東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

13 / 69
第8話

一難去ってまた一難、とはまさにこのことなのだろうか。

いやまぁ、一難去りきっているかと言われれば少し違うだろうが、後は時間が解決するだろう。

 

ただ、次に来た一難はこれまた特大級のものだ。

 

「...帰るぞ、瀬名」

 

「わかった」

 

不機嫌オーラを隠さない彰人に帰ると言われては、首を縦に頷く以外に道はないだろう。

杏にとってはこはねのような、彰人の相棒と言える存在である冬弥。

彼がいきなりやめると言い出し、ストリート音楽の道を貶していったのにはそれなりの理由があるはず。

 

先の件は私がこはねの背中を押すことでうまくいった...と思っている。

であるならば、今度も私が誰かの背中を押すことでうまくいく可能性があるというわけだ。

まぁ、手出しが必要がどうかは不明だが。

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

「俺は出かけるけど、瀬名も来るか?」

 

「ん...行く」

 

翌日。

いつものごとく部屋で芋虫になろうとしていた私の部屋の扉を開けて、彰人がそう言う。

数瞬迷ったが、まぁ考えたら行かない選択肢はないだろう。

 

「...」

 

彰人の顔を見たらわかる。

昨日の一件でピリピリしていて、ふとしたきっかけで爆発する可能性がある。

 

何も起きなければいいけど、と思いながら、私は絵名&彰人コーデの服をクローゼットから取り出した。

 

服を何とか着て、玄関へと向かう。

絵名は今日は寝ている様だ。

まぁ日中起きている方が珍しくもある。単純に昼夜逆転しているような生活をしているはずなのだ。

 

朝早くであれば比較的見られる機会も...珍しいポケモンぐらいの扱いなのかもしれない。

 

「んじゃ、行くか」

 

「うん」

 

そうして彰人が玄関を開ける。

今日もいい天気だ。

 

「日焼け止めは塗ったのか?」

 

「塗った」

 

じりじりと照りつける太陽から肌を守るために、私は日焼け止めを塗ることを義務付けられている。

そう、義務付けられているのだ。2人に。

 

白い髪に白い肌。このバランスを崩すのはもったいない、と言うことで毎回塗ることを強制されている。

最初はめんどくさくて嘘を吐いていたらすぐにばれた記憶がある。

その罰として課せられたことはもう思い出したくもないのだが、それ以降嘘を吐くことはなくなった。

 

ボケーっとしながら彰人の背中について歩いていくと、いつの間にか店についていたようだ。

 

『WEEKEND GARAGE』。今日もこの店か。

いや、この店の人に会うのが目的かも知れない。

 

中に入ると、杏が暇そうにイスに座っていた。

 

「あ、いらっしゃい、2人とも!」

 

「ああ...謙さんは?」

 

「今はいないけど...どうかしたの?」

 

早速とばかりに目的の人の所在を尋ねたが、杏にいないことを告げられるとカウンター席に座り、ぶすっとした顔でジュースを1つ頼んで黙り込んだ。

 

「彰人、どうかしたの? 冬弥と一緒じゃないのは珍しいと言えば珍しいけど...」

 

「まぁ、いろいろ」

 

それからしばらく杏におもちゃにされていると、こはねが来店した。

 

「こんにちは。...あ、東雲くんも」

 

「あぁ?」

 

「ひぇっ...な、なんでもないです!」

 

勇敢に彰人に挨拶をするこはねだったが、彰人の睨みですぐにこちらへと駆け寄ってきた。

 

▼彰人のにらみつける!

 こはねはひるんで逃げてしまった!

 

うーむ、ポケモン。

 

「び、びっくりした...東雲くん、なんだかピリピリしてるね...」

 

「今日は来てからずっとあんな感じ。セカイの話をしたかったんだけど、あの状態だとね...」

 

確かに今の彰人に話しかけようものなら、触れるもの全て傷つけると言わんばかりに痛い目に...セカイの話?

 

「セカイの話って、彰人に?」

 

「そっか、瀬名もいたんだっけ。あのセカイって、私たち2人と、もう2人。彰人と冬弥も含めた4人で出来てるんだって。...あれ、それだと瀬名があのセカイにいたのはなんでなんだろ」

 

「それは知らない。けど、なんで彰人と冬弥も?」

 

私がそう問いかけると、こはねがどこからかマイクを持ってきて首を傾げた。

 

「じゃあ、教える代わりに、ね?」

 

「それいいじゃんこはね!」

 

「じゃあ聞かない」

 

聞く代わりにと、明らかに釣り合っていない等価交換条件を出されたので、すぐさまに聞くのをやめる私。

引き際は肝心だ。それこそこの悪魔2人と何かする時は。

 

「ちぇ、しょうがないか。それよりさ、近くの『SPACE』ってクラブの人に、今度うちで歌わないかって誘われてるの。どう、やらない?」

 

「うん、やってみたいな」

 

「おっけー、じゃあ返事しとくね」

 

こはねの前向きな返答に、杏は気分を良くしてスマホに文字を打ち込んでいく。

それを笑顔で見た後、心配そうにこはねは彰人の方を見た。

 

「東雲くん...」

 

こはねも杏も、未だに曲を止めたのが彰人だと勘違いしているままだというのに、その彰人の心配をしたり気に掛けたり、優しいのだと私は思う。

...いや、杏はそんなに彰人のことは心配したりしていなかったか。

あんな奴って言ってたもんな...。

 

 




みのりちゃん嘘だよね…また限定…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。