かつて選ばれし者と呼ばれた騎士   作:みどり色

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皆さん、お疲れ様です。
みどり色です。

今回の更新では、物語自体は進みませんが、それぞれの想いや感情、立ち位置の確認の為に必要な回でした。

ラストのようなシーンはやはり苦手です。
早々に切り上げました。
え?
実際のシーンも書け?
・・・マジ?



第8話 再会

インヴィジブル・ハンドは航行不能な状態までダメージが蓄積し、グリーヴァス将軍は艦に搭載されていた脱出ポッドを全て発進させてしまった。

そんな状況でヴェリウス達はコルサントの重力に引かれて落下を始めたインヴィジブル・ハンドを操り、奇跡的にコルサントの滑走路へと不時着させた。

 

パルパティーン最高議長救出に成功したオビ=ワンとアナキンの名声は留まる事を知らなかった。

さらに分離主義勢力のリーダーであるドゥークー伯爵の排除と言う功績から、アナキンの評価はさらに上がる事となった。

 

「マスター、来ないのですか?」

 

「ああ、政治家先生は苦手だ。 私はジェダイ聖堂に戻る」

 

多くの元老院議員に迎えられた私たちは、これから開かれるパーティーに招待されていた。

あ、正確にはオビ=ワンとアナキンが主役なんだけど、私とティアも最高議長から『是非』と言われている。

 

「ヴェリウスは?」

 

「うーん、私も遠慮しようかな・・・アナキン頼みがあるんだけど良いかな?」

 

「?」

 

「彼女を連れて行ってくれるかい? あまりこういう場に慣れていなくてね」

 

私は後ろに控えているティアを示す。

任務などでもフォーマルな場に行くこともあるから、慣れていて損はないからね。

 

「マスターは来られないのですか・・・?」

 

「うん、他にやりたい事もあるしアナキンがいれば安心でしょ?」

 

「・・・はい、マスター」

 

そんな露骨に悲しそうな顔をしないでよ・・・

若干決意が揺らぎそうになるが、鍛え抜いた精神力を総動員する。

 

「そんな顔しないで? 大丈夫、君は私よりも器量が良いから」

 

彼女の頭を撫でながらそう言うと、彼女は目を閉じて気持ち良さそうにしている。

昔からこうして褒めると嬉しそうにしていた事を思い出す。

機嫌を直して欲しい時によく使うというのは私だけの秘密だ。

 

「・・・そろそろ良いですかヴェリウス?」

 

そう声を掛けて来たアナキンの方を向くと、元老院議員達も私たちのことを待っていた。

今日の主役に早くしろという訳もいかず、手持ち無沙汰になっている。

申し訳ないことをしてしまった。

 

「ほら行っておいで」

 

「あっ・・・はい、マスター」

 

そう言って彼女を送り出すと、名残惜しそうな表情を浮かべるティアだったが素直にアナキンに付いて行くのだった。

 

「弟子を見送るのは不思議な気持ちだな?」

 

「はい、まさか私が弟子を持つことになるとは思ってもいませんでした」

 

「確かジオノーシスの一件の直後だったな」

 

「ええ、マスター・ヨーダの指示で彼女をパダワンとすることになりました」

 

オビ=ワンは既に弟子を一人前の騎士に育て上げている。

彼から助言を受ける事も少なくない。

 

「弟子離れできないのは意外と師匠の方かもしれないな。 私は未だにアナキンの事が気にかかってしまう」

 

小さくなっていく弟子の後ろ姿を眺めながら、オビ=ワンがそう呟く。

その瞳は、愛する家族に向ける視線そのものだった。

 

「・・・アナキンの父親のようですね?」

 

「な、なに? 私はそんな歳ではないぞ?」

 

「そうですか? 私が兄で貴方が父だと思っていたのですが」

 

「それだとお前も私の子という事になってしまうぞ?」

 

「はい“父上”」

 

「やめてくれ・・・・・」

 

私は笑いながら歩み出す。

オビ=ワンはその後ろから声を掛けてくる。

 

「ジェダイ聖堂に戻らないのか?」

 

「ええ、少しやる事があるので」

 

私の言葉に少し考える素振りを見せる。

昔からオビ=ワンを知っているからか、彼を見ていると時の流れを嫌でも感じる。

 

