今日中にもう1本投稿できたらします。
『K:それじゃあ、招待するね』
ついにその時間が来てしまった。
ネットで作曲について調べて何も身につかないという、無駄な時間を過ごしているうちに、25時になっていたようだ。
私はあわててスマホにイヤホンをさして、対して使われていない、中学の入学祝で与えられたそこそこ優秀なノートPCを起動する。
全員の進行度を把握しておくのが私の仕事なのだから、スマホとデータ共有しておくにしてもPCの方が管理しやすいだろう。
そうして招待されたグループに入ると、既にボイスチャンネルには4人分のアイコンが。
奏が私のことをどう説明しているかは知らないが、とりあえず入るしかないだろう。
準備を終え、通話に参加するというボタンを押そう、として私の指は止まった。
参加しているメンバーは、『K』『雪』『Amia』『えななん』。
前3人はいいとして、最後の1人がやけに見たことのある名前をしている。
というかこれ、絵名だろう。
だとしたら非常にめんどくさいことになった。
このまま通話に参加して『こんばんは』なんて言ってみろ。
即『あれ、瀬名?』ってなるに違いない。
普段の私の地声は若干低い。
そうだな、み〇みけの千秋が分かりやすいだろうか。そこから...そうだな
、春香まで上げる。
よし、それでいこう。
なぁに。通話には確かミュートという機能が存在していたはず。
常に気を張っていないといけないわけではないのだ。
通話に参加すると、『ピロン♪』という音を鳴らした。これが入室音か。
「よろしくお願いします♪」
自分の口から出ていることは自分が一番わかっているのだが...誰だこれは。
私が私の声に困惑している中で、奏が仕切りだす。
『じゃあ、私たちから自己紹介していこうか。私は家で済ませたから...』
『ちょっと待って、奏の家に行ったの? その話詳しk』
『えななんうるさーい。じゃあボクから。Amiaです。MV作成をやってま~す』
『次は私かな。雪です。作詞とミックスを担当してます。よろしくね』
『...えななん。イラストをやってるわ』
ちょっとボーイッシュな印象を受ける声が、Amia。
声から優等生そうだなぁと思うのが、雪。
そしてなぜか敵対視されているようなのが、えななん。
というか絵名。間違いない。これは絵名だ。
なるほど、確かにこの時間からかすかに話し声が絵名の部屋から聞こえると思ったら、そういうことなのか。
「Sです。私はみんなの進行度合いを管理する、マネージャー的な立ち位置での参加になります。たまにKの家に行って作業を手伝うことになるので、よろしくお願いします」
『ん、これで大丈夫だね。あ、そうだ。その手伝ってもらう時って、遅くなっても大丈夫?』
「ええ、大丈夫です。1人暮らしですから」
奏から遅くなるけど大丈夫かという問いに、私は嘘を交えて返す。
声を変えているだけでは不安になったのだ。何となく、今の絵名にばれると史上最大の怒りが降ってきそうで怖い。
こういう時の勘は馬鹿にならない。素直に信じて対策を講じるのが吉。
もしばれたら...諦めよう。もしかしたら何とかなるかもしれないし。
『おーいK~。えななんが暴走しそうだからその辺にしといてあげてよ』
『誰が暴走しそうですって! いくら何でも暴れたりはしないわよ!』
えななん怖すぎじゃないか。
『まぁまぁ。Sさんに私たちの進捗を教えてあげた方がいいんじゃないかな』
『そうだね。じゃあ雪からお願い』
優等生ちゃんの雪がうまいこと会話の流れを握って、私に説明してくれるようにしてくれた。
多分クラス委員長とかやってるだろう、これは。
そうして、それぞれの進捗をまとめ終わったころには、もうすでに26時を回っており、さすがに私も眠くなってきたころ合いだった。
こうして25時に活動をするのであれば、今まで以上に日中はセカイで寝ていなければならないかもしれない。
...ああ、嫌なことを思い出した。テストがあるんだった。
『それじゃあ、私はちょっと早いけど先に落ちるね』
『うん、お疲れ』
ミュートにした状態で頭を抱えてうんうん唸っていると、雪が通話から落ちた。
社会人にしろ学生にしろ、私のように不真面目じゃない人は大変そうだ。
日中は活動しなくてはいけないのだから。
...寝不足にならないのだろうか。
それからは大体雑談をしていき、えななんにしろAmiaにしろ、碌に作業が進んでいなさそうだった。
ただKこと奏はたまに話に参加する程度だったので、手は止まらずに作業を続けていたのだろう。
とりあえず今日学んだこと。
絵名の前で奏の話題は慎重に。
〈♪〉
翌日。
重たい体を引きずって久方ぶりの学校へ行き、珍獣を見る目で見られながらテストを終えた私。
これはもう帰ってさっさと寝るしかないと意気込んでいると、スマホが鳴った。
「?」
スマホを取り出すと、雪からの通知だった。
何かしらのメッセージを送ってきたらしい。
本音を言うと、雪と名乗るあの女性と関わるのは嫌な予感がする。
面倒ごとに巻き込まれそうな、というか。ただ、そのことを考えると、どうしてもあのオッドアイ初音ミクが頭をよぎる。
何も関係していなさそうなのに...なぜだろうか。
こうして別の事を考えていても、どうせ夜には通話することになるのだ。
その時に確認していないなんて嘘は中々通用しないだろう。
仕方なしにスマホのロックを解除して、メッセージを開いた。
『雪:急に連絡してごめんなさい。昨日初めましてなのにこんなこと言うのもなんですけど、少し会ってお話したいです。時間取れる日でいいので、連絡ください』
厄ネタがこちらに近づいてきたぞ。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
雪の事を考えていたら彼女から連絡が来てしまった。
どうしようか。面倒事が確定で起きてしまう、逃れられないイベントなのであれば、先に消化してしまいたい。
少し悩んだ私は、メッセージを送った。
『S:大丈夫ですよ! 急ぎでしたら、今日とかはどうでしょう? 夜まではいつでも時間空いてますよ』
『雪:いいんですか? では、今日この後はどうでしょう。近くに安いファミレスがあるんです』
『S:わかりました。では、そこで』
さて。どうなることやら。