東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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ちょっと短めです。

本日は2本投稿です。


第2章 25時、ナイトコードで。編
第1話


過去に戻っている。

そう判断するまでに時間はそう必要としなかった。

 

判断材料はいくつかある。

スマホの日付が過去のものになっていること。

ある程度の彰人と絵名の行動が、どこか既視感を覚える物であること。

 

他にも気になる点はいくつかあるものの、一番の大きな判断材料は、セカイでのこと。

 

『今回はうまくいったね』

 

『...は?』

 

とりあえず考えをまとめようとセカイに来て、初音ミクの開口一番がこれだ。

 

この言葉から推測できるのは、私は何度かやり直していて、ようやく今回はうまくいってループしている、と言うことだろうか。

ただ不思議なのは、どうして記憶を保持しているのか、という点と、その記憶はなぜ成功した際の記憶しかないのか。

 

何週もしているのなら、それだけの記憶があってもおかしくないというのに。

 

「????」

 

まぁ、考えても分からないものは分からない。

こうして自分のセカイの空を見上げると、煌々と赤く輝く星が4つ。

確実にあの4人だろう。

 

杏たちのセカイのミク...長いな。グループから文字を借りて、ビビバスミクとでも呼ぶとしようか。

ビビバスミクから聞いた話も合わせて考えると、恐らく『Vivid BAD SQUAD』の4人は関わらなくても大丈夫なのだろう。

この時間軸ではうまくいく。そう言った感じだ。

 

だが、別のセカイを持つグループがうまくいかない。

私は何とかそのグループを見つけて、うまくいくように頑張らなきゃいけないのだろう。

 

「...疲れそう」

 

正直敬語を使って喋るのも疲れるのだ。

どうしたものか、と考える。

 

...もしかしてだが。

 

「案外身内?」

 

『Vivid BAD SQUAD』には、彰人経由で関わった。

ならば今回は、絵名かもしれない。

 

絵名が想いを形にして歌にするというのは、少し想像がつかないが...まぁこはねの件もある。

人間どうなるかは分からないだろう。

3日会わなければ刮目せよみたいなことわざもあったはずだし、そんな感じなはずだ。

 

早速とばかりに私は寝っ転がっていた体を起こして、スマホを手に持った。

 

「じゃ、帰る」

 

「うん、頑張ってね」

 

今回は遊んで遊んでと言わずに、静かだったな、と思いながら、私はセカイから出た。

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

早速家に帰って絵名に聞こうと思ったのはいいものの、スマホの時間を確認するとまだ昼過ぎであった。

いつもはお昼は食べないのだが、今日は何となく何かを食べようか。

 

「何食べよう」

 

うろうろと街中を歩いてみるが、これといってピンとくる店はない。

いつも私が外食するのは基本パンケーキが理由で、そういう方向の店ばかりだ。

それが昼飯かというのは、まぁたまに重たいパンケーキもあるからそれを昼飯代わりにするぐらいで、素直に昼!とは言えない気がする。

 

じゃあガツンとくるものかと言えば、そうでもない。

私の身長が低いのが関係しているのかは知らないが、ステーキだとか、ラーメンだとか。

ああいう系統のものは通常の1人前を食べきれたことがない。

行くのであれば、育ち盛りの学生を1人連れて行かなければ。

 

「胸が膨らむのはいいが、身長も少し欲しいところ...」

 

目下の悩み事を口にしつつ適当に歩いていると、CDショップが目に入った。

そういえば、私のお気に入りの歌手が新曲を出していた気がする。

 

「お小遣いはいっぱい余ってる。買おう」

 

画家である私の父親は、それなりにお金を持っているようで、末っ子の私にもそれなりのお小遣いを渡してくる。

別にこちらから催促したわけではないけれど、毎月渡してくるし、何かあれば渡してくるのは...彼なりの気遣いなのだろうか。

たまに顔を合わせては近況を聞き、『そうか』とだけ告げて部屋に戻っていくのだが、そこを直せないものだろうか。

 