「・・・ヴェリウス、何か考え事や悩みがあるんじゃないか?」

 

 

オビ=ワンからの言葉で、私は心の奥底に秘めた思いに意識を向ける。

 

 

 

私はこの戦争を通して、自分が何の為に戦っているのかが分からなくなっていた。

 

そもそもこの戦争も力のあるコア・ワールドに属する惑星群(共和国)が、自分の利益だけのために特権を振りかざしたことが原因ともいえる。

その隙を狙われ、現在の分離主義勢力に繋がる通商連合などが法律の抜け穴を利用してアウター・リムと元老院の間で勢力を拡大したのだ。

 

平和と正義の守護者であるジェダイは強力な軍を指揮して我が物顔で宇宙を飛び回り、長きに渡る戦争に加担している。

それは何の為なのか?

公共の利益でなく、私利私欲を優先する政治家のため?

任期を終えてもなお議長の座に居座り、権力を拡大しているパルパティーンのため?

 

・・・・・違うはずだ。

だが現実として民衆は『ジェダイが平和の主義者としての役割を放棄している』と考えている。

ジェダイ・テンプルの前で大規模な抗議運動が起きたのも民衆の疲労や不満、疑念が募っているからだろう。

 

ジェダイ・オーダーの教えは形骸化しており、その方針に疑問を抱く者も少なくない。

実際にオーダーに反旗を翻すジェダイや、暗黒面に誘われたジェダイは何人もいる。

 

長きに渡るオーダーの教えは、今の自分たちに都合の良いように解釈を捻じ曲げて伝えられているのかもしれない。

今のジェダイは自分たちの力を疑わず、万能だと思い込み、強大な自負心の塊だ。

何かが起きても自分たちが予見できない筈はないと傲慢な姿勢を崩さない。

 

 

この戦争の行く末に、平和な世界があるのだろうか?

共和国が勝利を収めた所で、共和国の腐敗が無くなるわけではない。

寧ろ外縁部との格差は広がり続けるだろう。

 

それを止める力は、今のジェダイにはない。

 

 

私のオーダーに対する不信感は、何も今に始まったことではない。

 

オーダーは選ばれし者を『シスを滅ぼし、フォースにバランスをもたらす者』と考えている。

ではシスが表舞台から姿を消した1000年で、この銀河は平和になったか?

汚職が蔓延し、教えが形骸化され、新たな火種を生み出すこととなった。

 

ではシスなら?

シスならこの状況を変えられるか?

・・・・・いや、結局は同じだ。

光と闇、ジェダイとシス、双方は表裏一体。

どちらかが台頭してもバランスがもたらされる事はないだろう。

 

・・・・・それがフォースのバランスなのだろうか?

マスター、貴方の目指した世界は—————

 

 

 

「ヴェリウス、大丈夫か?」

 

私はオビ=ワンの声で現実に引き戻される。

ずっと前から心の奥底で考えている事だが、答えは得られないままだ。

 

「—————ええ大丈夫です。 フォースと共に、オビ=ワン」

 

私はそう告げると、彼に再び背を向けて歩き出す。

その背にオビ=ワンからの視線を感じながら。

 

 

 

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<元老院行政ビル パーティー会場>

 

ティア・アテミスは、ジェダイ・ナイトのアナキン・スカイウォーカーに連れられて、祝賀パーティーに参加していた。

パーティーというと大げさだが、食事を伴った近親者による意見交換の場と言う方が正確かもしれない。

参加しているのはシーヴ・パルパティーン最高議長を支持しているロイヤリスト・コミッティー(※)のメンバー達だ。

※ベイル・オーガナ、モン・モスマ、オーン・フリー・ター、ジャー・ジャー・ビンクスなど

 

「私が言いたいのは、最高議長の権力がこれ以上増大するは何としても防ぐ必要があるということだ」

 

そう話すのは惑星オルデラン代表のベイル・オーガナだ。

パルパティーンはジェダイ評議会との話し合いの為、未だこの場に現れていない。

 

パルパティーン最高議長の熱心な支持者であるオーン・フリー・ターは、ベイル・オーガナの反逆的な考えが気に入らない様だ。

ジェダイがその場にいる事もお構いなしに討論を繰り広げている。

 

