東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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とんでも譜面が実装されたので、クリスマスの話を書きます。

イベントのお話は本編には全く関係ありません。多分。



第X章
東雲家のクリスマス


クリスマス。

私個人のイメージでは、サンタという名の親からプレゼントをもらい、美味しいご飯を食べてケーキも食べて、寝る。

そんな感じの日だ。

 

まぁ簡単に言えば、私にとってのクリスマスというものは、家でゆっくりゴロゴロ、というものだ。

 

だが、東雲家の末っ子として生まれてからは変わった。

...いや、変えられた、というべきか。

 

冬休みに入って自堕落な生活をしている私は、今日がクリスマスということをスマホで認識しながら、毛布にくるまって二度寝を敢行している。

 

そんな私の毛布を、誰かがはぎ取った。

 

「瀬名、出かけるわよ!」

 

絵名だ。

こんな朝早くからテンションの高い絵名を見るのは約1年ぶり。

つまりは、クリスマスの日に毎回朝から絵名に起こされているのだけれど。

 

「...まだ眠い」

 

「そんなこと言って。『まだ眠いなら』と思ってほっといたらそのまま夜まで部屋から出てこないじゃない」

 

それは確かに。

 

「ほら、今日は瀬名の服買いに行くわよ。前に買ったものもサイズ合わなくなってるだろうし。彰人も下で待ってるんだから、ほら早く」

 

そういう絵名に体を起こされ、渋々着替えを始める私。

というか、服を買うのなんて通販じゃダメなんだろうか。

 

「ダメに決まってるでしょ」

 

そうですか。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

「やっぱり混んでるわね」

 

「まーな。まだ早い時間帯だからこの程度で済んでるけど、もう少したったら瀬名の手は離せねーだろうな」

 

ショッピングモールの大体の店がまだ開店してから10分かそこらしかたっていないというのに、辺りは人で埋まっていた。

だが彰人が言うには、まだこれでもマシな部類なのだという。

人に酔いそうだ。

 

身長の低い私を見失わない様にと、絵名と彰人の両方から手をつながれているのだが、気分はさながら捕まった宇宙人。

まぁあそこまで低くはないが、絵名とですら10cmほど離れている。彰人との差は言うまでもないだろう。

 

「まずはあそこよね」

 

「だな」

 

2人に手を引かれるまま入った店は、若干暗めの色でまとめられている、落ち着いた服の多い店だった。

 

客の数の多いというのに、入ってきた私たちに気づいた店員を絵名が慣れた様子で対応しており、その間に彰人は既に何着か手に持っていた。

 

「全身真っ白で透明感のある、っていうのもいいんだが、たまにはギャップで黒もいいよな」

 

「まぁ、そう思ったからここに連れてきたんだし。...ただ、元が良すぎてほとんどのものは似合いそうだけど」

 

2人はそう言いながら、私の体に服を当てては頷き、服を当てては頷きを繰り返す。

 

私が服を買いに行くのに反対なのは、ここだ。

私は服に対して特に興味があるわけじゃない。ぱっと目に入ったもので良さげなものがあれば、すぐそれにして買い物は終了するタイプだ。

 

昔家族総出で買い物に出かけたときは、私と父が外で待たされていた記憶がある。

もしかしたら私と彰人の性別が逆に生まれてきた説...。

 

「ひとまずこのかごの中にあるやつを順番に着てみて。試着室はあそこ。ほら行くわよ」

 

「くそ、俺のセンスがもう少し良ければ瀬名を輝かせられるのに...」

 

絵名が両腕にかごをかけながら試着室に向かい、彰人はなぜか悔しがりながらその後を追う。

店内も人の数は多い。

私は2人の後を慌てて追いかけ、試着室の前へとたどり着いた。

 

「それじゃあ、私たちはここで待ってるから」

 

「着方が分かんなかったら絵名を呼べよ」

 

そうして、私は数時間ほど、2人の着せ替え人形と化した。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

「もうお昼ね。彰人、どこかいい店ないの?」

 

「俺が行く店って言ったらそういう店なんだが...」

 

「あー...私たちだけならあれだけど...そうね、なら最近出来たっていう店にしない? 確かパスタが美味しいってSNSで噂になってたはずなのよね」

 

そろそろお腹が空腹を訴える時間帯になった頃。

絵名がスマホで何かを検索し、画面を見せてきた。

 

その画面には確かに、新店舗がこの近くにオープンしたことが書かれているが、2人とも大事な文章を見逃している。

 

「そうと決まれば、さっさと行こうぜ。混みそうだし先に連絡しておくか?」

 

「そうね...状況を聞いて、混みそうならそこら辺のファストフードで済ませても...」

 

2人がこのまま気づかずにその店に行った場合、出てきたパスタを見て顔を歪ませて、絵名は写真を撮るだけ。

彰人の至ってはそのまま私に皿を寄せるのが目に見える。

 

私はため息を1つ吐き出して、絵名の服を引っ張った。

 

「絵名。さっきのパスタのお店の画面、もう一回見せて」

 

「え? 別にいいけど...」

 

