かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

登場人物紹介の更新でも触れましたが、ヴェリウスとティアのイメージ画像を追加しました。
あくまで参考程度のご認識でお願いします!
イメージ通りに画像にするって難しいですね・・・


【挿絵表示】



【挿絵表示】



IFルートⅠ②

<ジェダイ聖堂>

 

辺りに漂うのはブラスターに内包されているティバナガスによる硝煙と、人が焦げたような匂い。

そして肉体を高温で焼き切った時に発生する独特な匂い。

長い歴史を誇る伝統的な建造物であるジェダイ聖堂は、クローンの襲撃により至る所に損害を受けていた。

 

フードを目深に被った長身の人物はゆっくりと聖堂内を進んでいる。

迷いのないその歩みは、この場所に慣れ親しんでいる証だろう。

建物の中にはジェダイとクローンの屍が通路やホール、訓練場など様々な場所に横たわっている。

 

長身の人物—————ヴェリウスの知った者、親交の深かった者も多くいた。

それはジェダイ・オーダーに所属している者だけでなく、襲撃を行った青いペイントを施した第501大隊所属のトルーパーも同様だった。

アナキン・スカイウォーカーの直轄部隊である501大隊とは三年にも及ぶ戦争で幾度となく戦場を共にしたのだ。

 

通路を進んでいる最中、ある一人のクローンに意識が向く。

フォースを通して伝わってくる感覚は、そのトルーパーがまだ生きていることを報せていた。

 

「ぐっ———優秀な兵士は・・・命令に、従・・う」

 

自らが放った光弾がライトセーバーによって偏光されたのだろうか。

彼のアーマーはブラスターによる弾痕が刻まれていた。

 

それでもこのクローンは傍に落ちていたブラスターを必死に構えようとする。

最期まで命令を遂行しようとするその強靭な精神力と忠誠心は全兵士の尊敬を集めることだろう。

それが脳内に埋め込まれた行動抑制チップの影響を受けたものだったとしても。

 

自らの前に現れたジェダイを抹殺する為に力を振り絞るクローンだったが、フードの奥に隠れたその正体がヴェリウスだと気づいたことでその様子が変化する。

 

「ヴェ・・・はく・・・でした———か」

 

ヴェリウスはその場に膝を着き、トルーパーのヘルメットを外してやる。

トルーパーは呼吸が楽になったことで新鮮な空気を吸う為に、一度深く息を吸う。

 

「ありがとう・・・ございます。ジェダイが反乱を起こし、その対応にヴェイダー卿が———」

 

「・・・・・」

 

「聖堂の包、囲を・・・ジェダイ———」

 

それ以上、このトルーパーが言葉を続けることは無かった。

ヴェリウスは開いたままのその瞳を閉じてやる。

 

このクローンが発した言葉は多くなかったが、ヴェリウスの中にある疑問のいくつかが解消される。

ドゥークーの言葉やジェダイの反乱、ヴェイダーという名前・・・全てが繋がっているのだ。

 

ヴェリウスはクローンの接近を感知するが特に反応を示すことはない。

彼がその場に立ち上がろうとした所で、クローンの一団に包囲される。

 

「動くな! そこで何をしている?」

 

クローンの制止を受けるが、ヴェリウスは静かに立ち上がる。

そのままフードを取り払いながらヴェリウスはクローン部隊に正対するのだった。

 

 

 

 

ヨーダ、オビ=ワン、ティアの三人は聖堂から発信されているジェダイ帰還の命令を、“身を隠すように”とシグナルを変更した。

同時に彼らは聖堂内で生存者を探すが、生き残りを見つけることはできなかった。

 

「このパダワン殺し、クローンではない」

 

ヨーダは酷く疲れた様子で言葉を発する。

周囲には多くの幼いイニシエイトやパダワンの亡骸が横たわっていた。

 

「マスター、『クローンではない』というのは・・・?」

 

ティアは純粋な瞳をヨーダに向ける。

グランドマスターの言葉の意味を悟ったオビ=ワンはショックを隠し切れない様子だ。

 

「この傷はライトセーバーによるものじゃ、ブラスターではない」

 

「そんな、まさか—————」

 

ティアはオビ=ワン以上に衝撃を受けたようだった。

まだ幼いイニシエイトの亡骸の傍にまるで倒れ込むように膝を着く。

 

「酷い・・・誰が、誰がこんなっ———」

 