オーン・フリー・ターから発せられる意見は、建設的なものとはとても言えなかった。

彼の実態はヴェリウスが危惧している共和国の腐敗に深く関与している。

惑星ライロスの代表であるターは汚職に手を染め、私腹を肥やすことに熱心な人物だった。

同胞である故郷のトワイレック達が、彼を支持していないのは仕方のない事だった。

 

実際にこのロイヤリスト・コミッティーでは、権力がパルパティーン最高議長に集中、増大している事に不安の声が上がっている。

このままでは取り返しのつかない事になると。

 

「“実り”のある場だな?」

 

グラスを片手にティアに話しかけてきたのはアナキンだった。

彼もこの場で行われている“話し合い”に飽き飽きしているようだった。

 

「マスター・スカイウォーカー」

 

ティアはアナキンに対して頭を下げて挨拶をする。

彼女からは『早くこの場から立ち去りたい』という雰囲気を感じられた。

 

「ジェダイ評議会は“最高議長のオフィス”の顧問も務めている。 政界に明るいというのは決して悪い事じゃない」

 

「私などには過ぎた場所です。 マスター・ヴェリウスはいつも完璧にされていますが私は・・・・・」

 

ティアはこの場にいない師の事を考えていた。

マスターはいつでも、何をしても完璧だった。

そんな彼の弟子になれて、自分はどんなに幸せかと。

 

 

彼の弟子になってから、私の人生は大きく変わった。

ジオノーシスの一件で主要な騎士の多くが亡くなったこともあり、師を持てないイニシエイトも同じように増える事となった。

 

私自身は仕える師に恵まれなかった。

元々突出した能力のなかった私は、イニシエイト・トライアル(※)にも合格する事が出来ずに、もう1年イニシエイト・クランで修業を積んだ。

※イニシエイトがパダワンに昇格する為の試験

 

しかしある日突然、マスター・ヨーダに呼び出された。

何も聞かされることなく付いて行くと、そこはマスター(ヴェリウス)の所だった。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

□遡ること3年 22BBY

<ジェダイ聖堂>

 

「気分はどうじゃティア? うん?」

 

「はいマスター・ヨーダ。 しかしどちらへ?」

 

「焦るでない、直に分かる」

 

イニシエイト・トライアルに落ちて、早くも1年が経とうとしていた。

しかし、次のトライアルに受かったとしてもマスターが決まらなければ意味はない。

能力があるイニシエイト達がトライアルに合格したとしても、誰のパダワンに就くこともできずにサービス部門に配属される者や、オーダーから去る者も少なくないのだ。

 

能力のある者でもそうなのだ。

突出した力もなく、ライトセーバー戦も苦手な私では選んでもらう事は不可能なように思えた。

 

「何か思い詰めた顔をしているのぅ?」

 

マスター・ヨーダはこちらを見ずにそう口にする。

彼の歩調に合わせているため、随分と長く歩いているように感じる。

 

「・・・不安なのです」

 

「不安とな?」

 

「どのマスターにも選んで頂けず、パダワンに昇格できないのではないかと」

 

「未来に目を向ける事はジェダイにとって必要な資質じゃ。 しかし不安に囚われてはならぬぞティアよ」

 

不安は恐れ、恐れは怒り、怒りは憎しみ、憎しみは苦痛に繋がるとマスター・ヨーダは語る。

ジェダイ・コードでは、

 

感情はなく、平和がある。

無知はなく、知識がある。

熱情はなく、平静がある。

混沌はなく、調和がある。

死はなく、フォースがある。

 

と教えられている。

しかし頭では分かっていても、実践するのはそう簡単ではない。

 

「・・・はい、マスター」

 

「着いたぞ、ここじゃ」

 

そう話しているうちに辿り着いたのは、ジェダイ最高評議会だった。

イニシエイトとしては来る機会など殆どない場所だ。

 

「ジェダイ評議会ですか?」

 

「“彼”を随分と待たせてしまったな」

 

「彼?」

 

そう言うとマスター・ヨーダは評議会に入って行く。

グランド・マスターの後に続くと、ある人物が夕日の差し込む部屋で背を向けて立っていた。

 

「ヴェリウス、待たせて悪かったの。 つい話が弾んでしまったのじゃ」

 