...考えがそれた。最近それることが多い気がする。

 

何を考えていたんだったか。

そうだ、最近好きな歌手が新曲を出しているはず。

すごくはまった歌手をずっと好きなまま、というのは稀な気がする。

今回の好きは続きそうだろうか、と思いつつ、目的のCDを手に取る。

 

「...うぅ」

 

どうやら新曲の名前は食べ物の名前のようだ。

まるで放課後にティータイムをしながらバンドをしている女子高生たちのような曲名だ。

普段ならばとりあえず聞くのだが、今はちょっとやめてほしい。

 

「お腹減った...」

 

腹の虫が異議を申し立てている。

CDなんか見てないで何か口にしろ、と言われているようだ。

 

CDを元の場所に戻し、店の外に出る。

その途中ですれ違った女子2人が、話をしながら店に入って行った。

 

「え、聞いたことないの? 曲もMVも、全部自分たちで作ってるんだって。1回聞いたらはまるから、聴いてみてよ」

 

「へ~。そこまで言うなら聴いてみようかな。なんてグループ名なの?」

 

「ニーゴ、っていうの。検索したらすぐ出てくるわよ」

 

「...ふむ」

 

ニーゴ。これはいわゆる略称で、正式名称は『25時、ナイトコードで。』と言うらしい。

SNSをあまりやらない私でも目にするぐらいには、最近若者の間で人気急上昇中のグループだ。

今すれ違った女子たちが言っていたように、曲を作るにあたって、全てを自分たちで行っているという、4人組のグループ。

 

作曲や編曲、作詞、MV作成、イラスト、それぞれが得意な者たちが集まっているのだろうか。

音楽をただ聞いているだけの私には、作曲というのはちょっと想像できない話だ。

そもそも私は曲を作るということは初心者だ。それも『ド』が付くほどの。

 

ポケットからイヤホンを取り出して、スマホの音楽を再生しているのだが、聴いている時は特に何も考えていない。

好きな曲を流して、頭を空っぽにしているだけ。

 

「?」

 

コンビニで適当に腹を満たせるものでも探そうと思っていると、ちょうど目の前のコンビニから人が出てきた。

銀髪で長髪。綺麗な髪だとは思うが、上下ジャージでおしゃれのおの字も知らなさそうなのがすべてを台無しにしている。

まぁ、私に言えたことではないが。

絵名と彰人がいなければ私もあの格好に近い物だったかもしれない。

 

ただ、それ以上に気になる点が1つ。

 

「はぁ...はぁ...日陰が遠い...」

 

たった今コンビニから出てきたはずなのに、もう既に肩で息をしている所だ。

1歩足を進めるたびにそのテンポが遅くなっていくのが分かる。

あのまま放置していたら死ぬのではないだろうか。

 

流石にあれを放置してコンビニで昼ご飯を選ぶ気にはなれなかった私は、声をかけた。

 

「大丈夫?」

 

「え...あ、大丈夫...」

 

「手伝う。荷物持つ」

 

「あ、ありがとう...」

 

銀髪少女の手に持っているコンビニ袋を手に取り、彼女の隣を歩く。

驚きだ。コンビニ袋の中身はカップ麺が3つ。

まさか、この少女の見た目から想像するに、毎食これだけなのだろうか。

 

確かに私も不健康人間だとは思うが、私の数段上を行っているぞ、この少女は。

 

「家は?」

 

「このまま真っすぐいった後に、何回か曲がって...ちょっと口に表すのは長いから、私の後についてきてくれたら」

 

「わかった」

 

そこからの会話は1つもなかった。

 

別に私がコミュ障だというわけではない。

始めましての人にも、用があれば話しかけることぐらいは造作もない。

ただ、この銀髪少女が私の方をチラチラと見るものだから、話題を振ることも出来なくなってしまった。

 

...もしかして、不審者だと思われているのだろうか。

 

 




PaⅢ.SENSATIONのフル来ましたね

個人的に1番フル来てほしかったのでめちゃくちゃ嬉しいです。
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