ティアは消え入るようなか細い声を発しながら涙を流す。

人一倍感受性の強いティアには重すぎる事実だった。

 

共和国が現在の体制となって1000年、その平和を護ってきたジェダイの在り方は既に存在しなかった。

 

 

 

 

 

「警備記録なら見ない方がよい。苦痛が増すだけじゃ」

 

「真実が知りたいのです」

 

聖堂内を進んでいる最中、オビ=ワンが警備記録にアクセスするために端末へと向かう。

ティアも一瞬の迷いを見せながらもオビ=ワンの後に続く。

端末に聖堂内の様々な場所で行われた虐殺の映像が映し出される。

 

そこに“真の選ばれし者”と呼ばれたアナキン・スカイウォーカーの変わり果てた姿だった。

クローンの大部隊を率い、聖堂に襲撃をかけたアナキンは瞬く前に聖堂を制圧した。

実力者で知られる騎士を次々に抹殺し、パダワンやイニシエイトまでもその手にかけていた。

 

『良くやったヴェイダー卿、其方の働きで共和国転覆を図ったジェダイの策略を未然に防ぐことができた。火山の惑星ムスタファーに向かうのだ。そこに分離主義者のリーダー達が集まっておる』

 

映像にはパルパティーンの目前で跪くアナキンの姿が映し出されていた。

その事実に、衝撃にオビ=ワンは映像から目を逸らす。

 

「これ以上見ていられない」

 

オビ=ワンが映像を映し出している端末を停止させようとしたところでティアに止められる。

 

「お待ちください」

 

ティアも大きなショックを受けていた。

師が弟のように想っているアナキンの変わり果てた姿は到底受け入れられるものではない。

しかしそれ以上に、彼女はヴェリウスの安否を知りたがっていた。

 

映像を早送りすると廊下を進む長身の人影が映し出される。

 

「マスター!」

 

ティアには瞬時にその人物がヴェリウスだと確信できた。

フードを目深に被っていようと、顔が確認できなかろうと関係のないことだった。

 

映像の人物はは倒れこんでいるクローンに近づいていく。

映し出される映像は無音だった。

何も話していないのか、マイクが拾いきれないほど小さな声なのかは分からない。

だが次の瞬間、彼らを囲うように銃を構えたクローンの一団が包囲する。

 

『動くな! そこで何をしている?』

 

ティアは師の無事を祈った。

万が一にもヴェリウスがやられる訳がないと考えていても、その身を案じてしまうのは仕方のないことだろう。

 

その場に立ち上がり、フードを取り払うことで現れた顔は確かにヴェリウスのものだった。

しかし、その後の映像に映し出されたものは三人が思いもしないことだった。

正体不明の人物がヴェリウスだと分かった瞬間にクローン達は銃を下ろしたのだ。

 

『ヴェリウス卿! 失礼致しました』

 

分隊を指揮しているクローン・サージェントがヴェリウスに謝罪の言葉を述べる。

ティアたちには理解できなかった。

ジェダイを次々に抹殺しているクローンが、ヴェリウスには手を出さないことに。

彼に対して“卿”という敬称を用いていることに。

 

「マスター・・・?」

 

ティアはウータパウで師を止められなかったことを、一人で行かせてしまったことを激しく後悔した。

ヴェリウスの身が無事なことに安堵すると同時に、師が遥か遠くに行ってしまったように感じていたのだ。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<パドメのペントハウス>

 

ヴェリウスは既に聖堂を後にしており、妻のペントハウスに戻っていた。

聖堂のジェダイはそのほとんどがクローンに狩りつくされていたが、最大の障害になると思われたクローンもヴェリウスの邪魔になることはなかった。

 

全ては“父”の想いが、彼の行いがヴェリウスを守ったのだ。

ジェダイ・オーダーの行く末よりも、共和国という銀河最大の集合体よりも、銀河そのものよりも、ドゥークーにとって“ヴェリウス”という存在がなによりも大切だったのだ。

冷たく凍り付いたヴェリウスの心に僅かながら温かさが舞い戻るも、寝室で、まるで眠りについているように横たわっているパドメの姿が目に入ると再び影が差すのだった。

 

「—————パドメ」

 

枯れるほど流し、もう溢れることはないと思っていた雫はヴェリウスの瞳を濡らし、再び流れ落ちる。

まるでヴェリウスの感情に呼応するかのように、空からも雨が降り落ちる。

静寂を破ったのは寝室のガラス窓に打ち付けられる雨音だ。

しかしパドメが目覚めることはない。

 