「・・・いえ、マスター・ヨーダ。 お陰でこの夕日を堪能できました」

 

そう言って振り返る彼の姿を見た時、私の中で時間が止まったような錯覚を覚えた。

燃えるような夕日に照らされたその姿は、この世の物とは思えない幻想的な雰囲気さえ感じさせる。

強烈な夕日を背にして立っているため良く見えたわけではなかったが、彼の瞳から雫が流れ落ちたように見えた。

彼を見た瞬間から私は経験したことのないような感情に支配され、心がぎゅっと苦しくなった。

 

「・・・綺麗」

 

「え?」

 

自分がそう言った事に気づくのに少しの時間が掛かった。

無意識に発した言葉だったが、初対面にも関わらず大変失礼な事をしてしまった。

 

「い、イニシエイトのティア・アテミスと申します。 先程は大変失礼を」

 

私は凄い勢いで頭を下げる。

この人に会ってから恥ずかしい姿しか見せていない。

少しは落ち着くのよ、ティア!

 

「初めましてティア。 私はジェダイ・ナイトのヴェリウス、よろしくね?」

 

彼は私の姿に驚いたのか、少し間を置いてから話始めた。

とても優しく、安心する声と話し方だった。

 

頭を上げると、彼の微笑んだ顔が目に入る。

それを見た瞬間、私の思考は止まってしまった。

 

「ヴェリウス、お主はマスターとなって彼女を導いてもらいたい。 きっと良い師弟になる」

 

「光栄ですマスター・ヨーダ。 しかし私にマスターが務まるとは到底思えません」

 

「それはお主が決める事ではないぞ? それに師が弟子を教えるように、弟子が師を教えることも数多くある」

 

ヴェリウスは少し考える素振りを見せたが、自分の思いが決まったのかティアに向き直って手を差し出す。

 

「力不足だと思うけどこれからよろしくね、ティア」

 

「は、はい! こちらこそよろしくお願いします・・・えっと、マスター?」

 

私は少し遅れて彼の手を握る。

新しいマスターは、そんな私を見て再び微笑んでいる。

 

その時、あるイメージが私の中に流れ込んでくる。

それは彼の記憶や思いが思念となったものだった。

 

師との突然の別れ—————悲しみ。

小鳥がさえずる穏やかで美しい景色、煌めく湖が広がり、身体を包み込む—————安寧。

岩に覆われた場所での再会—————疑念、悲しみと激しい怒り。

悲しみ—————悲しみ——————悲しみ—————・・・・・

 

その穏やかで優しい雰囲気とは決して結びつかない様々な感情とイメージが突然流れ込んできたことで、私は勢いよく彼の手を離してしまった。

 

彼は少し首を傾げただけで特に気にした様子はなく、今後のことをマスター・ヨーダと話している。

今のイメージは何だったのか?

彼は心の中で泣いていた。

この部屋に入った時に見た、あの涙は気のせいではなかったのか・・・?

 

その場で一人、ヨーダはティアの事を注意深く観察していた。

ティアをヴェリウスの弟子とする決定を下したのは評議会の意向ではなく、他でもないヨーダの独断だった。

ジオノーシス(EP2)で見せたヴェリウスの激しい怒り、その感情をドゥークーと剣を交えた格納庫でヨーダは敏感に感じ取っていた。

オビ=ワンとアナキンを救うために、彼はドゥークーを逃してしまった。

その際にドゥークーが乗るスペース・ヨットをフォースで引き止めていたヴェリウスから、強大な暗黒面の力を感じたのだ。

初めはヴェリウスだと分からなかったヨーダだったが、その場に倒れこむ彼の姿を見て驚きを隠せなかった。

 

『ティアなら彼の心に住み着く“負”の感情を若しくは・・・・・』

 

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

□現在 19BBY

 

マスターは完璧だった。

剣術やフォース、思慮深さや賢さ、知識でもマスター・クラスのジェダイですら彼には敵わなかった。

マスターは決して認めないが、当代最高のジェダイなのは間違いなかった。

そんな彼の心の奥底を知っているのは、理解しているのは自分だけという事実に私は表現できない程の高揚感を覚えた。

マスターは、私だけのマスターなのだ。

 

彼の事を考えるだけで、私の心は平穏を保てない。

時が経つごとに、彼への抑えきれない想いは強くなる一方だ。

 

