろうとする。

 

しかしヴェイダーは空中に飛び上がったケトーに対してフォース・プッシュを繰り出す。

暗黒卿のフォースを受け、抵抗することもできずにケトーは聖堂の壁に叩きつけられる。

なんとかセーバーを手放さなかったケトーだったが堪らずに膝を着く。

痛みに顔を歪めながら顔を上げると、シス卿がゆっくりと歩みを進めてくる。

その目は戦いにおける高揚感と闘争本能により見開かれ、黄色く不気味に光を放っているように見える。

 

ケトーは何とか呼吸を整えるように努めながら破損していた聖堂内の柱に意識を集中する。

するとパラパラと柱の破片が落ちていき、巨大な柱がヴェイダーとケトーの間に轟音を響かせながら倒れ込んだ。

周囲に粉塵が撒き上がり視界が効かなくなる。

 

ヴェイダーは粉塵が自然に収まるまで待つほど気は長くなかった。

両腕を顔の前で交差したかと思うと、腕を左右に振り払う。

その強大なフォースは粉塵を強制的に排除してしまう。

その視線の先には逃走を図るセラ・ケトーの後ろ姿が映る。

 

【逃がしはしない】

 

ヴェイダーの言の葉がフォースに乗ってケトーの耳に届く。

その声は温かさなど微塵も感じられない氷のような冷たさだった。

 

セラ・ケトーに恐怖が迫っていた。

どんなに走ってもシスの暗黒卿から逃れることができない。

初めは言葉巧みにヴェイダーの心を惑わし、隙を作ろうと画策していたが今彼女の中にあるのは生物として備わっている逃避行動だけだった。

 

 

 

 

セラ・ケトーは、聖堂の訓練ホール前に辿り着く。

到着するまでにクローンの妨害もあったが、この場所に向かった理由は一つ。

この先に彼女のマスターであるシン・ドローリグがいるからだ。

 

彼女が扉を開くと訓練場の中心に師の姿があった。

 

「マスター!」

 

「セラ!? うっ」

 

セラ・ケトーが師の無事に安堵したのも束の間、突然の来訪者に気を取られたその一瞬にシン・ドローリグの身体を青色の光刃が貫いた。

 

「マスター!!」

 

無情にも突き立てられた光刃が引き抜かれると、オーダーでソード・マスターと呼ばれる程の達人は糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。

シスの暗黒卿、ダース・ヴェイダーはセーバーを引き抜くと同時に後ろを向いて歩き出し、セラ・ケトーは師の下に駆け出す。

 

「マスター、お気を確かに!!」

 

「せ、セラ———逃げ、ろ・・・奴は強すぎ・・る」

 

この訓練場にはベネイとウィー・マルローと呼ばれるジェダイ・パダワンの亡骸が横たわっていた。

友人である二人はソード・マスター、シン・ドローリグの訓練を受けいている最中にクローの襲撃を受けたのだ。

周囲には多くのクローン・トルーパーが倒れてる。

これはヴェイダーが受けた報告の通り、三人の抵抗が激しかったことを物語っていた。

 

しかし蓋を開けてみれば、ヴェイダーは一瞬のうちに二人のパダワンを倒し、シン・ドローリグとの立ち合いは“あえて”引き延ばしたのだった。

彼の愛弟子であるセラ・ケトーがこの場に現れるまで—————

 

ソード・マスターの称号を授かり、ジェダイ・オーダーでも屈指の実力者と呼ばれるドローリグがまるで相手にならないという事実は、ヴェイダーが己の実力を再確認する良い機会となった。

そしてこの事実は銀河で彼に敵う者が殆ど残されていないということでもあった。

警戒すべきは三人、ヨーダ、オビ=ワン、そしてヴェリウスだ。

暗黒面に堕ちる以前でも、その実力はトップクラスであり並みのジェダイ・マスターを優に超えていた。

負の感情を扱う現在、オビ=ワンはもとよりヨーダですら自分には敵わないとヴェイダーは考えていた。

 

しかし、ヴェリウスだけは別だった。

どんなに力を付けたとしてもヴェリウスは最大限警戒すべき相手だった。

 

だが今は—————

 

【別れは済んだか?】

 

その場にヴェイダーの不気味な声が響く。

セラ・ケトーの腕に抱かれたドローリグは既にフォースの冥界へと旅立っていた。

ジェダイ・オーダーでは『死は悲しむものではなく、死者を喜んで送る』と教わる。

しかしセラ・ケトーには師を喜んで送ることなどできなかった。

彼女の中には怒りと悲しみの感情が渦巻いていた。

 

「貴様ぁぁぁああ!!!」

 

二振りの深緑に輝く光剣が起動されると先ほどとは比べ物にならないほどの、より激しい斬撃が次々と繰り出される。

それは純粋な光明面だけの力ではなく、明らかに負の感情が籠っていた。

 

先刻よりも明らかに大きな力は、ヴェイダーの闘争心を昂らせた。

自身に迫る激しい連撃はシス卿の顔に笑みを浮かばせる。

 

彼は強者を求めていた。

並みの騎士では相手にもならない。

『ならば』と、ヴェイダーはオーダーの中でも好戦的なセラ・ケトーに目を付けた。

先の戦いで、ほんの思い付きだった。

だが予想以上に上手くいった。

 

今の彼女は負の感情に支配されている。

暗黒面の誘惑に抗うことはそう簡単ではないのだ。

戦争で疲弊し、戦友であるクローンに裏切られ、絶滅の危機に瀕しているジェダイ達の心は穏やかではないだろう。

そんな中で師を目の前で亡くし、それがかつての仲間の手によって行われたとなれば—————

 

だが騎士の中でも高い実力を持つセラ・ケトーですら、ダース・ヴェイダーの相手にはならなかった。

 

【この程度か】

 

暗黒面の力を使ってもなお、『この程度の実力なのか』とヴェイダーは落胆する。

そうなれば目の前のジェダイへの興味は自ずと消える。

 

両腕に力を籠めると、二回・・・たったの二振りでセラ・ケトーの持つライトセーバーを二本とも弾き飛ばす。

そのまま右腕の義手を上げると、ケトーの首を締め上げる。

見えない力で宙に浮かばせられたケトーは必死に“もがく”がその苦しみから逃れることはできない。

 

助けを求めるように血走った目を周囲に走らせるが、この場に他の生者は存在しなかった。

ケトーの瞳は絶望の色に染め上がる。

ヴェイダーはその瞳を満足げに確認すると、右手に力を籠めるのだった。




はい、お疲れさまでした。

実は何通りかのIFルートを考えています。
この話をルートⅠとして、また別次元の話をルートⅡのように投稿するかもしれません。
ルートⅡに関してはEP2まで遡る予定なので正直完結まで時間が掛かると思います。
というかルートⅡが元々構想していたストーリーに近いものになる予定です。
・・・・・【完結】外した方がいい?()

それではまた近いうちに・・・・・
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