永遠の静寂、パドメの眠りを妨げるもの全てに怒りの感情が湧き上がってくる。

ヴェリウスは妻の亡骸を静かに抱き上げると、その場を後にする。

 

 

 

 

<ミッド・リム コメル宙域 ナブー星系>

 

クローム仕上げで眩しいほどの輝きを放つHタイプ・ヌビアン・ヨット、ナブー王室所属のこのヨットは主人を乗せて故郷への道のりを進んでいた。

 

同時刻、オビ=ワンは火山の惑星ムスタファーへと向かい、ヨーダは全ての元凶であるダース・シディアス暗殺に臨むのだった。

 

________________________________________

 

『この僕が平和と自由、正義を新しい帝国にもたらした!』

 

『新しい帝国だと?』

 

『アンタを殺したくないんだ』

 

『私は共和国に忠誠を誓った。民主主義にだ!』

 

『仲間にならないなら敵と見るしかない』

 

 

 

 

『新しい弟子を迎えたようだな皇帝、それともこう呼ぼうかの? ダース・シディアス』

 

『マスター・ヨーダ、生きていたのか?』

 

『意外かの?』

 

『傲慢故に視えるものも視えなかった・・・だがジェダイは今日で死に絶えるのだ』

 

『お主の暗黒帝国こそ、一日の儚い命』

 

________________________________________

 

二人のジェダイが、二人のシス卿に立ち向かう光景がフォースを通してヴェリウスの中に流れ込んでくる。

銀河の命運を左右するこの戦いも、今のヴェリウスにとっては広い銀河で起きている“一つ”の出来事に過ぎなかった。

彼は迷いなく操縦桿を操作し、ナブーの湖水地方へと進路を取る。

 

大気圏と厚い雲を抜けると二人で愛を育んだ、かつてと変わらない自然豊かな景色が広がっていた。

ヴェリウスはヴァリキーノ島の屋敷ではなく、湖の反対側に存在する屋敷へと降り立つ。

 

________________________________________

 

『とても良い場所だね』

 

『気に入りましたか?』

 

『うん、とっても。これなら窮屈な思いをしないで済みそうだね』

 

『学生時代によくこの場所に来ました。友達と島まで泳ぐのが日課でした』

 

『行こう? 私も泳ぎには自信があるんだ』

 

 

『こんなに動いたのは久しぶりです』

 

『・・・・・』

 

『ヴェリウス—————』

 

________________________________________

 

3年前、アミダラ議員暗殺未遂事件に伴い、パドメの護衛で身を隠したのがナブーの湖水地方だった。

ヴァリキーノ島に辿り着き、初めにやったことと言えば屋敷の反対側にあるこの島まで泳ぐことだった。

 

ずっと昔からお互いに惹かれ合っていたのかもしれない。

しかし二人の置かれている立場は、それ以上の関係に進むことを許さなかった。

 

しかし共に過ごす時間が長くなるにつれて、二人の仲は急速に縮まっていった。

まるで10年という長い空白を埋めるかのように。

 

ヴェリウスは、かつて過ごしたこの場所での出来事をまるで昨日のことのように思い出すことができた。

しかし同時に、遥か昔、遥か遠くのことのように感じてしまう。

ヴェリウスの心は今を———この時を受け入れることができないでいた。

 

しかしパドメをこのままにしておく訳にはいかなかった。

感情では、心ではこの現実を受け入れることができなかったとしても、フォースと深い繋がりをもつヴェリウスは既に彼女がこの世界にいないことを理解していた。

 

ヴェリウスは島の深い場所まで足を運んだ。

ここの自然は手が付けられておらず、まるで時が止まっているかと錯覚するような場所だった。

巨大な岩盤が広がっているその場所を、ヴェリウスは強大なフォースを用いて掘削する。

そして一つの巨大な岩から棺を作り出した。

 

その中に最愛の妻であるパドメを寝かせる。

何度見ても、彼女は眠りについているだけのように穏やかな表情をしていた。

 

 

 

怖かったはずだ。

寂しかったはずだ。

助けを求めていたはずだ。

 

当時の彼女の心境を、置かれた状況を考えると自分の無力さに怒りが込み上げてくる。

 

だが彼女は最後まで私を信じていたはずだ。

『助けに来てくれる』と。

 