このコルサントだけでなく任務で他の星に行くたびに、マスターはその星に住む女性の心を奪ってしまう。

その国の王族や貴族に求婚されたのは一度や二度の事ではない。

時には同性からのアプローチもある程だ。

 

だが彼女たち(彼ら)はマスターの外見しか見ていない。

勿論、外見だけでも他を一切寄せ付けない魅力があるのは事実だ。

しかし彼の魅力はもっと別の所にある。

それを知っているのは私だけだ。

他の誰でもない、私だけの秘密。

 

 

ヴェリウスの事を考えているのだろう、ティアの様子を見て何とも表現し難い気持ちになる。

アナキンは前から気づいていた。

彼女が師に向ける視線は、“そういう”ものだった。

自分が“彼女”に向けるものと同じだ。

 

しかしパドメは“彼”を見ていた。

そして彼もまた、パドメを同じように見ている。

それに気づいた時、経験したことのない喪失感を感じた。

心の中に大きな穴が空いてしまったようだった。

だが叶うことのないこの想いは、消えることのない焔は、心の奥深くで燃え続けていた。

 

「・・・君も損な役回りだな」

 

アナキンはそれだけ言うと、手に持っているグラスを一気に傾けるのだった。

 

 

 

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<アミダラ議員のペントハウス>

 

「遅くなってすまない」

 

「ヴェリウス! ああ、ヴェリウス」

 

オビ=ワンらと別れたヴェリウスは、秘密裏にパドメの下へと訪れていた。

パドメ自身も先程の場所にいたのだが、ヴェリウスの姿を確認すると急ぎペントハウスへと戻って来たのだ。

 

パドメは彼を向か入れると、堪らずその場で抱き着く。

長く会えない時間を忘れるように、その空白の時間を埋めるように。

 

「ヴェリウス、ヴェリウス!」

 

パドメは彼の名を呼び続けた。

まるで名前を呼び続けなければ、目の前の想い人が何処かへ行ってしまうかのように。

 

「寂しい思いをさせてしまったね・・・大丈夫、私はここにいるよ?」

 

彼の言葉で顔を上げるパドメ。

再会できたことによる喜びからか、会えなかった時の悲しみからか、彼女の瞳は涙で輝いていた。

 

ヴェリウスはそれを見て美しいと思った。

ナブーの湖水地方で見た、あの涙と同じだった。

場所は違うが、彼女のいる場所が自分にとってのいるべき場所なのだと感じることが出来た。

 

「パドメ・・・」

 

そう言うと、ヴェリウスは彼女に顔を近づける。

それに気づいたパドメは瞳を閉じ、つま先立ちになる事で可能な限り、彼との距離を縮める。

 

数秒だったか、数分だったか、数時間だったか・・・

時間の感覚を忘れ、ある時自然と2人は顔をゆっくりと離す。

 

部屋には夕日が差し込み、かつて過ごしたあの場所を思い出す。

今2人はあの場所にいた。

この世界にいるのはこの2人だけだった。

 

「ヴェリウス・・・」

 

パドメは消えるようなか細い声で愛しい人の名を呼ぶ。

彼の名を呼ぶだけで、彼女は形容しがたい感情に襲われるのだった。

 

そんな様子を感じ取り、ヴェリウスは彼女を抱き上げてそのまま奥へと歩みを進める。

目指す先は、かつて護衛の際に刺客を放たれたあの場所だ。

だがあの時とは、何もかもが違っていた。

 

部屋に入ると、ヴェリウスは抱き上げていた彼女を優しく横たえる。

そのまま彼はパドメの頭の横に手をつき、彼女を見下ろしていた。

湖水地方の離れ島の時とは反対の立ち位置だった。

 

ヴェリウスの長い髪が流れ落ち、2人の間に差し込む夕日を遮断する。

ヴェリウスはそのままゆっくりとパドメに向かう。

 

「パドメ・・・」

 

「ヴェリウス・・・」

 

僅かに差し込んだ夕日が照らし出す二つの影は、やがて一つになるのだった。

 




はい、お疲れさまでした。

次回はしっかりと本編に入る前に、ヴェリウスとティアの紹介?整理?です。

それではまた近いうちに・・・・・
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