私のお願いに、絵名と彰人2人して首をかしげながら、絵名は先ほど見せていた画面をもう一度見せてくれた。

その画面の一か所に、私は指を当てた。

 

それだけで私の言いたいことを察した絵名は、画面を見て、顔を歪ませた。

 

「ん? どうしたんだよ、なんかあったのか?」

 

「これ...」

 

絵名が彰人に見せた一か所。

そこには、『にんじんペーストを混ぜた健康にも配慮した一品』との文。

 

「...ファストフードにすっか」

 

「そうしましょ」

 

真顔になった2人の後ろを追って、私たちは有名ファストフード店に入っていった。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

ファストフードの健康に悪そうな食事が大好きな私は、すっかり機嫌を良くして街中を歩いていた。

いつになく上機嫌なのが2人にも伝わっているようで、2人とも苦笑していた。

 

「瀬名のやつ、昔からファストフード好きだよな」

 

「まぁ美味しいのはわかるけど...肌に良くなさそうで進んで食べたくはないのよね...」

 

健康にいい食生活というものを一切考慮していない生活を続けても、私はこの美貌を保っているのだ。

絵名はそれらを考えてキリキリとスケジュール管理でもしないといけないだろうけど。

 

...彰人はどうなのだろう。

男なのだし、ある程度の身だしなみは考えているだろうけど、そこまで厳しくは考えていなさそうだ。

 

先ほど購入した私の服は、既に郵送を頼んでいるので私たちの目的は既に果たされたことになる。

 

あとは夜に、自宅で東雲家のクリスマスを過ごせば、イベントものは終わりだ。

 

クリスマスの度に母親が張り切って料理を作るのだけど、今回はどうだろうか。

 

「...絵名、彰人。少し寄りたいところがある」

 

「そうね、まだ帰るには余裕があるし...どこに寄るの?」

 

「この店なら、見たことあるから案内できる。行くか」

 

彰人にスマホに表示された目的地を見せて、彰人の案内の元、店へと向かう。

 

目的のものは、日頃の感謝、とでも言おうか。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

結局。

彰人に案内されて寄った店で購入したものは、父親用に万年筆。母親用にエプロン。

どちらもそこそこ値段のするものを選んでおいた。

 

物の価値なんてものは私にわかるはずもなく、彰人と絵名も同じ。

ネットで調べながらよさげなものを適当に、と言うと少し違うけれど、それでも普段の感謝を込めて選んだものだ。

 

両親の誕生日には特に何もしていないからこそ、こういうタイミングで日頃の感謝を伝えなくては。

 

そう張り切って、その日の夜に両親に渡したところ。

 

母親は大号泣して私を抱きしめ、父親は珍しく笑顔を見せていた。

特に父親の笑顔を見た絵名の反応は顕著で、ちょうどご飯を食べていたのもあり、絵名は箸を落とすほどの衝撃を受けたらしい。

 

それほどまでに父親の笑顔を見たのは衝撃だったのだろうか。

 

それからは特にいつもと変わりなく、絵名と彰人のにんじん押し付け合いバトルも始まったし、それを母親が窘めていたし。

私はそれらを無視して、マイペースで食事を進めてさっさと自室に戻ってきたし。

 

「.......」

 

そうやって、今日までのことをベッドの上で思い返して、1つ忘れていたことがあった。

 

私はスマホを取り出して、『Untitled』を再生する。

眩い光が収まって正面にいたのは、クリスマスでも変わらず真っ黒な初音ミクだった。

 

ただ、いつもと違うこともあり。

 

「...雪?」

 

「そうだよー。まぁ、別に積もりはしないから、雪だるまも雪合戦もできないけど。気分だけ味わう感じ?」

 

私のセカイにこうして影響を及ぼすほどに、今年のクリスマスは思い出に残っているのだろうか。

でも別に、今日は雪が降っていたわけでもないと思うのだが。

 

「瀬名の心の奥底では、冬と言えば。クリスマスと言えば雪が降ってるイメージがあるんじゃないかな。でも、積もるほどでもないって感じ。...これだけ降ってたら積もりそうな気がするけど」

 

そういって、初音ミクは、降り続けている雪を食べようと口を広げて、ジャンプしながらパクパク食べていく。

私も手のひらを出して、雪を手のひらに落ちるまで待ってみるが、別に冷たくはない。

見た目は雪そのもので、私の手のひらの熱に溶けるように消えていくけど、そこに残るのは水でもなんでもなく、そのまま何もなくなっていく。

 

ということは、あの初音ミクがどれだけ雪を食べようがお腹を下すことはないということだ。

 

そもそも、降ってる雪は汚くて食べるのはおすすめしないけど。

 

「じゃあ、私たちのクリスマス始めよっか」

 

「よっしきたー!」

 

私がそういうと、初音ミクはどこから取り出したのかクラッカーを出して、勢いよく鳴らした。

 

私と初音ミクのパーティは、始まったばかりだ。




イベントは私たちのリアルに合わせて書こうかな、と。

次のイベントは...年末年始かなぁ。
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