私を待っていたはずだ。

『必ず救ってくれる』と。

 

だが現実は違った。

私はこの世界でもっとも大切な人を救えなかった。

傍にいると約束したのに、その誓いを守れなかった。

 

「誰にも邪魔はさせない」

 

これ以上、彼女を傷つけさせない。

傷つけさせてなるものか。

 

「必ず帰ってくる。だから少しだけ、もう少しだけ待っていて」

 

ヴェリウスは棺の蓋を閉め、それを深く、深く———誰の目にも触れさせないようにずっと深くに収める。

そして穴を巨大な岩で塞いだ。

 

【君の眠りを妨げさせはしない】

 

その為に、私はこの世界を—————————

 

 

 

________________________________________

 

 

 

<火山の惑星ムスタファー>

 

「選ばれし者だった! シスを倒すはずのお前がシスに付くとは!!」

 

ジェダイ聖堂の警備記録からアナキンがムスタファーにいると知ったオビ=ワン。

ヨーダの命令で暗黒面に堕ちたかつての弟子に会う為にこの惑星にやって来たのだ。

 

「フォースにバランスをもたらす筈が、闇に囚われてしまった!」

 

オビ=ワンはアナキンに背を向けて足元に落ちている彼のライトセーバーを拾い上げる。

 

「アンタが憎い!!!」

 

オビ=ワンはもう一度振返り、アナキンに目を向けるがそこには変わり果てたかつての弟子の姿があった。

右手の義手以外を切断されたアナキンは、怒りと憎しみの感情を爆発させている。

その瞳は黄色く不気味に染まっていた。

 

「・・・弟だと思っていた。“愛していた”」

 

説得できると思った。

まだ間に合うと、また昔のように戻れると思った。

だが全ては変わってしまっていた。

優秀だが無鉄砲で、それでいて誰よりも人間らしく優しかった若き騎士はどこにもいなかった。

ウータパウに向かう直前に会話した友は、弟は既に存在しなかった。

 

 

溶岩の川のほとりに身を置くアナキンの身体に火が燃え移る。

あまりの苦痛にアナキンは叫び声を上げるが、その苦しみが消えることはない。

その光景はまるで地獄の業火に焼かれる罪人のようだった。

 

 

 

________________________________________

 

□ムスタファーの決着から少し遡り—————

 

<惑星コルサント 銀河元老院議会場>

 

数千に及ぶ惑星の代表たちはこの場で共和国の舵取りをしていた。

民主主義を謳っているこの共同体は腐敗の一途を辿っている。

 

共和国の中枢である意思決定機関、ある意味で脳と言えるこの場所では銀河の命運を左右する戦いが行われていた。

全ての元凶、ジェダイを滅亡に追いやり1000年続く共和国を終わらせた張本人であるシスの暗黒卿と、800年以上もの長きに渡り後進の育成に努めたジェダイの最長老が刃を交えていた。

 

いつしかその戦いはライトセーバーからフォースを用いたものへと移り変わる。

シスの暗黒卿ダース・シディアスは周囲のリパルサーポッドをヨーダに向かって放り投げる。

この議会場に設けられたポッドの数は1024基にもなり、その“残弾”には事欠かない。

 

ポッドからポッドへと飛び移りながらその攻撃を避けるヨーダだったが、その動きにも限界があった。

彼はシス卿の飛ばしたポッドをフォースで受け止めると、宙に浮かせたまま回転を加えていく。

シディアスは天を仰ぎながら高笑いを続けていた。

グランドマスターと呼ばれる程のジェダイを相手にしてなお圧倒的な力を誇っていた。

負けるとは微塵も思っていなかった。

いや、寧ろ彼の意識は“今”を向いていなかった。

『長きに渡る計画が成就し、銀河の全てが己が物となる』

この事実は目の前の物事に対する意識の集中を阻害していた。

 

慢心、驕り、傲慢、尊大、増長、独善—————

 

これらの意識、感情はいつどの時代でも身を危険に晒すのだ。

ヨーダの回転が加えられたリパルサーポッドは真っ直ぐシス卿に向かって行く。

己の目前に迫ることでようやくその危険に気づいたシディアスは身近なポッドに飛び移る。

 

すると、どこからともなく現れたヨーダはライトセーバーを起動してシディアスに襲い掛かる。

しかしこのシス卿は強力なフォース・ライトニングを発生させ、ヨーダのライトセーバーを吹き飛ばす。

目を開けていられない程の閃光を発生させたこの攻撃は、かつてジオノーシスでドゥークーが放ったものとは比べ物にならないほど強力だった。

 

シス卿の攻撃を受け止めるヨーダには限界が近づいていた。

しかしそこに思いもよらない人物が現れた。

その気配を感じ取ったシス卿は閃光を収める。

 

「マスター・ヴェリウス!」

 

その顔には不気味な笑みが浮かんでいた。

シディアスはヨーダとヴェリウスを相手にすれば勝ち目はないことを理解していた。

しかし彼にはこの状況すらまるで計画通りとても言うかのように喜んでヴェリウスを迎えた。

 

「ヴェリウス・・・?」

 

暗黒卿とは対照的にヨーダは目を見開く。

目の前の人物と、自身が知っているヴェリウスがとても同一の人物とは思えなかったのだ。

 

「・・・ヴェリウス、何故ここに?」

 

複雑な表情を浮かべながらヨーダはヴェリウスへと語り掛ける。

暫しの沈黙の後、ヴェリウスは静かに口を開く。

 

【この世界を正すため】

 

心に直接響くようなその声は、静かだが明確な意思を感じられた。

ダース・シディアスは不気味な笑みを隠そうともせずにヴェリウスへと語り掛ける。

 

「これもまたフォースの意思か! 余に協力し、このジェダイを葬るのだ!!」

 

ヴェリウスの選択により、この二人の運命が決まるのだ。

いや、銀河の運命そのものが変わってしまうだろう。

 

ヴェリウスの放つ眼光はとても冷たいものだった。

彼の纏う雰囲気はもはやジェダイとは言えないものだった。

 

ヴェリウスはゆっくりとした動作で両腕を上げる。

その手はそれぞれヨーダとシディアスに向けられていた。

反応する間もなく視認できない力によって二人は吹き飛ばされる。

 

ヨーダとシディアスはそれぞれ別方向に飛ばされ、待機状態のリパルサーポッド群に衝突する。

 

常人なら無事では済まないだろう。

しかし二人はジェダイ、シスそれぞれで最高レベルの実力の持ち主だった。

ヨーダは吹き飛ばされたライトセーバーをフォースで回収し、シディアスはローブの袖からライトセーバーを取り出して起動する。

それぞれのヒルトから緑と赤の光刃が立ち昇る。

 

【ここから始めよう、世界の浄化を】

 

ヨーダには分かってしまった。

誰よりも優しかったあの青年はもう存在しないと。

説得という行動に移ることすらできなかった。

彼は銀河にとってもっとも危険な存在になってしまったのだ。

 

シディアスにとっては手に入らない駒は邪魔なだけ。

しかしヴェリウスの実力は、この暗黒卿の力を大きく超えていた。

なら利用できるものは利用するだけのこと。

 

まさに対極に位置する二人が同時にヴェリウスへと向かって行く。

誰が想像できたことだろう?

ジェダイ・オーダーの長と、暗黒面のマスターが肩を並べることになると。

 

 

この議会場の中央に存在する元老院議長の演壇をヴェリウスはフォースで引きちぎり、二人に向かって吹き飛ばす。

広大な議会場内に耳を劈くような衝撃音が響き渡る。

 

その攻撃をなんとか避けたヨーダとシディアスだったが、彼らを襲う悪夢はまだ始まったばかりだった。

ヴェリウスを中心にその周囲を無数のリパルサーポッドが浮かび上がり、次々と二人に襲い掛かる。

 

彼らは自らに襲い掛かるポッドを足場にヴェリウスへと接近する。

最初にヴェリウスの下へと辿り着いたのはシディアスだった。

彼の光刃がヴェリウスに迫るが、その攻撃が届くことは無かった。

ヴェリウスが手を軽く払うだけでシス卿はまるで巨大な手に掴まれ、投げ飛ばされたかのように吹き飛ばされる。

 

投げ飛ばされるその瞬間、シディアスの背中から小さな影が現れる。

小さきグランドマスターは深緑に輝くプラズマを振るう。

その攻撃はヴェリウスに届くことはなく、視認できない力によって止められる。

しかしヨーダは諦めずにヴェリウスの周囲を飛び回りながら次々に斬撃を放つ。

 

そこにヴェリウスの背中に向かって不気味に輝く赤い光刃が襲い掛かる。

隙を伺っていたシディアスが攻撃を仕掛けたのだ。

だがこのシス卿の力をもってしてもヴェリウスに剣が届くことはなかった。

 

ジェダイのグランドマスターとシスの暗黒卿は互いの隙を埋めるようにアクロバティックなフォームⅣアタロを用いてヴェリウスに反撃の隙を与えないようにする。

 

【この程度か】

 

決して大きいものではなかった。

だがハッキリと二人の耳にはこの言葉が届いていた。

そして現状と、このヴェリウスの発言は暗黒卿のプライドを逆なでするには十分だった。

 

【ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“アア”】

 

シディアスは斬撃を繰り出しながらシスの秘儀であるフォース・スクリームを発動する。

暗黒面の波動が周囲に発せられ並みのジェダイでは本来の力が発揮できなくなるどころか致命的な隙を晒してしまう非常に有用な技だ。

 

だがヴェリウスには全く効果が無い。

それどころか肩を並べているヨーダの戦いのリズムを崩すきっかけになってしまう。

本来であればメイス同様、ヨーダはこの技に耐性があった。

しかし度重なる戦い、ダメージ、疲労など様々な要因が重なりフォース・スクリームの影響は無視できないものだった。

元々、老化によって長期戦が不得手なヨーダにとってこれは致命的と言えた。

 

その時、さらに予想外の事態が発生する。

 

「マスター!!!」

 

議会場にティア・アテミスが現れたのだ。

そして刃を交える三人を確認すると師を呼びながらライトセーバーを取り出して走り出す。

 

「ティア、来てはならん!」

 

ティアを制止するヨーダ。

しかし次の瞬間、まるで時が止まったかのようにヨーダは動きを停止する。

突然の出来事に彼は目を見開き、自らの腹部へと視線を下げる。

そこには真紅のプラズマが深々と突き刺さっていた。

 

大きな隙を晒したヨーダの背後から、シディアスがヴェリウス諸共抹殺しようと考えたのだ。

 

しかしヨーダを軽々と貫いた刃がヴェリウスに届くことはなかった。

その光刃をヴェリウスはフォースで止めたのだ。

 

「ヴェリ・・・ウス」

 

ヨーダの消え入りそうな声は辛うじてヴェリウスの耳に届く。

しかし彼の表情には変化はなく、そもそもヨーダに意識を向けてすらいなかった。

 

「マスター・ヨーダ!!!」

 

ティアの位置からはシディアスの攻撃から、ヨーダが身を挺して守ったように見えていた。

そしてシス卿はヴェリウスを仕留められなかったことから次の攻撃に移ろうとする。

しかしシディアスはその場から動かない。

いや“動けない”でいた。

彼はヨーダを貫いた自らの光剣を引き抜くことができないでいたのだ。

 

ヴェリウスの冷たい眼光がダース・シディアスの瞳を射抜く。

シディアスは反射的にその場から飛び退いた。

 

ヴェリウスがフォースを流し込むのをやめるとヨーダはその場に崩れ落ちる。

彼はヨーダに目を向けることなく、シディアスとヨーダが手放したライトセーバーをフォースで宙に浮かせて起動させる。

大小二振りの光剣はまるで意思を持っているかのようにヴェリウスの周囲を回っている。

 

ヴェリウスから距離を取ったシディアスはリパルサーポッドから飛び降り、一番下の階層まで重力落下に身を任せる。

ヴェリウスはその姿を確認するとシス卿の後を追って行く。

 

彼らがその場を後にするタイミングでティアがヨーダの下へと辿り着いた。

 

「マスター・ヨーダ!!」

 

ティアはその場に膝を着き、ヨーダの状態を確認する。

しかし長い時間ライトセーバーで貫かれていたヨーダは既に事切れていた。

 

「マスター・・・・・」

 

今日多くのジェダイが命を落とした。

銀河中で、その殆どが死に絶えた。

しかし、ヨーダが命を落としたという現実は到底受け入れられるものでは無かった。

近年ジェダイ・オーダーに所属していたジェダイは間違いなくヨーダの指導を受けていた。

ティア自身も親元を離れ、オーダーに所属してからというものこの最長老の指導を受けて来たのだ。

 

ヨーダの生存は銀河のどこかで生き残っているジェダイ達の希望となったことだろう。

しかし現実は違った。

彼の死によって、ジェダイ・オーダーの終わりを告げられたように感じたのだった。

 

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